前回の記事はタイトルに1/13と入れてしまったのもあり、文字数的にも2万字を越して、当ブログの記事としてはボリュー厶多めになってしまったので、その後の観劇で新たに思ったことはまた別の枠でまとめることにしました。未読の方はこれを前提に話すのでまずはこちらを。もちろんネタバレを含みます。
86ma.hatenablog.com
目次
1/23公演
・この日は3日前にチケット取ったからなのか、前回よりもずっとステージに近い席で見ることができて2回目とは思えないほど楽しかった。
前回もこれまでにないくらい衝撃だったけど、それでも全体が俯瞰できる席だったからか迫力はまだ小さい方だったみたいで、正真正銘目の前で、表情も見えるくらい近くで動く役者さんを見てたら、前回は滲む程度だった涙がボロボロ出てきてすごかった。
・レオンの池袋サンシャイン劇場と同じ椅子ですのところで「816人乗りでございます」が追加されてて、会場大ウケ。爆笑しました。
1/13との違い
・この日は慈玄の方のバク宙が見られなくて、もしかして足痛めちゃったとか何かあった……?と心配になった。ただ今回たまたま勢いが足りなかっただけであってほしい。側転はしてた。
でも遠くからじゃ感じにくかった、そこじゃない部分の戦闘シーンの重みとか軽やかさとかをしっかり感じられてとても良かった。
慈玄はもちろん、他の方々も一発一発の攻撃にしっかり力が入ってて、蹴りとかもみんな驚くくらい足上がってて……。自分は体かたい方なのでずっと「すげー!」ってなりっぱなしだった。
・マッドガイはアドリブがかなり多くて、「ジャキーン!」のところで阿形が荒鬼に指ハートさせてたり、「俺の美しい口が開いたまま塞がらない」が全部母音だけになってたり、なんかこの回はダンサーさんの髪型がオールバックで統一されてたので荒鬼が「なんで全員オールバックなんだ?」ってツッコんだり……知識としては知ってたけど、舞台って別の日に見るとこんなに違う部分がたくさんあるんだと初めて体感した。
あとマッドガイミュージカルの最後に、阿形さんの方から「一番狂ってるのはお前ら(ダンサーたち)だよな」って言及があって、やっぱりベスト着てた4人はBクラスの面々だと確定してた。こんな重要な情報がたまたまこの回を見ないと分からないの、舞台って奥が深すぎるぜ……。
阿形さんがピラミッド作るとき「疲れたな……疲労ピラミッド」とか言ってたので、慈玄の件もあって東京公演も終盤に迫ってきて皆さん疲れてるのかな……とも。東京-大阪の間でゆっくり休んでほしい。
学年委員の面々
・他の3人はともかく、瞬十は荒鬼の方から「Aクラスの学年委員サマ」って明言されてましたね。絡み的に、千戸瀬数馬だけはBクラスなのかな? そしたら学年委員はAクラスから3人、Bクラスから2人で人数バランス悪くないし。もちろん、出てきてないだけでABクラスに所属してる他の人やCクラスとかも、まだまだいておかしくないんだけど。
・雨竜と千戸瀬数馬の戦闘訓練、最初に見たときは気付かなかったんだけど途中で槍を交換しててぶったまげた。気付かなかったってことは、難なくこなしてたってことだもんね? すげー……。
高塔家で槍術を学んでたのに加えて、これだけ槍の扱いがうまい千戸瀬数馬と手合わせしてた経験は、仮面ライダーになった雨竜の中でしっかり生き続けてるんだろうな。それは白波一や万条目恒臣もそうなんだろうし。
・千戸瀬数馬、戦闘員になってからは特にダパーン的なややサイコな若者みたいな雰囲気なのに、雨竜くんに名前で呼ぶよう注意してるのが不思議。未だにどういうキャラなのか把握しきれてない。書いてみて思ったけど、瞬十が色んなキャラの要素を持ってるみたいにちょっと戴天さんのニュアンスがあるのか?
下の名前で呼んでほしいってことは、雨竜くんと(全員と?)少なからず近い関係でいたいってことだよね。2人セットになってる紫苑&慈玄-白波&万条目の組み合わせと比べて、千戸瀬数馬はネームドキャラの中では二番手みたいな立ち位置なので(クレジットも一番最初だし)、もうちょっと深掘りできそうなキャラではあるんだけど……唯一ここぐらいかな、もうちょっと色んな描写を見たかったのって。
・瞬十の「才悟、やはり君は一筋縄ではいかなかった」の部分は、初めて見た回で印象的なアドリブがあったとこなので、逆に何もなくてちょっと寂しかったな。
疑惑の藍上レオン
・レオンと瞬十の「客席!?」のくだり、途中からレオンも「客席(ってなんですか)!?」って驚いて瞬十が「え、そっちが言ったんでしょ客席!?」とツッコむみたいな流れがあって、これってもしかして今後のレオンに関する伏線だったりするのかなーと思ったり。
メインストーリー第1部でも同様に「レオンが知っているはずのことを知らない」って場面があって、もしかすると二重人格みたいな設定が実はあって、役者さんは役作りのためにそれを聞いてたからちょっとだけ匂わせる要素を入れたのかな……と。
この件は考えすぎとしても、特にライブパートのユニット名とか、メインストーリーでもなんでもないちょっとしたエピソードの話を拾ってきたりしてて意外と細かいし、役者さんのSNSでもちゃんとそのネタ拾ってくれたりしてるから、舞台に立つまでに一体どれだけ予習したんだろうと。
瞬十の正体バレ
・席が舞台に近かったことで、役者さんの瞳がキラキラ光ってるのがハッキリ見える瞬間が2回あって、一度目は神威がいつも通り美の化身!ってやってるとこで「あぁ美しいってこういうことなんだ」と思ったんだけど、二度目は瞬十が正体バレしたところの近くで、すごく寂しそうな表情だったのもあって涙ぐんでるように見えてすごく切なかった。
たぶんあの瞳を見てしまったのもあってボロボロ泣いたんだと思う。後の展開を知っていたからこそ、ひとつひとつの言動の意味や重さをじっくりと味わうことができた。
・瞬十の正体がバレたきっかけって、つま先を鳴らす癖だけじゃなくて「仮面ライダー」って単語を知ってたから……っていうのがダメ押しとして使われてるんだけど、ここは改めて見たら理解が難しくて、しばらく引っかかった。
才悟たちは普段から"仮面ライダー屋"を名乗って一般の人たちから広く親しまれてる訳なので、アカデミーを退学したあとの瞬十が仮面ライダーという概念を知っていてもそれほど変ではない。
知られてるのはあくまで便利屋さんとしてであって、戦士としてではない……んだろうけど、瞬十はそれこそアカデミーでずっとライダーになることを志してた訳なので、まぁそれくらいは十分察せる範囲ではあるだろう。
でも才悟が言ってたのは、もし本当に退学になったのであれば、カオスイズムのことだからライダーに関する記憶も全て消されてるに違いなくて、その頃の記憶を失っていないのであればカオスイズムの軍門に下ったんだろうって話なのかな。
瞬十はエージェントのカオストーンで記憶が戻ったんだよと説明してたけど、本来形見のカオストーンを持ってしても仮面ライダーたちがカオスイズムに奪われた本当の記憶を取り戻すことはできていない。それができれば、第二世代カオストーンを集める必要なんてないので。
今回の舞台でやったのは、あくまでも「記憶を改変する特殊なカオスワールドの力を弱めた」だけで、プロローグでアカデミーからみんなを逃したのと似たような働きなのかもしれない。
カオストーンに吸い出された記憶はカオストーンがないと戻らないけど、今回はそうではなくて瞬十のカオスワールドの力でただ記憶がロックされただけなので、それを解除するだけなら形見のカオストーンでもできると。
あと才悟がラストシーンで瞬十の癖を真似るところへの布石として、この種明かしのときに一度やってたんだなと気付いて結構アガった。
僕はあれ、意識的にやったというよりは無意識に出たんじゃないかなと思ったので、ここでみんなに説明するために必然性を持って一度トントンとやったことで、体が覚えたって流れなんだろな。
・ところでカメステでの雨竜の立ち位置って難しくて、瞬十はアカデミーのやり直しをしたかったのに雨竜のことはカオスワールドに誘ってないばかりか、ガオナクスに変身させて才悟と一緒に倒してるんだよね。カオスワールドは持ち主の願望を形にする訳なので、瞬十は雨竜のこと嫌いだったのか?って話なんだけど……そっか、これ書いてみて分かったけど、雨竜が一番早くアカデミーの謎に勘付いてたって描写があったから、あの一言のせいで学年委員はうっかり真実に近付いてしまって退学になり、才悟たちと運命が別れてしまった……って意味で、別に雨竜自身が嫌いとかではないけどよくは思ってないのかな、瞬十は。
当の雨竜だけが退学になってないのはどういう流れがあったんだろうね? 「兄弟盃と魔法のランプ」のサバイバル訓練みたいに雨竜が体調崩してたとか、或いはアカデミーの怪しい部分に切り込むってことで最年少の雨竜は瞬十たちの判断でお留守番になったとか? 後者だった場合、結果的には雨竜があんなこと言わなければこんなことには……って思ってたかもしれないけど、同期として大切に思ってたのは事実なんだなって思えて良いね。
誰かの怒りを守る
・前回見たときはラストの記憶から逆算して「荒鬼は最初から汚れ役を請け負うつもりでジャスティスライドと対立してた」んだと理解してたんだけど、見返してみるとここには解釈の幅があって、最初に陽真と対立してたときはそんな深いことは考えてなかった可能性もあるんだなと。
その後、陽真が「仮面ライダーにはそれぞれの戦う理由があるって、改めてお前に教えられたよ」「……別に教えちゃいねーよ。てめェで見つけたもんだろ」のくだりでジャスティスライドには彼らなりの信念があって瞬十を倒したくないってことを理解したから、そこで初めて荒鬼なりの優しさを持って瞬十を倒そうと決意したのかも。
・紫苑の「怒りを守りたい」は初見の人には意味が分かりにくいだろうなぁとは思ってたんだけど(ゲームやっててもよく分からないと言ってる人だっているし)、そこへのフォローのためにカメステ内でもきちんと瞬十の裏切りに怒るマッドガイの気持ちも尊重しないといけないって話をしてたんだと分かって、本当に細かいとこまで抜け目ない脚本だよなぁ。
特に2クラスの対立のシーンで、紫苑は明確に両者のちょうど真ん中に座っていて、どちらの意見にも耳を傾ける仲裁役として振る舞ってるのがとても良い。
1/13の感想では、あの場の荒鬼が心の奥底では優しい気持ちを抱いてるのが紫苑は分かったから擁護したんだろうって話をしたけど、今言ったみたいにただ「カオスイズムに寝返ったならぶっ倒す!」って怒りの気持ちだけで喋ってたんだとしても、どっちにしろ紫苑の振る舞いはすごく"らしい"よね。
才悟が笑顔、陽真が涙を失ったように、紫苑は怒りの感情を失ってしまったので、他の誰かがきちんと心のままに怒れることの大切さをよく分かっている。ジャスティスライドはみんなそういう気持ち(ニチアサで言うなら「眩しくて戻らない瞬間、もう誰にも奪わせない」)で戦ってる人たちだし、『TXT Vol.2 ID』からも分かる通り、高橋悠也脚本はそういったネガティブなものも含めて人間の感情というものを大切にするので。
やはりアークワンかも
・カオスライダー瞬十のモチーフは何なのか問題、時間を巻き戻すからジオウモチーフ……というのは、一応前回の記事ではさらっと触れたものの個人的にはほとんど支持してなくて、アークワン説はそれに比べたらまだ信憑性は感じるけど確実とまでは言えないかな……と思ってたんだけど、2回目見たことで、そういえばアークワンも相手の変身能力を奪うのがひとつの特徴だったことを思い出して、その要素まで踏まえたらまぁまぁアークワンで確定ってことでいいでしょうという気持ちになった。
アークワンになった或人は、滅意外との無駄な争いをしたくなくてサウザンドライバーを壊したり不破と唯阿のチップを書き換えたりして変身能力を奪ってたので、今回の瞬十は口では「お前たちへの罰だ!」って言ってたけど、そういう気持ちがあった想定することも十分可能なのかなと思うし。
・あと計画の第二段階っていうのも理解度が上がった。
記憶を書き換えて卒業試験をやり直す方法は失敗したから、単に腹いせで街を攻撃してカオスイズムの支配下に置こうとしてるような印象を持ってたんだけど、ジャスティスライドは特に街の平和を守る仮面ライダーとしての記憶を取り戻してしまったからこそ、だったら街の平和を人質に取れば今度こそみんなが自分の仲間に戻ってくれるんじゃないか……っていう意図で動いてたんだよね?
瞬十にとってカオスイズムの野望なんてものは多分そこまで重要ではなくて、徹頭徹尾「仲間と一緒にいたい」って純粋な気持ちだけで戦ってたんだなと思うと……。
・あと雨竜くんの変身シーンがないのって、戴天さんがいないから第2回以降でのおたのしみってだけじゃなくて、10章での「危うく暴走して同期を傷つけるとこだったから変身したくない」って文脈もあり、数馬相手には敢えて変身しないで生身での呼びかけに留めてたのかな。
相手を傷付けたくなくて変身しない雨竜のピンチに駆けつけるのが、汚れ役は自分たちがやればいいって言ってたマッドガイなのも最高。瞬十を倒すことこそできなかったけど、ここで擬似的にその想いは果たしてたんだぁ。
心からの笑顔
・陽真は最後まで「お前は本当はそんなこと望んじゃいないはずだ!」と、よく言えば瞬十を信じていて、悪く言えば自分基準で相手の行動を解釈していた訳だけど、才悟は最後の最後では「本人が洗脳されてないというのならそうなんだろう」と瞬十のやってきたことをきちんと彼自身の意志によるものだと認めたんだよね。
「洗脳されてたから」で済ませるなら、瞬十の罪はいくらでも軽くできたかもしれないけど、それは瞬十の中にある「みんなと一緒にいたかった」という気持ちを軽んじることでもある訳で。
だからこそ、瞬十は自分のやってきたことを自分自身の責任として引き受けなければならない。その罪悪感を背負ったままでは心から笑顔になることは難しいから、倒されることで罪滅ぼしをしなければならないし、才悟はその覚悟をきちんと正面から受け止めたから、例え契約違反になろうとも瞬十を倒すという決断を下すことができた。
瞬十に「俺を心から笑顔にしたいなら、俺を殺すしかない」と言われた才悟って、傍目からは一瞬、その言葉に困惑して背を向けてるように見えるんだけど、実はそこで戸惑っているのは観客だけで、才悟本人はあくまでもファイナルライディングシュートを繰り出すために必要な助走距離を取っていただけで、迷うことなくすぐさま「……分かった」って返事してるのが、何度見ても震える。
心の中には色々な葛藤もあるんだろうけど、それを表には出さない。そもそも才悟は自分の笑顔というものを知らない。第1章では「死にたくないと思えるほどの人生を、オレは歩んでいない」とまで言っていた彼のことだから、「久遠瞬十が死んだら自分は悲しい(笑顔になれない)」という本音を優先することができない。
誰かの笑顔のために戦う才悟だからこそ、本人がそうしなければ笑顔になれないと言うのであれば、自分の笑顔よりも本人の意志を尊重できてしまう……。
魅上才悟の悲しいまでのヒーロー性と、久遠瞬十のどうしようもない人間らしさがもたらした結末としてあんまりにも綺麗なので、ここまで来たときには涙が止まらなくて舞台を見る余裕があんまりなかった。
洗脳されてた訳じゃなくて、瞬十は瞬十自身の「意志」で戦ってきたのだと認めたから、「君はずっと前から仮面ライダーだった!」と認めることにも繋がる。
・これはカメステ全体に言えることだけど、CGに頼ってないからライダーキックが必ず体重の乗ったものになってるんだよね。
平成仮面ライダーって、映像技術が発展した代わりにキックの映像がどうしても、ポーズをとったライダーがその格好のままスライドしてくだけ……みたいな絵面になりがちで、僕が唯一昭和ライダーの方が明らかに優れてると思ってる部分がそのキックの重みなんだけど、カメステはまさにその昭和の良さを体現したかのような、武器に頼らない肉体的なライダーアクションが見られるので、新しいんだけどどこか懐かしさもあるんだよね。
この最終決戦に至ってはそれをやるのが昭和ライダーモチーフであろう才悟なので、そのアツさもひとしお。
・瞬十がピアスの攻撃を受けてからは、才悟はエージェントに瞬十の手当てを頼んでて助けようとしてるんだよね。多分これは瞬十を倒すつもりがなかった訳じゃなくて、「お前の手で殺してくれ」って頼まれたのにピアスの攻撃で息を引き取ることになったら、約束を果たしたことにはならないと思ったから……なんじゃないかな。
自分ができなかったことをお前が代わりにやってくれ、みんなの笑顔を守ってくれと願いながら息を引き取った瞬十を、同じく仮面ライダーになれなかった者であるレオンも一緒に眺めていたというのは、2回目見てまた違った味わい方ができたところだな。
・ここもかなり高橋悠也脚本らしい味付けだと思うんだけど、ピアスはハッキリと「彼らは洗脳する必要がなかった」と複数形で語っていて、つまり瞬十以外の3人も本人の意志でカオスイズムに協力してたんだよね。
なんだけど、最後のお墓参りのシーンでは「彼らは洗脳されていたから被害者みたいなもの」という語られ方がしている。
阿形や紫苑たちは本当に洗脳されていたかどうかをきちんと知る術はないので、自分たちの予想で喋っているに過ぎなくて、これもまた「仮面ライダーの価値観は人それぞれ」ってことの表現のひとつ。
才悟は瞬十のことを洗脳なんかされてなかったと認めたけど、そう認識してないキャラもいる。
カオスイズムには洗脳されてなくても、ある意味で残りの3人は"瞬十に"洗脳されていたという見方もできるかもしれないし、真実のところは、案外本人たちにも分からないのかもしれない。自分が洗脳されているかどうかなんて証明のしようがないし、心って複雑なものなので、何が本心かなんて分からなくても無理はない。
恐らく瞬十と違って「俺は洗脳なんかされてない!」と強く否定したりはしなかったから、3人は従ってただけなんだろうと周りに解釈されたんだろう。
こういう「結局どれが本当なの?」ってとこを曖昧にして解釈の余地を残すのが高橋悠也の作風なので、作品に答えを求めすぎず、納得のいく答えは自分自身で見つけるつもりで見ると、より楽しめると思います。
ライブパート
・元々2/2しか行く予定のなかった僕が、いきなり行くことを決めた1/13に続いてなぜ1/23にまた行こうと思い立ったかというと、それはひとえに才悟の誕生日だったから。
1/19が瞬十の誕生日らしいことを当日に知って、しかもその日の挨拶登板が瞬十でそこに言及してくれたというレポを見たので、じゃあ行くしかないと。
最近たまたま『クウガ』を見返していて、その準主人公である一条薫って刑事は誕生日が父親の命日でもあるので、プレゼントなどは受け取らないようにしているって描写があったからなおさら、才悟が自分の誕生日に瞬十を倒してしまった……なんていう重すぎる十字架を背負ったまま生きていく世界線が舞台上には生まれるのだと思ったら、それを目撃しないでこの先のライドカメンズを、魅上才悟を見るのはすごくもったいないかもしれない!と思って行くことを決意した。
でもそこで提示された答えは案外シンプルなものだった。
瞬十の最期に涙し、休憩時間もあっという間に感じて、この気持ちのままライブパートを全力で楽しむ方向に心を切り替えられるのだろうかと心配してたところ、1曲目の『GET BACK!!』で才悟が歌ったのは「喪失に囚われずに(前進を貫け!)」の部分。
あぁ、仮面ライダーって心も強いんだなと改めて感じて、そこでもう一回泣いた。
才悟が十字架を背負う様を見届けたいなんていう不謹慎というかやや邪な気持ちでここまで来た自分をちょっとだけ恥じて、そっからはもう、2回目のライブをめいっぱい楽しみました。
前回阿形さんに「もっと盛り上がれ!」って怒られたしね、ペンライトも振って声も出して、本当にめいっぱい。
・ユニットシャッフルは才悟&阿形の「水を得た魚(さかな)」。
慈玄から「正しくは水を得たウオだ」と指摘されて、「どっちでもよくない? ウォウ ウォウ」と呟く阿形さんにはちょっと面食らったな。
たまたま最近元ネタを知って、これノリの良さで(ネット上でも)つい口にしたりしちゃいけないやつなんだと学んだばかりだったので、舞台の彼は解釈に幅を持たせていたという前提の上でも、阿形の口から出てきたのはちょっと衝撃だった。
最低限の配慮として、五期生の中でも阿形はお酒飲める歳というのもあるし、少し前の僕と同じで元ネタを全く知らなかったからこそあの場で口にできたという理解も可能なので、初見のインパクトよりは変ではないかなと、今は多少納得もしてるけど。
あと鬼ってお酒いっぱい飲むものだしね。
常識人そうに見えて阿形さんが意外と座学苦手なのはゲーム内でも描かれてて、テスト前には同室だった雨竜から勉強を教わってたなんて話もあるので、正しい読み方を知らないのはキャラにもあってるし。
さすがに誕生日なので才悟の色つけて振ってたんだけど、でも阿形さんもかなり好きな方のキャラだしな……と思って二番は紫にしようと思ってたら、『君がいるから』だけは短縮版だったみたいで、結局紫にしてたのは間奏の間だけだったな。把握してなかった。
・『Perfect Assistant』のときのペンライトは、もうすっかり一色になっちゃってて寂しかったな……。
自分だけでも違う色にしようか迷ったけども、さすがに目立つだろうし演者さんも気が散ったりするかなと思ってやめた。
パフォーマンスは1回目と変わらずめちゃくちゃ最高でした! 既に欠かせない存在だよ、レオン!
1/25配信(18:00)
・東京公演も終盤に近づいてきて、突然のライブ配信決定!
今までは記憶を頼りにするしかなかった話を、Blu-rayが発売されるより前に何度も見返して目に焼き付けられる(めちゃくちゃ細かくメモも取れる)というのはあまりにもありがたいことなので、せっかくなので購入することに。
思い出しながらでは取りこぼしていた小さな感想も含めて残しておこうと思います。
才悟の危うさ
・恐らく完全に初見の人にとっては、この冒頭のピアスの説明から世界観説明を正しく読み取ることはなかなか難しいように思うし、ゲームやってる自分でさえ初回はかなり聞き流していたんだけども、カオスのことを仮面型の"標本"と表現するのって、意外と何回か繰り返されてて大事なんだな。
僕はこれを聞いて星2【ラストノート】魅上才悟の「標本づくりに挑戦!」を思い出した。
植物採集をして標本をつくっていく過程で、発見をしたり人と関わったり色んなことを体験していく才悟のかわいさを楽しめつつ、GREENエンドでは昆虫の標本もつくってみたいと言い出して、ノア(エージェント)と紫苑が「それは……どうかな。ほら、可哀想だし」と嗜めるという、才悟が持つ冷たさ・危うさみたいなものも垣間見えるエピソード。
ライドカメンズはガシャの目玉である星4だけじゃなくて、意外と低レアで面白いお話が読めたりすることも多くて、星3くらいなら20連30連くらいで引けたり、イベント報酬のぶんも入手するハードルは1枚だけならそこまで高くもないので、無課金ならまずは低レアをなるべく取り逃さないことを目標にするのがおすすめです。
カオストーンというキーアイテムがある作品でありながら石が好きって設定もある通り、才悟がかろうじて持ってる個性って、結構カオスイズム寄りな性質が多いように感じる。この辺はかなり根幹のテーマとかに関わってくるんだろうね。
・ア゙ア゙ア゙ー! 1/23の回でも大ウケだった「816人乗りでございます」の部分に、配信で見てる人もいるという要素まで付け加えて喋ってる!
しかも? 今カメラ目線でこちらに向けてウィンクしました!?
さすが我らのスーパー執事 藍上レオン! うわー、もうこれだけで5000円払った意味があったよ……。こういうの、たぶん円盤に収録される回ではなさそうだもんね。このサービス精神に満ち満ちたレオンの一挙一動を見てるだけで、カメステはもうお腹いっぱいになれる。
シリーズファンとしては『ジオウ』のウォズと肩を並べるくらい、見てるだけで楽しい最高の語り部です。ありがとうございます。
・冒頭で喋ってる主任戦闘員は声や癖からしても瞬十だろうけど、物語が始まるタイミングでは率先してエージェントやレオンを狙っていたというのは、既に何回か見た後だからこそ気付けたことだな……。
元々は才悟たちを脱走させた張本人として浅からぬ憎しみを向けていたんだろうけど、仮面ライダーとなった才悟たちの生き様を見ていく中で、自分の命を賭してピアスの攻撃から守ってくれるまでに変化するという流れだったのね。
才悟たちにライダーとしての生き方を示したエージェントの存在を受け入れられるかどうかが、完全に物語の最も重要な分岐点に位置付けられていて、返す返すも我々観客をストーリーの中心に置いた構成になってるんだな。
・慈玄のバク宙、今回はスイッチングの関係で見えにくいけど、披露してるってことは怪我とかではなさそうでひと安心。
才悟とのバトルで現れる戦闘員がやってるのは一回転しきる前に手をつく"バク転"っぽいので、手を付かない"バク宙"をやってのけてる慈玄ってやっぱりすごいんだな……。
こうやってじっくり見返さなきゃ気付けないから、メインキャラの技をすごく見せるためにわざわざ引き立て役としてバク転に留めてる……なんてこともないだろうし。どちらかといえば、脇役がわざわざ失敗する可能性のある大技にチャレンジするのはリスク対効果が悪いってことなのかな? 実際、左から回ってきた戦闘員は階段にぶつかっちゃってるようにも見えるし。
陽真もこの最初の戦闘から、カオスライダーならベルトがあるであろうお腹にキツい一発をお見舞いするバトルスタイルを披露してるのが細かい。
・瞬十は主任戦闘員(マスクあり)のときもカオスライダーのときもスーツアクターさんが別にいるからこそ、この登場キャラ紹介の場面で素顔の状態で出てくることができるし、これによってさっきの戦闘員が瞬十なのでは?という発想に至りにくくなってるミスリードがうまいなぁ。
単なるミスリードってだけじゃなく、終盤だけじゃなくここでもめちゃくちゃ切ない表情見せてくれるし。
・瞬十以外の3人も、主任戦闘員(マント付き)の状態でちゃんと喋ってたんだ……それぞれ誰なのかちゃんと分かるもんだな。
・荒鬼と神威を焚き付けておきながら、そのやる気をまずは散らばったカオストーンを回収して犠牲者を減らす方向にさらっと向けさせるのは、さすがの阿形さんの手腕だなぁ……。
クラス契約のときの「力を証明したければ誰よりもまず仲間を助けろ」もそうだけど、2人の力とまっすぐさをうまい具合に手綱握って、仮面ライダーらしい"善いこと"に導くことにとても手慣れている。
自分自身の復讐心の扱いに普段から手を焼いてるからこそなのかな、この辺は。マッドガイのリーダーはこうでなくちゃ。
・仮面カフェで何かあるのか?と聞かれて、ライブステージのことこんなに嬉しそうに話してたんだな、レオン。
よっぽど力を入れて準備してたに違いない。
・雨竜くんが謝るときのお辞儀がほぼ90度なのが初見のときからちょっと意外で印象に残ってたんだけど、その直前のシーンではそこまで深くないものもちゃんとやってたので、あくまでシーンによって使い分けてるのね。
レオンが雨竜に対して「いい匂い」っていうくだり、最初は戴天と兄弟だからかなと思ったけど、何もしなくてもいい香りがするのはたぶん戴天個人の特徴だったはずなので、雨竜は兄さんのようになりたいと思って敢えて香水をつけてるのかな?
・「ご主人様は興味がおありですか?」の後の拍手が、レオンの動きに合わせて「パンパパパン!」と綺麗に鳴るのが、最初に見たときはめちゃくちゃびっくりして、内心周りにいるのがサクラなんじゃないか……と不安になったりもしたんだけど、この配信の回では「おぉ気持ちいい、ありがとうございます」っていうやや驚いたようなリアクションが付いてたので、見心地が全然違ったな。
あれかな、何回も通ってる人とかがいると、自然とお客全体がそういう風に訓練されていくのかな。
しかし雨竜くん、ただでさえテンション高いレオンに「2部ではもっとテンションを上げていきましょう」は無茶ぶりにもほどがあるよ(苦笑)
・陽真の「事態に驚いて、転んだ人くらいだった」の部分、ゲネプロとか以前の公演ではかなり元気ハツラツな言い方だったと思うんだけど、今回はかなり落ち着いたトーンで初めての人でも聞き取りやすくなってたのが面白かったな。中盤の別のシーンでも、以前見たときより大人しい発声になってる部分があって、役者さんの中でそれが今回の公演のテーマだったのかな?
稽古のときはもちろんだけど、本番も何回もある訳だから、お客さんの反応とかも見つつ色々と試行錯誤してより良いかたちを探してるんだな……すごい。
・ここで慈玄が才悟にかける言葉が「笑うのがイヤだって訳じゃないんだろ?」なのがめっちゃ好きで……。
慈玄もまた、4章 第6話で紫苑から「蒲生くんが喜ぶ姿を見たことがない」と指摘されていて、本人は「志が高いからだ」と説明していたんだけど、その慈玄がこういうことを言ったということは、慈玄本人も別に喜ぶことがイヤだって思ってる訳じゃないんだろうなっていうのが分かって、とても良い。
表情もね、なんて表現したらいいのか分からないけど、見てるこっちの心にまっすぐ届く真摯さみたいなのがあって、良いんだよなぁ……。
・3日分しか見てないけど、荒鬼の「えい……えい……」は毎回違うんだね。初回がたまたまトレーニングにはあんまり見えないものだったから、最初は一体何やってるんだと不思議に思ったけども(笑)
神威が手に持ってるノートは、こちらに見せてくれる日とそうでない日があるっぽい。僕が見た中では、1/23の回だけは見せてくれなかった気がする。
・あー、雨竜は一人で悩みを抱え込みがちなところがあるから、雨竜が気になってたアカデミーの謎は他の学年委員4人で調べてみて、安心させてあげようとしてた……ってことなのかな?
・トレーニングの荒鬼は「1tが100gくらいに感じるぜ」って言ってたのか! ダンベルにきちんと1tって書いてあるのも、こうして映像で見て初めて気づいた。
阿形さんは今回はトゥース!ってやってて、チューチュートレインしながら鬼ザイルとかもそうだけど、彼は意外と既存の何かのモノマネが多いんだなと感じた。役者さんがというのを超えて、阿形自身も案外自分は個性があんまりないんだよなということに若干のコンプレックスがあって、誰かのマネをしてみたりして試行錯誤してる最中なのかもしれない。
瞑想は割と、仏と鬼って近いところにあるというか、金剛力士像とか不動明王とかは鬼の形相しがちなところから引っ張ってきてそうだけど。「仏の顔も三度まで」なんて風にも言うしね。
瞬十みたいなキャラ
・久遠瞬十、どことなく井上敏樹が書きそうなキャラだなという気がしてて、でも別に彼に限らず単によくあるキャラってだけかもしれない。『555』終盤の木場とか、草加もそうかもしれないし、カブキ(響鬼)とか海東純一(ディケイド)っぽさもある。他の人だと光実(鎧武)とか倫太郎(セイバー)とか『BLACK SUN』の信彦的な味もする。
普段はニコニコしてて外面のいい好青年なんだけど、「何か重大な事実を知ってしまった」もしくは「裏切られたと感じた」ことによって道を間違えて、「こうするのが一番いいはず、他の人もいつか自分の正しさを理解してくれるに違いない」と思ってやったことが裏目に出て、後戻りできなくなって悲しい結末を迎えるキャラ。「裏切ったのは自分じゃない、お前らの方だろ? どうして分かってくれないんだよ……!」って苦しむんだけど、主人公はそれでも自分の信念を曲げずにぶつけてくることで、最終的には自分が間違っていたと気付く。
舞台版だけ見てそのニュアンスを汲み取りきれるかはちょっと分かんないけど、カオスイズムという組織は(必要なときは洗脳もするけど)、可能ならば強大な絶望を与えることで自らの意志で組織に忠誠を誓わせる奴らなので。
・瞬十が仮面ライダーというワードをうっかり発してしまうシーン、その直前ではエージェントと執事のレオンについては(冒頭で狙っていたのに)しらばっくれていて、ただうっかりしてた訳じゃなくてきちんと気を付けていたことが描かれてるのもフォローが細かいな……。
・これ円盤で見返せるか分からないんだけど、才悟が「そういえば! エージェントが持つあの不思議な石が……」って喋ってるときに左側から捉えてるカメラが素晴らしくて、才悟が背を向けてる間は「知られてしまったか……」と『DEATH NOTE』の夜神月みたいな冷たい顔をしているのに、振り向いた瞬間スッと表情が変わる瞬十の様子がバッチリと映っててビビッた。
カメラのスイッチングがある配信ならではの見え方でこれもまたすごく味わい深い……。
・レオンの「客席!?」「8列30番です」のくだりが「あぁ間違えました! ご主人様の邸宅で、ご主人様と生配信を視聴していました」にパワーアップしてるのも、2回目ながら感動した。
瞬十のリアクションが「ペラペラペラペラ……!」のときの才悟と同じ「ずっと何を言ってるんだ……?」になってるのも良いし、セリフが被っちゃったから「私は藍上レオンと申します、どうぞ?」ってアドリブ利かせて「トランシーバー!?」って返す瞬十のくだりも、笑わずにはいられなかった。これ会場でみんなが笑ってるの感じたかったなぁ。
・記憶が戻ったシーンで役者さんが咳してて、これ個人的にはめちゃくちゃ嬉しかった。嬉しかったって表現で合ってるのか分かんないけど。
舞台とか映画館とかで、静かにしなきゃいけないのは分かってるのにどうしても咳が出ちゃう……って経験は人生の中で1回くらいあると思うんだけど、自分は結構そういうとき「申し訳ないことした……」って落ち込んじゃうタイプで。
だけど舞台上の役者さんたちって、声を張ったりして僕らよりずっと喉に負担をかけてるにも関わらず、そんな素振りを見せることってほとんどないじゃん? 舞台袖で可能な対策は何かしらしてるのかもしれないけど、それでも生理現象である以上はプロ意識でどうにかするにも限度があるはずで。
だから、舞台の進行を邪魔しないほんの数秒間だけでも咳き込む様子が見られたっていうのは、自分にとってはかなり救われた気持ちになったというか、「悪気がある訳じゃないんだから、出ちゃうものは仕方ないよね」って思えるきっかけになったな。
ガオナクスの正体
・ガオナクスが雨竜に化けていた……という話、設定的にそんなこと可能なのか!?って声がちらほらあって、まぁそもそもガオナ/ガオナクスがどういう存在なのかってまだ全部が分かってる訳じゃないからそういうことができてもおかしくないというのもあるけど、自分としては「カオスワールドって入った者の衣装を変える力がある訳だし、記憶を書き換えるくらい強力な瞬十のカオストーンなら、ガオナクスを雨竜の姿に変えるくらいはできてもおかしくないのかな」と思っている。
そもそもこのカオスワールドは瞬十の願望を元にアカデミーを再現してる訳だし、これまでのカオスワールドでも存在しないまやかしのキャラクターが出てくることはたくさんあったので、むしろ実は彼らは全部ガオナクスが化けてたんだと思ったら、ゲーム版への理解が深まったと捉えてもいい。
あるいは、別に「ガオナクスが雨竜に化けていた」訳ではなくて、才悟たちと共にアカデミーで過ごしたり共に戦ったりしたいという瞬十の願望を叶えるためにカオスワールドがつくった"幻影"が、最初は雨竜の形で、次にガオナクスの形になっただけで、本当は雨竜はもちろんガオナクスもあの場には実在しない……と解釈してもいいし。
槍術の訓練は怪我しないように刃のない模擬的な武器だったのに、剣術で使ってたものでガオナクスを倒せてしまったのも、真剣で訓練してたというよりは、単にカオスワールドが瞬十に都合よく演出してるだけなのかなと。
どっちにしても、アカデミーパートに出てくる雨竜は瞬十の思い出から作られてるのはまず間違いないから、アカデミーを疑ったり千戸瀬数馬と交流したりしてたあの言動そのものは、間違いなく実際の雨竜が取っていたものということでいいとは思う。
・ガオナクスを退治して、みんながカオスワールドから出ようってタイミングで才悟は瞬十の正体明かしを始めるんだよね。
これがカオスイズムの罠だったとしても、とりあえずカオスワールドから撤退するに越したことはなさそうなものだけど、ここで才悟が出ようとしなかったのは、いつもゲストに対してやってるように「カオスワールドを開いた本人を救い出さなければ意味がない」と思ったからなのかな?
結果的には、瞬十がかなり敵対的だったので戦う結末になってしまったけど。
・ここで、一度才悟が「裏切り者はキミだ」って瞬十に刃を突きつけてるにも関わらず、そのあと陽真は「じゃあ裏切り者は別にいるってことか?」と言ってて、あくまでも瞬十がそうだとは最後まで認めようとしてないのがすごく彼らしい。
これも今回の配信ならではだと思うんだけど、仮面ライダーのことは知らないはずだと問い詰められた瞬十の顔に一筋の汗が光って見えるのが、めちゃくちゃタイミングいい。
・「カオスの意志のまま生きれば、苦しまず笑顔でいられるって……あいつ笑ってたんだぞ!」と激昂する阿形さん。配信でじっくり見てて思ったけど、これ後の展開への布石では?
阿形さんがカオスイズムを憎んでるのは親友を目の前で連れ去られたからだけど、殺されたんじゃなく連れ去られたってことは、おそらく瞬十のように今はカオスイズムの戦闘員として働かされているということ。
もしかしたら瞬十と違って、正真正銘洗脳されてるから救ってあげればいいって話になる可能性はあるけど、でも阿形さんの復讐心に葛藤を与えてドラマを作り出すためには、今回のように本人が絶望してカオスイズムに従ってるという設定にした方が都合が良い。
うわー、その未来見てぇ……めっちゃ楽しみだ……。
・さっき言った陽真が声の出し方を変えてたもうひとつのシーンがここで、ゲネプロや僕が数回見たときは「そうだろ? 狂介!!!」だったところが、「そうだろ? 狂介……!」と、やや押し殺した声に変わっている。僕は今回の方が色んな感情の含みを感じて好きかもなぁ。
その後の「クソッ!」が、ちょっと闇を感じさせる言い方に変わってるのも含めて。
・この口論の後でレオンが入ってくるところ、重い対立の後だから観客の緊張を少しほぐすためにコミカルな感じなんだろうけど、僕が見たときは2回ともすごくシーン……としてピリピリと重苦しい空気のままだったからなのか、「パティスリー・モウリノブヒロで買ったスイーツでございます」って小ネタが足されてて、思わず口が緩んだ。
レオンの役者さん、どんだけ気が回るんだ……。
ガオアルか否か
・カオスライダー瞬十(仮)を見て、阿形が「これは、ガオアルなのか?」と言ってたのは今回初めて聞き取れた。"ガオアル"の発音が本編のイメージとちょっと違ったので分からなかった。
カメレオンガオアルと違ってカオスドライバーが付いてるのと、メタ的な対立の綺麗さから考えてもカオスライダーではあるんだろうけど、デザインは多角形をベースにしていて仮面ライダーよりはガオアルに近いという印象も理解できる。
ガオアルは人間がカオスを完成させた際の成れの果てなので、たぶん仮面ライダーと違ってカオスをまるごと使って変身してるせいでガオアルに近い姿になっている……のかもしれない?
カオスに蝕まれてやがて自我を失うっていうのも、卒業試験をクリアできなかった瞬十はカオスライダーとしても不完全だから、そのうちガオアルになってしまうみたいな話でもあるのかも。
・カオスワールドに入って記憶をいじられ、エージェントのカオストーンで記憶の扉が開いた……というステップを踏んでない雨竜が瞬十たちのことを覚えてるということは、才悟たちもこれまでずっと瞬十たちの記憶を奪われてた訳じゃなくて、本当に退学しただけだと認識してたんだね。
今までの回想シーンで存在すら出てこなかったのは、まぁたまたまというか大人の事情というか、そんな目くじら立てるものでもない。
・各クラスがどうやって協力してくれたのかは妄想のしがいがあるよね。
ウィズダムシンクスは元々治安を守るための集団だし、タワーエンブレムもそれに近い目的を持ってるので当然としても、スラムデイズ(特にルーイ)とギャンビッツインには、たぶん高塔エンタープライズが最新ゲームとか最新パチンコの試遊権とかをチラつかせてその気にさせたのかな?
ルーイなんてやる気さえ出せばハッキングなんてお手の物だろうし、高塔がそのために高性能なコンピュータとかを貸し出したら鬼に金棒だろうし。
駆たちは『オーズ』の夏映画みたいに、下町人情で町の人たちにも協力してもらって大人数で避難誘導とかしてそう。
・戦いの余波で後ろの壁にヒビが入っていって、その穴に瞬十が現れる演出とても好き。こうやって本気で気持ちをぶつけ合うことで少しずつ瞬十の心の仮面が剥がれていくっていうのは『ゼロワン』でも描かれてた高橋悠也脚本の特徴で、ヒーローが暴力を振るうことを必ずしもネガティブなものとして捉えてなくて、あくまでも主張をぶつけ合うコミュニケーションの延長線として位置づけてる感じ。
・ホントだ……ホントだすごい……噂に聞いてた「才悟の滴る汗が涙に見える」現象が、まさか配信で見られるなんて……!!! もしかすると見えないだけで本当に泣いてるのかもしれないけど、さすがに雫が落ちるほどではないだろうし。
本当の願い
・「瞬十の願いは仮面ライダーになることじゃなくてみんなと一緒にいることなんだから、やたらと仮面ライダーにこだわってるのはおかしい」って言ってる人を見かけたんだけど、自分は全然そこ気にならなかったな……。
アカデミーで過ごした日々=正義のために戦うライダーを志した日々な訳だし、瞬十はアカデミーの真実を知ったことでその夢を諦めて、みんなもきっとこちら側に来るだろうと信じて、悪の組織の手先として戦うことを泣く泣く決意したんだから。
瞬十は間違いなく、2年間ずっとライダーを志していたし、結果として彼は道を違えてカオスライダーになってしまったけど、本当に彼がなりたかったのは才悟たちのような人を守る仮面ライダーなので。
「わざわざ仮面ライダーと言葉にしなくても分かる」っていう言い方をしてもいたんだけど、初見の人への分かりやすさ重視とかでもなくて、「仮面ライダーとは何か」がこのカメステを通しての大きなテーマのひとつとしてあって、瞬十がその後悔を口にしないと直後の「(洗脳されていたのではなく)自分自身の意志のために戦っていたなら、君も立派な仮面ライダーだ」と認めるくだりが描けない。
あと、これは多分『ゼロワン』で「定義があやふやなまま"仮面ライダー"という言葉を多用すること」に対する批判が多かったという文脈も踏まえた上で、ライダーライダー連呼するのはモヤモヤする、高橋悠也脚本の悪いところが出てるって感想なのかなと思うんだけど、僕はその言説に強く反対していて……。
高橋悠也作品において言葉の使い方がちょっとヘンなのは、彼が根本的に抱えてる言語という媒体への不信感と、その歪さまでひっくるめて人間という存在を全肯定する態度と密接に関わってくるので、ただ"ヘン"で終わらせてしまうのはすごくもったいないんですよ。
ライドカメンズの話じゃなくてただのゼロワンの話になってしまうのでここではしないけど、この話はTwitter上だけじゃなくいつかちゃんとブログにまとめたい。
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ジャスティスライドの解像度が高い
・ユニットシャッフルは「阿形と美形(びがた)とガタガタ」。カメンズが各々ありがとうを言う場面で「ガタガタでもいいよなぁ!?」ってこちらに聞いてくる阿形さんも最高だし、それを受けた紫苑が「ガタガタなのは良くないかもしれないけどバラバラなのはいいんじゃない?」と答えるのも紫苑らしくて良い。
ジャスティスライドって一見ただの良い子たちだけど、なんでもかんでも全肯定する訳じゃなくて、ドラマパートでも一旦才悟の話を信じずに笑い飛ばすというくだりがあった通り、意外と無自覚に辛辣な態度を取るケースも少なくないので。
僕は中でもプロローグ(第3話)を思い出したな。
慈玄が荒鬼のことを「劣等生」って言って、紫苑は「言葉遣いがはしたないよ」とは注意するんだけど「劣等生なんかじゃないよ」とは言わなかったり、陽真は陽真で「ごめんな、為士、松之助! おまえらのことを言ったわけじゃないから!」と、荒鬼が劣等生なことは否定しないどころか、わざわざフォローしたことによって内心2人のことも巻き添えで劣等生と呼ばれてもおかしくないと思ってるのが漏れちゃってるやつ。
実際、その直後には「優等生かどうかってより、まっすぐか、歪んでるか、って感じ?」などと余計なことを言ってまた荒鬼にキレられるという。
1/25回の感想の最後がこの話でいいのかって感じだけど、僕は高橋悠也のこういうトガッたところ大好きなので……。
おそらくアドリブにも関わらず、ここまで正確な解釈で紫苑として発言できるの本当に素晴らしいと思う。怒りを守りたいって動機も含めて、一面的な理解にならないようにめちゃくちゃ深く考えて役作りしたんだろうなぁ。
2/2大千穐楽(16:30)
・高橋悠也の舞台『TXT Vol.2 ID』では、Blu-rayに収録されてるおそらく千秋楽の回でだけ、ラストの展開が少しだけ変わるという演出がなされていたので、カメステも一回だけ見るなら最後の最後の公演にしようと決めて予約していた。
僕が行った回はいつも8〜9割くらいは埋まってるように見えたけど、最終日ということもあり正真正銘満員って感じで、客席の熱もめちゃくちゃ高かった。
『ID』の例があったので、僕はてっきり決定版として今までの試行錯誤の中で一番良かったものを演じるものかと思ってたんだけど、カメステはBlu-rayに収録されるのが東京公演(大千穐楽は限定版特典)だからなのかそうじゃなくて、むしろ最後だからとアドリブも力入れてやりたいことをやりきるような感じだったのが面白かった。今まで見たどの回よりも、時間を贅沢に使ってる気がした。
ドラマシティの方
・レオンは目的地に着きましたよって言ってるけど、僕らはどこに行く予定だったんだろう? 梅田芸術劇場……って訳ではないんだろうし。
カスタム車ですよってとこに「ドラマシティの方」って付け加えるのは相変わらずの達者ぶり。現地に行った人なら「メインホールじゃなくて……こっちか」ってなったに違いないので(僕も15分くらい迷いました)、一気に話を自分ごととして捉えることができるようになる。
円盤で舞台を見てたときは、メタ発言が多いのってストーリーへの没入感をむしろ下げてしまうのではと思ったりもしていたんだけど、生で聞いてるとその効果はばつぐん。思わず笑ってしまうし、周りの人も一緒に笑うので楽しい気持ちでいっぱいになる。
ジャスティスライドが駆けつけたってことは教育地区のどこかなんだろうけど、レオンがエージェントと車で移動してる印象って意外とあんまりないかも。
あ、よく見たら背景が中央公園になってる。エージェント業務でお疲れでしょうみたいなことを言ってたから、仕事で来てたというよりは、息抜きに公園で行われてるバザーかなんかを見に来たとか、そういうテンションなのかな?
・ジャスティスライドが変身したところで、客席にいるレオンがめっちゃはしゃいでたのが可愛かったんだけど、配信でも全景映像にはちゃんと残ってた。
これ以前の公演でもやってたのかな、仮面ライダーばっかり見てて気付かなかった。
・レオンが! マッドガイに混じって決めポーズを取っている!
さっき仮面ライダーを見てはしゃいでたのもあって面白いなって笑いと微笑ましいなって笑いが同時にこみ上げてきた。狂おしいほどの先代への愛情が彼の根幹なので、確かにマッドなガイではある。
ギャンビッツインが加入したことで、レオンを足してちょうどメインキャラが20人になることに最近気付いたので、新キャラが登場するよりも先にまずはレオンが変身するお話が来そうだな……と予想してたんだけど、これ見てよりそう思ったな。伏線とは言わないけど、第3部の匂わせだったりしたら面白いなぁ。
しかも、こういうアドリブをその後のシーンでも拾ってくれるのがいいよね。レオンは特に、毎公演違う話をしてるイメージがある。阿形がレオンのことをメンバーとして認めちゃうのもノリが良くて好き。
・レオンが『Perfect Assistant』を歌いかけるシーン、お気に入りだからこそいつも演出に合わせて伴奏が止まるタイミングで拍手も止めてたんだけど、それが今回は裏目に出てしまった……まさかめげずに歌い続けるなんて! これはこれでまた新しいものが見られて良かった。欲を言えばみんなと一緒に「盛り上がりすぎですよ」って怒られたかった……。
・陽真の「転んだ人くらいだった!」が、元気だったときと落ち着いてたときの中間くらいになってる。なんだかんだこのくらいがちょうど良いかも?
・これは他のとこにも書いた気がするけど、笑わない才悟と笑わせたい陽真の組み合わせは、ロボットだった父親の其雄を笑わせようとしてた或人と同じだよね。
仮面ライダー才悟の元ネタは初代だけじゃなくて、『ゼロワン』に出てくる仮面ライダー1型という説もあるくらいだし。陽真のキャラ造形も、ちょっとだけ無神経なところや黒い部分を秘めたところなんかは、或人的な要素もあるし。
・今回の荒鬼はなんかやたらといじられてたな……神威や阿形にくるくる回されたり、ライブパートでは肉につられたり。現地では笑ったけど、配信で引いて見ると若干気になるかも。
・荒鬼が才悟と言い争ってるとき、紫苑が仲裁しようとしたのを阿形が制して、自分が止めに入ってるのが細かい。荒鬼に対しては紫苑より自分が言った方が効くからってことなんだろうね。
阿形の"鬼"はいつから?
・阿形の章を読み返してたんだけど、カメステを踏まえた上で見ると、舞台版の阿形って意外とテキストに書いてあることは忠実に拾って再現してるんだなと感じた。
記憶を取り戻したこともあり本当の自分とは何なのか、狂介や為士みたいな自分の芯がなんなのか分からないと悩んでたりするのがあの迷走なんだろうし、ただ変身する機会がなかっただけで覚悟はとっくにできてたって話は要するにイメトレだし。
あとは、ちょっとだけ天然の気があるヒビキさんと、気分がいいとおはようミュージカルやっちゃう明日夢くんの要素が悪魔いや鬼合体して生まれたものと見ることもできるのかも……?とも思ったり。
僕は1/13の感想で「この頃の阿形にはまだ復讐心がないので、今と違った見え方になるのは当然」という言い方をしたんだけど、神威が名付けた"鬼"というワードを出していたからこのときの阿形は無意識下で脱走後のことを覚えているはずという解釈を見て、最初は「まぁ鬼って言葉が出てくるのはメタ的な都合だよな」くらいにしか思ってなかった自分の考えがもう少し深まった。
よく考えてみたら、アカデミー時代の阿形って本来の歴史では既に「親友を攫われて何もできなかった」という経験をしているはずで、なんならその時に黒い感情≒鬼に支配されてしまったからこそ、カオスを完成させてライダーアカデミーに入ったという流れのはずなので、瞬十のカオスワールドは実際の回想ではなく時系列的にはゲーム本編を踏まえたものだから……とか以前に、アカデミー時代から既に阿形には「鬼になった経験」があったんじゃんと。そもそも彼が復讐って発想に囚われてしまってるのは「落とし前」を重要視するヤクザ的な実家の影響が強いはずだし。
エピソード全部読み返せたわけじゃないから違うかもしれないけど、少なくとも7章の中で阿形は「神威から言われて初めて自身を鬼だと自覚した」とは言ってなかったはずなので、口にしなかっただけで元から彼の中には鬼のイメージがあったと考えても、矛盾はしないような気がする。
そう考えるなら、マッドガイは神威が「魔法のランプ」で言ってたように、記憶を失くす前と後とで人としての本質はそこまで変わってない人の集まりなのかもしれない。ほぼ真逆になってそうなジャスティスライドとは対照的に、ね。
・なーんて理屈をねじ伏せるように「そうだ、狂ってるのは俺だ!」と新しい振り付けのキュウレンジャーみたいなダンスを披露し始めたのでもはや笑うしかない(笑)
幻徳「お前、相当マッドだよ……」
……てかこれあれか、"変なおじさん"の踊りか! バカ殿なんて僕の世代が本当にギリギリ見てたかどうかくらいなんじゃないか……?と思ったけど、思ってたより最近まで続いてたんだ、知らなかった。
ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 7章 執念の阿形松之助
ひとりはイヤ!な瞬十
・ふつう、何も知らないはずの立場にいるキャラであっても、物語の謎に関する推察というのは視聴者を混乱させないためにも大抵当たってるものだと思うんだけど、レオンはこのとき「犯人は、わたくしたちの身近にいるのかもしれません」と言ってるのよね。
そしてこの時点では、レオンは瞬十とはまだ(戦闘員としてを除けば)出会っていないので、"わたしたちの身近"という表現は、かなりミスリードを誘うものになっている。
作者のミス、あるいは言葉の綾……という身も蓋もない解釈を除くと、考えられる可能性は2つな気がする。
1.レオンはカオスイズムと通じているので、才悟を勘違いさせて瞬十から疑いの目を逸らそうとしていた
2.レオンはカオスイズムと通じているので、瞬十のことも身近と言えるほど知っていて口が滑った
その後のシーンでは、瞬十が犯人であるということを確定させるような発言(雨竜はカオストーンを拾ってないのでは)をしていたんだけども、こういう矛盾はすべて「二重人格だから」で説明できちゃうんだよな……。
・自分にとってレオンは、浄と同じで腹の中を探ろうとすることがキャラ解釈として楽しい、というフェーズに完全に入ってしまってるので、今回のアドリブ合戦もそういう視点でかなり面白かった。
レオンの言う"こちらに来て"というのが、あくまで何も知らない才悟の同級生として振る舞おうとする瞬十に対して、カオスイズムとしての本来の目的を忘れるなって話に聞こえるし、「ひとりはイヤだから!」って才悟を道連れにしようとする瞬十がさ……これだけ素直に彼が寂しさや心細さを口にすることって劇中ではなかったので、あやうくこのギャグシーンでも泣くところだった。
メタ的な視点を持つこと(作中世界にとっての現実を一種の虚構だと認識すること)を"悪"の比喩として捉えるのは『ジオウ』の文脈で、視聴者に話しかけてくる語り部だったはずのウォズが実はクォーツァーという悪の組織の手先だった……っていうギミックを、今回のレオンはかなり彷彿とさせるんだよね。
ゲーム版においても、仮面ライダーがエージェントを信用して打ち明けてくれた情報が、ちゃっかりレオンにも共有されちゃってるという描写が何度もあって、それもすごくソウゴとウォズの関係に近いので。
・順序が逆になったけど、この大千穐楽では瞬十に対する解釈がまたひっくり返ったのよね。もしかしたら彼は、ピアスには「仮面ライダーに成り下がった五期生を、今度こそカオスライダーにするため」と言っていたのかもしれないけど、実は逆で「退学してカオスイズムに成り下がってしまった自分が、今度こそ仮面ライダーになるため」に卒業試験を再現してたのかな……と。
よくよく考えると序盤でエージェントを狙っていたこと等と矛盾する部分もあるんだけど、恐らく瞬十自身も2つの可能性の間で迷っていたんじゃないかな。彼にとっては「みんなと一緒にいられること」が重要なのであって、それがカオスイズムであるか仮面ライダーであるかは比較的どちらでもいい。だからこそ、エージェントを排除してみんなでカオスイズムになるのと、卒業試験をやり直してしれっと仮面ライダーの仲間入りをするのと、どっちがより確実な手段なのかが分からなくて悩んでたと。
でも、結果的には才悟に正体をバラされてしまったので、しれっと仲間入りする作戦は失敗してしまい、追い詰められてしまったから第二段階の「街を人質にとってみんなをカオスイズムに屈服させる」方法に手を出したという流れ。
そういう発想で見てたから、レオンが瞬十に対して「お前の使命を忘れるな」みたいな態度を取ってるように見えた。かーなーり抽象的というか感覚的な話なので、どこまで伝えられてるか分かんないけど。
最終的に才悟が瞬十にトドメを刺そうとする展開になる訳だけど、才悟は既にこの正体バラしの時点からもう無自覚に、瞬十がカオスイズムから抜けてやり直すチャンスを潰してしまったかたちになるのかと思ったら、すごくやるせなくて……。
瞬十が本当にカオスの意志に支配されてたら、あのまま放置することは結果的により甚大な被害を出していたかもしれないけど、もし彼がまだ正しく生きたいと思っていたのなら、「キミは本当は退学していたはずだ」と真実を明らかにしないままなぁなぁにすることで、もしかするとしれっとそのまま仲間に加入することができた未来もあったのかもしれない。でもその未来は様々なボタンのかけ違いによって訪れることはない。
レオンの本心
・ここでもすごく大きな役割を果たしてるのがレオンで、才悟が瞬十の正体バラしを急いだのは、レオンに「人狼はその正体を暴かない限り人を食い殺し続ける」と誘導されたからなんだよね。
さっきは「瞬十の正体を隠すためにミスリードをした」って解釈してたんだから、今度は正体をバラそうとしててそれじゃまた矛盾するじゃないかって話なんだけど、ここはレオンにとっても多分苦しいところだったはずで。
仮定に仮定を重ね続けてるので話半分で聞いてほしいけど、レオンは同じく「仮面ライダーになれなかった者」「カオスイズムの強大さに屈服してしまった者」として瞬十に自分を重ねていたはず。
つまりこれって、レオン自身の心の叫びなのでは?
当然のごとく、スパイとしては正体を知られる訳にはいかない。でも二重人格になるほど良心の呵責に苛まれているのだから、いっそのこと全て暴かれ、裁きを受けて楽になってしまいたいという葛藤が「人狼とは正体を暴かない限り人を食い殺し続けるもの(だから止めてくれ)」というセリフとしてこぼれ出たように思えてならない。
僕の好みをよく知ってらっしゃる方なら、或いは好みが近い方なら勘付いたかもしれませんが、完全に『進撃の巨人』を念頭に話をしています。スパイ活動のせいで二重人格になっちゃうのはライナーだし、自分自身でも本当の気持ちが分からなくなって吐き出した心情はベルトルトそのもの。
「頼む……誰か……。お願いだ……誰か僕らを見つけてくれ……」のところ、『進撃』の中でも一番好きなシーンなんです……。
娯楽作品なのだから敵に悲しい過去なんて要らない、殺されるに足る理由があってスッキリ殺されてくれればそれで良いと思う人もいるのかもしれないけど、僕は本当に、敵にも共感できるだけの葛藤があって、可能ならその悩みから解放されて救われる物語が好きなんです。
だからレオンにも、今回瞬十がこういう結末を迎えてしまったからこそ、幸せに前を向いて生きていけるようになってほしいし、そうなることを強く信じてるので、ライドカメンズのこれから先の展開は目が離せません。
・完全に余談というかゲーム本編の話になるけど、じゃあレオンはなぜカオスイズムになんか従ってるのかという部分は、まぁピアスの管理下にある七国大学出身だから学生時代から洗脳されてたからって可能性もあるけど、恐らくは人の記憶をカオスにして置くことで、死んだ人をも蘇らせることが可能だから……辺りが妥当なところじゃないかなと思う。死者の復活は高橋悠也作品では度々重要な意味で登場するので。
浄がカオストーンの研究をしてるのもそのためな気がするし、今のレオンはきっと先代エージェントを蘇らせたくて、カオスイズムに協力してるんだと思う。
早くその話読みたいよ……。
・才悟が瞬十の正体を明言したとき、紫苑が変身できないレオンを庇うように動いてるのが細かい。すごく優しいし、でもレオンにとっては悔しいものもあるんだろうな。
・瞬十が「俺たちはみんなでカオスイズムのライダーになるはずだった」って部分で「そして雨竜たち」と言ってて、つまりこれやっぱり今回出てきたメンツ以外にも五期生はいるってことだよね。千戸瀬数馬,白波一,万丈目恒臣の3人や戦闘員になってるBクラスのダンサーさんたちは、既にカオスイズムに下ってる訳だから。
顔素ライダー≠カオスライダー?
・ジャスティスライドには街の平和を人質に取ることでカオスイズムに屈するよう提案してたけど、それはここでマットガイに「力を求めるならカオスイズムに入ればいい」と提案してたこととも繋がってるのか。
・1/13の記事で一口にカオスライダーと言っても色々あるという話をしたけど、少し補足。
1.仮面がなく、顔に模様が入ったライダー
2.仮面ライダーへの変身が不完全なときに一時的に1の姿を経由するもの
3.変身前の顔には模様がなく、変身後は顔前面が仮面で覆われ模様が確認できないカオスライダーラリオフ
4.おそらく3と似たような状態だが、変身前から顔に模様がありカオスライダーではなく"大怪人"と呼ばれる大幹部の変身体
5.髪が露出しているラリオフや、顔の下部が露出している大怪人とも違い、本当に頭全体が覆われているカオスライダー瞬十(ただし唇状の造形はある)
カオスイズムに記憶(≒カオス≒仮面)を奪われたせいで、素顔が露出しているのが先輩たちがなってたカオスライダー(1)で、これは"顔素(カオス)"っていうシャレなんじゃないかと指摘されていた。この人たちは記憶を奪われてる関係上、本人が自分自身の意志で動いてるとは言えなくて、ほとんど自我を失った状態に近いと思われる。だからその間にした悪行の責任を問われることも基本的にはない。
この状態のライダーは、先代エージェントが彼らの記憶を宿すカオストーンを渡してあげることで、本来の記憶と意志を取り戻して更生することができる。
たぶんフラリオが変身してる仮面付きのカオスライダー(3)も、対処法が同じだったことから考えて恐らく似たようなものなのかな。
それに対して今回瞬十が変身したカオスライダー(5)は、"顔素"じゃなくて自分自身の記憶を宿した仮面"カオス"を使って変身するって意味において"カオスライダー"なんだろう。つまり一種の同音異義語。まぁカオスイズムにとってみれば、どっちも同じく自分たちに従うライダーだからカオスライダー、で一貫してるとも言える訳だけど。
そもそも"仮面ライダー"も、さっきの理屈で言うなら「カオスライダーが記憶を取り戻した人」「記憶はないまま形見のカオストーンの光を受けた人」「バベルプロジェクトで人工的に変身能力を手に入れた人」の3種類がある訳だしね。
瞬十は先輩たちと違って、記憶を取り戻して本来の自分自身に戻ったにも関わらず、カオスイズムの手先であることをやめられなかったから、犯した罪の責任を問われて、物語的には死というかたちで最後を迎えることになってしまったと。
てもそれと引き換えに、瞬十(仮面のあるカオスライダー)は自我を失いカオスイズムに操られていた訳ではなく、ガオアルのように我を失った訳でもなく、間違いなく自分自身の願いのために戦っていたので、カオスライダーでありながら仮面ライダーとも呼び得る存在でもあるんだな。
ピアスは「君にしかなれない特別なカオスライダー」と言っていので、洗脳も受けずに記憶を保ったままカオスライダーに変身した前例は今までなかったのかもしれない。
瞬十がその前例を作ってしまったので、これからは本編にも出てきたりしてもおかしくないけど。
・瞬十が変身能力を奪うだけで荒鬼たちを殺そうとしないの、もちろん同期としての情があるからというのが第一だろうけど第二には、そもそもカオスイズムがそういう体質の組織っていうのがあるんだろうな。
ピアスは第1部 1章 第6話で「我々は無意味な殺生を好まない。ただ記憶を消すだけ」と明言していて、このことからもカオスイズムの目的は「記憶を石に変えて永遠に保存しておくこと」なんじゃないかなというのが窺える。
イベント「Search For The STARS」以降、僕はライドカメンズのことを実質『Dr.STONE』だと思ってるんだけど、それはこういう部分に由来してる。
僕らにとっては「瞬十のカオスは時の概念を捻じ曲げる!? なんでそんな力が!?」って驚きがあるけど、カオスイズムにとってはむしろ当たり前のことなのかもしれない。だってそもそもカオストーンというアイテム自体が、人の生きた時間(記憶)を奪う力を持った物体なんだから、瞬十はその力を正しく発現させて若干応用しているに過ぎない。
なるほどなぁ……やっぱりカメステは見れば見るほどライドカメンズへの理解度が高まって楽しい。
・でも他の下っぱ戦闘員と同じで、瞬十はカオスイズムの目的を100%知らされている訳ではないからなのか、能力を奪っても諦めないなら殺すしかないと判断している。
この時点から既に瞬十が「どうしようもない時は殺すしかない」って価値観を持ってることが示されてて、それが最後の選択に繋がってくるんだな。
・この直後に出てくる戦闘員がカリスみたいなポーズ(足を揃えて中腰になり腕を広げる)をしてて、名前がカズマとハジメになってるのは流石に偶然だろうと思ってたけどもしかしてアクターさんが小ネタとして入れてる!?と思ったんだけど、これやってる方は万丈目恒臣っぽいので違ったらしい。
白波一は腰を落として、ビシッバシッと型の決まったような攻撃が特徴的な方なので。
・大阪公演でも見られるのかなと言っていた、対峙する仮面ライダー才悟とカオスライダー瞬十の影が壁に大きく映る現象については、しっかりと見られました。1/13の回よりも後ろの席だったのでより見やすかった。
瞬十の最期とすれ違い
・他の方も言ってたので記憶違いではないと思うんだけど、この最終日はピアスにやられた後の瞬十が数秒だけ長くエージェントを守るために立ち向かっていて、自分は『ID』を見てたのもあり「もしかして瞬十生存ルート入る!?!!?」と、本気で期待したんですよ……。
この日は特に見るのが一度目じゃない人も多いだろうから、ここで改めて、瞬十がどうなってしまうのかでしっかり一喜一憂させてくれた役者さんってすごい。
・この瞬十の死に様も、僕の大好きな『令ジェネ』と同じ高橋悠也節が効いててですね……。
瞬十が口にする"みんな"って言葉は、多分あくまでも"同期のみんな"でしかないんですよ。同期と一緒にいるためなら、市民が大勢犠牲になるビルに爆弾を仕掛けていたのが瞬十なので。
でも才悟は素直なので、瞬十の言葉を受けて本当に「みんなの笑顔」を守ろうと決意する。
このすれ違い,勘違いこそが、ヒーローをヒーローたらしめる原動力になるという描き方、これ『ギーツ』でもやってた十八番なんですよ。
人と人とが本当の意味ですべてを理解し合えることなんてないかもしれないけど、そのすれ違いも含めて人間って素晴らしいよねということを描く作家なので。
もちろん、最後の最後で瞬十も「みんなの笑顔」を願える本当のヒーローになれたという解釈でもおいしいと思う。
あと才悟は瞬十以外の同期はきっちりと救ったわけだから、どっちにしてもしっかり約束は果たしてるのよね。
・才悟が契約違反を覚悟の上で戦ったの、つまり『ONE PIECE』で言うところの「俺たちの命くらい一緒に賭けてみろ」みたいな心境なのかなと思うと、彼の中にも既に仲間に対する大きな信頼が芽生えてるんだなと感じられていい。
レオンから「裏切り者が身近にいるかも」と言われて、ジャスティスライドの面々には疑うとかじゃなくて正直に事情を話してたのもそうだし。
ライブパート
・そもそも仮面カフェのステージは期間限定という話だったはずなのに、今回のライブが一般開放に先立ってのものとされてるのはなんでなんだろうと思ってたけど、数日後に行われる超英雄祭が"一般開放"なのかもというコメントがあって目からウロコ。
残念ながら流石にもうお金はないので見に行けなかったんだけど……一般の特撮ファンの皆さんも楽しんでくれると嬉しいな。
・以前の感想では自分をさておいて他のキャラのコールをやるレオンさすがって話をしたんだけど、目立ちたいときは死ぬほど目立つレオンも大好き……。
・毎公演「もっと盛り上がれオラァ!」と煽ってた阿形さんが、僕の見た限りではたぶん初めて「いいねいいねぇ!」と認めてくれて、阿形さんに触発されて恥ずかしがらずペンライト振って楽しむようにした自分としてはなんか嬉しかった。
・あと3ヶ月やって! カメステ2もやって!! 10年続いて!!!
・才悟と慈玄のユニット「Mr.トレーニング」。
神威と阿形の2人は年上組らしいゆったりと余裕のあるダンスだったけど、この2人はやはり全力でキレのある動きを見せてくれたので大満足。
・紫苑はドラマパートではあんまり勝手に喋ったりする暇がないけど、その代わりライブパートで毎度しっかり違うセリフ喋ってくれるので見てて楽しいよね。全編通して、しっかり全員に見どころがある。
・『With My Reason』の"これでおしまい感"に毎回涙を誘われてるんだけど、この日は特に「今日の終わりに〜」のところで感極まっちゃって、やっぱりまたボロボロ泣いてた。
自分普段そんなに涙もろい方ではないはずなんだけどな。
カーテンコール
・「生きてるだけで偉い!」とか「最高・最高・最高!」とか他にも色々良かったところはあるんだけど、今回は瞬十と才悟の話を。
まず瞬十ね。大意としては「瞬十の物語はここで終わって、これからまた託された才悟たちの物語が始まるので、瞬十を振り返るのではなく未来に進んで欲しい」ということを喋ってらして、自分も瞬十のことは大大大好きだしもっと見たかった気持ちもあるけど、それでも彼はこのカメステの中だけで完結していてくれれば良いと思っていたので、うんうんうんと首を振って聞いてた。
今回気になったんだけど、持ち主が死んだ場合カオスってどうなるんだろうね? さっき僕がした妄想では、たぶん本人が死んでもカオスは残っていくんだろうなという気がしてるんだけど、カメステのエピローグではそこに言及するようなセリフはなかったはずなので。
もし死者の復活とかの問題に切り込んで行くんだったら、ゲームの方でカオスから瞬十の人格をコピーしたキャラみたいなのが出てきたりする可能性もゼロではないんだけど……。まぁどっちに転んだとしても僕はライドカメンズについていきます、もちろん。
・才悟から「仮面ライダー好きですか?」と問われて、客席が「大好き!」って返してたのが、まぁライドカメンズの仮面ライダーがってことかもしれないけど、それでもちゃんとみんな仮面ライダーというコンテンツのことが好きなんだなと思って嬉しくなった。僕自身は泣いてたので「大好き……」と絞り出すだけになっちゃったんだけど。
あと最後の「次は君が仮面ライダーだ!」ってセリフ、自分『ヒロアカ』も好きなのでこれもグッときたな。本編中でも、瞬十に向かって才悟が「君を追いかけていたんだ!」って語りかけるところがあって、そこでも勝手に盛り上がってたんだけど。
カメステ自体には続編がつくられたとしても、次は別のクラスが中心になって、もしかすると今回のメンバーは出てこられない可能性もある訳だから(というか大半のキャラは出られなそう……)、次回の仮面ライダーを務める"誰か"に対してバトンタッチしたみたいなニュアンスも感じて、そこも言うなれば冬映画っぽかったな。
というかそう、もしかしたらあるかなと期待してたけど、ここでは続編の発表なかったんですよね……。別に今回なかったから望みがないなんてことは全くないだろうけど、これで最後ですと強調されるのがこんなに辛いとは思わなかった。
「これからも続くであろうライドカメンズ」とは言ってたけど、カメステが続くとは言ってくれなかった!って、なんか突き放されたような感じがしてすごく寂しくなってしまった。
でも、これからもライドカメンズを応援し続けていけば、その先にきっとカメステ2もあるはずだし、全6クラスが一周してまた今回のメンツと会える日もきっと来るはずなので。
役者の皆さん、スタッフの皆さん、本当にありがとうございました! ライドカメンズの面白さを再確認できたのはもちろん、舞台というものの面白さも教えてもらいました。
また次の機会を楽しみにしています!!!
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