やんまの目安箱

やんまの目安箱

ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

『シン・ウルトラマン』 感想メモ

本記事は2022/5/13に公開された企画・脚本 庵野秀明,監督 樋口真嗣による『シン・ウルトラマン』について、僕は大きなテーマで語れるほどウルトラマンを知らない(↓)ので、細々と思ったことを箇条書き形式でまとめたものです。長かったり一言だったりマチマチ。
一応シンウル自体は2回見て、パンフとデザインワークスは読みました。当然ネタバレを含みます。
※全話見た→G,オーブ,ジード,Z
多少知ってる→パワード,ティガ,コスモス,ネクサス,マックス,メビウス,R/B,タイガ

 

 

視聴前

ゴジラは倒されて、エヴァはさようならされて、ウルトラマンは多分帰って……となると、仮面ライダーはどうなるんだろう? 本編的にはいなくならないし、すぐ次の週からV3に出てきて改造手術したりしてたけど。
・言ったら身も蓋もないけど、ぶっちゃけシンウルトラマン仮面ライダーが世間的な評価でシンゴジを超えることはないんだろうし、自分の中でも超えてこないんだろうなというやや諦めに近いものはある。

 

観賞後の所感まとめ

・割と面白かった。
「自分がウルトラマン知らない割には」と「シンゴジのハードルがあった割には」の"割と"。
・見る前は「下手にリアル路線にしたらバカバカしさが浮くぞ……」と思ってたけど、実際はかなりそこんとこ開き直ってエンタメしてた。
「巨大人型生物 ウルトラマン(仮称)」の時点からだいぶ、パッと見でバカっぽいのを大真面目にやってるから大丈夫かなと思ってたんだけど、結構ギャグも多めだったし、ウルトラマンの挙動も面白おかしく見えたりそれがふっと不気味に見えたりっていう具合になってて、「シンゴジとは違って今回はこういう路線、現実 対 虚構じゃなくてあくまで"空想"側の話」と理解してからは普通に楽しめた。
・スタッフたちは違うと言い張ってるけど、シン・ウルトラマンは結構子供向けに見えたなぁ。子供というか、「ウルトラマンを全く知らないし興味もない一般層向け」というよりは「ウルトラマンに興味はないでもないけど子供っぽさで敬遠してる人向け」のリアリティライン。庵野さんは"緩め"って言ってた。
バクマンの「俺たち読者アンケート3位票が多いから、少し面白くするだけで4位からくり上がって票数爆伸びするのでは?」と似てて、あくまで事前からウルトラマン見てみようかなって思ってた人の背中を押すかたちで客は増えるかもしれないけど、興味なかったけどシリーズにハマった! は少なそう。

まぁだから、元々「でかい怪獣がどこからともなく何度も現れて、味方してくれる謎の巨人まで現れる」っていう大前提が突飛な時点で一般ウケは難しい上で、僕はシンゴジからゴールラインを下げたのは大正解だと思ってるし、少なくとも僕の「ウルトラマン見てみたい」って気持ちは満たされた。
『シン・仮面ライダー』のコート着ながらのアクションも、パッと見がバカっぽ過ぎて……僕はバカなので凄くかっこいいと思ったけど。ウルトラマンもそうで、僕は作品に対して「楽しもう」っていう協力的姿勢だから第一印象を超えて「いや、でもこれかっこいいぞ?」って思うけど、そうじゃない人は「なにこれ」で終わっちゃうんだろうな。

 

第1の事件(ネロンガ)

禍威獣の出現

・後から思ったことだけど、この時点から「空想特撮映画」と銘打たれてるし、一瞬だから読み切れないけど「東京氷河期!大パニック!」とか書いてあって、今回は『シン・ゴジラ』と比べたら緩めの世界観ですよ〜ってのは提示されてたのね。
マンモスフラワーとかいう怪"獣"なのかもよく分からない色んなのがバラエティ豊かにポンポン出てきては2コマで落ちる漫画みたいに解決していくところも含めて、張り詰めた雰囲気みたいなのはある程度緩和されたかも。カイゲルちょっとかわいい。

・序盤は完全に仮面ライダークウガの文脈で見ていた。超人に頼らずともなんとか人類がバケモノに抵抗できていて、それもあってウルトラマンは人類を好きになったのかなとか、単純に榎田さんみたいな人がいるとか。
仮にウルトラマンが宇宙警備隊? やマックスみたいに平和のための監視といった上位存在として諍いの仲裁を目的に来ているとした場合、自分たちにはなんの利益もないのにただ暴れている怪獣をやっつけて、その星の民に神として崇められたり、或いは更なる驚異として恐れられたりと距離を取った扱いを受けていて孤独だったところに、自分たちの力で6体もの禍威獣を倒すことのできる人間という生命体は、ウルトラマンの強さ故の孤独を分かち合えると希望を抱くには十分だったんじゃないかなぁ、と。
尤も後半でどうやら光の星の目的は若干違うっぽいと思ったのであくまで「初見時の感想」ということに留めておくけど、「物語の始まりは微かな寂しさ」とは辻褄が合うので一応この解釈も捨てがたい。

エヴァにしろシンゴジにしろ、庵野さんイズムのひとつには個人的感情の交わりを廃した"事務的なコミュニケーション"ってのがあると思うんだけど、ウルトラマンはそういう禍特隊の面々と最初に触れ合ったから人間を好きになったって側面もあるのかなとぼんやり思ってる。
学者として意見を言う滝と船縁、班長として一歩引いたところからものを言う田村というベースにはシンゴジ的な、災害への対処という大目的と法律や用語などある程度の知識を共有しているが故のスムーズで淀みのない事務的やりとりの空気がありつつも、そこばっかりに偏らないで浅見が神永を好きになりつつあるとかチーム同士の信頼とか、そういう人間的な要素はきちんと匂ってくるバランスが、元々感情少なめなウルトラマンには心地良かったんじゃないかなと思う。
巨大浅見とかウルトラマンの正体とかで盛り上がってメフィラスでさえも苦言を呈すような下世話な、でも割合で言ったらかなり大半を占めてるゴシップ的で感情的な会話ばっかりする人たちが相手だったら、また感じ方も違ったのかなと。

・神永のパーソナリティは殆ど描かれなかったので、2回目はなるべく素の彼による発言に注目してたんだけど、ネロンガが透明だけど赤外線ではモニターできるよみたいな話の流れで「もし生物兵器なら現人類より高度な文明向け」みたいなことを言ってたんだけど、どういう意味だったんだろう。ネロンガの位置を観測できないから今の技術じゃ対抗できないって意味なら分かるのに、滝なんかは「透明の意味ねーじゃん」と軽口叩いてるくらいだし。
それに対して「理に適ってるよ」と返答したのはてっきり田村かと思ってたんだけど、これも神永だったっぽい。
エネルギーが貯まって有利になると見えるようになって威嚇するのは分かるって理屈だったはず。なんだけど、生物に詳しくないからなのか僕はあんまり納得できなかったのよね。透明というアドバンテージを捨てるメリットないし、そもそも粉塵でおおよその位置が見えてるなら透明である意味も大してないじゃんってことだったんだから、まぁ生物の進化において厳密な必然性を求める方がおかしいというのは一旦置いとくとして、強いてここから神永の性格を読み取るとしたら「相手には相手の正しさがあるという前提で、多少自分の主観を投影してでも筋を通そうとする」みたいな感じになるだろうか。
最初に否定から入るのではなく、まず「こう考えれば筋が通るかも」みたいな姿勢で物事を見ることは、特に作品を楽しむ上であるに越したことはないマナー的な作法だと思う。「こことここが矛盾してる」と言って思考停止するのではなく、一見相反する二項が成立する条件を考えてみる……まぁ考えてみたところで無理あるなって思うことはままあるんだけど、そういう"歩み寄り"を試みることはコミュニケーションにおいて大切よね。

※追記 透過率ほぼ100%だから熱光学兵器には有効……つまり「ネロンガの肌はレーザー光線が効かない最強の防御なんだけど、人類はまだレーザー武器を実用化してないから生物兵器だとしたらもっと進んだ文明向け」という話の流れらしい……なるほど! でもだとしたらやっぱり透明解除する意味ねーじゃん!

・「面白いわ〜、どうやって電気の溜まり場を感知してるのかしら」
「空間中の電場範囲を量的に観測できる量子デバイスでも付いてるんじゃないですか?(笑)」
この船縁と滝の会話、生物学者と物理学者のものの見方の違いが詰まってて面白い。終盤の展開もそういうことかも。養老孟司みたいなイメージで現実的に考える船縁と、理論を先行させて考えちゃうから一度「無理だ」と思ったら諦めちゃう滝。

・そういえば、1回目は時間ギリギリになっちゃったのでいい感じの席が空いてなくて、まぁウルトラマンだし見上げるのもアリかということで前から2列目で見た。
その結果として一番印象に残ったのは宗像室長の初登場シーンで、手前に机と広い部屋が配置されて画面上のかなり上部に配置されてるせいで、さぞかしこの人はめちゃくちゃ偉いんだろうなと。正直若干見にくいだけだったのであまりおすすめはしないです。

・神永が子供を助けに行く流れ、改めて見返すとデタラメ過ぎて笑いそうになった。滝と船縁がネロンガに対して「お手上げ、どうしようもない」と言ったほぼ直後に「子供が逃げ遅れてるから」って飛び出してて、あの辺の集落(山梨県身延町?)は当然として、日本全土が危ないかもって状況にも関わらず、禍特隊専従班という5人しかいない重要な役割を放り出して助けに行くという……。
斎藤工 曰く「自分より弱い子どもを命がけで助けて死んだという、およそ生産性のない決断」
ものの捉え方がすごく外星人だよね……役作りってすごいな。ひょっとすると、自分たちにはどうしようもないという無力感から現実逃避したくて、意味がなかろうが目の前の子供を助ける、或いは巻き込まれて名誉の殉死を遂げたいという人間的な弱い心の働きがあったのかも、しれない?
……でも光の星の民に本当に「弱きを守る」って概念がないのなら、リピアは最初何をしに来たのかよく分かんないんだよな。まぁゾーフィ曰く人間を滅ぼす決断をした訳だし、単純な偵察や様子見?

 

銀色の巨人、飛来

・最初に出てきた"銀色の巨人"状態のウルトラマンの顔(いわゆるAタイプ? わかんない)のちょっと怖くて不気味な感じがすげぇかっこいいなと思った反動で、赤くなってからの顔にずっと若干の不満を覚え続けることになった。

・にわかなのも手伝ってか分からないんだけど、元々のウルトラマンのデザインが「真実と正義と美の化身」だとするなら、微妙に違うあの銀色の状態は化身を名乗るには不完全だと考えるのが自然だよね。
銀色の体色は鏡のように現実をそのまま映すだけという意味で真実だけ、或いは真実と正義だけの化身だったりするのかな。
少なくとも美に関しては赤くなってから初めて浅見に言及されてた(きれい……)のであとから追加されて初めてその真善美が揃うのかなって思ったんだけど。
ただ赤いのを完成形とするなら、逆に緑のは何が欠けてるのかよく分からなくもある。同じく美なのか、もしくはこちらにこそ美が欠けていて、銀色状態は正義がない命令の実行者……という見方もできるかも?

ネロンガの電撃を受けても、一切のリアクションを取らずにひたひたと近付いてくるウルトラマンは、手でガードして尚も劣勢に陥ってたガボラ戦と見比べてみてもすごく不気味で怖い。でもそこがいい。
最初にイラスト見たときの第一印象は素直に「かっこよくはない」だったけど、今ではかなり好き。銀色のソフビ出ないかなぁ……!
・作品における"最初の敵"って、その作品のテーマとかを暗に表してることが多いというのが定説? ……というか持論なんだけど、今回のネロンガの名前の由来はZのときにも調べたけど皇帝ネロということで「外星人にしろウルトラマンにしろ、何かしらの絶対的な上位者というものを否定し、それに阿ることなく自らの手で何かを成し遂げよう」みたいなニュアンスを読み取れる。

・明らかに仏様チックなスペシウム光線の右腕の構え方も鳥肌立ったので、劇中でもう1回くらい別アングルから見せて欲しかった。予告見ても左手のカットからしか見せてくんないんだもん、赤いし。
余談だけど、僕はバトル作品においてビームでトドメを刺すという文化はあまり認めてなくて、かめはめ波くらい気合を入れてるならまた見え方も違うとしても、ヒーローがただ突っ立ってるだけで遠距離から爆殺するんというのは絵的に面白くない。
拳なり剣なりきちんと自分の手でかっこよくズバッと倒してこそ、カタルシスってあると思うんだけどな。
……まぁ子供が真似するときに、殴る蹴るをしないで空想のビームで済むんだったら無害で安全だよねって言われたらそれはそう。

あとデザインワークスの絵コンテでウルトラマンのことUMって書かれてるのいいな。UltraManでありながらUMA的なニュアンスもあり。未確認……Animalとは確かに言い難いし。

・何回聞いても……つっても2回だけど、巨大人型生物ウルトラマン(仮称)についての報告書は浅見の仕事のはずなのに、肝心の「詳細不明」という思い切りのいい中身については神永に対する評価として語られてるのがちょっと分かりにくい。バディだから二人の名義で提出したってことなのかもしれないけど、作中に映ってる限りのあの中身のなさを考えるとわざわざ二人であれつくったというのはちょっと可笑しいものがある。
そもそも浅見が配属された直後に、浅見ではなく神永の様子を聞くという宗像の話の流れが全く読めない。
ウルトラマンと融合した神永自身がウルトラマンの正体は全くの謎だと報告したというのも、何か意味がありそうで分からない。自分たちで分からせるためなのか、明かすつもりがないから誤魔化したのか、それとも。

「"ウルトラ"とは最重要機密を指す符丁」というのが気になったので調べてみたところ、MKウルトラ計画というCIAで現実にあった事例(?)が出てきて、Wiki情報だが「ウルトラ」とは第二次世界大戦中に用いられていた符丁で「最重要機密」……というそのまんますぎる解説も載っていた。
どうやらあの有名なエニグマにも関連して、暗号解読された重要な情報のことをウルトラと呼んでいたらしい。
これを調べて初めて「あぁそういうきちんとした理屈があるのね」って一応納得できたけど、僕らにとってはもう"ウルトラマン"という文字列は子供向けヒーローの名前としてあまりにも定着しすぎてるから、先にも言った通りパッと見のバカバカしさは拭いきれない。
リアル路線にするなら政府としては別のもっと真面目な名前を用意してたんだけど、目撃者の間で俗称として広まってしまったから正式に認めざるを得なくなったみたいな描き方の方がノイズは少なかったと思う。
"ゴジラ"は漢字表記も相まって由緒正しい神っぽさみたいなものが損なわれてなかったけど、ウルトラマンって名前は流石に俗っぽすぎる。

関係ないけど、子供の頃からパワードの「いや、ウルトラマンだ」「……確かに女性には見えないわ」っていう洋画的なやり取りがすごく好き。なんかもうツッコミどころ色々違うだろって思うんだけど、気の利いたテンポのいいやりとりだからなんでその名前になったのかという理屈からうまく目を逸らす感じの。

・滝くんのオタク部屋設定ってなんの面白みもないから最初はスルーしてたんだけど、デザインワークスであの小道具選びは基本的に庵野さんの趣味をそのまま反映させているという話を読んで、終盤で無力感に苛まれるもウルトラマン/神永に希望を託されて突破口を見つけるという重要な役割を担う彼の中に庵野さんはいるのかなと思ったら、なんとなく腑に落ちた。あんまりこうやって安易に、作り手が作中キャラに自分を投影してるみたいな解釈するのはよくないけど。

 

第2の事件(ガボラ)

赤いウルトラマン

ガボラの事件において船縁が「ウルトラマンは来ないのかな」ってボヤくシーンだけど、あれをウルトラマンに解決を頼ろうとする人間の描写だとするのには賛成できなくて、僕は単純に学者としての好奇心から「もう一回現れて分析させて欲しい」っていう、ポジティブな意味合いだと思う。終盤で滝と対照的なスタンスを取っていたことも踏まえて考えると。

・多分このタイミングだったと思うんだけど、ウルトラマンがぴーんと伸びた状態でぐるぐるぐるー! って縦に回転して敵をふっとばすアレ、めっちゃ好き。「UFO飛んでます」みたいなピロピロ音も相まってめちゃくちゃ地球外生命体っぽさ、シュールさの中にある不気味さみたいなものが出ていてかなりお気に入りの演出。
空飛ぶときにずっと同じ格好なのもそうだけど、かっこいい/かっこわるいっていう基準でウルトラマンは動いてなくて、ただ単純に"そういう存在"ってだけなんだろうね。あのポーズを取れば重力を無視して自由自在に動けるけど、裏を返すとふわふわ動きたいならあのポーズのまま固定してないといけなくて、謂わばあれは「ウルトラマンUFOモード」なんだろうなと。あの瞬間だけは生き物じゃなくて空飛ぶ鉄の円盤として振る舞ってる。

・本作のウルトラマンは"背中で語る"ようなカットが多いよね。猫背でこそあんまりないけど、なで肩で強そうには見えなくて、むしろ寂しそうな感じすら受けるのに、やっぱりどこか頼もしい。そんな背中。
カラータイマーにしろ背びれにしろ、デザインとして削ぎ落とされることで全体的に"どこか寂しい"印象が強まってるのがとてもいい味出してるよね……シンウルトラマンは。
カラータイマーなんてモロだけど、胸にあったはずのものがぽっかりなくなってしまうなんてさ。あれは番組の都合でピンチに陥らせたりするための枷みたいなもので、それをなくすことでウルトラマンは本当の神になるのだ! 激アツ! って解説してる人もいたけど、どちらかと言うとこれは「やっぱり今あるウルトラマンのデザインが一番馴染みあるしいいよね、シン・ウルトラマンはなんか不気味」って思って欲しいように思える。
「不自由をやろう」。

・ノーダメージだったネロンガの電撃と違って、ウルトラマンにとってもリスクのあるガボラの激ヤバ光線をその身で受け止めたことで体色が緑に変化。
この辺の意味合いはちょっと検討も付かないので誰か詳しく解説できる人いたら求む。

 

第3の事件(ザラブ星人/にせウルトラマン)

外星人とのコンタクト

・「パソコンのデータが消える」という現象のつらさやバックアップを取らせてくれない規則への恨み言を子供が理解できるとは思えないけど、船縁さんがまたオーバーでいいリアクションするから、分かんないなりに笑いどころなんだと察して笑ってる子供がいたのが印象的。
子供って特に、言語的な意味じゃなくてテンポ感とか言い方とかのほうに敏感に反応して笑うイメージがある。あと単純にガックリしてる様子とか。

ウルトラマンは神永の体で禍特隊に入ってからも単独行動ばかりしていて、にも関わらずいつの間にか人間を信頼してることになっているという描き方が不思議でならなかったんだけど、彼はその場にいなくてもある程度は禍特隊の状況を把握できる(≒神の視点を持っている)のかもしれない。
ガボラ戦でも「私たち人間の事情をどうしてか知っていたから、光線も打たずに死体を持ち帰ったのかも」という疑問はあたかも「神永として潜入していたから」で説明が付きそうだけど、ウルトラマンの光波熱線がガボラに当たったら未知の反応が起きるのではみたいな話って順序としては神永が変身したあとに出てきた話のはずで、説明しきれるものではない。これに関してはウルトラマンが普通に自分の頭で考えて気を利かせただけとも取れるけど、メフィラスとの戦いに向けて浅見を呼び出すシーンで「合流したい。場所は君に任せる」とだけ言って電話切っちゃったのよね、神永。普通にそのあともう一回連絡取ったという可能性もあるけど、とりあえずの第一印象として僕は「合流場所聞かないでなんで分かるの?」と思ったんだけど、これも仮にウルトラマンがある程度は禍特隊の動向を離れたところから知覚できる千里眼のような能力を持っているのだと考えれば、不思議はなくなる。
あと具体的には描かれてないけど、ザラブ編でも似たようなことはあった。ザラブが禍特隊に現れて首相との密談を要求したときに神永はやはり居合わせてなくて、にも関わらず僕の記憶が確かならいきなり全てを了解した上で車内で元同僚と話すシーンに飛んで、しかもこの時点から既に自分がザラブに狙われることまで予見して浅見にベータカプセルを託している。この状況把握能力の高さは実際に見ていて少し不自然だった。
さっきも言った通り、この解釈を採用することには「言うほど禍特隊メンバーとも関わってないよね」っていう根本的な謎が氷解するので、ひとつの可能性として持っている。

・ザラブも結構好きなのよねー、淡々とした喋り方がミギーみたいでめっちゃカワイイ。データ復元したりしてくれて、マッチポンプかもしれないけど律儀だし。
見た目はキモいけど。"裏がない"はずなのにそのせいで逆に怪しくなってるのが面白い。

・"スペシウム133"という単語、スペシウムというウルトラマン用語を知らない人にとっても、-ウムという語感に加えて、ヘリウム3とか炭素14みたいな同位体の場合は後ろに数字をくっつけるって表現方法があるのも手伝って「そういう元素なんです」ってことが伝わりやすくなってるのが手際よくて好き。本当に原子番号133の同位体として表現するんだったらスペシウム266?とかになると思うけど、あくまで"語感のイメージ"としてね。
エヴァについても一号機じゃなくて初号機って、同じことだけど言い方を少し工夫することで独自性を出しててすごいって話をしたけど、そんな感じ。
例え、-ウムといえば元素だなとかその辺すら理解できない知識レベルの人でも、単語が長くなればそれだけ「なんかそういう専門用語なんだろうな」感も増す気がする。

不平等条約の容認っていう要素もまた、自力でなんとかするのではなく他人の力にあやかろうとする姿勢に対するアンチテーゼのひとつとして機能しているのかな。歴史は詳しくないので分からん。

・「両方だ。敢えて狭間にいるからこそ、見えることもある」
こうは言うけども、基本的には神永はずっと"ウルトラマン"として振る舞ってるよね。従来的な二項対立としてのウルトラマンと人間の狭間じゃなくて、リピアと神永の狭間にいるのがウルトラマン……という意味なら、分かる。
さっきの千里眼だけど、本来なら神のごとく地球上すべて……或いは宇宙全域から異常を検知して駆けつけることができるための能力なんだけど、人間と融合したことで制限がかかって禍特隊を含む知り合い数10〜100人程度にしか効力がなくなってるとかだとより面白い。どこかに"注目"したり偏って見ることというのは、人間らしさを構成するひとつの重要な要素なので。

・これは半分受け売りだけど、シンウルトラマンの世界に神がいるとしたらそれは神永のことだよね。自分を犠牲をしてでも子供を助けた神永の方こそ、リピアにとってのヒーロー性の原点な訳だから。
演出的にも変身時にウルトラマンが神永をその手で掴むと指の隙間から光が漏れ出すってコンテに書いてあって、あぁやっぱウルトラマンにとっての力の源、"光"って神永なんだって思った。アルカイックスマイルを浮かべる仏様だって、基本は解脱を果たした元人間な訳だし。
もうちょっと飛躍させるなら神永に限らず、浅見含めて禍特隊メンバーのキャラ的な掘り下げがあんまり十分じゃないのも、人間の複雑な精神が持つよく分からなさ,神秘性をこそ賛美したいから、敢えて深くは描かないことでウルトラマンの「何も分からないのが人間だ。だからこそ、私は彼らを知りたい願う(企画メモ)」って言葉に説得力を持たせるという意図があったのかな……なんてことも思った。
少なくとも本作の中では「実は人類こそが一番素晴らしい存在」なんだろうなと。ウルトラマンシリーズはなんで変身アイテムが懐中電灯? ライト? なのか疑問だったんだけど、ウルトラマンは道を照らすだけで、あくまで進むのは人間ってことなのね。

 

第4の事件(メフィラス)

私の好きな言葉です。

・すげー雑に話すけど、人類は元々光の星が地球に撒いた生命の種であって、リピアたち光の巨人と根っこは同族だから同化できて……という裏設定なのかボツ案なのか分からない話がデザインワークスの企画書にあって、何となく僕の頭の中では生命の実を得たら光の巨人、知恵の実を得たら人類にみたいな分岐進化があって、エヴァと同じようなもんでその両方を手に入れてしまったらどうなるかっていうのの答えが今の神永と一体化した"ウルトラマン"なんだろうなというざっくりとした構図に整理されている。使徒と違ってウルトラマンにも知恵あんじゃんって思うけどそれはだってカヲルくんも喋ってたし……。

・目的はだいぶ違うけど、ベータボックスという超文明的な代物を人類に与えてくれる上位存在ってことで『正解するカド』を思い出した。似てるかは分からないけどあれはあれで面白いので(最後のほう覚えてないけど)おすすめしたい。

・メフィラスは本当に最高でしたね。決してそれだけじゃないけど僕は『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』における山本耕史演じる飛電其雄が結構好きで、その相乗効果もあってとても楽しませてもらった。いや眼福眼福。
無闇やたらに「私の好きな言葉です」って連呼する胡散くさい存在として、そうだとは一言も言わないけど言動とゾーフィという他人から指摘される形で"好き"を表現するウルトラマンとの対比も分かりやすくていいし、本当の意味で地球を好きになれるほどの人間らしさは元々持ち合わせてなくて、ただ表面的になぞっているだけに過ぎないのが面白い。
ブランコのシーンとか、普通大の大人同士が話すときに漕いだりはしないと思うんだけど、でも彼は知識が先行して「ブランコとは漕いで楽しむ地球の文化」としか認識してないから額面通りに漕ぐし、本人はそれで"分かった気になってる"から臆面もなく「好き」と公言できる。その不気味さと滑稽さと、途中で飽きて立ち漕ぎに変えてみたりするのも含めて、全部おもろい。
「割り勘でいいか? ウルトラマン」に関しても、コスト節約のために禍威獣やザラブは現地調達したって話と絡めて"本当に金がなかった"って解釈もマジ笑えるんだけど、まぁ普通に「言ってみたかった」とか「そういうもんだと思ってた」んだろうなと。一旦財布を覗いて見るとこまで含めて、ね。かわいい。
「地球好き。」という端的な表現があまりにもそのまんますぎて笑える。

・僕が初見で"いわゆるセクハラ"かもって思ったシーンはむしろ女性の浅見が男性の神永の尻を叩くとこだった。それ以外だと長澤まさみさんのお尻がアップになったりとかスカートを覗き込むカットとか作中というよりは撮影のレベルの話なので、する人,される人という構図が見えないから、「セクハラされてる」という第一印象は抱かなかった。スカートのシーンも何も見えないことが大前提にあるからこういう映像撮ってるんだろうなと思ったんだけど、まぁでも考えてみたらそうだと分かっててもあんな風に撮影されるのは快くはないわな。
神永が浅見をくんくん嗅ぐとこは、どちらかというと浅見の方が神永を好きだから変に意識してドキドキするってシーンだったのであんまり"そう"なのかなって納得いかない。
でもこれも、浅見は神永を好きかもしれないけど長澤まさみさんが斎藤工さんを好きかどうかとは関係ないからそんな展開を書くこと自体がセクハラなのかもしれん。
においだけはデータに変換されない(?)って理屈もよく分かんなかったしな。

あとメフィラスの「ウルトラマンという紳士がそのような変態行為も厭わないとは……」を以てセクハラじゃないと言い張るのは流石に無理があると思ふ。あくまであれは敵役の発したトンチキなギャグ発言であって、真面目にうんうんと頷くもんじゃない。
「人間ならきっとこのシチュエーションでセクハラを指摘するだろうから俺もしたろ」ってだけ。いや、多分人間なら流石にあのシリアスな状況では言わないと思うよって言いたくなるんだけど。
そういうキャラの発言なので、残念ながら作品全体のレベルで見たらあの発言は「いるよね、こういう空気読めないでセクハラとか言って騒ぐやつ(笑)」みたいな意味合いだと僕は思う……。

・VSメフィラス戦のBGMバリかっこよかったよなぁ。エンドロールに出典たくさん書かれてたしなんならかっこよすぎて浮いてたからあれも元ネタがあるのかと思って帰ってウキウキで調べても出てこなかったのが悲しい。また聞きたい。

 

第5の事件(ゼットン)

ウルトラマンの選択

・元ネタのゾフィーさんを知らないから分からないけど、シンウルのゾーフィって最後のシーンで帰った場合のリピア的な立ち位置の人なのかね。緑か青か分かんなかったけど色ついてたし。僕は勝手に最初のリピアを見て、光の星の人たちってのは元々みんな銀一色の鏡みたいな存在で、交わった相手によって色んな姿に変わるまね妖怪ボガートみたいな奴らなんだろうなと思ったので、どっかの星の生命体と融合した結果あんな黄ばんだ色になっちゃったんだろう。

自分も掟を破った経験があるからこそその償いとして人一倍に光の星からの命令を遵守してゼットンなんてものを送り込まなくてはならないし、ラストで「そんなに人間が好きになったのか」とウルトラマンの気持ちを理解することもできたのかなって。

・ゾーフィがゼットンを差し向けてきたのは確かにウルトラマンよく知らないなりにぞっとしたけど、あれは多分シンゴジでも描かれてたように人間にとって核が根絶やしにはなかなかできないから共存していかざるを得ないのと同じで、多分あれもゼットン星人?か誰かが破壊兵器としてつくったのを押収したものの、光の星にとっても本当はなくしたいけど装甲が硬すぎて歯が立たないのかなんなのか、ともかく根絶するのが難しくて持て余してたからいっそのことひとつの手段として正義のために転用しようってかたちに落ち着いた結果として、ゾーフィが怪獣をよこしてくるっていう不気味な絵面になったんじゃないかなぁ……。
ウルトラマンは万能の神ではない」からこそゼットンにも対処しかねるし、人類を他マルチバースから守り切るというのも難しいから処分するしかないなんて判断が下されるっていう描写に見えた。
でも勝手に生み出しておいて勝手に滅ぼすっていうのはなかなか神様っぽいムーブだよね。ウルトラマンはもう神ではないけど、仮に光の星のやつらは神だとするなら。
……ところで絵面が面白すぎて笑いそうになったんだけど、ゼットンて原作でも乳首からビーム出すの?

・「我々に従わなければ禍特隊は殺す」と脅されて神永が「なら自分はゼットンより早く人類を滅ぼしてやる」と宣言した(しかも脅しじゃないよと変な言い訳までして)のが理解できてなかったんだけど、あれは「せっかく人間を好きになったのに失望させるな」みたいな意味だったのかね。
他者のためなら自分を犠牲にできるはずの人間が、同じ人間を殺そうとするのが許せなかったと。本当にそこまで愚かな生き物なら、滅ぼされてしまってもいい……むしろ自分の手できちんと責任を持って処分しようという気持ちがあったのかもしれない。

・さっきはセクハラだって言ったけど、浅見が神永のケツ叩くシーンは僕は結構好き。仮にも1回巨大化して、人類の中では多少でも神永の気持ちが分かるようになった浅見が対等な同僚として気合を入れてやるというのはなかなか熱い展開。
神永は神永で、人間には何もできっこないと言い張る滝を目の前にして、彼にしっかりしろと言うのであれば自分がまず絶望的な状況に対して立ち向かう姿勢を見せなければいけないっていう筋の通し方もかっこいいし。

・あー! あのVR会議についての「本当にすごいものとは滑稽なものなのかもしれない」って話、結局どういう意味なのか計りかねてたけどようやく分かった。予算の都合で描けなかったのを正当化したって話も見たけど多分そうじゃなくて、ぐるぐる回ったりしてこれまで散々シュールに描かれてきたウルトラマンの戦闘は「我々には理解できないすごさ」の裏付けなんだよっていう解説として機能してるのか。僕の見方はあながち間違いじゃなかった訳だ。


ゼットン戦の絶望感、やばかったなぁ……。ブラックホールみたいなのが発生して、光ですら逃れられないっていう大前提が我々の中にはあって、BGMも思わず泣きそうになるくらい悲壮的で劇的なものが流れて、でも奇跡が起こって脱出できるんだよね? とどこかで希望を抱いてたら為す術なく吸い込まれてしまって……あの一連の流れは本当にちびりそうになった。
間髪入れずにふわふわ浮いててゾーフィとの対話シーンに入るから頭バグったけど。あれもあれでシュールすぎる。ほぼ同じ映像が初代ウルトラマンにあるって知ったときはようやく納得できたけど、いきなりあの謎空間を見せられたらびっくりする。

・僕はウルトラマンが最後のシーンで死んだとはあまり思ってない。神永の意識はない(?)ままウルトラマンが人間との中間的存在としてあったように、ウルトラマンの意識は消えたけど神永の中には間違いなくいる。イメージとして割と近いのは寄生獣ラストのミギーかも。
『M八七』はウルトラマンから神永へ向けた歌だと思ってるので、もしかすると今後は神永自身の意志で「君が望むならそれは応えてくれる」のかもしれない。続編が作られるとしたら、今度は神永人格のウルトラマンが人類の進歩を見守るかたちになるのかなと。
「痛みを知るただ一人であれ」ってのも、これから"ウルトラマンだった人間"として生きていかなきゃいけない神永に対する応援な気がする。普通に考えたらかなりヘビーだよね、また各国から狙われるかもしれないし、仮に変身できないとしたら尚更、抵抗できないまま体中を弄くり回される羽目になる。
マルチバースからの侵略者だっているかもしれないんだから、リピアとしては死ぬけど、さっきの話の比喩で言うなら生命の実……S2機関だけは神永に託すような感じだとは思う。

・僕も一応、一般論として「人類はウルトラマンに頼らず自立しなければいけない」みたいなをテーマを物語を知らないままにそこだけ知ってたから、仮にもひとつきちんとした例を知れて良かったなとは思ったけど、原作ちゃんと見ようとはあまり。
シンでなぞられた話の元ネタくらいはいつかチェックしたいけど、全話は他の要因で見たいと思わない限り見ないと思う。デッカーを見るモチベは少し高まった。

 

M八七

・『M八七』ってかなりウルトラマン色が強いネーミングだから一般ウケしなかったら悲しいなと思ってたけど、一般層はそもそもM78がウルトラマンの用語ってことすら知らないからなのか知っててなのか、ちゃんと急上昇1位になっててよかった。めっちゃいい曲なので。

・ヒロアカOPの米津玄師『ピースサイン』、今聞くとよりヒーローソングとしての良さが滲み出てくる。特に2番の以下にあげた部分なんてまんまシンウルトラマン
「僕らの上をすれすれに通り過ぎていったあの飛行機」って明らかにウルトラマンだし、2番の
「守りたいだなんて言えるほど
君が弱くはないの分かってた
それ以上に僕は弱くてさ
君が大事だったんだ
一人で生きていくんだなんてさ
口をついて叫んだあの日から
変わっていく僕を笑えばいい
一人が怖い僕を」
マジでリピアじゃん。物語の始まりはかすかな寂しさ。

・なるほど、万有引力を寂しさの象徴として捉えるなら、種族としてのウルトラマンが重力を無視して飛べるのは個として完結していて引き合う必要が無いからなのかもしれない。それは確かに、寂しいわ。
米津玄師という人選も、元は一介のボカロPだったのが今では日本を代表するトップアーティストとして神格化されてしまっているあたりにウルトラマンへシンパシーを感じたところもあるのかな。持ち上げ過ぎ、よくない。
『M八七』は米津玄師がウルトラマンというコンテンツに対して理解度が高かったというよりは単純に知らなかったとしてもウルトラマンっぽい曲を書ける彼を選んだスタッフがすごい説を推している。

 

終わり。また何かあれば追記するかも。

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