やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

ヘボット! 29話「イインダヨ〜、スゴスゴイインダヨ〜」 感想

毎朝時間をかけて髪の毛をセットしているチギル。誰とのなのかは分からないが、そういう"契り"を交わしたのだと言う。この程度のことはもはや新たな発見という訳でもあるまいし、別に当たり前のこととして流してもいいんだけど、自分にとっての自明が他人にとってもそうだとは限らない。ひょっとするとここで初めて気付く人もいるかもしれない。「こんな大発見しましたどうですか!」ってドヤって既出だったらそりゃ恥ずかしいけど、でも面白いアイディアが広まるのはとてもいいことだと思うので、その為なら自分が多少恥をかくくらいは安いものなのかなと思う。ということなので、僕は基本「そんなの見てれば誰でも分かるでしょ」みたいなこともわざわざ口に出すことがあります。ご承知置きを。

契ると千切るの関連性についても思い当たるものがあって、古く計数や取引に使われていた"符木"というもの。当初は数をかぞえる際に小石が使われていた。これはまだ抽象概念としての"かず"がなかった頃の話で、例えば飼ってる牛の数を比べたいとき、今でこそ「俺15頭」「こっちは20頭」の一言で済むが、当時は牛そのものを玉入れのように1匹ずつ対応させて比べるしかなく、その代案として手軽な小石が使われたのだ。数えたいものと一対一対応させながら石を積んでいき、頭数を比べたいなら例えば数えずとも山の大きさで比べることもできたろうし、頑張れば持ち歩くこともできたかもしれない。ラテン語で小石を意味する単語が現在の計算(Calculate)の由来となっていたりもする。
だがこの方法では数えた結果を長く保つことが難しい。石などそこら中に落ちているから混じってしまう危険もあるし、大きさによっては風で飛んでしまうかもしれない。これは指も同様で、ずっと折り曲げておくのは不便極まりない。そこで生み出された方法が、木の板に線上の傷を付けるというもの。これなら持ち歩きにも便利だ。イメージとしては……例は悪いがリスカ痕みたいな感じだと思ってもらえばいい。
そしてこの手法は、他者と取引をするにもうまく使えた。木版を真ん中で割れば、割れ目と線がぴったりハマる木版のペアができる。すると、手形として利用できる。15頭の牛を売買する契約を結んだとき、木版で15を数えて割り互いに持っておけば、後から受け渡しする際に勘合することができた。代理人に受け取らせることも可能になったことだろう。
"契"という字は圭っぽい形に刀と大が組み合わさっているが、この圭のような部分はまさにいま話題に上げている木版(割符)のことを表している。横にある刀は線を付けるためのものだろうか。大は順当に考えれば人間だ。
以上のことから、"チギル"には単なる同音異義語では片付けられない繋がりがある。

 

明かされたようで明かされてないジル国王の策。疑問点としては、まず何の目をごまかすためなのかと、"仕組んだ"とは具体的にどういうことなのか。前者についてはやはりフィーネ(終わらせるもの)だろうか。後者も普通に考えれば、チギルという子をもうけてナグリと共にこれまで存在を秘していたこととなる。
両者の仮説を立てた上で、それらがどう関係してくるのかという新たな疑問が生まれる。ここについて考えるには、OP後の次元院について言及する必要がある。

まず確認しなければならないのは、次元院でモニターよく表示されている、マンドラ曰く"ネジれたこの世界の図"。これには大別して、螺旋方向が時計回りなもの(15,23,29話)と反時計回りなもの(12,22話)の2種類があるのだ。右ねじの法則というのがある通り、ネジは通常右回り=時計回りで締まる。右手でサムズアップ/ダウンすると、それぞれ親指が進行方向,残り4指が回転方向を示す。現状を見ている感じ、次元ネジに対して奇数話で締めて偶数話で緩めるというスタンスを取っているようにも見える(ヘボット,ペケット,スゴスゴ,ナグリの登場話は全て奇数回)のだが、そもそも螺旋の矢印は常に上、つまりネジが抜ける方向を指しているのよね。一応12話だけ下向きにも見えるんだけど、螺旋のてっぺんで下を指すと言うのはあまりにも不自然なので、これは3次元で映し出されている螺旋を斜め上から見ているが故のことだと捉えて良いだろう。セリフ的にも「だからシメール派は反対しているのに」とあったので、緩めているはず。

次元ネジを緩めるとどうなるかというのは14話の感想で軽く触れたが、ここではもう少し違う視点から見てみたいと思う。"12話"でシメール派が不満を垂れていたということに注目すると、ひとつの仮説を立てることができる。次元ネジ(心のネジ)を締めると世界がきつく≒シリアスになり、尺もギュッと縮まって1クールのアニメになるのではないか。ユルメル主義は50話と時間を長く取った上で、色んな寄り道をしながら少しずつヘボットをレベルアップしていけば良いと考えているのに対して、余計なものは削ぎ落とし、必要なイベントだけをこなしていって最短でレベルアップさせるのが最善だとするのがシメール派なのではないか。どちらもヘボットのレベルをカンストさせることでアレ=フィーネ(おそらく最終回)を防ぐという目的は同じなのだが、そのやり方で対立している。
メタ的に言えば、話数が増えれば増えるほど設定に矛盾(ミス)が生まれる余地は多くなるが、その代わりバリエーションが豊かになる。その葛藤構造をヘボットはアニメの内側に取り込み、次元院というかたちで再現しているのかもしれない。最終回を回避したいのに話数を減らそうとする一見矛盾して見えるシメール派の理はここにあって、次元ネジを緩めれば緩めるほど設定は無茶苦茶になっていき、予想だにしていなかったこと(唐突な投げ込みとか)が起こるようになるので、彼らはそれを危惧しているのだと思う。
予測通りに事は進むが時間に余裕がないシメール派と、時間の余裕はあるが予測不可能な事態に直面し得るユルメル主義。これがヘボットの根幹にあって、現状はフィーネを、そしてどっちが正しいかの結論を先延ばしにする意味でも、なぁなぁのままにユルメル主義が優勢になっている。もし奇数回で締めて偶数回で緩めているのだとしたら、多分3歩進んで2歩下がる的な感じで、少しずつ緩めているのかな。

そういうあれこれを踏まえて、ようやく話を元に戻せる。どうしてチギルとナグリの存在がフィーネをごまかすことになるのか。ここまでくればなんとなく想像はつく。まさかの兄弟だとかいなかった母親が帰ってくるとか、そういうイベントが起こってすぐ終わるというのは基本不合理なことで、一通りそれらについて掘り下げ終わるまでは猶予ができる(ペケットで言う販促期間みたいなもの)。もちろん例外はあって、ラスボスなんかは終わり際に登場するものだし、仮面ライダーなんかは終盤で新フォームを出すのがトレンドだったりするのだが。スゴスゴインダーネジに関しては、そのラスボス(終わらせるもの)なのではないかと疑われて危険視されていたのだと思われる。
で、ジルの策の背骨は「隠していたこと」。兄弟も母親も、もし1話から登場していたのなら単に"そういうもの"として受け入れられて終わりなところを、いないものとして扱って後から「いたの!?」という驚きを伴うイベントとして消化することで、フィーネを抑える為に利用したということなのだろう。
次元ネジについてここまで理解してないとほとんどセリフの真意が分からないようになってるのがにくいね。

 

 

スーパー・モエカストリオがおはぎ扱いされてることは華麗にスルーして、赤フンから(ネジ王の後ろの王宮から?)出てきたスゴスゴインダーネジによって、現階層に現れるネジキール卿とマンドライバー。
「もう行ったり来たりしなくていい」とのことだが、一体どういう意味なのだろう。まず、そもそも彼らはなんの為に階層を超えていたのかが分からないと話が進まない。「話進めなくてもイインダヨ〜」ちょ、そんなつれないこと言わないでくださいよスゴ姉さん。段取り無視虫は抜け落ちた鼻毛からワープしてくるって、シメール派のハナクルーと何か関係あるんですか?「どっちだってイインダヨ〜」えぇ……。
卿は23話での話を聞いている感じ、相棒の黒ヘボットと再会すること(その為にネジを集めること)が目的かに思えたが、今回は1話アバンでの行動について「ネジれの根っこ(次元ネジ)をネジ切ろうとしていた」との説明があり、更にはマンドラに「単純だなぁ」と呆れられていることから、大目的は2人とも同じであることが分かる。両人ともこのアニメの登場人物であることには変わりないので、フィーネを回避したいってとこが共通してることに違和感はないのだが……? 卿はアンチネジ軍として「次元ネジなんて必要ない」と主張しているのだろうけど、次元ネジの何たるかを知ってたら、それが世界そのものの消滅を引き起こしかねないことはなんとなく想像できるのでは? シメール派のようなその意見の理というものが見えてこない。あるとすれば、本当に心の底から世界を呪い絶望し、全て無に帰そうとしている可能性くらいなんだけど、それは果たして「単純」なのかと考えるとしっくりこない。「世界のネジれをネジ切る旅」というのは、言い方が違うだけで「ネジれを正す旅」を意味してるように感じるし。
ひとつの参考として彼の服装に目を向けてみると、カブトムシみたいな装甲に丸い装飾がいくつも付いている。僕これのことずっとナット(雌ねじ)だと思ってたんだけど、よくよく見ると穴が六角になってるのよね。つまり、どちらかと言えばレンチやスパナの一種なのかもしれない。だとするとマンドライバーと似たもの同士なのも頷ける。ドライバーに関してはジル国王にもあしらわれてるのだけど、どういう意味があるのかはイマイチ分からん。ネジを"対象"としてどうこうするものなので、世界(ネジ)の外側に位置しているということなのかな。ジルはどっちかと言えば内側の人な気がするけど。

マンドライバーの方は、16話の時点で(純正)ヘボットを失ったらしい。喧嘩してネジルの心がヘボットから離れたら確かにタイムパラドックスが起きてネジ魂はなくなるかと思ったけれど、同化するほど愛はあったはず……ヘボット側が逃げたことで同様のパラドックスが起きた? いや、というか純正ヘボットは普通にゴッネジ界にいる訳なので、ネジ魂だけを、つくったか別のヘボットタイプから奪ったかした即席ボロボロ純正ボデーに移し替えて、空になった本体をマンドラに返したのかもしれない。というかマンドラよりもゼロに近いネジキール卿(ネ人造人間でないとすると近い≒ネ人造人間なら遠い)の記憶に純正ヘボットが出てくるのは何気に順序がおかしいのでは。あくまで地獄で対峙する"良いヘボット"というロールは元々存在していて、たまたま今の周回ではそこにマンドラの相棒だったヘボットが収まっているというだけなのかな。同じことをするなら別にパチボットでも構わないと。更に気になるのは卿の記憶にはペケットがいないので、黒ヘボットはきちんと試験を受けたのかということ。あのボキャバトルは、ヘボットが「ペケットを身代わりにして試験を受けてなかった」から起こったものであって、しかもヘボットの代わりにペケットがバトルするという話なので、だいぶ筋書きが変わってしまう。繰り返す度に差が開いていく……。ボキャ美といいボキャメンテの夕子といい、どっちもサートゥルヌスが深く関係してるのも気になる。やっぱ彼女だけは他の上位者とも一線を隠す存在な気がする。先代(初代?)のネジ王っぽいし、ゴッドネジを落としてネジが島を生み出した、言わば創世の神みたいな立ち位置なのかもしれない。あくまでネジが島の伝承における、って話だけどね。
キルマン(ネジキール卿とマンドライバーね)ともに、自分の兄の話は(無茶苦茶とはいえ)するのに、ペケットポジションの話は一切しないのね。彼は今周回にしかいない存在らしいから当然といえば当然なんだけど。僕は勝手に、12話のおもらし回はある種の実験みたいなもので、あれのデータを元にペケットはつくられたのではないかと思ってるんだけど、だとすると以前の周回ではどういうエピソードになってたんだろう。普通にもらいもじシンドロームの話だけ消えて、単なるモエルの闇落ち回だったのかな。
そもそもの話、ヘボットの世界に「放送されてないが事実としてある過去」なんてものがあるのか自体、怪しいところではあるんだけど。放送されてる現階層の今周回から逆算してつくられた、世界五分前仮説的なものだとするなら、あんまり真面目に考え過ぎるのは良くない。因果を操る次元ネジも緩んでる訳だし、パラドックスはあって当たり前くらいに思わないと。

 

長々と話してきましたけど、完全に忘れてた。今回はスゴ姉さんの回でした。ぶっちゃけやってること意味分かんなくて、自ら呼び出したキルマンコンビを吹き飛ばして、エネルギーを切らしている。
黒いトキトキネジをチギルが預かってるのと同様に、まだその時ではないとロココットが回収に来たのは、レベルの上げすぎも良くないということかな、最終回を呼び起こすフラグのひとつっぽいし。でもカンストさえすれば止められるんだから上げりゃいいようにも思うので保留。

デリートされるネ人造人間10号と、それを目撃するユーコさん。
電王的に捉えるなら、特異点というのは「この歴史にない記憶をもつている人」となる訳で、例えばキルマンコンビなんかはまさにそう。それこそ仮面ライダー的に、特異点というパラドックス(ネジれ)を消して回れるのは同じ特異点(世界の歪みを認知してる人)しかいないみたいな話だとすれば、なんとなくイメージは合う。本当にネジれを正すなら最後には自分自身を消さなくてはいけなくて、ヴィーテ(フィーネ)的には不必要になったらデリートすればいい使い捨ての存在。おそらくフィーネの目的のひとつは「綺麗に終わらせること」だと思うので、パラドックスはなるべく消したいんだろうね。
スゴ様の言い分としては、記憶が時間なのだから存在を消さずとも記憶だけ消せばイインダヨと。いや、自然と消えるって話にも聞こえるが。

文量的にはもう十分なので、スゴ様の話とかは次回に回しましょう。グッナイ。

 

ヘボット!感想一覧

前話

ヘボット! 28話「さらば、愛しのモエカス!」 感想

次話

ヘボット! 30話「忘れられないの」 感想