やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 3章 慈悲の深水紫苑

第3章 慈悲の深水紫苑



 

オムライスとスニーカー

・オムライス以外のちゃんとした料理はできないらしい陽真。
元ネタの五代くんは2000の技って言って色んな特技を持ってるからなんとなく料理も得意そうなイメージだけはあるんだけど、実際の描写としてはポレポレでカレー作ってたくらいだった気がする。


まぁなんでそんなに技を身に着けてるかって言ったらみんなを笑顔にしたいからって理由のはずだから、料理は結構その目的に適ってるし普通にできるんだろうけど、結果的にはどちらもカレーにオムライスに誰でもできるレベルの料理に収まってるのがなんか偶然にしては面白い。

紫苑が料理上手なのは家庭で愛情をたくさん受け取って一緒に作り方とかも教わってたからなのかなって風に考えると、陽真の親はあんまり関わってはくれなかったりしたのかな。
でも逆も有り得るか? 親が何もしてくれないから自分でやるしかなくて、親が何でもやってくれる場合は自分ではできない。
今となっては「ラストノートは記憶の香り」で紫苑はかなりお母さんに愛されていた(なんならかなり重いくらいに)ことが仄めかされてるから、たぶん陽真は家庭でも寂しがってた方な気がする。

以前陽真のスニーカー好き要素を重く解釈してみようとしたときに「家に帰っても誰もいなくて玄関に家族の靴がないのが寂しかったから」しか思いつかなくて(そういう動機で靴を集めるやつ、どちらかといえば高橋悠也より井上敏樹とかが書くやつ)、でもそれって別にスニーカーである必然性はゼロというかむしろマイナスだから絶対に違うなってなった。
家族のぶんの靴って意味合いで集めてるなら、スニーカーだけじゃなくてもっと色んな種類を取り揃えたほうがよさそうだもん。
まぁスニーカーと無理に結び付けなくても、彼が寂しがり屋なのは色んなエピソードから明らかなのでね。

 

タメ口はコミュ力

・どう考えたって介護士さんの方が年上のはずなんだけど、陽真の方はタメ口で介護士さんが敬語なの、やっぱりこういうある種の無神経さというか馴れ馴れしさみたいなのが回り回って"コミュ力"って評価になるんだろうな。

……とか言ってる僕も、あんまり年上に敬語使わないタイプなんだけど。別に僕は陽真と違って距離を縮めたいと思ってるわけではないけど、それでも無理に意識してまで敬語使うのにはなんか抵抗がある。自然とですとかますとか出てくるのはいいんだけどね。
たぶんこの感覚は中学生時代の経験に由来してて、部活動とかって妙に先輩後輩みたいな上下関係を強調するところがあると思うんだけど、僕が先輩に対して謙ってるぶんには特に何も思わなかったのに、初めて後輩ができて「先輩」って呼ばれて敬語使われ始めたら、言いようもなく居心地が悪かったというか、気を遣われてる感じがしてすごく嫌だったんだよなぁ。
それ以来年下……正確には形式上でも自分を上として扱ってくる人が苦手で、自分がされて嫌だから、相手に対してもなんとなく憚られるようになったのかもしれない。
もちろん仕事の場とか必要なところでは普通に敬語使うけど、個人的な関わりにおいての話ね。

そういう感覚があるから、僕は全然タメ口でもいいと思うけど、でもまぁ一般的に見たらちょっと変わった個性ではあるのかな。


・最初に読んだときはボイス聞いてなかったのか!? え、悲鳴を上げてたのってどう聞いても紫苑ではないよね? おばあちゃんでもないし、つまり他にももう一人名も無き職員がカオスワールドに入ってて、ガオナの犠牲になったってこと……?
そんなしれっと死人出てたとは全く思わなかった。だって誰も言及しないし。
もちろんカオスを完成させちゃった人はこれまでにもいたんだろうから人死にがある作品かない作品で言えばある作品ではあるはずなんだけど、作中で……しかもこんな早く明確に描かれるとは。

 

言い過ぎ高橋脚本

・今回、お腹が空いてその辺の草を食べようか逡巡してたらおばあちゃんに息子と間違われて成り行きで一時的な居場所を得る……って流れが完全に『ガヴ』の4話だな?
ショウマと違って、紫苑は草なんて食べたら「人として終わる」とまで言ってるけど。草食系男子っぽい見た目してるのにね。
この辺もかなり高橋悠也っぽい節が効いてるなぁと感じる。

この世のどこかにはそこら辺に生えてる草を取って食ったことのある人くらい全然いてもおかしくないし、なんなら日本から世界に視野を広げたら絶対いるに決まってるけど、そんなことおかまいなしボロクソに言う感じ。
人間、常に誰かのことを傷付けないかどうか気を張ってられるわけじゃないし、況してや紫苑はお腹が空いて朦朧としてる状態なんだから、そういう配慮に欠けたこと言うときもあるよねっていう、そういうの。
ちょっと違うけど、小説版『エグゼイド』でニコの風邪を治しに渡米した大我に対して「どうかしてる。頭がおかしいとしか思えない(原文ママ)」とまで言ってた永夢とかも、どう考えてもそこまでキツく言わなくたっていいはずなのに、よりにもよってこういう表現を選ぶセンス。尖ってるよねぇ……(苦笑)

 

仮面ライダーと"老い"

・紫苑の元ネタである『555』はつい先日20周年記念で最新作『パラダイス・リゲインド』が公開されてて、それを見たときになんとなく、オルフェノクって老人の比喩として見られる側面もあるのかなって考えてたので、紫苑がシニアホームで介護してるのはなんかすごくタイムリーだった。
(参考:仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド 感想)

ホースオルフェノクが木場さんなのは前提として、料理とかも一通りはできて母性的なニュアンスがあるとこは長田っぽいし、どっかのエピソードで火事から人を助けてる海堂みたいな描写もあったりして、紫苑はこの3人のミックスとして見ても面白いかもしれない。
長田と真理が女子ふたりで料理する20話のシーン割と好きなんだよね。僕は海堂が好きなので、海堂のこと大好きな長田が「純粋で真面目な人」って言ってる横で、まさか同じ人間の話をしてるとは露知らずに真理が自分に言い寄ってきてる海堂のことを「ただのバカ」なんて言って仲良く笑ってるやつ。人と人とのすれ違いを描くのは井上敏樹の十八番だけど、やっぱりそれを最大限に活かせるのは恋愛だよね。
「ちゃんと話し合えばライダーバトルなんかしなくて済んだじゃん」みたいなこと言われがちだけど、恋愛関連だったらすれ違っちゃうことそのものがノータイムでエンタメになるので。後でそのことをお互いが知ってめちゃくちゃ気まずくなってるのもいいよね。

 

でも木場-長田-海堂の3人って、意外と「人間のために生きるオルフェノク」ってラベルになってて、オルフェノクのために生きる奴らではないんだよな。けっこう終盤になるまで、オルフェノクのために生きたいとまで思ってる敵じゃないキャラというのは出てこない。
例えば『ゼロワン』の滅亡迅雷なんかは半分ただの敵なのでこの3人ほどその人となりがじっくり描かれてる訳ではないんだけど、その代わりちゃんとヒューマギアの居場所を作るために戦ってるっていう配置になってるから、それと比べるとオルフェノクと共存とか権利みたいなことは全然言わない作品ではあるよね。

高齢者の権利については普段あんまり考えたことがなかったけど、改めて考えてみると他の分野とはかなり毛色が違って興味深いトピックではあるな?
少子高齢化なんて言葉もある通り、障害者や外国人、LGBTみたいな概念と比べても「決してマイノリティではない」うえに「誰もが他人事じゃない」にも関わらず、権利が脅かされることが問題として扱われる程度にはあるというのは。
嫌な人だと社会のお荷物みたいな風に言うこともあるし、もっと個人的な話としてお世話をするのは実際問題しんどいみたいなこともあるかないかならあるはずで、うっすらとネガティブな感情の対象となっている気はする。「自分が老いたくない」みたいな気持ちも手伝ってるのかな、そこは病気に対する差別に似た感じだろうか。
今回の薫さんも、ぬいぐるみを治したいっていう気持ちは「変なことを言っている」という扱われ方をしていて、例えばこれが老人じゃなくて子供だったら、たぶん「そもそもぬいぐるみですから……」みたいな言い方はせず、最低限話を合わせて要求通りにきちんとぬいぐるみは治すから帰りましょうっていう話になると思うんだよな。
まぁそれが本当に相手を尊重してることになるのかは判断が難しいところだけど、なまじ若い健常者の枠組みに入ったことがあるせいで「分かるでしょ?」「理解してよ」っていう押し付けをされやすいような気がする。

自分は老人ホームの清掃をたまにやってるんだけど、利用者さんのお部屋に「お財布はスタッフが預かってます」「薬の時間は○時です」みたいな張り紙がたくさん並んでた時があって、それ見たときになんかすごく苦しくなったんだよね。
要するにそれらって「そんなことでいちいち話しかけないでください」っていう意思表示な訳で、もちろんスタッフさんがめちゃくちゃ大変なんだろうなってことも分かるけど、なんかもうちょっとどうにかならないのかなぁって勝手に考えたりした。

 

かなり話が逸れたけど、仮面ライダーは「親殺し」をテーマのひとつに据えてるシリーズでもあるからその辺の扱いは結構難しいのかもしれなくて、例えば明らかに老いの話を扱ってた『BLACK SUN』では、西島秀俊さん演じる南光太郎は見た目こそ壮年と言っても通りそうだけど、設定年齢としてはれっきとした70歳の老人なので、次代を担う葵が彼を殺すオチには、もちろんフィクションにおける世代交代の比喩的な誇張表現としてではあるものの、結構危ういニュアンスが乗っかってはいるよね。
……尤もここまで話して思ったけど、そうは言っても意外と仮面ライダーも折に触れて本郷猛さんみたいなキャラを現代に引っ張ってきて映画で活躍させてたりとかしたし、平成2期以降はスカル(MOVIE大戦CORE)あたりを皮切りに敵じゃない文脈でおっさんが仮面ライダーになる機会も増えてきて、結構若者と大人が一緒に自己実現するような絵面もちゃんと描いてる気がしてきた。
ともかくライドカメンズにおいては、わざわざ限られたスポットの中のひとつとしてシニアホームを出したからには、これからも時々ゲストとして扱う気があるんだろうから、どんな風に描くのかは気になるな。

 

・これはあんまり広がらなそうな話なので軽く流すけど、「ラストノート」を踏まえた上で見るとこの薫さんって名前もそうだし、息子の人形をかわいがってるって要素も紫苑のアイデンティティにかなり深く関わってきそうな予感はした。
紫苑のお母さんはかなり過干渉めな人っぽい印象を受けたので、子供の自主性みたいなものを受け入れられなくて、本当に人形みたいな黙って言うことを聞く存在として扱ってたんじゃないかなと。印象的なキャラだと『エヴァンゲリオン』に出てくるアスカの母親かな。
これは想像だけど、介護士の人が紫苑に対して「息子さんですか?」って聞いてて顔を把握してないってことは、シニアホームにも顔を見せてないことが窺えるし、今はあんまり良好な関係ではなくて、薫さんはそういう現実から逃避して、自分に都合のいいことしか言わない息子がいる世界に魅入られたのかもしれない。
紫苑は息子と別れるときに形見としてプレゼントされたんじゃないかって推測してたけど、紫苑は何も人の心を完全に読み取れる訳じゃないので。


・今回浄がカオスワールドの秘密を教えてくれたのって、ウィズダムシンクスの思惑じゃないんだったら戴天が部屋紹介してくれたのと似たようなノリで差し向けたってことなのかな。


カオストーンの研究者なんだみたいな話もあったから、それが嘘じゃないなら自分の個人的な目的のためにとか、その2つを兼ねてって可能性もあるけど。
仮に前者だとしたら、元ネタ的にも胡散臭いのがひとつのアイデンティティな浄だけど、それが実際は背後にいる高塔の胡散臭さにそのままそっくり変換されるのがなんかおもろい。お前は胡散臭くないんだ!?って。

 

信じるものが人を救う

・「自分でそう思うということはそうなのかもしれないね」って選択肢、あまりにも高橋悠也すぎる。


『エグゼイド』の「人を信じるのに根拠はいらないんだろ!? だったら誰になんて言われようがブレんな! 自分自身の心を信じろ!」とか、恒常星4神威の「自分が自分の可能性を信じなくてどうする」ってエピソードだったり。
理屈よりもまず「自分が何を信じどうありたいと願うか」を何よりも重んじる感じ。
『ゼロワン』における仮面ライダーの定義がバラバラなのもその延長で、根拠とか定義とかそういうただの理屈はどうでもよくて、本人が「自分は何々のために戦う、仮面ライダー〇〇だ」と強く信じるならそれ以上何も言うべきことはない。

「相手の意志を尊重する」という行為の冷たさを強調する感じで言うと、「自分は人類に害をなすバグスターだから……」と卑屈になるポッピーに対して「そんなに自分は敵だって言うなら攻撃してみろよ」と迫るところとかかな。
前回の「魅上くんの言う通り、一人で行かせるべきだ」って選択肢や、結果的にレオンが魅上の意志を尊重したのと同じで、相手を心配する気持ちですら自分の都合の押し付けとして冷たく切り捨てて、自分は自分 相手は相手と完全に切り分けちゃうような。

それが決して悪いことばかりじゃないのは、もちろんこうして選択肢のひとつとして表示されてることからも自明だけどね。

 

・もうひとつエージェントの話をすると、その直後の話もたぶん2章と繋がってるのかな?
前回は陽真とノアが「才悟と違って自分たちは変身できないから、待つことしかできないね」って話を6話でしてて、でもその陽真が才悟に続いて仮面ライダーに変身したことを受けて、待つだけじゃなくて自分にも何かできることがあるかもしれないって風に考え始めたのかなと。
各キャラにそれぞれ注目していくから一見1話完結みたいに見えるけど、こうやって少しずつ積み重なるものがあるとより面白くなるよね。

 

ライドカメンズ感想一覧

前回

ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 2章 情熱の伊織陽真

次回「義憤の蒲生慈玄」

ゼロワン好きの『ライドカメンズ』実況 第1部 4章 義憤の蒲生慈玄

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