やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 4章 義憤の蒲生慈玄

第4章 義憤の蒲生慈玄

 

・前回のヒキで既に変身していた仮面ライダー慈玄。
暴走してカオスライダーにならずに仮面ライダーになるためには、何らかの形で自分を強く信じることがひとつの条件らしいことは描かれてきたので、自分はライダーになって当然だと信じて疑わなかった慈玄は他の人の助けなしでもしれっと変身できてて、その上で仮面ライダーの力をどういう風に使うのかって段階の話をするのは分かりやすいし巧みだなぁ。

 

多人数ライダーのさばき方

・今回はQを始めとしたスラムデイズがチラッと顔見せ。序盤のウィズダムシンクスもそうだけど、高橋脚本は多人数ライダーをやるにあたって、こういう風に推しのキャラがメインとなって活躍する回までの間をどうやって保たせるかに結構神経を使ってくれるのがいいよね。


昔『エグゼイド』について色々調べてたときも、貴利矢や黎斗が退場していた期間を除くと、全てのメインキャラが全てのエピソードに必ず一度は登場するようになっていて、ライダーが出たり出なかったりする『カブト』なんかに慣れていた身としてはかなりびっくりした。
ドラマシリーズだと2話ごとに監督も違うから、短いシーンのためにいちいちキャラを呼ぶのはやや効率が悪そうではあるけども、ゲームなら何章分でもできてる分だけまとめて声優さんに収録してもらえばいいんだろうし。


・戴天は才悟と陽真には部屋を与えたけど、紫苑と慈玄、あとマッドガイのメンツにはそういう援助はしていない。
彼もかなり現金なやつというか、たぶん陽真にしたってたまたま一緒にいたからなりゆきでそういう話になっちゃっただけで、本来はアカデミーでの成績がトップだった才悟を目の届くところに置いておきたかっただけなんだろうなというのが透けて見えちゃうよね。


・今回のカオスワールドは、信号が案内人。お巡りさんの口から直接信号機について言及されることは最後までなかったずだけど、彼にとってどういう意味を持つんだろう……?
情報がないので誰にでも通じそうな話でいくなら、究極的には親と子供の個人的な約束に過ぎない家庭内のルールと違って、子供が初めて触れる「一般社会における守るべきルール」が信号だからだろうか?
世の中には、車なんかめったに通らない田舎でも、そこに住んでる子供が都会に行ったとき困らないようにとそのルールを教えるために信号機が設置されてるケースもあると聞いたことがあるから、それくらい一般的でプリミティブなルールの象徴ってイメージなのかな?

まぁもちろん信号無視をする人なんて探せばいくらでもいるだろうけど……っていうかそうか? お巡りさんが抱いてる「ルールを破られても突っ立ってるだけで何もできない」って気持ちの表現としての信号機なのか?

 

暴走する正義感

・1章で話を信じてくれない警官を描いておいてから今度は信じてくれるお巡りさんを出すの、段取りが丁寧だなぁ。拳銃を使って暴走するっていう、おばあちゃんと比べてもかなり厄介なゲストだからこそ、根っからの悪い人って訳ではなくて、普段はいい人なのにカオスワールドに来たせいでタガが外れちゃってるだけなんだってのがちゃんと実感できる。
何なら1章の警察官は、カオスイズムの手先だったりするのかな。


「悪人は死刑だ!」って主張自体はアブナイけど、それが悪に対する憎しみじゃなくて……じゃなくてっていうかそれもあるかもしれないけどそれだけじゃなくて、世の中から犯罪をなくせない「警察の不甲斐なさ」がトリガーになってるのもフォローがしっかりしてる。他責思考はよくないけど、自責の暴走なら見てるこっちとしても同情しやすい。
もしかすると、カオスイズムが市民を拉致する現場を目撃したとかそういう過去でもあったりするのかもしれない。

・ゲストが怪人になって厄介事を起こすのは『W』以降ひとつのお約束になってて、特にライドカメンズの人たちは扉ってキーワードも共通してるように『ドンブラザーズ』のヒトツ鬼に似てるんだけど、こっちはタイムリミットが来ると怪人になって戻れなくなっちゃうという設定があることで、非実写かつノベルということで不足しがちな緊迫感を補っているよね。


・前回落ち込む紫苑に対して、レオンに倣って相手の意志を尊重しようとしすぎる余り、慰めの言葉をかけられなかった(少なくともそういう選択肢があった)ノア。


それを見抜かれたのか、3章の最後で紫苑から「あなたは過保護すぎるから、もっと自分のことも大切にしてね」と言われたんだけど、今回その流れに沿って慈玄を止める選択肢に偏ってる……ということがないのは、最初は反映されてないじゃんあれって思ったけど、プレイヤーが本気で「慈玄ならきっと大丈夫!」って思ったのならそれを貫くことこそが「自分を大切にする」ことになる訳だから、これでいいのか。

 

カメンズは生まれ変わり

・事前情報でも言い回しが独特すぎて異彩を放っていた「人生二周目男」発言。他で似たような表現を全く聞かない訳ではないけど、一般的な用法としては「二周目だからうまく立ち回れてる」もしくは「二周目だから世の中そんなにうまくいかないものだと諦めてる」のどちらかで、慈玄はそのどちらにも当てはまらなくてただ「頑固」「親父くさい」というだけの意味で使われてるので、かなり変ではある。だってその意味合いで言うなら紫苑だって「優しいお母さんが生まれ変わった人生二周目男」って呼ばれてもいいはずで、言葉選びとして自然な訳でも、不自然な代わりに的確な訳でもない。

まぁ素直に受け取るなら、ライドカメンズのキャラクターたちは元ネタの仮面ライダーたちが生まれ変わった姿で、前世の記憶はないけど不思議なことにどこか似たようなキャラクターになっている……ってな設定の匂わせってことになるのかな? 慈玄がどうこうというよりは"人生二周目"というワードをどこかに仕込むことが発想として先にあって、たまたまその対象として慈玄に白羽の矢が立っただけのように思える。

コンセプト的には『ジオウ』とだいたい同じだよね。記憶をなくしてて実質的には別人みたいなものなんだけど、どこか通じてるところがあるのを見て楽しむという。
なーんか最近そういう設定の作品を見た気がするなぁ……とずっとモヤモヤしてたんだけどあれだ、『妖怪学園Y』だ。妖怪ウォッチシリーズのスピンオフで、ジバニャンとかコマさんとかの有名な妖怪たちが人間に転生して、まさしく仮面ライダーみたいに変身して戦うっていう設定のやつ。
元々ナユタン星人てボカロPが好きで、主題歌を担当するだけじゃなくその人のイメージキャラがゲームに登場するって話を聞いて興味を持ち、生まれ変わりの設定自体もぶっとんでて面白いなと思ったから買ったんだけど、まだクリアはしてないのよね……自分飽きっぽくて……。
(参考:キャラクター&妖怪HERO | 妖怪学園Y ~ワイワイ学園生活~)
もっと一般的なところだと『鬼滅の刃』かな。あれも敵を倒したものの何人かの犠牲を払ってしまっていて、その状況から復活みたいなロジックを使うことなくメインキャラみんなが勢揃いしてハッピーエンドを迎えるための手法として、世代をいくつか重ねたあとで子孫たちが平和に暮らしてる姿を描いていた。
でもそういえば、よく知らないけどセーラームーンにも前世がみたいな設定あったよね? 近年……つってももうあんまり聞かないけど、転生ものラノベも流行ってたし、生まれ変わりって意外と男女問わず人気があるテーマなんだな。

 

大切なものがあると矛盾してしまう

・陽真ってポジティブを自称しつつも時々……と言うにはちょっと高い頻度で、グサっと人を否定するようなこと言うよね。
大体の場合、それは陽真自身が「スーパーポジティブ」という自分に唯一残された仮面を守るための言動なことが多くて、今回なんかはすごく分かりやすく、心なんて読まれちゃったら本当は心の奥底にある自分でも自覚できてない暗い一面を見透かされてしまいそうで怖かったから、こういう反応になってるんだろう。

この"矛盾"を楽しむのが高橋悠也作品のキモなんですよ。人間っていうのは理屈で簡単に割り切れるものじゃなくて、色んな感情や建前が複雑に絡まり合っている生き物なので。
慈玄くんのキャラエピソード「持論の格言」では、『行動することが大事だ』『先の見通しが大事だ』という相反する2つの格言を前にしてどちらを優先させればいいのか悩む姿が見られるんだけど、そのとき主人公のノアがさらっと「なるほど……大事なものがいっぱいあると、矛盾することもあるかもね」って言ってて、これサブストーリーにしておくにはもったいないくらい、すごくいいセリフだと思う。
ふつう矛盾とかダブルスタンダードって、みんなよくないこととか避けるべきものとして語りがちだけど、かつてこんなに優しくて素敵な表現をした人がいただろうか?
そうなんだよ、大事にしたいものがたくさんあるから、人は悩むんで葛藤して、ときに矛盾したことを言ったりやったりしちゃうんだよ……。
この一言だけでノアへの好感度が爆上がりしちゃった。僕の頭からは逆立ちしてもこんな素晴らしいセリフは出てこないだろうな。


・欠落ゆえに自分を支えるものが不安定で余裕がない感じはジャスティスライド全員に言えて、慈玄も当然例外ではない。
最初の印象としては、近年でCV.岡本信彦さんと言えばの『ヒロアカ』爆豪勝己とは似ても似つかないというか、むしろ飯田くんに近い感じだなと思ってたけど、自尊心の塊で周りと衝突してしまうところはかなり似てるかも。良くも悪くも、真っ直ぐすぎるという。
本人はかなり気難しい方なんだけど、なんだかんだでクラスの中ではいじられキャラみたいな立ち位置になってて実はちょっとかわいげがあるのも同じかな。
そう、爆豪って1話の中学時代だと完全にカースト最上位のいじめっ子で、彼を止められる人間が誰もいない状態で暴走してるから本当に直視に耐えないレベルなんだけど、雄英高校に入ったことで周りのレベルがグンと上がって、一応そこでも成績トップクラスではあるものの、それでも適度に敗北感を味わうこともあったりしてかなり相対的に丸くなってるというか、本人はなかなか変わらないけど見てるこっちとしてはまぁまぁってなるんだよね。
慈玄は逆に才悟っていう超えられないライバルがいるからこそ理想とのギャップでより意固地になってる面もあって、それこそヒロアカで言うならエンデヴァーの味もちょっとするので、ほんの少しだけ心配してたとこもあったけど、まさか初のメイン回でいきなりそこを乗り越えることになるとは思ってなかったよね。


・が、ガオアルって何!? カオスを完成させたらガオナになるんじゃないのか。ガオナたちはライダーのサンドバッグによくするから、この人も元は人間なのに……って気持ちにならないように、敢えてまた別の名前のやつを出してきたんだろうか? ガオナも元人間なんだけど、敢えてそこは明言しないでどっちとも取れるようにしておいてるというか。
今のところは前回才悟が特に根拠もなく「こいつらは人間じゃないから倒していい」って言ってただけで済まされてて、まぁこれがひっくり返っちゃったら才悟にめっちゃ責任が発生しちゃうから、そんな風にはしない気もするけど、もし「犠牲者の体はガオナになって倒されたら消えちゃうけど、精神はカオスの中に保存されてて復活できる」みたいな『エグゼイド』的ロジックが展開されるなら、まだ可能性はあると思う。


・半分正解で嘘でもないってことは、Qはカオスイズムに与する人格ってことなのか? なんかややこしくなってきそうだな……。
あるいはミスリードで、ランスの方がQよりもカオスイズムに従ってるみたいな可能性もあったりするのかな。

 

カオスの意志と、運命を変える力

・「カオスの主義」ねぇ……。
せっかく買って見たのでちょっとでも言及したいんだけど、ライドカメンズと同じく高橋悠也×東映のプロジェクト『TXT Vol.2 ID』で「例えネガティブなものであっても、自分の感情を殺すことなく発信するのは良いことだ」みたいな旨の話がされてて、それ自体は『TXT Vol.1 SLANG』でも若干違うかたちでされてた話なんだけど、ライドカメンズはむしろ逆方向のベクトルを持ってる作品だよね。

実際問題として陽真とかは悪口言うし、他の連中もいがみあってギスギスすることも多々あるけど、大局的に見ると、仮面を外してしまったが故にえらいことになっちゃったカオスイズムの首領がいて、それに対抗するのが仮面を被ってる仮面ライダーっていう構図だし、カオストーンに魅了される原因となる"本能"をクラス契約によって抑制することが推奨されている世界観な訳で、清濁合わせ飲むから何でもかんでもあけっぴろげにすればいいっていう話ではどうやらない。

話し始めたはいいものの、まだこの辺は深く踏み込めないな……。


・これ↓は完全に「人が生きるということ……それこそが全ての人が持つ、運命を変える力だ!」ですね。

『エグゼイド』は医療ものなので、このセリフは要素を分解すると、エントロピー増大の法則を"運命"、それに抗って身体を一定の状態に保つ生命機能であるホメオスタシスを"運命を変える力"としてアナロジーしていて、今回のこのカオストーンの説明も概ねその文脈に乗ってはいるんだけど、気になるのは話のトーンに似合わないQの絵のかわいさ…………じゃなくって、架空の概念である"鬼"が含まれてることだよね。
鬼、生きてんの!? ライドカメンズの世界では!?(笑)

でもこの考え方は、さっきの話と繋がるね。カオスイズムの言ってる"カオスの意志のままに"っていうのは要するに自然のままにエントロピーを増大させるみたいなイメージであって、仮面を被って本能を隠すというのが『エグゼイド』同様ホメオスタシスのことを暗に言っているのだとしたら、本音を話すかどうかみたいなレイヤーとは違う次元の話として簡単に両立できるのかも。


・「ただ、守るべきものを守り、戦うべきものと戦う。……オレは……仮面ライダーだから」
これこれ、これだよ! 高橋悠也特有の、なんかそれっぽいけど結局何も言ってないトートロジー話術! "べきもの"の具体的な中身は話の展開によって自由自在に変わるやつ! やっぱこの味だよなぁ。
先日小林靖子は空っぽなキャラクターを書きがちという話をしたんだけど、高橋さんはよりその色が強いよな。『エグゼイド』にしろ『ゼロワン』にしろ『ギーツ』にしろ。

ここが僕の好みとぴったり合致するところで、そういう空っぽで何もない虚無的なところから、少しでも意味のありそうな"何か"を掬い出して獲得していく話が好きなんですよ。
これは年齢的なものもあると思うけど、中高生〜20歳ぐらいのヒネた時期に、色んなものに対してどうせ意味なんかないんだって世界のことを分かった気になるけど、そこから少しずつ揺り戻しで「そんなことないんだ」って思う過程を、今まさに生きてるから。
この「本当は虚無かもしれない」っていうフェーズが全く存在しない作品じゃあんまり意味がなくて、きちんとそこを通過しつつも「それでも」を描いてくれるからグッとくる。


・おー、変身前の盛り上がりどころでスチル使われるのって初めてじゃない? 棒立ちだと味気ないから、こういうところで使ってくれるのはありがたい。

仮面ライダー慈玄。変身アニメーションの中では今のところ慈玄くんが一番好きです。ドラゴンボールみたいに眉間に指を当てると仮面が現れて、そのあと何故か花火があがる(笑)
元ネタの『アギト』には確かに花火大会のエピソードがあったけど、あの回って別にモチーフである氷川誠/仮面ライダーG3が活躍する訳でもなんでもないので、本当に謎。かっこよさと面白さが両方あって好き。
まさかこの話の流れから、少なくとも紫苑と暮らすことに了承する程度には一人で突っ走るより仲間と一緒の方がいいって気付けた慈玄が、後々花火みたいに自分を散らせる展開が待っているとはとても思えないし、本当に意味を汲み取れない。
意味が分からないものっていいですよね。僕の好きな『ヘボット!』ってアニメもそうなんだけど、理屈とかさておいてとにかく言葉じゃないところで素直に感じる心を思い出させてくれる。

・ところで親指にカオスリングとか、いいんすか……? はめられるんすか……?
デザイン的にもなんかすば抜けて不思議で、なんでか知らないけど三角のOシグナルが2つあるんだよね。基本的にはそんなことってまずないはずで、レンゲルは蜘蛛モチーフだから三つ目になってるとか、響鬼はOシグナルの代わりに鬼面が付いてるから実質的に2つ目がついてるとか、そういう特別な理由もないのに2つあるなんてことは仮面ライダー図鑑を眺めてても多分なくて、ディエンドとかもそういう直接的な理由みたいなのは分かんないけどなんとなく納得できるんだけど、慈玄は本当に分からない(笑)


・ストーリーとは関係ないけど、マッドガイのチームに組み込んでリンクスキルが2つも発動する(まっしぐらな二人/神速の衝撃)のは慈玄だけなので、荒鬼,為士,阿形のいずれかを最初に選んだ人は慈玄くんにはお世話になると思います。


・今回慈玄にとっては「目的に一途になりすぎること」の象徴としてお巡りさんが配置されてた訳だけど、そのちょうど対極にいる存在として「目的も何もなくただ快楽に身を任せるスラムデイズ」もまた彼が向き合うべき壁として仄めかされてて、この話は後々拾われるはずなのでその時また考えます。

 

ライドカメンズ感想一覧

前回

ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 3章 慈悲の深水紫苑

次回「怒涛の荒鬼狂介」

ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 5章 怒涛の荒鬼狂介

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