やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

現代の童話『仮面ライダーカブト』 本編感想

面白かった。というとまた少し違うんだけど、いい気分か悪い気分かといえば、悪くない。「君の名は。」を見たときの感覚に近いかな。満足度は7.0ってことで。前にも言ったように相対評価なので、クウガが7から6.5に落ちました。


うーん……「実際にできてるか」はまた別にして、「やりたいこと」が好きっていうか、やりたいことが分かってるから脳内補完をしやすいというか。
エグゼイドのときとは自分の見るスタンスが全然違うことは自覚している。僕は"結果だけじゃなくて過程を見たい"と言っていたけどどうやらそうじゃなくて、"因果関係"があって欲しいみたいな、そういう感じだったのかなって。まだうまく言えないけどさ。
趣味の範囲だし、ダブルスタンダードだとかカタイこと言わないでね。僕が楽しめたんだから、僕は何よりだよ。

 

 響鬼のリベンジ?

序盤のカブトに感じたのは主にこれ。安定して強くて頼れるヒーローとそれを追う加賀美という構図に、技名を叫ぶ演出などのエンタメ性の引き継ぎ、ベルトに限らない小さい変身アイテムの登場とか(ちなみにそれがそのまま武器なのはファイズとの組み合わせ?)、スーツにマジョーラを使ってるらしいのもそうだし、変身する時に波紋みたいなのも広がる。最後にエッフェル塔を見てやっと分かったけど、劇中でちょいちょい映る東京タワーも電波塔なんだよね。電波でテレビ等を放送し、日本中に"影響"を与える。
そして極めつけが12話の「今度うちに遊びに来い」で、これまんま響鬼でボツになったと言われる「もう俺のそばにいても大丈夫だな」だもん。追う者である加賀美が序盤でザビーに、中盤で正式にガタックになることで、響鬼のときにあった「明日夢パート要らなくない?」という感覚もなくなり、きちんと"仮面ライダーの物語"になっている。


 エンタメ

カブトはとにかくかっこいい。デザインはもちろん、クロックアップの戦闘シーンも雨や花びらが静止するなどの演出がオシャレだし、いわゆる"天道語録"も、演じる水嶋ヒロさんの出す雰囲気が相まってなんとなく説得力を感じてしまう。よくよく考えると「ん?」ってセリフも多々あるけどね。
ギャグ描写もかなり多く、たまにやりすぎだと感じる面もあったものの、基本は"楽しんで"見られる。

 

で、大事なのが、それがおそらくテーマとなっていること。
一番わかりやすくそれを示したのは蓮華の存在で、彼女は当初三島(後にラスボスとなる)のもとで、「うまさは罪」という信念を持ち、淡々と与えられた役をこなす禁欲的なキャラクターだった(描写が少なくてあんまりそういうイメージはないが、多分そのつもり)。その後 天道のつくったオムライスを食べて食の喜びを取り戻し、ギャグキャラになる。
それまでも食事のシーンはとても多かったが、お世辞にはマナーが良いとはいえないことに自分は疑問を抱いていたんだけれど、禁欲の反対としての食事描写だったとするなら、むしろ少し汚いくらいの方がしっくりくるなと。


 神秘的

これは主に劇場版の影響で感じたことだけど、神話がモチーフとされているような描写がいくつか散見された。
ひよりの出生について、ワームの繁殖方法は謎だが、それにしたって「妊婦に擬態したら胎児までできた」というのは流石に無理があるような気がしていたんだけれど、これを設定云々ではなく処女懐胎をイメージした"奇跡"だとするならば、納得がいくような気がしたんだよね。
そう考えると、矢車が影山を殺したのもカインとアベルに重ねた展開に思えたりしないこともなかったり……。
またひよりが消えて大変なことになっている終盤に突然差し込まれた、樹花の学校での「消えた合唱部と呪いの鏡」のエピソード。あの中に出てくる「通りゃんせ」の歌詞がカブトの要素と色々繋がったりするんだよね。
各話感想にも書いたんだけど、"天神様の細道"はまんま天の道だし、"七つのお祝い"ってのも、カブトは平成ライダー7作目だったり、渋谷隕石も7年前だったり、日下部総一と加賀美陸によってあの2人がライダーになったことは七光ともいえる。
急に出てきて何度も進化したけどすぐ倒されてしまったカッシスワームも、何かモチーフがあって、そちらを知っていればまた別の見え方をするかもしれない。
とにかく「何か意味がありそう」って感じることがとても多かった。結局その辺は僕の知識不足もあってよくわからなかったんたけど、とりあえず聖書についてはこのあと調べてみようと思った。

 

設定のガバガバさみたいなのって、確かに今作結構それっぽいものが見受けられるんだけれど、なんていうか、そういうことじゃないんだよね。例えば神話とか童話とかって、設定もクソもない……って言うとアレだけど、不思議な世界観じゃん? 夢に近いというか、心象風景みたいな。そういうのって頭で考えるものじゃなくてなんとなく感じるもので、カブトってどちらかといえばそういう作品なんじゃないかって気がする。"童話"がそういう形態なことを思うと、子供向けってもしかするとそういうことなのかもと思ったり思わなかったり。


 ハイブリッド

いつか何かのタイミングで記事にしようと思ってたんだけど、今のところ平成ライダーはルーラーとプレイヤーの2種類に分けることができると思ってるんだよね。
ルーラーというのは、言うなれば審判員(メタ存在)とか、絶対的な正義のイメージ。
対してプレイヤーは互いに対等で、相対的な正義のイメージ。
「ヒーローもの」か「人間ドラマ」か、とも言い換えられる。
ざっくり言っちゃうと、クウガ響鬼前半はルーラー的、アギト〜剣、響鬼後半はプレイヤー的。もちろん一概には言えないんだけど、全体的な作品の雰囲気として捉えると僕としてはそんな風になる。

 

響鬼は"結果的に"その両方の特性を持つ作品になったけれど、カブトはおそらく最初から狙ってそれをやろうとしたんだと思う。
自らを太陽だとし、まるで天上天下唯我独尊とでも言わんばかりの天道がワームという"悪"を次々と断罪していく様は、まさにヒーロー/ルーラー然としたものだが、後半に入り実はそれらは妹を守るための仮面に過ぎず、実際の天道はおばあちゃんという太陽の光を引用し輝く一人のプレイヤーだと分かる。
しかし、ひよりがいなくなっても天道は意外と以前のままなのだ。蓮華、小林、加賀美、剣などの人を励まし立ち直らせる様は、かつての泰然自若としたそれだった。この演じているうちに本当になるというのは、ワームが擬態しているうちに人間の心を持ってしまうのと似た構図で、そういうとこも結構好き。
ひよりを助けられる具体的な手段が見えたことで虚勢が崩れそうになるも加賀美の叱咤で持ち直し、ひよりだけのためではなく「アメンボから人間まで、ありとあらゆる生物(ひより含む)を守るため」に本物の"ヒーロー"となる決意をするという構成になっている。
また結構無理やりではあったものの、最終章で加賀美と天道が対峙するのは、更にメタな視点として"そういうプレイヤーの一人"であるという意味も持っていて、自分でもややこしくて何を言ってるんだか若干分からなくなってきたけど、だからとりあえず言いたいのは、カブトはルーラーとプレイヤーの両面を持つハイブリッドな存在として描かれたんじゃないかってこと。
僕が響鬼に対して「前半と後半のテイストがいい具合に混じれば良い作品になったんじゃ」って思ったのを、やって見せてるように感じた。

 

 

「ついてこれるなら」という歌詞通り、いざ"理解"しようとするとなかなかハイコンテクストというか、とにかく分かりにくい。エグゼイドを見てた時のようにセリフや描写ひとつひとつを気にしてたら絶対にこんな肯定的な見え方はしなかったと思う。まぁ、各話感想ではそうやって突っ込んでることもあるんだけどね。今度エグゼイドを見るときは、できればこういう見方もしてみたい。
でも、深く考えなくても雰囲気で楽しめる……むしろそれをテーマが推奨してる作品だから、割とバランスがいいと思う。
言うなれば"噛めば噛むほど味が出るタイプ"なんじゃないかなぁ。僕は知識が"ついていけなかった"から、まだ「なんとなく深そう」って思ってる段階だけどね。
次は電王か。555のときにも思ったけど、ここでひとつの到達点には来た気がするから、この次何をやるのか気になる。

 

各話感想

仮面ライダーカブト 1,2,3,4話「最強男/初2段変身/俺が正義‼/愛を説く‼」 感想 - やんまの目安箱

劇場版

劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE 感想 - やんまの目安箱

前作

鬼はそと、福はうち『仮面ライダー響鬼』 本編感想 - やんまの目安箱

次作

手繰り寄せ進む『仮面ライダー電王』 本編感想 - やんまの目安箱

 

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