やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

仮面ライダーBLACK SUN 第一話「クモ怪人」 感想

仮面ライダーBLACK SUN』の各話ごとの感想です。

第一話「クモ怪人」※エピソードタイトルは僕が勝手に付けた便宜的なものです

・のっけから髪の毛出しっぱなしで外科手術する出オチ面白すぎる。子供向けのエグゼイドですらやってたことを何故やらない。「大人向けとか言ってるけど所詮リアリティラインはこんなもんなので、フツーに特撮見る気持ちでご覧ください」ってメッセージとして受け取ればいいのかな?
・キングストーン、他にもいくつかあるのか? それとも単に天と海と地の石?
・映画館で上映する訳でもないのに、なんで画面の比率これにしたんだろうね。映画畑の監督にいつもの感覚で構図つくってストレスなく撮ってもらうため、みたいな理由でもあるのかな。

 

敵は内にあり

・ 少なくとも僕みたいな詳しく知ろうともせず冷笑主義的な態度に傾きがちな人間からすれば、「アベ政治を許さない」系の人たちはこの怪人差別派デモと似たような見え方をしている。
「”否定”や”嫌い”を原動力にすると、時に目が曇り行きすぎてしまう」なんてセリフもあったが、主張の根底にあるかもしれない正しさよりも前に、トーンポリシング的な感情が先に来てしまう。
主張の是非についてはこれから勉強していくつもりなので一旦置いとくとしても、『BLACK SUN』というひとつの作品の中において話をするなら、日本でデモと言われてまず思い付くのがそういう方向の人たちであることと合わせて考えれば、ラストの堂波が殺害されるシーンもまた「差別反対とか命の価値はみんな同じみたいな綺麗事を信仰しつつも、こうして悪人が殺されるシーンでスッキリしてしまうんじゃないか?」という視聴者に向けた皮肉とも捉え得るように思う。
少なくとも僕は自分の中に思い当たるフシがあるので、そういう解釈をしておく。
・「ハエみたいについてくんなよ!」と言われて、キレてしまう裕二さん。実際にハエ怪人だったというのが面白ポイントで、やっぱり本人的にもコンプレックスな部分はどこかしらにあるからこそ指摘されたくないという描き方は、割と好きなポイント。
まぁそのハエにたかられてるお前らはじゃあなんなんだって話でもあるんだけど。
・なんかASDだから皆とものの見方違うのか分かんないけど、ヒューマギアがポンコツだからすぐ癇癪起こすのはまぁそういう奴らなんだから仕方ないじゃんって思える反面、人間がデモとか暴動とかしてる描写の方がよっぽど不快感高いんだよな。
もちろん目の前で暴走されたらまた違った気持ちにもなるだろうけど。
・何事においても、どっちが先に手を出したかなんて話はあんまり意味をなさないよね。侮辱や罵倒、怒鳴りつけるなどのよくないことをしてるのはどっちも同じだし。
この『BLACK SUN』における怪人は、描写を見る感じでは個人差もあるのだろうが感情の高まりに合わせて自然と変身してしまうっぽくて、だとするなら「怪人に変身するのは危害を加えようとしているも同然なので正当防衛が成立する」というロジックを適用するためには、「怪人はそもそも怒ってはいけない」という前提を強いる必要が出てくる。
人間はどれだけ怒りに飲まれて汚い言葉を浴びせても変身することはなくて、ただ怪人だけが変身しないように怒りを鎮めて黙らなくてはならない……というのは確かにおかしな話よね。

・初見では単純に鎮静剤みたいなものなんだろうと思ってたけど、ケタミンというのは幻覚を見る用途としても利用されることがある、らしい。
擦り切れてしまって現実の諍いに興味が持てず、虚無的に目先の快楽に甘んじる大人……。

ゴルゴムと堂波首相の繋がりを現実の旧統一教会問題と絡めて語ってる人は多く見かけるけど、本作におけるゴルゴムって怪しげな組織ってだけで別に宗教団体じゃなくて、怪人の人権擁護を目的としたれっきとした政党な訳だから、なんかそれはちょっと違うんじゃないのかなと思ったり。
ツッコむとしたら人を攫って怪人やヒートヘブンにしてるのは立派な犯罪でそれに加担するのは良くない、っていうピンポイントくらいじゃない?
しかしヒートヘブンがなければ1ヶ月も持たないっていうのはなんでだっけ。別に食わなくても生きていけるよね? 一度食ったら定期的に必要みたいな話あったっけ。

・"搾取"っていうのも本作のテーマになってるっぽいよね。創世王からエキス搾り取ったり、光太郎はホームレスから金をむしり取ったり。
葵の殺害依頼を請け負ったりと割とこの時点の光太郎はアナーキストというか、どうにでもなれみたいな投げやりさを感じる。
その葵の両親である川本英夫,莉乃夫妻は怪人民主解放同盟のアナキストとして指名手配されてるらしい。「平成12年 警視庁本部爆破事件」とも併記されていて、本当だとしたらかなりガチで暴力革命的な人ということになる。
思想の正しさみたいなものは存在せず、ただ力の強いものが我を通せるバイオレンスの世界……からの回帰みたいなものがテーマなのかな。

・「お前ら同じこと何百万回も聞くんだな」「いつまで毎日やってんだよそんなこと〜」
この辺の会話かな、初見のとき特に「説明ゼリフだな」って感じたのは。
・俊介の家はみすぼらしいとは言わないまでも狭い路地の古い民家って感じなのに、葵の家は対照的に壁紙とか豪華ですごく金持ちっぽいね。ご飯食べていくようすすめられるけど食べない、というのもね。
・怪人対策火の黒川からデモの許可を貰ってる、というフォローはいいんだけど、こういう何気ない日常会話で井垣のことを悪く言ってるのが、かなり醜悪だなと感じる。怒りに任せた言動も良くないけど、こういう冗談半分のかたちで露出する悪意こそ、いじめとか差別とかと同種の侮蔑感情なんじゃないのか。

選挙カーか何かについて調べたときだった気がするんだけど、学校周辺の地域ではあぁいうメガホン使うようなうるさいことするのは良くない……みたいな話をどっかで読んだことあるんだけど、あれはあくまで選挙のルールに限った話なのかな? 検索しても学校そのものがうるさいから近隣住民は、みたいな話しか出てこなくて分からん。こーゆーときはネットって不便よね。
・人類が生まれるより前、500万年前から怪人がいたというのは、まぁ普通に考えにくいし作中でも否定されてるとは思うんだけど、そもそも日本政府が改造実験で使ってたあの石のルーツは何なんですかみたいなところを辿っていくと実は案外それもひとつの事実で、500万年前からいたというオリジナルの怪人が体内で生成して死してなおも残したあの石たちが現代の怪人をつくっている、みたいな裏設定があったりするのかもね。逆にそうじゃないとしたら、こんなバカげた説を取り上げる意味がよく分からない。
・ちなみにこのシーンで「父が怪人に殺された」というプラカードが掲げられてるので、もしデタラメでないのならという前提でだけど、怪人をここまで抑圧する気持ちも分からんことはないのかもしれない。怪人による犯罪というのはわざわざ主張するまでもなく人々に知れ渡っているから、いつものデモはあそこまで振り切って怪人排斥を唱えられる、それだけでも支持を得られる自信があると。
むしろ、怪人は母数だけで言ったらマイノリティのはずだから、いくら犯罪があるとはいえ件数で言ったら人間が起こすものより遥かに少ないことは少し調べれば分かってしまうからこそ、下手にツッコまれないようあまりそこを大々的にアピールする方法は取ってないのかな。
このシーンで取り上げられてるものも、ただ殺されたって話じゃなくてバラバラ殺人という"猟奇性"の方に重心を置くことで、怪人はやはり事実として気性が荒くて危険な種族なのだということを訴えたいんだろう。

 

差別は正義の影に潜む

・特撮における異種族に対する差別心って、ただ見た目が醜いからいじめてやれっていう次元の話じゃあ全くなくて、「悪いことしたから倒してるんだ」は大いにそうなんだけど、普段は理性で抑えてる差別心が悪行への制裁という大義を得たことで前面に出てしまう、という部分だよね。
現代において外見的な要因でその人への判断を下す姿勢は基本的に「理性で抑えられているのが当然の状態」。何も悪さをしていなかったり、一緒に悪へ立ち向かってくれるような存在に対して「そんな人を外見だけで差別してはいけない」と思うのは当たり前であり、ただその中にも「でも怪人でしょ?」などと不信感を見せる人はあり得る。
殺したいとか、殺さないにしても排除したいとか、そういう心理を指して"差別心"と言っているのであって、普通の人はその差別心を剥き出しに行動したりはしない。
ただ相手が実際に悪いことをしたケースにおいては、その理性によるブレーキが故障しやすい。人間なら許せるはずのことが怪人だと許せなくなったり、制裁の度が過ぎたりする。

例えば『BLACK』22話、子供が予知能力でBLACKが父親を襲うと勘違いして光太郎を道路に突き飛ばして殺そうとするんだけど、それについては特にお咎めなし。「怪人だからじゃなく、人を殺そうとしたから殺すんだ」というなら、この子も殺さないと通らない。
"許さない不平等"というかたちで差別は現出する。
今回BLACK SUNの感想を漁ってて面白かったのが、「怪人が変身して臨戦態勢になるのは、人間で言う銃刀法違反みたいなもんだから、そりゃ罰されて当然だよね」みたいな言い方をしてる人がいて、それはそうなんだけど銃刀法違反で裁判もなしにその場で死刑(射殺)にはならねぇだろっていう。そういう一見正しそう、善か悪かで言えば確かに悪だったという二元論的なものの見方に乗じて、容易にエスカレートさせてしまう。
多分僕が政治家叩きにアレルギー起こすのもその辺が原因で、政策等への不満で正当化しつつ、そのイラストは明らかに容姿までイジってるじゃんみたいな。

・葵も葵だよね。自分が怪人じゃないからって、みんなに嫌な気持ちを与えてまでバスに乗りたくない、居心地が悪いという俊介の気持ちを考えもせず、差別と強く戦うことを強制する感じが。
別に差別的なこと言ってるわけでもなく物珍しそうに写真撮ってくるおばさんにまで、お前の写真も撮ってやるけどいいよな? って喧嘩腰で対応して。
本当に強い人間は許す、なんてことは言わないにしても、世界に向けて中指立てていくことが"強い"ことではないよね。

 

ブラックボックス

・幹部陣からBLACK SUNは死んだと思われていたことも考えると、光太郎は50年間ずっと怪人の力をほぼ失ってて、キングストーンに再び触れたことで力が戻ったみたいな描写なのかな。
そういうことなら、つまりキングストーンの効力が腹に埋め込まなくても触れてるだけで発動するなら、長年持ってた葵にドライバーが出現することもその方向から納得することも可能なのかもしれない。
ただ原作にも「BLACKには謎が多すぎますわ」ってセリフが4話にあったように、ドライバー周りは敢えてブラックボックスにしてある気もする。
・信彦サイドが共鳴した結果鎖が外れるのもご都合主義だなぁと思ってたけど、こっちもこっちで石がないから変身は長らくできなかったところへ、BLACK SUNが覚醒した影響で怪人化する力が何故か戻ったから、鎖も外れて脱獄できたという流れなのかな。
・信彦がヒートヘブンを盗むくだり、なんでこんなに尺取ってるのか全く分からないです。そんなにたくさん持ち出してどうするのっていうか、なんか卑しい人なんだなっていうギャグに見えてしまった。
……後の話を考えるとあながち間違いでもない可能性はあるけど。
・スプラッタって腸好きだけどさ、あんなもんが本当に腹の中に入ってるなんて実感することまずないんだから、見せられてもなんかねちゃねちゃしてて気持ち悪いなって思うだけで痛々しさみたいなのはまず感じないよな。化物語とか。
・仮にも自分を助けてくれたバッタ怪人に対してめちゃくちゃ怯える葵ちゃん。まぁ俊介も似たようなもんだから差別心がどうこうってレベルの話ではないけども。

 

次話

仮面ライダーBLACK SUN 第二話「アネモネ怪人」 感想

総括

受け継ぐものと終わらせるもの『仮面ライダーBLACK SUN』 初見感想