やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

運命のマッチポンプ『仮面ライダー剣(ブレイド)』 本編感想

見終えました。各話感想は後ほど。


満足度は10点満点で4かな。やりたいことは見え隠れするけどあまり伝わってこない印象。
前半後半などと分けられることが多い今作だけど、良かったのはせいぜいこれからに期待を持たせた中盤くらいで、終盤は序盤とどっこいどっこいな感じだった。
以前に見たときはラストにいたく感動したものだけど、今見るとそんなことはなかったね。今回は主にそこについて取り扱おうと思う。

 

 自己犠牲

まず引っかかったのはこれ。自己犠牲の是非については、序盤で結論が出てるんだよね。「ヒーローを心配する仲間がいる」と。その時は、なぜか「心配してくれるんだありがとう」と言いつつ欠陥のある(と思われた)ライダーシステムを使い続けるという奇行に走った訳だけれど、言ってること自体は間違ってない。虎太郎も、広瀬さんも、始も、橘さんも、睦月も、あとたぶん烏丸所長も、剣崎のことを心配していることだろう。橘さんだけはあったけど、全員がきちんと剣崎の選択に納得している描写がなければ、この話は成り立たない。羽美との約束も反故にしたかたちになるしさ。失踪したって聞いたら、彼女もきっと悲しむでしょ。
最終2話をあれだけ尺余らせたような薄い展開にしておいて、どうしてそのあたりの描写がないのか、甚だ疑問。例えクウガの物真似だと言われようが、ああいう結末にするのであれば、48話でケリをつけて49話で剣崎の選択について彼らが納得する様を描くべきだったように思えてならない。


 欲張らない

家族を守れなかったトラウマから、全ての人を守りたいと欲張るようになったと、剣崎は語っていた。が、上に挙げた人たちを犠牲にしているのはもちろんのこと、始ひとりを信じるために今この世にいる全生命を犠牲にするような決断をするという流れはおかしすぎる(正確には剣崎が直接決断した訳ではないが、睦月は剣崎の代弁をしたつもりだったので、もしただの勘違いで危うく世界が滅びかけたのであればそれは馬鹿らしいと言う他ない)。
もちろん、そういう作品はあっていい。世界よりも個人を選ぶ人はいてもいい。でも剣崎は明確に全ての人を守りたいと言ってきたし、いわゆるブロマンス的なそれと捉えるにはあまりにも剣崎と始の関係は薄すぎる。
あくまでも、始は人間に近いから"守るべき対象の一人"として目をかけてきただけのはずで、始のために人類を危険に晒すのは明らかに理屈が逆転している。


 ダブルスタンダード

これも気になった。始がジョーカーでいることを拒むようになったのは、あくまでヒューマンアンデッドが働きかけたからであり、いわば洗脳されただけに過ぎない。本来のジョーカーは、他の者が言うような冷酷な殺し屋でしかない。
そしてこの構図は、カテゴリーAに影響され暴走・迷走する睦月と被るものがある。
睦月サイドの話を「スパイダーアンデッドの呪縛から解放されてめでたし」とするならば、ジョーカーも「ヒューマンアンデッドの呪縛から解放されてめでたし」でないとおかしいと思うのだ。
とはいえ、作中人物がこの矛盾に自覚的な場合はその限りではない。何か明確な基準でもって(例えば他を思いやる気持ちがあるかないか)成敗するのは、まだ受け入れられるものではある。けれど、ブレイドの作中ではこの2つの問題は同時進行こそするものの全く別のものとして取り扱われ、別個に解決する。それぞれの話は感動的かもしれないが、2つがブレイドというひとつの作品内に共存することで非常に強い干渉が起こっている。そこに一切触れずに終わるというのは、前作555で既に矛盾を扱ったからということを差し引いても、自分の中では"ナシ"という結論に至った。


 共存……?

終盤で割と唐突に触れられた共存についても、色々と疑問が残る。初期こそは仮面ライダーシステムの存在自体がそれを示唆するものだとも思ってたけど、レンゲルがリモートしたエレファントを仲間とか言う描写で、普通に考えてあれは"使役"という明確な主従関係だから違うなって気付いた。
イーグルが動物園で檻に入れられ見世物とされていることに言及していたがその後は特に触れられないし、どころか"心優しいアンデッド"風な嶋がカナリアを檻に閉じ込めていたりと、不可思議な描写ばかりが目立った。結局ギラファは人間を拒絶したし、共存は無理という結論で良かったんだろうか?
一応、色んなエピソードを通して筋になりそうなものといえば「他者を思いやる気持ち」なんだけども、それの代名詞とされている人間の始祖たるヒューマンアンデッドがジョーカーを洗脳しているのがなぁ……。
ついでに言えば、天王寺さんの意見もやり方が気に食わないってだけで封殺されてしまってもったいなかった。


 運命と戦う

このテーマについては、中盤で示されて非常に興味を持った。モチーフであるトランプとも相性がよく、終盤ではナレーションでも「置かれた状況」を「配られた手札」に喩えていた。しかし、それではどうやっても龍騎と被るどころかその劣化にしかなり得ないし、前述の矛盾も結局555以上に踏み込むことはできなかった。
更に追い打ちで、「ギラファを封印する前にリモートしとけばよかったんじゃないの?」となったことで、剣崎達のせいでめちゃくちゃになった地球を救うというマッチポンプ感が生まれてしまう。リモートで解決できないのならば、ギラファ封印後ではなく先にそれを示すべきだった。
うまく料理すれば面白くなっただろうなと思うだけに、「運命とは言っても自分たちが勝手に状況悪くしたたけじゃん」となってしまったのが非常に残念。

 


そんな感じかなぁ……?
ライター交代は語り草だけど、形式的には同一性を持ったひとつの作品として引き継いでる訳だし、前半の流れをなかったことにして話を展開するのは違うと思ったので、全体として筋が通ってるか否かを考えた結果、こういう結論になった。終盤"だけ"ならまぁまぁ良かったと思うよ。最後のシーンも映像としては綺麗だったしね。どちらかというと文学的というか、余韻に浸らせるような。

剣はその後が小説版とかたそがれで語られてるから本編見終えたらすぐ読む予定だったんだけど、正直その本編にそこまで心惹かれなかったので、また気が向いたら読みます。

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本編

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劇場版

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前作

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