やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

仮面ライダーゼロワン 第20話「ソレが1000%のベストハウス」 感想

キャラクター

 飛電或人
・「元に戻ってよかったなぁ」
バックアップデータがあるから確かに"元に戻って"……いないんだよな、これが。
前回のサクヨはともかく、今回の最強匠親方達は「嫌がらせをされた経験と人間に抱いた敵意」の情報が明らかに、そしてどう考えても意図的に抜き取られた上で復元されている。
「時計の針は未来にしか進まない」とは前作『ジオウ』のセリフだが、これはタイムマシーンが存在する世界観においては一見成立しないことなんだけど、そのタイムマシーンに乗る"人の記憶"を頼りにすることで成立する話なのね。
「いくら過去に戻っても、時間旅行者にとってみれば地続きの時間」であるという話。伝わるかな。
Aさんがカップラーメンをこぼしてしまったからと3分前の過去に戻ってやり直そうとするとき、確かに客観時間としてはラーメンをこぼす前は"過去"だけど、Aさんが「タイムマシーンでやり直そう」と思っているのは、これから先の計画……すなわち"未来"だよねと。
これをひとつのアナロジーとして、例えばゲイツがソウゴを倒すか倒さないかで何度も迷って何度も辞めることも、同じことの繰り返しなんかじゃなくて、回を追う毎に意味合いが微妙に違うんだっていう話なんだけれども、これを今回のヒューマギアについて考えてみると、なんと成立しないのよね。

スマイルは、人間に敵意を抱いた後で"改心"をした訳では全くなくて、本当の本当に針(記憶)を巻き戻されて「敵意を抱く前に戻った」。
敵意がただのプログラムではなく感情であるならば(感情とは何か?というのは僕にもよく分からないが)、説得するということも不可能ではないはず。そしてそれが成功した場合、再び暴走することはきっと少なかろう。
だがそうではないので、同じことをされればまた同じように暴走してしまうことが予想される。今回は一応なんか対策を打ったらしいけど、効果があったとは明言されていない(新屋敷は今回スマイルに悪意を向けなかっただけ)ので、次回以降またヒューマギアが暴走してもおかしくはない。
『ジオウ』ではタイムマシーンの存在によって客観時間の方がブレるので主観時間に軸を置いたけれど、『ゼロワン』では(正確には、今のところはヒューマギアに限る)、客観時間はブレないが、記憶という主観時間の方がブレている。
或人の言う"元の状態"というのはあくまで「人に敵意を抱く前」だということなんだろうけど、記憶の取捨選択ってそれこそ時間と記憶は紙一重なので、結局倫理的には過去改変と同じくらいの重要性を持つのよね。本来、過去を帳消しにするほどの新たな経験を足し算することでしかなし得ないという点で困難な"洗脳"が、比較的簡単にできてしまうことになる。既存の価値観を消した上でなら足し算(ラーニング)も簡単になるだろうし。
これがザイアスペックによって、人間にもできるようになってくると更に面白いんだけど。
・或人が一時的に売上を気にする(それも人の笑顔を差し置いてまで)の、キャラブレと言ってしまえばそれまでなんだけれど、僕は「天津の言葉で揺らいでいる」の範疇で納得できる。そこは一番揺らいじゃいけないとこだろとも思うけど、本当にこの1話の一時的なことなので。
いくらチョコが好きな人でも、たくさん食べた後は一時的に食べたくなくなることもある。でも大きな目で見れば「チョコが好き」で偽りはない。そんなイメージ。
というかまぁ、五番勝負に負ければ買収されてそれこそ利益優先の社風に変わってしまうかもしれないんだから、大局を見れば理に適ってないこともないんだけど。だから問題は或人が大局を見るような人間かどうかという点であって、それこそ天津にその視点を与えられたというのはきっかけとして普通に通ると思う。
・スマイルが「せっかくいい家を見つけたのに……」と落ち込む様子を見て五番勝負の継続を決めるんだけど、大城本人は勝負と関係なく依頼をしているはずなので、関係は本来ないと思われる。
となると、このときの或人はひょっとすると「スマイルが自信を持っているからきっと大城はこちらを選ぶはずで、だとするならこの勝負は勝てるから継続すべき」という打算的な考え方をしていたと取ることもできるかもしれない。これは理想一辺倒だった彼からすると成長と言えるものかもしれない。まぁ向こうを反則負けにするにはこちらも暴走してるから無理があるってのもあるし、結果的にも負けてるけど。
・親方を5人に増やすって発想は僕には全くなかった。モノとして捉えてるからこその機転って感じですごい。皮肉じゃなくね。
・飛電が会社の利益じゃなく社会の利益を追求するというスタンスを取るなら、株式会社ではなく特定非営利活動(NPO)法人という形式の方が良かったのでは、とちょっと思った。制度的にどんな違いがあるのかは寡聞にして知らないが、綺麗事を重視するならそっちの方が良さげではある。
……でも、株式会社というかたちで社会の利益を追求できたら、それが一番綺麗な気もする。
つまり、株主たちが自らの意志で綺麗事を支持し、株式会社でありながら事実上のNPOとなる状態。是之助はそこまで考えていたんだろうか。

(参考:NPOの基礎知識 《まとめ》- NPO法人DREAMISLAND)
・前回レイダーを倒しても変身している人間には大した影響がないことを知り、今回はマギア同様自ら手を下した。
天津が前回やれたのは冷徹だからというよりは単にレイドライザーの仕様を知ってたからというのが強いと思うけど、「仕事だから」というのは、人がさまざまな決断に対して鈍感になれる大きな理由のひとつだ。
今回は特に、その側面に注目すると非常にまとまりがよく見える。結果として、或人の非情かつ共感的でない割り切り(レイダーを倒す)が新屋敷が負けを認めるきっかけとなった。詳しくは後述するが。

 

 天津垓
・或人と対照的に会社の利益を第一に考えるキャラというのは分かる。フェアプレー云々もあくまでそのための手段であって目的ではないんだろう。
ヒューマギアと違ってレイダーの場合はセキュリティが云々という話にはならないし、相次ぐ暴走は確かに「謎の男がZAIAを貶めようとしている」という筋書きでそこそこ通りそうではある。飛電に対しても言ったように、人を見る目がないんじゃないのという視点からの批判はできようが。

 

 不破諫
・滅とのやり取りは至極クウガ的でつまらない。僕は以前、特徴を失ったキャラクターに残るのは役者さんの人間的な魅力(厚み)だろうと言ったけど、まぁそれ以上でも以下でもないというか、「岡田さん(砂川さん)の顔や声が好き」って人以外にとってみれば大して面白くもない絵面だなと。
亡(仮)も、あそこまで派手に演出しておいてそれに見合った正体明かしがあるとは思えない。既存のキャラはみんな一度はその可能性を考えてみたし、ぽっと出ならそれまでだしで、どう転んでも驚くことはできない気がする。「実は或人の別人格でした!」とかなら多少は驚くかもしれんけど、その後うまく扱えるとは到底思えない。
・アサルトウルフのダメージは克服したはずなのにパンチングコングを使う理由としては、例えば捜査等で疲労が溜まってたなんて可能性がある。万全の体調なら耐えられるけどそうでない場合は不安、と。こういうところを杓子定規に捉えていちいちモヤモヤするのはもったいない。

 

 住田スマイル
・「何故売上を意識しなければならないのですか?」
これはスマイルがどうこうというよりは普通にラーニングの仕方が悪いんじゃないか? 彼女の中で優先順位が低い(価値観の問題)とかじゃなくて、そもそも目的に入っていないような言い方だもん。
悪いというか、ただ売上勝負には向いてないということだけれど。
アークが人間の悪意ばかりをラーニングしているように、ゼアは綺麗事しか知らないんだろうか。
・家を擬人化するのも今回の面白ポイントのひとつだったな。確かにそういう文化あるよな。擬人化と言いつつも本当に人と同程度の権利は認めていないというのがミソで、人がヒューマギアに対して抱くのと似たような心理をヒューマギアが抱くというのは、逆に人間とヒューマギアを同じく扱っているからこそ出てくる発想でもあると思う。
ただその人間というのはあくまでフィクションの中の人間であって……みたいなのも含めて面白い。

 

 新屋敷達己
・「心にもない笑顔しちゃってさぁ!」
営業スマイルはぶっちゃけお互い様よね。ここで書いちゃうと19話のネタが減るのであんまり書きたくないけど、更新が滞ってる今となってはなりふり構ってられん。
そもそもの話、仕事において心のこもった本心からの笑顔が発せられる状況なんてかなり限られてくる。自分が喜びを感じなくてはいけなくて、その上営業スマイルの代わりになる場面となれば、本当に「客の喜びと自分の喜びが合致したとき」しか認められない。
しかも「自分の売上が上がって嬉しい」のような卑近な笑顔でもいけない。
相手に良い家を紹介することそのものに喜びを感じなくてはならない。
前回の文脈を引きずるなら、「自分が自分の立場でいいと思う家しか薦めてはいけない」ということになる。これがどれだけの暴論かというと、例えば客が自分の嫌いなタコを買おうと持ってきたら、「これは美味しくないですよ。それどころか食べたら吐き気がします」という公私混同ここに極まれりといった応対をすることになる。
スマイルのやっていることは、「僕は嫌いだけどこの人はタコが好きで、きっと食べて喜びを感じるんだろうな」というのと同じこと。"相手の立場"という発想が、あの新屋敷の詭弁にはない。本人は「大城様と同じ」と言いつつも、本当に共感できていた訳ではなかったというのも皮肉でいい。
「仕事だから」と我慢している際の人間には、ヒューマギア同様、そのような意味での心はないと言っていいだろう。
「こんなことしたくない」のような自分の気持ちは、自分によって"殺されている"のだから。
僕がこの間記事に書いたような、誰もが仕事において我慢することのない世界が訪れたならまた話も変わってくるが、少なくともゼロワン世界ではまだ成り立たない。

(参考:ニートによる「仕事論」)
・ライズフォン使ってるのはちょっと笑った。プログライズキー同様、ZAIAでもつくってるんだろうか。

 

 大城銀乃丞
・「君は何故家を売る?」
物語的な要請のためにこんな大仰な質問を投げかけているようにも見えるけれど、そういえば僕も実際こんな風に問い掛けたことがあるんだよな。地活のスタッフさんに「あなたはどうして福祉の仕事をしているのか」と。
あの時どんな気持ちだったのかハッキリとは覚えていないんだけれど、「この人は信頼できるのか」みたいなことを考えていたような気がする。バイト中に自問自答したこともあったな。
・確かに「広い家」とは言ってないが、彼は「大きい家」を要求していた。どちらも意味的には大差なかろう。つまり、スマイルは"言葉的な要求"とはむしろ反対の家を紹介したことになる。
これは、自分でやらず他人に依頼することの意味に関わってくる重要なテーマ。俳優さんの圧がすごいから全部分かり切ってたような気にもなるけど、僕にはそうじゃなくて「自分にはなかった視点」を提供してもらえたという流れだと解釈した方が収まりがよく見える。
それこそが必ずしも共感しない、"仕事"だからこその利点なのかもしれない。

 

 


今回はマギアVSレイダーが見られたので、それだけで僕は満足です。ひとりの人間とひとりのマギアが対等にぶつかり合うというシチュエーションそのものに、令ジェネを見た僕としては価値を感じる。仮面ライダーに選ばれなかった者たちにも変身する権利≒発言権がある。
結果的には強くなければ仮面ライダーに倒され封殺されてしまうのは、其雄の考え方からして仕方ないんだけれども。仮面ライダーシステムはメタ的にも特別感があって、実際強いからね。

 

次話

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映画

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