やんまの目安箱

やんまの目安箱

ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

特撮雑談クラブ 第6回「贖罪(小説 仮面ライダークウガ)」

特撮雑談クラブ 第7回「冬季」 21:00〜23:30
ちょうど変わり目なので、季節ネタは押さえておこうということで、冬をテーマにした回です。
仮面ライダーの冬映画は勿論として、冬の風物詩であるクリスマスを扱ったエピソードは少なくないはずだし、年末と正月に成人式なんかも加えて、これまでの振り返りや整理をする時期でもある。バレンタインも一応その文脈で捉えられるかな、自分や相手の気持ちを改めて確認する儀式。
また冬に限らずそこから連想するもの、氷属性のキャラ(凍鬼,レイ)や雪山のシーン(クウガ,剣)、冬の星座といえばってことでオリオン・ゾディアーツ……いっそ白いからフォーゼとか。
慣用句としては"冬の時代"なんてのもあったりして、植物が生らないからだろうけど出歩かずに眠って過ごす動物も多いくらい、"冬を超す"というのは厳しい環境やハードルを超えることの比喩になり得る。特撮における冬の時代(個人的に見てなかった時期とか)を語るもよし、困難を乗り越えるといえばで話を広げるもよし。
ともかく、いつも以上に自由に連想して話を広げてみる回としてやってみようという回です。

同時視聴する作品は『ギンガマン』第一章「伝説の刃」と『キュウレンジャー』Space.30「ヨッシャ!奇跡のキュータマ」の2本にします。時間はいつも通り19:00からです。

02/26 第8回「赤青」
03/05 第9回「数字/名前」
03/12 第10回「武器」 
03/19 第11回「仮面」

特撮雑談クラブ 第5回「邪鬼」

 

第6回「贖罪」

スピーカー:やんま, のーと

第一章「空白」

分業の『クウガ』と兼業の『アバレンジャー

やんま「基本的に今回は『小説 仮面ライダークウガ』の話をできればなと思うんですけど。小説版っていうのは本編の13年後に出版された小説で、舞台もちょうど13年後ということで。また新たなグロンギが現れて、それをどうするかっていう……だいたいの概要はそんな感じなんですけど」
のーと「一応ページ毎にここか面白いとかここが気になるみたいなのはメモして書いてあったんですけど」
やんま「じゃあ話に沿っていきます? 一旦」
のーと「そうしましょうか。全部で五章に分かれてるんで、一章目「空白」から」

のーと「(小説を)書いた荒川さんが、『仮面ライダークウガ』っていうのは五代雄介の話っていうよりかは、五代雄介とか関わることになった人たちの話だよねってことを言ってたから、『小説クウガ』もそういう風な感じで、あなたも五代くんに関わったうちの一人としてってことを言ってたんで、それで回想シーン多めなのかなって。我々は全然五代くんと直接やり取りした訳じゃないんだけど、あたかもそうであるかのようにみたいな」

やんま「みのりっちとおやっさんが結婚式に呼ばれてないっていうのが、なんか僕……考えてみたらそうなんだけど、すごい新鮮というかびっくりしたんですよね」
のーと「一条さんはポレポレのお客として来てるけど、杉田さん桜井さん辺りは来てないからってことなんですかね」
やんま「面識がそもそもないんですよね、考えてみたら。同じ『クウガ』の作品で、結構出てきてる人達なのに、そこで"壁"があるんだなって思ってびっくりしました」
のーと「それこそさっきの五代くんと関わった人の……かもしれないですけど、視聴者として見てるとなんか全員知り合いなのかなみたいな感じに思えてきちゃうけど、実はあんまりそうじゃない」
やんま「そこも、機会をつくって混ぜることもできるはずなんだけど、敢えてしないっていう。"日常"と"警察"を分けるっていうのは。そこは意図的にやったとこなのかなと思ったりして」
のーと「最後の最後まで、雄介が"クウガ"って言ってるのが4号だって気付かないじゃないですか。それやるには、警察の人たくさん来てたら駄目かなって。流石に分かるから。
雄介が、俺クウガとして頑張ってるからとか、クウガだよって言って、"クウガ"が何かは説明しないのいいなって思ってて。クウガがやってることってあんまりいいことじゃないじゃないですか。から、クウガだよとまでは言えるけど、クウガやってるってどういうこと? って言われたらちょっと言えないみたいな、そういう」
やんま「なるほど。なんかしら頑張ってるよってとこだけ認識して欲しいみたいな、分かって欲しいみたいな」
のーと「だから最後の最後まで言えなかったのかなって。あんまりギャグみたいな感じじゃないのかやって、そこは」
やんま「本当に何も言わないのはちょっと耐えられないからポロッと言うんだけど、何とまでは言わない……」

のーと「あと第一章で面白いところ……」
やんま「アマダムが完全に消えるまで戻ってこれないみたいな話があったのも一章でしたっけ。五代がいなくならなくちゃいけなかったのは、グロンギと同じでお腹の中に石が入ってて、超人になれてっていう状態だと、万が一椿が言ってたように"戦うためだけの生物兵器"になっちゃう可能性が0じゃないから、人間の集落に戻ってこれないってことなのかなって思ったんですけど(五代自身の笑顔を取り戻す云々とはまた別に)」
のーと「ちょっと先の話になりますけど、なくなってて欲しいなって思ったものが結局ずっと残ったままで、それが最後の最後で役に立っちゃう……そこにあり続ける限りなくなったりしないし、でもものすごく頼り甲斐のあるものっていうところで、最後の方で原発の話が出てきたのって絶対偶然じゃないなと思うんですよね。郷原/ライオがなんか言うシーンあるじゃないですか、なんかちょっと唐突じゃないですか? あれ。そっか、この『小説クウガ』の世界でもあったんだ、って」
やんま「そうですね。ちょっとドキッとする」
のーと「なんであれがあるのかなって考えた時に、(実加への)煽り以上になんか意味があるとしたら、そういうことなのかなって」
やんま「必要悪っていうか、なくしちゃったら困るけど、でも怖いものって、ヒーローですよね」
のーと「今回のテーマに贖罪っていうのがありますけど、何かひとつふたつ良いことをやったからってそれでオッケーって、まぁそういうパターンもあると思うんですけど、昔やったことがあって、それに対して付き合い続けないといけないねっていうのもひとつあるかなって」

のーと「『アバレンジャー』が『クウガ2』かどうかはとりあえず置いとくとして、『小説クウガ』がちょっと『アバレンジャー』っぽいなっていうのはあるかなって」
やんま「逆にね。今回見た22,23話なんかは本当にまんまで」
のーと「CDの話とドリンクの話をバラしてそれぞれに振ってる感じなんですかね」
やんま「人間を信じるか信じないかみたいな話も……人間っていうか、マネージャーさんが凛を信じるか信じないかみたいな話もあって、表層だけじゃなくてテーマ的にも結構似通ってて」
のーと「井上敏樹とかそうですけど、また同じ話してる……んだけど、これもそのうちのひとつかもしれないですけど、ちゃんとうまいこと『クウガ』に合うような形にはなってますよね。
アバレンジャー』って謎解きっていうか捜査のパートがすごい、なんて言うんだろ……ちょっと良くない言い方ですけど、あのー……ジャリ番チックですよね(高寺さん曰く一人で何役も兼ねると子供番組になるので『クウガ』では"分業"を意識したらしい)。これは全然『アバレンジャー』がひどいって訳じゃなくて。例えばカレー屋にすごい装備があって、すごい機械動かしたらとっとと分かってっていうところは『小説クウガ』ではできないから、『クウガ』らしい一歩一歩積み重ねてみたいな。推理パートというか」
やんま「そうですね、らんるがなんか開発して(トリノイド探知できる)みたいなのはちょっと、うわ急だなって思ったけど」
のーと「らんるが何か開発して、えみぽんかスケさんの方がちょちょっとあれを動かしてみたいな。『クウガ』のおもろいところって、まぁ『響鬼』もそうかもしれないけど、そういうコマい手続きをコマいまま見せてくれるとこなんで、小説でそれがちゃんとあったのはすごい、読み直してみて良かったというか、これが『クウガ』だよなみたいな。クソ短い戦闘の尺も含めて」
やんま「『シークレット・シグナル(作中作)』について実加ちゃんが目を付けて、一回一条さんが、いやそれは考え過ぎなんじゃないか? って否定するところがすごい、"ぽい"なと思って。普通の作品だったらそのまま、それだ! ってなるとこなのに……そこまで一致してたら、もういいんじゃない? みたいな風に思ったけど、そこをしないっていう」
のーと「グロンギと音楽で言ったら、一条さん現役(本編)のときは気付いてそれだ! でやってるとき会ったじゃないですか。でも音楽のジャンルが違かったりとか、ブランクが空いてるとやっぱりちょっと慎重になるとか、あるのかなって。相手はグロンギかどうかも分からないから。ウミヘビの回……」
やんま「ドレミファになってるやつ」
のーと「ベミウだ! もうおじいちゃんだから怪人の名前全然出てこない(笑)」

ザルボはサルか、サボテンか

やんま「特に『クウガ』は元の、名前の由来が分かりづらいっていうか、ホースオルフェノクとかだったら、馬の怪人だなって思えばすぐ分かるけど」
のーと「名前って言ったら、僕は小説に出てくるザルボってやつ。ザルボはサルだろうなって思うんですけど」
やんま「ブログ読みました」
のーと「ありがとうございます。単純にあれですよね、ザとルの間に何か入るとかじゃないから多分サルじゃないかなって思ったんだけど、考えてもしょうがないやって途中で思っちゃって(笑)」
やんま「でも僕、面白く読めたんで良かったです。あのちっちゃくなるやつ(ザルボは極小の生命体を操ってゲゲルを行っていた)の話、サルにしろサボテンにしろなんでそんな能力があるんだろって思ってたので、確かにと思って」
のーと「小説のゲラグって電気……10万ボルトみたいなことしてるし、ライオは火炎放射してるけどよくよく考えたらクラゲとライオンって電気出さないし炎吐かない。だからそれでいくとあれかなって思ったぐらい。
あと、だいたい特撮のサルの怪人って孫悟空がモチーフのやつとかっているじゃないですか。『ルパパト』にもいたし、エックスの初めての回のやつ。とか、ちょっと地味だけど『ゲキレンジャー』にもそういうの(シュエン)がいて、あれは一応ハヌマーンてことになってるんですけど、ビジュアルはモロ孫悟空だなって、分身もしてるから多分そういう感じなんじゃないかなみたいな。クラゲが10万ボルトうって、ライオンが火炎放射するんだったら、サルの怪人も分身するやろぐらいの(笑)」
やんま「あ、今パッと思っただけなんですけど、昨日たまたま友達んちに行ったら多肉植物を育てていて、多肉植物は葉っぱが落ちて、それがそのまま子株っていうか子供になるって話をしてて、もしサボテンもそうなんだとしたら、それも分身っぽいなぁと思ったりもして……サボテンもそうなのかな、ちょっと"多肉植物"としか聞かなかったんで。一応思い付いたから言っとこうかなって。あ、でも花が……」
のーと「サボテンは花が咲きますね」
やんま「花があるなら、種で殖えるのかな」
のーと「Wikipediaを見る限りだと(笑)、種で殖える種子繁殖と、挿し木と接ぎ木ですね。だからあるといえばあるかな……」
やんま「なるほど、じゃあちょっと微妙って感じかな、こっちは。でも孫悟空は確かに分身してたなぁと思って、そういえば」
のーと「毛を吹いて分身するやつ」
やんま「そうそうそう、めっちゃそれっぽいなと思って」
のーと「これはちょっと映画にしてもらわないと分かんないな(笑)」

マイティの赤は血の色

のーと「あと第一章これだけはってところなんですけど、マイティフォームの説明のとき、白から赤に変わる時に……回想のシーンですけど、19Pか。「白かった戦う姿が、今度は赤くなった。まるで全身に血が通ったかのように」……そういうイメージなんだと思って、炎とかじゃなくて。まぁどっちもあるんだろうけど、改めて言われるとそう言われればそうかみたいな。"血が通った"って感じ、そこで初めて雄介のものになったみたいなそういう感じなのかな。グローイングのときは……ミイラ? みたいな感じで」
やんま「虫って血流れてるんでしたっけ? 一応あるのか、体液みたいなのが。なんか白いクワガタはいるけど(成虫というよりは幼虫の白かも)、赤いのっていないから……」
のーと「赤みがかってるくらいですよね」
やんま「クワガタの力だけじゃなくてそこに人間の力が加わってみたいなイメージなのかなって、ちょっと思いました。"クワガタ人間"みたいな」
のーと「改造人間(笑)」

 

第二章「幻影」

深呼吸, 青空, 笑顔

やんま「第二章は、酸素カプセルの事件が杉田さんから持ち込まれてっていう……流れですけど、僕なんで酸素カプセルなんだろうってずっと思ってたんですけど、このあと出てくるリオネルと『SUNNY! 8O'clock GO!(快晴、8時だGO!!)』……凛ちゃんのゲゲルと合わせて考えると、まぁリオネルが"笑顔"じゃないですか、でSUNNYが"青空"……まぁ晴れた空ってことで……」
のーと「あ、"棺"……ですか? あ、いやそれは違うか……?」
やんま「あ〜、それもあるか。僕は酸素カプセルだから"深呼吸"かなと思って」
のーと「あー! 五代くんがよくやるやつ」
やんま「EDでも言ってるし。「深呼吸、青空になる〜♪」って。だから、五代側の要素を全部悪くした感じのイメージなのかなって。全員、今回のやつは」
のーと「そっか、じゃあ僕読み違えてたんだ。3人のゲゲルが五代と関わりあるっていうのは思ってたんですけど、そっか深呼吸ですね」
やんま「多分そうですよね、酸素カプセルってことは。まぁ棺もあると思うけど……今言われて、それもある! と思って。そっかでも、五代は棺には入らなかったか……」
のーと「いやーヤだな、笑顔にさせてくるやつと気持ちよく深呼吸させてくるやつか」
やんま「機械的(物理的)にね、笑顔にして。笑顔……になれば何でもいいって訳じゃないのに。
……で、そのザルボの事件があって、実加ちゃんが出てくるのかな、その後に」

帰ってきたクウガ

のーと「「五代さんが、帰ってきてくれたから」……これウルトラマンが帰ってきたと思ったら全然別人だったっていうのが『帰ってきたウルトラマン』ですけど(笑)」
やんま「あーなんか、話には聞いたことあります。ジャックでしたっけ」
のーと「ウルトラマンジャックっていう初代のウルトラマンによく似てるんだけど、全然違うやつが帰ってきた、番組のタイトルは『帰ってきたウルトラマン』なんだけど」
やんま「あれ人間の世界は同じなんですか?」
のーと「世界観が地続きかどうかは微妙……っていうか……」
やんま「じゃああくまでメタ的に、視聴者にとって"帰ってきた"なんだ」
のーと「そうです……でもそこら辺は割とウルトラ兄弟みたいな話が出てきたりするから、ちょっと曖昧なんですけど、そこは。独立してるのか繋がってるのかっていうのは。
あとウルトラシリーズで言ったら、一条さんのお父さんが暗渠に落ちちゃった人を助けるために命を落としたって話が小説の方でありますけど、『ウルトラセブン』て割とそんな感じだったなって思って。セブン自体は宇宙人なんですけど、地球人の薩摩次郎っていう男が自分の危険を顧みずに人を助ける姿に感銘を受けて、彼の姿を借りて地球で戦ってくみたいなそんな感じなんですけど。一条さんがそういうお父さんの姿を見て……お父さん死んじゃうんですけど、『ウルトラセブン』と違って。そういうお父さんの姿を見て自分もそうなりたいそういう男でありたいって思うのは、なんかそれっぽい感じするなぁって思った。ウルトラマンぽいなって。ヒーローになりたいっていうか」
やんま「そうですね、高寺さんはウルトラマンお好きらしいから……」
のーと「だし、最後のあれも『ウルトラセブン』の最終回がやりたかった『クウガ』はって、言ってるからそういうことなのかなって。荒川さんも多分『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラセブン』『ウルトラマン』好きだと思うし、てか間違いなく好きだし。小説の中でもペガッサ星人の話とか出てくるけど、そういう直で出てくるところ以外にもウルトラっぽいなってとこを探すとしたらそんな感じかなって」

やんま「実加ちゃんが出てきて、本編の2回のエピソード……ペガサスフォームの「信じて」ってやつ」
のーと「7,8話「傷心/射手」ですよね」
やんま「と、42,43話「戦場/現実」のフォローが入って、最初に読んだときすごい感動して。ようやくか……! と思って。8話の時に、結局五代が説得したじゃないですか、実加ちゃんを。実加ちゃんは警察に不信感を抱いてるのに、それを五代くんが説得して、一条さんは最後、生きててよかったって言っただけで終わっちゃったんですよ。だから一条さんからごめんとか、信じてくれなりなんなりないのかなって思ってたから、小説読んで、言ってる……! と思って。ようやく! って。謝らなきゃいけないと思ってたって」
のーと「フルートの時も、すぐ事件が起こっちゃったから話もそこそこにって感じでしたもんね」
やんま「そうですね、あれも……怖くなって、あれも結局五代がフォローしたのか」
のーと「だから一条さんと実加ちゃんが、面と向かってというかガッツリ絡むのは、小説が……初めてではないけど」

やんま「実加ちゃんが今回……さっき『帰ってきたウルトラマン』の話で本物のクウガかと思ったら違うクウガだったって話ですけど、もしクウガが女だったら一条さんは付き合ってたのかみたいな。五代と一条がBL的な文脈で言われることがあるけど、もしクウガになる人が女だったら一条さんはどうしてたのかっていうifの物語でもあるのかなって。
まぁ実加に対しては、責任を取れないからってことで距離を置く感じだったんだけど、もしあれが五代だったらどうなってたんだろう。もし五代が弱みを見せてたら」
のーと「うーん……でもグロンギが出てる以上やるしかないから、もうちょっと重たい話になるのかなって。本編でやってた以上に五代が弱音を吐く感じだったら、一条さんが早く死んじゃいそうな気はしますね。もし五代が、本編のときみたいに大丈夫ですから! できる限りの無理なんで、全然大丈夫ですよみたいな感じじゃなくて、いやーしんどいっすってなってたら、そんなにしんどいんだったら俺が頑張んなきゃって……ってことになるのかな……って」
やんま「じゃあ結局くっつきはしないのか。やっぱなんかそういう、仮に女だったとしてもくっつかないよ、そういう関係じゃないよみたいな意味もあるのかなと思って」

のーと「あと"動く力の塊"みたいな表現は面白いなって思いました、76P。一条ではない何者か……みたいな。これも一条の見た目が変わってる訳じゃないけど、"変身"してるみたいな感じなのかな」
やんま「ここはなんか、映像で伝わりきらなかったところを文章で補完したみたいな感じで、すごい言語化してくれて良かったなって思ったところですね。
僕映像では……血が出てて欲しかったって、感想では言ったんですけど。実加ちゃんが一条さんを怖がる上で、犯人の手元を撃って拳銃を落とすって流れでしたけど、そこでちょっと血が出てたら、実加ちゃんが怖がるのもすごい分かったなと思って。だから本編だとあんまり実加ちゃんに感情移入しきれなかったところがあったんですけど、小説で結構心情を言語化してくれてたから、すごい見方が変わったっていうか、これを読んだ上で見返したらなるほどなって」

 

第三章「天飛」

やんま「三章のまず冒頭は、椿のくだりですね。椿が、フィアット500Fに乗ってるやつ(笑)」
のーと「"これ"……言いそうですよね。椿も、こう言ったら変ですけど椿的キャラになったのってピラニアのビランの回、だから井上先生が書いてる蝶野の回辺りからですけど、荒川先生それちゃんと、井上先生じゃない回でも拾ってますよね。一度そうなったら、そうみたいな」
やんま「面白いなって思ったのかな? それとも仕方なく……なのかな。でもここ(小説)でもやってたら面白いと思ったのかな?」
のーと「これ椿のセリフだなぁ……あの、次のページ。チェリーな女好きからダンディな女好きに進化したそうです(笑) この「失礼なこと言うな!〜夏目くんとつきあえ!」みたいなのを、多分異常な早口で言ってる大塚よしたか(役者)まで見える(笑)」
やんま「「おまえが女に翻弄される情けない姿を見たいんだ、俺は」……これめっちゃ好き(笑)」

のーと「高寺さんイズムなのか荒川さんイズムなのか分かんないっていうところだと、結構腑分けが難しいところがあって、神崎先生の話ってあったじゃないですか。さっき同時視聴で、やんまさんがこれ神崎先生っぽいよねっていうこと言ってて(※1)、『アバレンジャー』は高寺さん噛んでないですよね。
その神崎先生のお話っていうのが、『クウガ』の当時のインタビューの本にも高寺さんのコメントとして載っててっていうのは前の特雑でも話した通りで。そうなるとこれは荒川さん主導なの、高寺さん主導なのってのがちょっと分からない感じがするんですけど、でもよくよく辿ってみると神崎先生の話を書くにあたっては荒川さんの方が結構熱心に取材をしてて、高寺さんがそれにつられる感じ……みたいな、っていう感じだったらしいんで」
やんま「それは知らなかったなぁ……なんかね、説教くさいとこは全部高寺さんなのかなとか思ってたけど」
のーと「実はそうじゃないらしい。だから、これもよくないけど『大魔神カノン』について腐すときは、高寺さんが高寺さんがって言うんじゃなくて、いや荒川さんもホンで参加してるでしょって言わないといけないのかもしれない(笑)」

のーと「贖罪と絡むかどうか自信ないんですけど、贖罪までいかなくても、"負い目を感じる"ぐらいのことって、割とあったりするじゃないですか。普通に生きてても。で、自分が損したときって負い目感じることないですけど基本的に。負い目感じるっていうのは自分がちょっとだけ得したときですよね。悪いね、みたいな。ごめんね、みたいな」
やんま「他人が損しちゃったときもかな」
のーと「桜子さんが准教授になってますけど、割と人文系っていうか歴史系とか考古系で、そういう常勤のポスト得るのって難しいんですよ。まぁ分野によるんですけどこれは。……から、桜子さんも業績があって多分そういうポジションについてて、一条さんも出世のタイミングとかはあるんだろうけど、現場を希望し続けてみたいな感じ。割と警察の人はキャリア順調に積んでって感じじゃないですか、小説では。
それって、まぁ本人たちの努力もあるんだけど、割と五代くんがいたからっていうのもあるのかなって思ってて。だから割とみんなそこそこいいポジションに付いてるけど、五代だけいないみたいな」
やんま「それもあって一条さんはずっと現場にいるんですかね。まぁ元から現場畑の人ではあるけど」
のーと「それはそれでどうしようもないから、今のところやれる仕事をちゃんと頑張ることでやるしかないみたいな」

やんま「改正マルエム法……この法律の話も良かったですよね。本編では警察たちは法律があったから、人間のかたちをしたグロンギを倒すことに、多少罪の意識を感じずに済んだと」
のーと「「改正前の法律にはマジで救われたよな」っていうのが……」
やんま「ホンネ感がすごいですよね」
のーと「前もちょっと言いましたけど、ドルドを撃ち殺したときにホッとしたような感じの杉田さんと桜井さんがいるっていう、あれがすごい怖くてヤだなって思って。あれは本当にホッとしてたんだなって」
やんま「それで言うと一条さんって、冷徹な感じしません? ちょっと。当時から、グロンギはテロとして解釈すれば云々みたいなことも言ってましたけど、杉田さんほど救われた感みたいなのはあんまり感じない……僕は文章からあんまり感じなくて。五代は結構、許せないっていう怒りだったりとか、義憤みたいなもので戦ってるところはありましたけど、一条さんて意外と……冷静にというか淡々にというか、あんまりすごい"許せない!"みたいな熱い感じってなかったなと思って」
のーと「そう……ですね。もしかしたら、警察官になる動機っていうのがちゃんとあったから、この言い方が適切かどうか分かんないですけど杉田さん桜井さんは義憤ブーストみたいなのがないといけないけど、一条さんは別にそうじゃない……」
やんま「あ、そうだ。一条さんの過去って話で言うと、一条さんのお母さんがニコニコマークを書いてたってことで、まんま五代……。五代と一条さんの関係を改めて記述するっていうか、一条さんにとって五代は、まぁ言っちゃうと母親みたいな存在だったんだっていうのがハッキリ言われた訳ですけど。それはなんかすごいしっくりきたっていうか。……これ二章の話かな、さっき言い忘れちゃったんで。
母親のような安心感、「大丈夫!」っていう。母親も確か大丈夫って言ってましたよね、お父さんが事故に遭った時に言ってたのかな」

のーと「育ちの話でいくと、霧島拓くんていたじゃないですか。霧島くんが将来その後どうなったのかっていうのを小説で触れてないの、いいなって思う。別に拓くん、何になってもいいじゃんっていうのもあるし」
やんま「結局神崎先生も出てこなかったですよね」
のーと「神崎先生とか拓くんがこの後どうするかっていうのは、もう『クウガ』ではやらないことなのかなって。そこまでフォローした、それこそ過保護っていうか」
やんま「こないだ言ってた蝶野が出てこないのと一緒の理由……ですよね。"失礼"って」
のーと「蝶野もいい大人なんだし」

クウガ2』として見る『アバレンジャー

のーと「ちょっと脱線しちゃうんですけど、『アバレンジャー』さっきまで見返してたから、その話をしたくてしょうがなくて(笑)
前は全然そんなこと思わなかったんですけど、仲代壬琴/アバレキラーっているじゃないですか。あれ、普通に見たらグロンギのやり直しみたいな感じで、僕もそう思ったし、今回見直してそれが変わることもないんですけど、その一方で、仲代先生って蝶野の要素を全部逆にしたらこうなるんじゃない? って。だから『アバレンジャー』の方が過保護というか過干渉というか、『クウガ』の方が割と蝶野的ポジションの人の自立を信じてる方なのかなって。
まぁもちろんアバレキラーっていうのが、ほっとくと悪いことするやつだから構ってやらないといけないっていうのはあるんだけど、いい大人っていうか成人男性ふたりが、人を信じる信じないで2クールに渡って揉め続けるのってすごいなって思って」
やんま「そんなやってるんだ」
のーと「今すごいネガティブなニュアンスで言っちゃいましたけど、すごい良いところもあって。20話ぐらいかな、レッドの凌駕くんに仲代先生の方から、お前は俺に似ているって言うくだりがあって。凌駕ってすごい良いやつだから、どこが似てるんだよみたいな感じになるじゃないですか。『クウガ』でも同じようなのがあって、一条と五代が似てるっていうの。あれは分かりやすいし、結構早めに回収される感じだけど、凌駕と仲代先生ってどういう感じで似てるんだろうっていうところ……根っこの部分、ダイノガッツを持ってるところとか、どうしても思い通りにならないときに暴力に頼ってしまう、頼らざるをえないとか。色んな意味の重なりがあるし、それがドラマを引っ張ってく力になってるし。一番最後の最後で仲代先生がいなくなっちゃうところで、似てるって言ってくれたこと忘れませんからって凌駕が言うところで綺麗に締まるんですけど。荒川さんは『クウガ2』のつもりで書いてないよって言ってるんだけど、でもすごい、いい『クウガ2』だなと思って。ブラッシュアップされてるっていうか」
やんま「あの人は結局死ぬんでしたっけ、最後」
のーと「最後死んじゃいます。だから今回のテーマ「贖罪」にも絡むんじゃないかなって思ってて。
仲代先生って体の中にすごい悪いやつがいて、そいつのせいで今まで悪いことしちゃってたんですよっていうフォローが入るんだけど、いやそうじゃなくてって。これ全部俺がやりたくてやったことだから、故に責任を取らないといけない。色々言い訳は立つはずなんだけど、そこもいい感じなのかなって」
やんま「引き受ける……背負うの方がいいか」

罪との向き合い方

のーと「贖罪、罪の贖い方っていうのはそれぞれですけど、割と罪の償い方,責任の取り方には色々アリますけど、『アバレンジャー』は割とニュートラルっていうか、色んなやり方を肯定してくれてるなみたいな。
仲代先生はストーリー的にも、物語の設定的にも、あとは本人のキャラクター的にも、自分が最後いなくなって、綺麗に罪を償ってって感じですけど、アバレブラックのアスカと奥さんのマホロは、そういう罪の償い方っていうのは許されないんですよ。終盤敵の剣に串刺しになっちゃって、今まで色々……まぁマホロもアスカもすごい悪いやつじゃないんですけど、色々間違いを犯しちゃったところはあって。だからこれでやっと罪を償えるみたいな、すごい良い感じで死ぬのかなって思ったら、イエローがそれは違うでしょって。やっと一緒になれたんだから、生きて何かしなきゃみたいな。だからキラーみたいに死んで責任取るやり方もなくはないけど、生きてこれからやることで挽回していこうとか。まぁ挽回って言い方は変ですけど、そこまで悪いことしてないから。これからやることを重視してやってこうよみたいなっていうところで、どっちかが良いどっちかが悪いっていうことはしてないのが、好感触だなって思いました」
やんま「あ〜。それは……やってることの度合いとかじゃなくてですか?」
のーと「度合いもあるにはあるんですけど……」
やんま「あ、マホロは敵なのか」
のーと「マホロは……どうなんだろ、殺しはやってるか分かんないですけど、微妙ですね。まぁでも一応画面上の見え方としては仲代先生の方が悪いよねみたいな感じに見えますよね。その差はあるかもしれない。
そう考えると、割と『クウガ』は極端かも。本編の当初のアイディアで五代が死なないといけないとか、今回みたいに長いこと失踪してないといけないとか、あとは先代のクウガみたいにずっと人柱してないといけないとか。そこで、一人だけじゃなくてみんなでっていうのが、今回のあれかもしれないですけど」
やんま「僕、第1話の感想で『クウガ』は許しを得ない話だみたいなことを言いましたけど……教会は許しの象徴だから、それを燃やすっていうのは、五代の奮った暴力は許してもらわなくていいみたいなテーマがあるんじゃないかって。だから五代は、自分のやったことの責任をずっと抱えなくちゃいけないし、そういう意味では一条もそうなのかな。法律を言い訳にしてなかったってところはあるのかもしれない、自分の中で。分かんないけど。
あー、これも広がんない話かもしれないですけど、所謂キリストが贖った原罪? 原罪ってキリスト教の話では現代の人間に、男性は労働,女性は出産の苦しみとして罰を与えられてるみたいな話があったじゃないですか。で、こないだツイートもしたけど(※2)、『クウガ』って割と"仕事"の話だなぁと思って、その辺うまく繋がるなぁと。一条さんたちは仕事として、中途半端はできない。きちんと罪に向き合わなくちゃいけないし、五代は仕事ではないけど、義務感っていうところですよね。クウガだから、やらなくちゃって。誰かがやらなくちゃいけないことを、やるっていう……(現代人が食事をする上で"殺し"をせずに済んでいるのは、屠殺を仕事として請け負ってくれている人がいるから、とか)」
のーと「みんな五代にやらせたい訳ではないけど、五代しかいないからやらせないといけない」
やんま「キリストになっちゃうっていう……」

 

第四章「強敵」

やんま「五代くんが夢に出てくる……"夢を追う男"だったのが」
のーと「夢で追われる男に(笑)」
やんま「そうそう(笑) ……あの"夢"って結局何だったんですかね、別に言われてないですよね? 本編では」
のーと「漠然としてますよね。「みんなに笑顔でいて欲しい」っていうのがもしかしたらそれかもしれないですけど……」
やんま「あーそうですね、大道芸学んだりして、楽しませる人ではあったかな」
のーと「もしそれが夢だとすると、クウガってものすごい歪んだ形で夢を叶えさせられてるみたいな感じがしてヤダ。クウガとして戦うことでみんなを笑顔にできるけど、それは別に自分がやりたいことじゃない。細々とした設定の話ですけど、アークルは持ち主の願いを叶えてくれるみたいなってところで、そういうとこ考えるとすごい邪悪だなって」
やんま「うわぁ……イマジンじゃないんだから(笑)」
のーと「え、叶ってるよね? って」

のーと「四章以外のサブタイトル……空白,幻影,天飛,青空は本編になかったけど、"強敵"だけ45話と被ってるのなんでなんだろうなって。これ外してる……天飛なんて露骨に外してる(霊石)のかなって思ったらこれだけ被ってるから、思い付かなかったのかわざとなのか分かんない」
やんま「どういう話でしたっけ、強敵」
のーと「カブトムシの怪人に、ガドルにぼこぼこにされて……って回。もしかしたらなんかあるかもしれないけど、なんもないかもしれない(笑)」

黒目になってしまった実加

のーと「174P辺りから、実加ちゃんの話が続くパート……つらいですよね、これ」
やんま「殴っても殴っても効かなくて……それでも殴るしかなくて……」
のーと「五代くんも多分同じこと思ってたのかなって」
やんま「それを実加が時間差で理解して、理解っていうか共感して」
のーと「共感して、「あんなやつ死ねばいいと思ってたのに、(中略)たまらなくなって……」までいってるじゃないですか。ここまでいったら、もう赤になれそうとか、或いはクウガとして戦うの嫌だとか、そうなってもいいじゃないですか。
でも、次の章の話先取りしちゃいますけど、そこまで分かってるのに、郷原に煽られたら「今度こそ殺す……絶対に殺す!!」まで言うっていう。そう簡単にはいかないですよね。頭では……頭と気持ち両方で分かってるのに……。
こんな極端なケースって僕らの日常生活ではないんですけど、でもスケールを二回り三回り四回りくらい下げたらありますよね。こういうのは良くないんだよって分かってはいるけど、でもどうしても……って。
クウガ』本編の中だけで言っても、「でもこうしたらこうくるかもしれない」とか。奈々ちゃんのところ(衝動/抑制)。あれはことの重大さとか、そもそもクウガに変身できるできないのところはあるにせよ…………あーでもあるにせよって言ったらいけないのかな? やっぱクウガに変身できる、暴力を振るえる力があるってことが、一線を超えるあれになるんですかね?」
やんま「あーなるほど……。基本、普通人が暴力を振るわない理由って、それこそやったらやり返されるかもっていうのがあるからだと思うんですけど、クウガみたいな力を持ってると、やったらやったきりになっちゃう可能性があるじゃないですか。それってすごい怖いことだなと思ったりして。一時的な感情の高まりでやっちゃって、もうそれは取り返しがつかないっていう……人間同士だったらごめんねで済むかもしれないけど。
……あれですね、実加は変身自体が2回……3回目だったからっていうのもあるのかな?」
のーと「えっと……遺跡で1回目?」
やんま「あーそれもあり得るか、目撃されたときのを僕は1回目に数えたんですけど」
のーと「あぁそっか、ザルボのときで1回。でクラゲで2回、ライオンで3回なので3回目ですね」
やんま「五代はずっと嫌な感じを味わってきたからあれだけど、実加はまだその積み重ねがなかったから、一時的な感情で乗り越えちゃったのかなって」
のーと「そっか、五代が踏んでるステップを別に踏んでる訳じゃないのか」
やんま「警察の人ともね、連携してる訳じゃないし。一条さんだけが繋がりだったのに……あと杉田さんか。一条さんには、一番大事なところでうまく頼れなくてっていうか……ちょっと飛んじゃうんですけど、あのシーン僕すごい好きなんですよね。実加が一条さんに慰めてくださいって言うとこ。で一条さんがそんな無責任なことはできないって言って遠避けるんだけど、最後の実加が闇落ちっていうか、クウガだって分かったところか。あのときもっと話を聞いてあげてれば……みたいな(「なぜ気づいてやれなかったのか。なぜ抱きしめてやれなかったのか。無責任だろうと何だろうと、強く抱きしめて一晩隣にいてやれば、彼女は冷静になれたのではないか。(中略)俺は何度同じ後悔を繰り返すのだろう……!?」)。
あの後悔がすごい……なんて言うんだろうな。無責任だからできないじゃなくて、もう責任を取る、やるしかないんだっていう決断? をする……ちょっと嫌な言い方をすると"男気"というか(文脈から性的なニュアンスが付きかねないのが嫌だったけど、単純に決断力とか責任感みたいな意味)」
のーと「私なりにきちんと関わりますってセリフもつらいな……中途半端はしないってことですから」
やんま「これね……自分を追い込んじゃう感じですよね……」
のーと「あと、その後のページで実加のお母さんが亡くなられてるっていうところがありましたけど……262Pですね、「三年前くらいにお母さんが亡くなられましたよね?」っていうところで、実加はもう本当に独りだったんだなと。本当に独りになっちゃったのと同じタイミングで、クウガになった……だから新しい寄る辺を見つけたみたいな感じにもなっちゃってたのかなって。もうお父さんはダグバに殺されてて、お母さんもいなくて、一応警察官として一条さんに憧れてっていうのもあるけど、なんかそれは遠い存在で。ってところでタイミングよくクウガになっちゃって。
響鬼』のあきらっているじゃないですか。あれと小説の夏目実加ちゃんがすごい似てるなっていうのは、いずれまとまった文章にしようかなって思ってるんですけど、自分の周りにいる親とか親戚みたいな親しい人がいなくなっちゃったときに、自分のアイデンティティっていうかをどうにかするもののなかに、渡りに船みたいな感じでハマっちゃったのかなみたいな。実加の場合は新しいクウガだったし、あきらの場合は鬼だったし。まぁそれは元からあったものだけど」
やんま「やっぱクウガ=五代だから、五代さんがそばにいてくれるみたいな……だから安心できるみたいなニュアンスも」
のーと「五代と、おんなじになる。でそれだけなら良かったけど、復讐の相手が来ちゃったもんだから」
やんま「やることができちゃった」
のーと「別にクウガであることっていうのはそれ自体はなんも特別なことがないっていうか、別に変身しなかったら石も変わんないし」
やんま「そうですね、意志を持ったから……グロンギを倒さなくちゃっていう」
のーと「……200P辺りから読むのが本当に辛いな……特撮絡みのやつでノベライズとか読むのあったけど、『小説 龍騎』の次くらいに嫌やなこれ」
やんま「自分が追い詰められて、加害者側にまわっちゃうっていう」
のーと「さっき言った渡りに船の話もこれかなって思います。実加の場合はクウガで、お母さんの場合はグロンギだっただけみたいな。大して変わんないのかなって。
あと、これやんまさんが言ってたんでしたっけ。そんなに悪いことしてない……非行少女……? なんでしたっけ」
やんま「僕……が言ったのはあれかな、タトゥを入れるのを嫌がったぐらいのことを理由に、お母さんを責める……非行少女も改心しようとしてたのにって実加は言うけど、でもその子、母親が死を考えるくらいDVしてたんでしょ? っていう」
のーと「あぁそっか、逆だと勘違いしてた」
やんま「そう、だからお母さん本当につらい……。でも、だから多分そこで責められるってことは、椿の(蝶野に対する)叱咤もそうですけど、人間の中の弱さっていうのが『クウガ』の中の敵っていうか。のーとさんの説だと、グロンギもそういうダグバに脅されてみたいな部分もあるかもっていう話があったけど、だとしたら『クウガ』が割と蝶野みたいな弱い人に厳しいのは、そもそも弱さが敵だから当たり前っていうか、"そういう作品"だったのかなって思って」
のーと「あのー、実加ちゃんがお母さんを責めるところ。今ちょっと思いついたきりなんですけど、自分のメンタルが不安定なときに実加はクウガっていう新しいあれをゲットして、お母さんはグロンギに縋って解決を図るってところで、ちょっと似てるかなって思った……から、実加もなんか薄々そうなのかなって自分のこと思ってるから、ちょっと強めに責めてるみたいな。
人が強い言葉で他人を責めるときって、本当に相手のことを糾弾したいときか、自分にも後ろめたいときがあるときのどっちかじゃないですか。だからもしかしたら後者の方かもって」
やんま「そうですね、そのニュアンスはあるかもしれない……」

グロンギの価値観

やんま「若干戻っちゃうんですけど、凛が人間なんか生きてる価値がないから死んじゃないなっていう、RIN伽部の意味のシーンかな。あれはなんか僕、若干グロンギの言い分というか……とは違うなと思って。"殺す"じゃなくて"死ね"って言い方をしているのが……僕の中のイメージだと、テレビ本編のグロンギは"殺す"なんですよ。なんだけど、凛は"死ね"って表現をしてて。その視点の違いっていうのかな……普通の人間も、自分の嫌な気持ちを発散したいときに"殺す"じゃなくて"死ね"って言うじゃないですか。その感じが、ニュアンスがすごい人間に近付いてるっていうのかな……それとは言いたいことがちょっと違うんだけど。
まず価値がないから死んじゃいなってとこ? 別に本編のグロンギはリントに価値がないから殺してるとかっていうことではないと思ってて、あんまりそんな感じしなくて」
のーと「むしろ点数として尊重すらしてると思う……」
やんま「そうそう。人間に価値がある存在かとかそんなこと考えてなくて……別にウサギを狩る人はウサギは価値がある存在かとか思わないじゃないですか」
のーと「それそのものには、そんなに感じないですよね」
やんま「ウサギがなんか、環境に良い影響をもたらしてるかどうか、悪い影響をもたらしてるから殺して食うとか、そんなこと考えてる訳じゃないじゃないですか。グロンギはそんな深く考えてないはずなんだけど、凛はそういう価値判断をしているっていうのが、なんて言うんだろう。やっぱそれも人間ってことになるのかなぁ? グロンギにしては意外だなって思ったんですよね、それは郷原もそうですけど。
なんか理屈っぽいじゃないですか。本編では「ゲームはゲームだ」で済んでたところが、お前たちには価値がないからとか、「馬鹿は死んでいいんです(270P)」みたいな」
のーと「僕はなんとなくなんですけど、ガドルの考え方をもう一歩か二歩進めるとこうなるのかなって思ったぐらい……。ガドルは戦うリントの戦士、警察官の男だけを殺すっていう……あと殺す価値があるとも言ってますよね。まぁよくよく考えると、ガドルと人間の男性の警察官の力の差って歴然なんで、お前何言ってんだよって感じにはなると思うんですけど。でもガドルの中ではそういうプライドというか、そういう価値の基準がある訳ですよね」
やんま「あーなるほど。そこは確かに郷原の言い分と重なるのか。プライドっていうか、だから力が云々じゃなくて、戦う気概がある戦士ってことですよね」
のーと「気概がある戦士……殺し甲斐がある、殺す意味のある。っていうところで、ガドルぐらいだとまだゲームの的自体に何らかの価値を見出せるぐらいだったのが、長いこと人間社会で生きてきて……まぁ長いことっつってもそう長くはないですけど、少なくとも1年そこらではない期間で観察してるうちに、やっぱこれ的自体にそんなあれじゃないのってことに途中で気づいたんじゃないかな。ガドルとかバダーみたいに、ゲームの的自体に価値を見出すっていうのはまぁそういうやつらもいたけど、でもよくよく考えたらそんなことないじゃんみたいな。っていうところの変化かなって思いました、僕は」

 

第五章「青空」

これから、自分にできることを

のーと「ちょっと飛ばしますけど、一条さんの「クウガに限らず、誰かが特別に犠牲になるべきじゃない。だから力を合わせるんだ(247P)」って……でもできない。「それは必ず可能になると俺は信じてる」……でもできない。
アバレンジャー』のさっきの回もすごいビター、ビターどころじゃない終わり方でしたけど、『小説 クウガ』もそんなに明るい終わり方じゃないですよね」
やんま「うんうん。救いは、ないんだけど……」
のーと「僕は、この話の中だけだと本当に救いがないと思うんですよね。もうちょっと言うと本編の『クウガ』も、すごい名作だって言われてるし僕もものすごくよくできたものだと思ってるんですけど、でも結局五代に全部押し付けてるじゃないですか。
じゃあそうしないようにするためにはどうしたらいいよねっていうやり方はふんわり提示してくれるんだけど、『クウガ』の世界は厳しすぎてそれができてない。できてない話を受けて、できてない話が良くないよねって言うんじゃなくて、その後になんかしてねっていうのは多分俺たちのことなんだろうって思う。
それはもう『クウガ』はメインターゲットは子供だからっていうのはそうなんですけど、あんとき子供だったやつ、若しくは『クウガ』を見てた大人だった人も、見て、改めてこれ読んで、自分のできることとかをしようよねって。そういう感じなのかなって」
やんま「うんうん、なるほど……。
なんかこの小説の終わり方っていうのは、『ジオウ』の剣(ブレイド)編と比べてですけど、剣編は本編じゃできない救いをやっちゃったから、まぁちょっと賛否分かれたところじゃないですか。そういう見方でいくとこの小説は、本編でできなかったことはできないままなんだけど、でも一条さんが「行くなっ!」って自分の気持ちを伝える……そこだけがちょっと変わってるっていうのが、それこそビターっていうか、いい塩梅だなって思ったんですよね」
のーと「そうですよね、バランスですよね」
やんま「救う……解決できちゃったらそれはもう絵空事になっちゃうっていうか、できないからこそこっちに、なんとかしなくちゃっていう問題意識を残すっていうか。解決しちゃったら、安心で終わっちゃうから」
のーと「そうなんですよね。あと最初の方でも原発の話しましたけど、それわざわざ出してるっていうのは、これ2013年に出た小説じゃないですか。震災後の後始末の話も盛んに言われてたときで、『小説 クウガ』の中……まぁ本編もそうですけど、誰かひとりに押し付けるんじゃなくてみんなでみたいな。だけど現実はそうじゃなかったっていう。こんなのが功績になるっていうのは恥ずかしいんですけど、石原慎太郎が死にましたよね。で、石原慎太郎は功罪相半ばする政治家だったけど、震災のときに放射能で汚染されてるかもしれない瓦礫とかっていうのを、どこも受け入れなかったときに東京都は受け入れるっていう鶴の一声、それはいいことなんですよ。いいことなんだけど、なんでそれごときのことが功績なのかって。みんなが引き受けてないってことじゃん。それは瓦礫の処理とかに関わらずなんですけど、震災にまつわることって。2011年に震災があって'13年にこれが出てっていうのは、なんかそういうところも踏まえてるのかなって。
本編の『クウガ』で、こうできたらいいねみたいなことを言って、でも結局現実はそうはなってなくって。そうはなってないから、『クウガ』の続きをやるとしたらこうなるのかなみたいな。……これは本当に言ったら、子供向けの番組なんだからそんな影響力なんてさぁみたいなことを言ったら、それはそれで正論なんですけど、でも『クウガ』って作品は割とその中だったらその後の影響力はあったものだし、高寺さんも荒川さんもそういう枠にとらわれずにこうできたらいいねってものを詰め込んでた訳じゃないですか。だから俺たちは子供向け番組だからって思うかもしれないけど、作り手である荒川さん的には残念だなぁって思うところかあったのかなと思うんですよね。で、残念だなぁって思ったときに、一条さんに新しく行くなって言わせるくらいのバランスはあるんだけど、結局やっぱり駄目でしたねっていうのは、本当にそういうことなんだなって思う。
……だから、もうこれ気持ち悪いファンのあれですけど、別に時期遅くないと思う。今からでもいいから映画とかにしていいと思う」
やんま「それはちょっと変えてってことですか?」
のーと「年齢とかは多少変わるだろうし、さっき西興部さんが共有してくれたブログ見て、映像化は難しいだろうねって、厳しいって言ってるけど、でもさっきの話で言ったらこの本出たってそんな全然良くなってないんだから、別にもっかいやったってバチ当たんねぇだろって思う。あんな『大怪獣のあとしまつ』みたいなカスみたいな映画が出るんだから。
あれ酷いと思う。何が酷いって今回の原発の話が出たからそのまんま行きますけど、『シン・ゴジラ』のパロディですよねあれは。で『シン・ゴジラ』におけるゴジラと、ゴジラの驚異に立ち向かう官僚が何を意味してるかってのは自明のことですよね。そのことなんて分かりきってることじゃないですか、分かりきってることで、『大怪獣のあとしまつ』っていうあぁいうのが出たっていうのは、もう福島のことをバカにしていいっていうメッセージだと思ったんですよ、僕は。そう受け取ったんですよ。
試みとしては、三木聡って監督がいて、『シン・ゴジラ』的なリアリティのある会話劇の部分っていうのを、三木流の脱力コメディみたいな感じにしても面白いものが撮れるよねっていう見込みで企画されてると思うんですけど、それで取り扱うには結構……もうちょっと慎重になって良かったはずだと思うんですよ。バカにしてるし」
やんま「センシティブな話題ですよね」
のーと「……から、それもヤだなって思った。これ、全然関係ない話になっちゃいましたけど。酷い映画ですよ、酷い映画。あの、あの高寺成紀が怪獣映画なのに怪獣の部分褒めないでオダギリジョーのことしか褒めないっていうのはおかしいですよ」
やんま「そういえば、そうだったな(笑)」
のーと「そういえばそうですよ! 流石にあの高寺成紀と言えど、オダギリジョーと怪獣だったらギリ怪獣の方が好きだと思うよ、それでオダギリジョーしか褒めないのはやっぱりおかしいですよ(笑)
……ちょっとごめんなさい小説の話しましょう、っていうかもう時間なのか」
やんま「そうですね、時間が(笑) あんまり贖罪の方に話を寄せられなかったけど、基本は『小説 クウガ』の話ってことだったんで。贖罪についてはまた罪と罰みたいなテーマを設けてもいいですし、これから先」

 

次回「冬季」

 

※1
神崎「最近、時々テレビを見ていて恐ろしくなってしまうんです。悩んだりなんかしなくていい。もっと面白いものをたくさん買って、面白い場所でお金を使って、何も考えずに生きよう。誰も彼もが、そう言ってるように聞こえてね」

凌駕「そんなに視聴率が大事ですか? 子供たちに、悪魔の番組を見せたいんですか!?」
社長「視聴者は退屈している……刺激を求めているんだ。だからウケればそういうものをつくるしないんだ!」

※2
「戦場/現実」を見ながら
・リントそのものが暴力的に変わったというより、"役割分担"というものを覚えたのでそれぞれの分野については人並外れた特殊性を持つようになっただけ。
板前が平気で魚をさばくのと、警察が暴力を奮うのと、洗濯屋が洗濯するのは、仕事という意味では同じ。"仕事"という概念がリントを変えた。
これ要するに多分戦争に行く兵士と同じで、"与えられた役割"という概念が人を化け物の域にまで突き動かす。多分、個人的な動機や欲望だけではなかなか超えられない一線というものがあるんだけど、義務感はそれを容易にジャンプする。
・激情に任せたものはともかくとして、計画的な犯罪というのも自分で自分に義務を課して、それをこなしている感覚なのではないか。ゲゲルの縛りや人数と同じ、達成するべき"タスク"として。
リストラで仕事を奪われた犯人は、代わりに復讐を自分の仕事に据えてしまった……?