やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

仮面ライダーエグゼイド 第10話「ふぞろいのDoctors!」 肯定的感想

 

医者を救う患者

・患者……恭太郎を救うためなら危険も厭わずなんでもやると言う永夢を一喝。これまでイマイチこの説教の意味を汲み取り切れなかったのは、文脈が隠れていて見えづらいからだったのかも。
見え方が全然違うので一緒にするなと言う人もいるかもしれないものの、ここでやりたいのは多分オーズ最終回に近い話なのかな。
誰かを救うために自分を勘定に入れずに突っ走るんじゃなくて、ドクターならまず自分が生き残ることを考え、その上で周りの人間と協力し合うべき……という。
自分を過信して独善的に暴走する永夢を叱る……というニュアンスではなくて、前回言っていた「1人で無理をするなよ。ゲーム医療はドクター自身の命に関わる危険な行為だ」という"心配"という意味合いで捉えた方がスッキリと理解できるかも。

もうひとつ、この話は多分「医者と患者の主客逆転」も重要な要素で、昔は患者だった永夢が今度は日向を助けるというのもそうだし、今は助けられる側な日向が永夢に対して重要な助言をするのもそう。
……だからなんだって? 俺も分かんない。

・前回フルドラゴンが暴走したのは、Mのゲーマーとしての腕が足りなかったからとかそういうことじゃなくて、"他人の力"を借りる心づもりがなかったから……という側面もあるのかもしれない。
尤も、永夢がなるフルドラゴンはしばらく暴走しがちではある。


・「ごめんなさい」って、大事よね。自分の間違いを認めてきちんと謝れるのは、とてもいいことだと思う。作劇的には、どうせそれで和解する訳じゃないから前座として謝らせただけって感じだけど、それでも。

・「大丈夫、永夢ならきっとできる」
ポッピーはやっぱり、今のところ「根拠もなく都合のいいことを言って励ましてくれるキャラ」という立ち位置らしい。人間が想像する、人間に都合のいいサポートAI……イズほど顕著じゃないにせよ、そういう側面がここ数話と映画(平ジェネ Dr.パックマン)では特に強い気がする。

・みずきとさつきに対して怒鳴り散らす飛彩。
彼女らって多分2話以降は出てきてなくて(少なくともセリフはない)、エグゼイドファンの中でも何人が名前を知ってるのか怪しいモブキャラなんだからそのまま出さなくても何も問題ないはずなのに、わざわざこのチーム医療の回で出すからには、それなりの意味があるのだと思う。
その前提に立って見ると、普段は気にも止めてない飛彩だけど、小姫の仇討ちを焦ってイライラしてたことで怒鳴ってしまったのをきっかけに、永夢と違って他人に諭されることなく「オペは一人でするものじゃない、自分は間違っていたのかもしれない」と気付いた……の、かも……?
直後の永夢とのシーンでは煽られてるのもあってとてもそんな素振りはないんだけど、これはクライマックスの話に繋がります。

 

永夢とMの関係――理想像を演じる

・今回の永夢の作戦について、何回見直してもよく分からない。一番分からないのはポッピーの「まだゲームをやってないのに、永夢の性格が変わった?」というセリフの解釈。
まず思ったのは、単純に永夢が作戦のためにMを演じているだけという可能性。でもその場合目を赤く光らせるなんてことが自分の意志でできるとは思えないし、テーマ的にも面白味を見いだせない。

次に思ったのは、さっきの屋上のシーンでは「僕には(できない)……」と落ち込んでいたけど、永夢の中にいる"M"のこともある意味では"他者"だと解釈して、恭太郎の言う通り信頼して身を任せたという可能性。こっちの場合「自信をなくしているときでも、自分の中に二面性があればもう片方を他者として信頼し頼れる」というのはすごく面白い発想だと思う。思うんだけど、設定的には永夢とMってそこまで決定的に分離・乖離した二重人格ではないはずで、後夜祭の高橋悠也曰く「たまに関西弁が出ちゃうようなもの」らしい……又聞きだが。
これまでこっちの表面では「Mは記憶や意識がなくなる二重人格とは別種のものなので、永夢はMという別人にオペを任せているのではなく、あくまでちょっと口の悪い永夢本人がオペをしている」という前提で話を進めてきたのでノイズが発生し得るんだけと、レベル5で暴走したことで体内のバグスターウイルスが活性化してM人格が存在として強く濃くなって、段々永夢とは乖離しつつある……その上で、今回は体を預けたと解釈することもできなくはないが、それにしては永夢の内的描写がなさすぎるのでなかなか飛躍したものと言わざるを得ない。
今言った2つを折衷する案として「永夢はMを他者として心理的に頼り、その上で自分の意志でMを演じている」というのが、現状僕の中での一番いい落としどころかな。

以下、説明のためにしばらく電王の設定についての話をします。良太郎曰く"桃太郎"をイメージしているはずなのに、肝心のモモタロスは桃太郎じゃなくて鬼、ウラタロスは浦島太郎じゃなくて亀、キンタロスは金太郎じゃなくて熊、リュウタロスも龍の子太郎じゃなくて龍そのものがモチーフ……ということで、みんな基本的には"太郎ロス=タロス"になっているのだと思われる。
で、じゃあそれはなんでかと考えると良太郎の中にある「(悪はいても)ヒーローは実在しない、どんなに不幸でも自分を助けてくれない」というある種の絶望が反映されてるのかなと。桃太郎についても、あくまで「子供の頃ヒーローだと思ってた」という過去形だったし。
ただここで面白いのは、桃太郎は実在しないかもしれないけど、その物語(イマジン)の力を借りて自分がヒーローになることはできる、という描き方なこと。物語を見て自分の行いを正せば、ヒーローは現実に受肉できる……。

永夢にとっての"天才ゲーマーM"という概念は、この文脈における"物語の主人公"……或いは"理想の自分像"なのだと考えたとき、それは確かに本人にとって他者的な存在でありながら、自分に内在させる(演じる)こともできる存在なんだと解釈することができる。
その"理想像"を少し修正して自分なりに噛み砕いた結果得られたのが、自分を信じることをやめて権利(ドラゴナイトハンターZ)を明け渡すこともしないまま、仲間の力も信頼し協力(利用)する今回の作戦……なのかな? 自分も、他人も、どっちも曲げない道を選んだからこそ、友情とかでなぁなぁにするのではなく極めて打算的に利用し合うような関係になったのかも。


ドラゴナイトハンターZ 4人プレイ

・今回だけ仲間割れをしないのは都合がいいようにも思えるが、ライダー同士で積極的に争う動機があるのは、基本的には仇として大我をやっつけたい飛彩とガシャットを回収したい大我の2人だけ。そして2人にとってグラファイトは因縁の相手なので、まずはそっちを我先に倒そうとするのはまぁ分からんでもない。
加えてさっきの解釈を取るなら、飛彩はみずきとさつきの2人とのひと悶着があったので、多少は空気を読んで協力してくれてる……のかもしれない。

・パッケージの黒いドラゴンが敵だってのは前回言った通りで、おそらくモンハンのように敵の毛皮などを剥いで装備として身にまとうゲームなんだろう。上半身に偏重しがちな中で足にも強化アーマーが付くのは割と珍しいよね、仮面ライダーなのに。
単に有名なゲームだからってだけじゃなくて、ちゃんと敵の力を使う仮面ライダー的な要素をピックアップしてるのがいいと思う。
ドラゴナイトをハンターする……訳だから、もしかするとプレイヤーキルを推奨してるゲームなのかもしれないと思ったりもした。だからこそ今回、永夢は「自分を攻略させる」という発想に至ったのかな? とも。

分解したアーマーがそれぞれレベル5の力を秘めているなら、フルドラゴンはレベル15くらいあってもおかしくないのではというのは素朴な感覚だけど、行動経済学の概念に限界効用逓減の法則というものがあって、それを適用すればそんなに違和感はない。
モノの価値というのは単純な足し算には置き換えられなくて、例えば車を1台持っているのと2台持っているのを比べた場合、単純に得られる利益が2倍になるかというとそんなことはなくて、一人で2台持ってたって同時に乗れる訳じゃあるまいし、0から1に変わったときほどの明確に生活が便利になるかといえばそうでもない。リンゴが2つある場合もそうで、丸々2個も食べたら飽きて要らなくなる。
これらと同じで、ファング,ブレード,ガン,クローという武器をたった一人に持たせても、それらを全て100%使いこなせるかというとなかなか難しい。それよりは、一人にひとつずつ分担して個々のパフォーマンスを最大化した方が、結果的に得られる効果は倍増するよね、という理屈。


・仇討ちに意味はあったのかと自問する飛彩は、ゼロワンで鉄クズとなった滅を見つめる不破と全く同じシチュエーションで笑った。
セリフを聞く感じ、ほんの少しだけグラファイトを倒せば小姫が戻ってくるんじゃないかと期待していた気持ちもどうやらあるっぽい。


・日向から分離したはずのハンターゲーマを倒したにも関わらず日向のゲーム病が治ってなかったのは、グラファイトがプロトガシャットを取り込んだせいなのか、そうする前からプロトと正規版はリンクしてるからなのか、本体であるグラファイトを倒さないと駄目らしい。隊長のリボルと周りにいた兵隊みたいな関係なのかな?


まとめ
飛彩が仇討ちを終えたけど、エグゼイドのキャラクターって作中で何か劇的な変化とか成長みたいなものをあまりしないよね。次回以降も「嫌味だけど腕だけはある医者」として、大きく変わることなく動き続ける。
これは悪い意味じゃなくて、キャラクターの特徴が"復讐"みたいないち要素に頼り切ってない証拠というか、割と面白い描き方な気がする。割と2号ライダーって明確な動機があって、それが解消されれば態度が軟化したりギャグ落ちしたり空気になったりしがちなのに、エグゼイドの場合は元々持ってる動機の占める割合がそこまで大きくないのか振れ幅がやけに小さい。

 

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裏面

仮面ライダーエグゼイド 第10話「ふぞろいのDoctors!」 否定的感想

 

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