やんまの目安箱

やんまの目安箱

ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

仮面ライダーエグゼイド 第5話「全員集結、激突Crash!」 肯定的感想

第5話「全員集結、激突Crash!」


・「仮面ライダーを消し全人類を乗っ取れば、バグスターが世界の支配者となる!」
これに対しパラドは「力技じゃパズルは解けない」と否定しているんだけど、どういうニュアンスなんだろうね。ただの感染症……ウイルスとして人間を脅かすのではなく、あくまで「バグスターというゲームキャラが人間を攻略するゲーム」という仮面ライダークロニクルのコンセプトを全うしたいということだろうか。
ワンサイドゲームじゃつまらないって話も後々していたし、人間側が何も知らないまま流行病として一方的に滅ぼすのではなく、自分たちの明確な"叛意"を示した上で、抗ったり悔いたりする様を楽しみつつ仮面ライダーとの拮抗した戦いを楽しみたいということなんだろう、多分。
・序盤はグラファイトが力担当でパラドは頭脳担当みたいな振り分けがされてるけど、後のパラドクスは一人で両面を担うキャラなのよね。単純に分業ってことでグラファイトにはできない頭脳労働を担当してるだけなのか、それとも元は頭脳派だったけどグラファイトと一緒にいるうちに好戦的な性格をラーニングしたのかはちょっと気になるな。

 

遅刻と働き方改革

・『令ジェネ』の或人もそうだったけど、主役……それも社長とか医者みたいな結構重要な仕事のキャラが遅刻するシーンなんて、ない方がいいのはもう誰が考えても、どんなバカにとっても明らかなのよ。
他の細かい設定とかについてはまだ「さくしゃのひとなにもかんがえてないとおもうよ」みたいな予測も成立するけど、このシーンについては遅刻することが今回の話を展開するために必要不可欠な要素では全くない以上、"敢えて"入れているという以外の選択肢は有り得ない訳で。
分かってて敢えてやってる人に対して「医者が遅刻なんて!」ってツッコむのは次元が低いというか、何の反論にもなってないので僕はする気にならない。エグゼイドやゼロワンに対する批判は、昔の僕も含めてほとんどこのレベルに留まっていることが多いのでつまらない。
人の体を刃物で刺すのが近視眼的に悪いことなのは分かりきってるけど、それでも敢えて患者を傷つけることで腫瘍を切除したりして、結果的に患者を健康にしたいという目的意識があるから"敢えて"やるのよ。だからもしそれを批判したいなら、まず本人が見据えている目的,意図をきちんと認識して、その上で論を組み立てないといけない。「人を刃物で刺すなんて良くない、何故ならもっといい治療方法があるから」とかね。

或人に対して使ったロジックだと「たまに遅刻してもお釣りがくるくらいには残業などハードな仕事をこなしているのかもしれない」なんかは医者にも当てはまると思われる。研修医がどうかは分からないけど、特に夜勤の人なんかは素人目にも大変そうだなぁと思うし、他の職業なら例えば学校の先生なんかは休憩時間も取れないし勤務時間も長いしでかなり大変な環境だとよく聞く。
そういう現状を受け入れて我慢してしまっては、労働環境は変わらないまま、心身を病んでしまった人は仕事をやめて、また新たな人を雇って使い捨てにするという負の連鎖は終わらない。だからこそ「あんなに遅くまで残業したらそりゃ朝起きれませんよ」ってな風に"無理なもんは無理"だと示して、改善を求めるべき……なのかもしれない。
もちろん永夢がそんなことを考えた上で遅刻してるってことじゃなくて、そういう風刺として敢えて医者が遅刻してしまう様を描いてるんじゃないかって話ね。

他の人はどうか知らないけど、少なくとも僕は大森Pの作品からはこれまでの固定観念とは違う"働き方"を提案する意志を感じるので、全然ありうると思う。例えば、仕事をつらく苦しいものじゃなくてもっと楽しいものにしたい、なったらいいなみたいな理想。『ドライブ』の特状課は私服のオタクがいたりケータイの占いばかり見てる課長がいたり、進ノ介も職場に趣味のミニカーを持ち込んでるやつとして周りからは認識かつ許容されているし、『エグゼイド』は言わずもがな全員が仕事としてゲームをプレイしてて、『ゼロワン』もゆる〜い感じの素人である或人が色んなお仕事の現場を見て「すげー!」って言ってくみたいなのがざっくりした構成だし。アプローチは微妙に違えど、仕事をポジティブなものとして描こうとしてるのは共通してる。キャラが私情を挟みがちなのも従来の仕事観から考えると良くないことなんだけど、仕事と個人の幸せが食い違うときに一方的に前者を優先させていたのがこれまでの社会だとしたら、そこへのアンチテーゼなんだろうなと僕は思っている。
塚田Pの『デカレンジャー』なんかも、仕事だからって完璧にやらなくていい、ミスしてもいいしヘコまず取り返そうみたいな作風だったけど、あっちはそのミスでドラマ自体を回そうとするけど、大森作品はあんまりそういうことを表立ってはやらないイメージ。イズが「滅が死にました」って煽ったせいで迅に殺されそうになるとか、あぁいうのが悪目立ちするくらいには「そんなくだらないミスをドラマの起点にするなよ」みたいなことは多くないような気がする。

 

分離手術と髪の毛デザイン

グラファイトの体をゲームスコープで診察しても、ゲーム病患者と同じ扱いになるらしい。まぁ当然といえば当然なのかもしれないが、宿主の体は完全に消滅したのではなく、バグスターの中に取り込まれてウイルスを増やすための細胞として利用されているのだろう。

基本設定として「レベル1でならバグスターユニオンから患者を分離できる」ということになっているが、そろそろこの辺を作中で明言されてないところまで整理しておく必要がある。
バグスター切除手術というのは、バグスターウイルスに感染した細胞ごと切り取った上で殺してしまおうというキラーT細胞的な発想のものなのか、それとも言葉通りに人体とウイルスを分離するものなのか……その答えはおそらく前者だと思われる。
分離後の患者は半実体とでも言うべき状態となり、バグスターの侵食が進むと触ろうとしてもすり抜けてしまうことが描写から明らかなので、物理的な人間の体……つまり細胞のある程度はバグスター側にも残っていることになる。その細胞を使って自らを増殖させることができるのが"完全体"であって、逆に仮面ライダーが分離した患者の方はおそらく実体のない精神体に近づいていく。
分離手術の肝は本来「バグスターを人間から切り離す」ではなくて、謂わば「バグスターに乗っ取られた体から人間の精神(ゴースト)をサルベージする」ことにあるのだと思われる。分離直後は触れる程度の実体があることからも、なるだけ多くの細胞を患者側に残すのは当然のこととしてあるんだけど、少なくとも精神を構成する最低限の要素を分離するのがレベル1の役割なんだろう。

ここまでの話を踏まえるとようやく"電脳救命センター"という名前の意味がなんとなく見えてくる気がする。
CRはCyberbrain Roomの略らしく、おそらく電脳救命センターとやらを訳して略せばそうなるんだろうなとか適当に思ってたけど、よくよく考えたら電脳救命とは何だ、という話。壊れたコンピュータ(電脳)を治す組織? そんな修理屋さんじゃないんだから。「電脳(による)救命」だったとしても、コンピュータを利用してるイメージはそんなにない。一応ライダーシステムはゲームの力を使ってる以上コンピュータ(電子頭脳)を利用してるんだろうけども、直感的に納得し難いしそんな回りくどい名前付けるか? という疑問がある。

そう考えると『エグゼイド』におけるライダーシステムは、根本的に「最悪の場合は患者の精神をデータ化(電脳化)して、肉体がなくなっても保存できる状態にする」という黎斗の思想に沿った仕様になっていて、肉体を助けることは優先度としてその次になっているんだろう。そう解釈でもしなければ、電脳救命という言葉の意味が分からない。
『エグゼイド』は命の話というよりは自我同一性、精神のデータ化に関する話を取り扱ってるらしいので、そのことを思えば精神が宿っている"脳味噌"を守るための器官だからこそ、ライダーのデザインにことごとく髪の毛があしらわれているのだと考えれば納得がいく。仮面ライダーの仮面……バイクに乗るときのヘルメットとも通ずるし、なるほどなぁ。


・人間態グラファイトに対して治して欲しければガシャットを寄越せと迫る飛彩。まぁ、元々医者もボランティアでやってる訳じゃないのでお金は要求してくるし、タダで治療してやるからその代わりにガシャットを貰うっていう交換条件のつもりならそれほど無茶苦茶って訳でもないかもしれない。泥棒なんかするやつがきちんと働いてて支払い能力が十分にある保証はないし。
「救急搬送されて手術されたけど身寄りもなくてお金を払うアテがない……」って場合どうするんだろうなって昔から疑問なんだけど、それと比べたら先にきちんと取り引き内容を説明してるだけマシかもしれない。まぁ本当にお金がなくて生活保護を受給してるって人は基本的に医療費の自己負担が0円になるはずなので、本当にどうしようもなくなったらその辺の制度使ってなんとかなるのかもしれないけど。
歯医者さん行くとき、毎回いくら払わされるのか分からないからドキドキするんだよね。次回はこういうことをやるのでこれくらいかかりますって教えて欲しい。


・今回からしばらく出てくるこのコラボスバグスターってやつが一体何なのか、本編では説明されてないから当然だけど何周見ても理解できなかった。仮面ライダークロニクルにも全く出てこないしこの序盤にだけ出てくる謎の存在で、本当に最近『ゼロワン』とのコラボ企画である『仮面ライダーゲンムズ ―ザ・プレジデンツ―」を見て初めて「"複数のゲーム病を併発"した場合に出てくるから"コラボ"スバグスターなのか」ってことに気が付いたのよね。今回ならゲキトツロボッツとドレミファビート、次の個体はギリギリチャンバラとジェットコンバットという2種類のウイルスが一人の人間に感染したことによって生まれている。尤も、その『ゲンムズ』においてはコラボスバグスターなんて生まれないんだけど。
頭に挿さったガシャットから力を引き出している以上はレベル3かそれに近い能力を持っていてもおかしくないと思うんだけど、実際はレベル2に割とあっさりやられがちなので微妙なところ……まぁたった1のレベル差なんて後半に行くにつれて有耶無耶になっていくので、単純に生まれたてのレベル3よりは戦闘を経験してるレベル2の方が強いってことなのかもしれん。
ちなみにコラボス素体は通常のバグスターウイルスの3倍強いらしい。

 

シャカリキスポーツ

・前回から登場しているシャカリキスポーツは、先行発売していることからもエグゼイドのテーマ的に重要な位置を占めていると思われる。
根本的にエグゼイドのデザインがスポーティなことは当然のこととして、シャカリキの方は漢字にすると"釈迦力"……つまり仏教に由来する言葉だったりする。
ゲーム要素とも繋がる"遊戯(ゆげ)"という言葉については『ゴースト』のゲンム先行登場回でもう詳しめにした(仮面ライダーゴースト 第4クール 感想)のでここではとりあえず置いとくけど、ともかく『エグゼイド』には仏教を意識してると思われる部分もあるのよ。ゲームはある意味で煩悩から解放されるためのツールだと言えるし、バグスターとして永遠の命を手に入れることは生老病死を克服した解脱の境地だと解釈することもできないことはない、かもしれない。
自分的に一番印象的なのは、VシネでゴッドマキシマムマイティXに変身するときの黎斗が仏みたいな清らかな顔をして合掌するとこ。ネタの権化である黎斗なんてずっと好きじゃないどころか嫌いだったんだけど、顔はいいから黙ってれば綺麗だし清らかだなとか思っちゃうことにイラッとしたのを覚えてる。シャカリキと合掌が仏教繋がりってのは、多分役者の岩永さん的には狙ってやったことなのかな。


・ゲンムの正体はグラファイト人間体だと嘘をついた貴利矢。貸しをつくってまた強請るつもりなのかなとも思ったが、別にわざわざ嘘をつく必要はやっぱりないんだよなぁ。
というか、変身したところを見たってことはその後に黎斗が本当の患者である音大生からバグスターを分離するところも見ていたはずで(だってその後だけ目を離す理由がない)、ガシャット泥棒(グラファイト)=ゲーム病患者ではないということも全部知った上で「ゲンムの正体はガシャット泥棒のゲーム病患者」という嘘をついたことになる。尤も、貴利矢が知ってるのはコラボスバクスター(ゲキトツロボッツ)の宿主がグラファイトではなく音大生の女性だってところまでなので、グラファイトグラファイトでまた別のゲーム病にかかってる可能性は否めない(実際ゲームスコープではそう診断されるし)ことを考えると必ずしも嘘ということではないんだけど。

貴利矢という個人の意図がどうだったかは一旦さておき、作者のレベルで見たときにこの嘘がどういう意味を持つかと考えると、本当にゲンムの正体を知らないまま見ている視聴者視点で現時点での情報を整理すると「ゲーム病患者がゲンムになって自分を蝕むバグスターを守った」ということになる。
通常病気は治って欲しいものだからそれを治す医者は正義足り得るんだけども、人間にも色んな人がいるので、中には自ら病気になりたがったり治るのを嫌がったりする人も存在して、そういう人にとって見ると医者は悪になりうる。単純に、病気の怖さよりも医者の怖さの方が勝つから嫌だっていう子供もいれば、体に悪いから痩せろと言われてるけど食べるのが好きだからやめたくない人とか、病気だと診断してもらうことで色んな人から優しくされたり構ってもらったりするのが嬉しいので治るのは嫌だみたいなミュンヒハウゼン症候群の人もいたりして理由は様々だけど、ともかくそういう"愚行権の行使"っていうのは、割と大森P作品に共通するテーマだったりするのよね。嘘とか勘違いに見せかけて実は大事なテーマを匂わせるって手法は割と他の作品でも見られる。
実際ゲンムの目的はわざと人類をバグスターウイルスに感染させる(敢えて病気になる)ことで、命をデータ化して死なない体を与えようとしてる訳で、無理やりやってしまうのが悪いものの、不老不死という目的自体には賛同する人もいなくはないはず。
医者から見れば愚行でも、本人にとっては何らかの利益があるのであれば、必ずしもその自由を奪うことはできない。

無理やりくっつけるなら、貴利矢が自分の信念に基づいてつかなくていい嘘をついた結果どんどん信用が落ちて孤独になっていくのも、愚行権ってテーマに沿った描写なのかな。


・永夢が「どんなに悪い人でも、命は命です」と言い張るのは、自分も善人であると言い切れないからだったりするのかな。そんなことはないと思うけど、でも"水晶のよう"と言われているからには悪い人を前にしてるときは自分の中に悪い部分が映し出されてることになる訳で。
言わんとしてることは要するに「ヒューマギアみたい」なのかなって思うんだけど。善意をかけられれば善意を返し、悪意を向けられれば悪意で返すって意味で"純粋"なんだろう。

 

人間と機械,データ生命が力を合わせる

・エグゼイド ロボットアクションゲーマー レベル3
ロボット同士が殴り合うSFアクションゲーム……の力を使ってレベルアップするのは、あんまり真面目に考えたことなかったけど『ドライブ』における機械生命体(ベルトさん)とか『ゼロワン』におけるヒューマギアと同じで、人間とロボットが力を合わせることで大きな力を生む……っていう価値観の表れなのかも。時間が前後するけど『人機一体ブットバスター』ってゲキトツロボッツのパッケージ絵と似てる気がする。
またロボットではないものの『デジモンクロスウォーズ』のシャウトモンX3もどことなく似てるのよね。データの生命体って意味で『エグゼイド』は意識しててもおかしくないし、3期に出てくる"デジクォーツ"っていう現実と重なり合う異世界とか、こないだ配信されてすごくハマった『テイマーズ』では「地球を覆うある帯域の電磁波がワイルドワン(デジモン)の情報に従って空気中の元素を急速に凝縮し、量子変換させた疑似タンパク質」がデジモンを現実世界にリアライズさせるって話があって、厳密に理解した訳ではないが何か説得力を感じたんだけど、これはエグゼイドの設定にも応用できるのかもしれない。
デジモンはまぁアニメだし、本当にめちゃくちゃでかいデジモンとかも平気でリアライズするんだけども、バグスターだったら本当に最低ウイルス一粒に必要なタンパク質さえリアライズできれば、後は人間の細胞に感染させて培養,増殖できる訳なので、実現可能性は高く思える。


・「恐ろしいのは、私自身の才能さ」
このセリフ、まぁ正体バレだから印象的ってのもあるんだろうけど、やけに有名な理由のひとつは「何言ってんのか分からない」ことだと思うのよね。
「水晶が砕け散るかもしれない」と忠告しておきながら、ゲンムとして煽りまくって永夢をマジギレさせて……結局彼は何をしたくて、そのために何をしたのがうまくいって喜んでるのか本当に分からない。
「綺麗事ばかり言ってる永夢の本性を暴いてやった!」みたいな気持ちなんだろうか。


まとめ

設定やモチーフ面からテーマを読み解くのは楽しいけど、まだドラマを楽しむってレベルには達してないので、そろそろ本題が始まってくれると嬉しいな。

 

エグゼイド感想一覧

裏面

仮面ライダーエグゼイド 5話「全員集結、激突Crash!」 否定的感想

 

前話

仮面ライダーエグゼイド 第4話「オペレーションの名はDash!」 肯定的感想

次話

仮面ライダーエグゼイド 第6話「鼓動を刻め in the heart!」 肯定的感想