やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

クウガへのカウンター『仮面ライダーアギト』 本編感想

アギトを見終えたのでまとめ感想です。各話感想は後ほど。

 


結構面白かった。満足度は10点満点で8.5かな。あ、この数字は相対評価なので、クウガもだけど後から変更するかも。
構成としては3人のメインキャラクターを軸に、ギャグを交えながら謎を追っていく中で人間関係がごちゃごちゃに交錯していくような感じ。

 


 びっくり箱で終わらない謎

アギトと言えば謎、という人も多いと思う。オーパーツに始まり、翔一の記憶、持っていた手紙、あかつき号事件や風谷伸幸殺害事件など、様々な謎が散りばめられていた。エグゼイドを経験してから自分の中で作品の楽しみ方が結構変わり、単純な"情報制限"とでも言うべき謎に価値を感じなくなっている(確かビルド感想で詳しく書いた)のだけれど、アギトはその辺りを少しひねってある。

 

まず、謎の数自体は多いがそれらはほとんどが繋がっているので、「散らかり過ぎて分からない」ということにはなりにくいように思えた。とはいえ今回は大筋を知った上での視聴だったので初見だともっと困惑したかもしれないが。
そしてもう1つ、42話にて翔一が記憶を取り戻すのだが、それがそのままあかつき号事件の真相となっているため、"分からなかったことが分かった"というカタルシスのおかげで感情移入の手助けになっている。ただの"びっくり箱"で終わらずきちんとした意味があることに脱帽した。

 


 複雑な人間模様

前作のクウガは"事件"にフォーカスした作品だったが、今作は人間模様に重きが置かれている。これは多分、井上敏樹氏の作風だろうが、色んな立場の人が色んな目的で場にいることがそのまま作品の魅力となるような感覚。
自分的にとても好感を持ったのは、クウガにはなかった敵対勢力の存在だ。

クウガが基本的に結果へ一本筋であるのに対し、アギトは何に対しても対立するものがある。翔一に対する涼、氷川(を始めとするG3ユニット)に対する北條、アギトに対するアンノウン、そして光と闇……。
悪く言えば"足を引っ張り合っている"となってしまうかもしれないし事実本筋となる話の進みは割と遅いのだが、障害のない達成にカタルシスは生まれにくい。勘違いや妨害を乗り越えた時の爽快さは、クウガではなかなか味わえないものだった。

 

また、人と人が関わるときに生まれるちょっとした"笑い"も見どころのひとつだろう。翔一くんの天然のような少しズレた言動や氷川さんの真面目ゆえの不器用さ、そして欠かせない小沢さんと北條さんの嫌味合戦。
人を馬鹿にする笑いが嫌い(エグゼイドの灰馬とか作さんとか)なんだけれど、そういう不愉快なギャグも少なくて良かった。氷川さんは時々そのきらいがあったけども、基本的には気持ちよく笑っていられた。

 


 役割分担

既に仮面ライダーである男、津上翔一
仮面ライダーになろうとする男、氷川誠
仮面ライダーになってしまった男、葦原涼
というのは有名な文言だが、彼ら3人は互いに補い合うような構成になっている。自分の中で一番しっくりくるのはギャグが主な翔一くん、シリアスが主な涼、両方こなす氷川さんということだろうか。

 

翔一くんは主人公なのだが、序盤は殆ど彼のドラマがない。記憶喪失というのもあるし、あっけらかんとしたキャラクター造形もある。彼が記憶を取り戻してしまうと謎が分かってしまうため、後半までやることがないのだ。
そのためしばらくはG3ユニットvs北條透、葦原vs残酷な運命と言ったドラマが繰り広げられる。形式的には翔一くんが主役だがそれは実際ではなく、アギトをめぐる"人間"の話と言ったほうが近い。

 


 居場所と自己の確立

全体としてはこのテーマが一本の柱となっている。翔一くんは人の居場所を守り、氷川さんは小沢さんと北條さんという親から自立し、涼は「自分が自分である意味」を探す。その果てに人間という種が闇の力と言う神から自立するようなかたちになる。

言ってみれば闇の力って、自分の子(人間)が自分の嫌いなやつ(光の力)の影響を受けたからやめさせようとする過干渉な親で、自分の思い通りに子をコントロールしようとし、その未来を、人生を、狭め"ようとし"てくる。


終盤の"アンノウン保護"という展開は、木野が言っていた「自分の人生を狭くするのは他人じゃない。本当は、自分 自身なんだよ」という言葉をよく表しているものだろう。
人類がそれらを乗り越えてアンノウンを退けた結果、闇の力は考えを改め静観してみるという結論に至る。
なかなか良くできた構成だったと感じた。ただ「46話が最終回」ってのはピンとこなかった。解釈違いってやつ?

 


 ヒーローもの……?

ドラマとしてはそれなりに良かったけど、仮面ライダーのアクションシーンに関しては正直全く評価できない。自分はそんなに気にする方ではないのでいいんだけど、とにかくノルマ感が半端じゃない。警察は毎度アンノウンの不可能犯罪を捜査するものの、肝心のアンノウンは大抵その反応をキャッチしたアギトやギルスが倒すし、G3も捜査の末に追い詰めるなんてことはなく目撃情報が入ったと聞いて駆け付ける感じなので、アンノウンとの戦いに関してはドラマも何もない。"取ってつけたよう"という言葉がぴったりだと思う。

特にアギトは、寡黙で姿勢正しいかっこいいアクションではあるものの、翔一くんっぽいかといえば全く違う。アギトの面を被って翔一が喋ると非常に違和感を覚える。その印象は最後まで拭えなかった。


とはいえ、前作にはなかった挿入歌(ED)が流れるようになったことで、自分としてはそれだけでも大分楽しめた。好きなんだよね、挿入歌。アニメなんかも、澤野弘之さん(ガンダムUC青の祓魔師進撃の巨人ギルティクラウン…)とか林ゆうきさん(ハイキュー‼、僕のヒーローアカデミアリーガル・ハイ、ROBOTICS;NOTES…)とかが音楽担当してるとそれだけで好きになれたりする。自分の中で劇伴は結構配点が高いらしい。

 

 

 

思ってたより褒めてばっかりになったな、本当は半々ぐらいにするつもりだったんだけど。自分でも気付いてないだけで、かなりハマったのかもしれない。
前作は主に"退屈"という印象が強かったけど、今作はその真逆というか、"退屈しない"感じだった。ただ「鳥肌立つほど燃えた」とか「感動して泣いた」とか、そこまでのものではなくて、高い平均点を出してくれる作品、って感じかな。クウガのヒットを受けて制作された割には作風が全く違っていて、よくここまでできたなと。普通成功したことは繰り返したくなるのに、ほぼ真逆のことをやってるからね。
個人的な感覚として、平成ライダーのなかで一番話題に上がらない作品ってイメージがあったんだけど、まさにそんな感じ。無難に良い作品とでも言おうか……。趣味のものの評価って、"良くはないが悪くもない"だとマイナスなんだよね。楽しみたい(プラスであって欲しい)んだし。だから"無難に良い"ぐらいの作品が0地点なのかなぁとか思った。

 

次は龍騎。小説は再構成らしいので後回しで、映画はどのタイミングにするかまた考える。

 

各話感想

仮面ライダーアギト 1,2話「戦士の覚醒/青の嵐」 感想 - やんまの目安箱

劇場版

劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4 感想 - やんまの目安箱

 

前作

独りよがりな意欲作『仮面ライダークウガ』 本編感想 - やんまの目安箱

次作

終わりのない戦い『仮面ライダー龍騎』 本編感想 - やんまの目安箱

 

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