やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

JIN-仁- 第十話 感想

キャラクター

 南方仁
・「野風さんの胸にはしこりがあった。でも、それは小さく感触も定かではない。悪性の腫瘍だと判断することは、できないレベルのものだ。だから、あれは嘘ではない。これでいいんだ。未来には、生まれる権利があるんだから」
一定の理はありつつも、自分に必死に言い聞かせているような描き方。仁に失望するとすればここだろうと思って覚悟していたが、杞憂だったようだ。もちろん褒められたことでは決してないが、仮に躊躇なく野風を助けたとするとそれは取りも直さず未来を殺すことだと言っても過言ではないので、この葛藤は仕方のないものだと言えよう。
どっかの青い総髪の外科医は、自分から状況悪くしやがったからな。
・問題ないと診断した後も、治せるのならきちんと治した上で嫁いで貰うためだろう、乳癌を治す方法を聞いて回る。こういう細かい気配りがあるから、不愉快にならずに済むんだよなぁ。
・仁「しこりが全て岩とは限りませんし、乳腺症の可能性もありますし、例え岩だとしても、良性のものであれば問題ないんです」
咲「野風さんの母上は、乳に出来た岩で亡くなったそうです。子が親に似るのは道理でございます。悪い岩の可能性も高いのではないでしょうか」
仁「そうであったにしても、私は乳癌を扱った経験は殆どありませんし、悪性かどうかを触診だけで判断することなんかできません。乳癌の診断には、この時代にはない特別な機械が必要――」
咲「今までは立ち向かってらしたではないですか! 先生は野風さんを見殺しにしようとしたんじゃないんですか、未来さんのために」
気を紛らわすように引っ越しの支度をしながら話す仁の追い詰められ具合も伺える。また「この時代にはない特別な機械が必要」と言うのは事実であろうし、これまでの行為の方がそれこそ仏と崇められるような特別素晴らしいことなのであって、できないから諦めるというのは至極普通の反応といえる。良いことをしないからと言って責めるのはおかしな話だろう。
・書いていて気付いたが、仁が未来のためにした「(この時代では)できない」という言い訳が、未来の意思(できないって言葉嫌いなんです)に反してしまっているというのは、皮肉な話だ。

 

 橘咲
・未来の写真がないことに気付き、すぐさま探しに行く。恋敵とも言うべき相手なのに。ただ、咲の気持ちを"恋"の一言で片付けてしまうのは好きじゃない。彼女が医術の世界に踏み込んだのは、第一には「父の敵とも言うべきコロリを倒すため」というのがあるはずなので、仁への好意で医を志したというような表現をされるとあまりしっくりこない。
・仁「鬼、ですよね……私は」
咲「いいえ。……でも、咲はもう、耐えられませぬ。医術は時として、体ばかりでなく、心までも裸にしてしまいます。咲はもう……剥き出しの心を、見てはおられませぬ」
人を見殺しにしかけた仁をそれでも鬼とは言わず、ただ"裸の心"と表現したのは、人情として仁の葛藤が理解できるからであろう。

またこれは全くの偶然……あるいは当時見た時の記憶が無意識にあったことによるものなのか、1話の感想で自分も「心が裸になる」という表現をしていた。悪い面ばかりでもない。
・「先生には、おられるのでございます。その方のためになら、鬼にもなろうという方が。あのお優しい先生を、そこまでさせてしまわれる方が……。私の出る幕など、いつまで待ってもございませぬ」
咲さんは"振られた"っていうのとは違うんだよなぁ……でも、自分で決めたからこそつらいってこともある。

 

 野風
・「先生がないと言われるのなら、ないのでありんす」
彼女もなー。"袖にされた"と分かっていながら諦めきれず、仁自身に、或いは運命に判断を委ねる。未練がましいと分かっていつつも、最後の抵抗なのだろう。切ない。

 

 

 

心配していた分、余計素晴らしい出来に思える。これが"葛藤"であり"ドラマ"だよ。
それぞれの選択肢にそれぞれ理がある(或いはそれぞれ悪い部分がある)ようなものでなければ、葛藤は成り立たない。当然その葛藤がつらければつらいほど解決させるのは難しくなり、その分解決した時のカタルシスも大きい。
次が1期の最終回な訳だが、決着の付け方で評価は大きく左右される。期待。

 

次話

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