やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

受け継ぐものと終わらせるもの『仮面ライダーBLACK SUN』 初見感想

本記事は『仮面ライダーBLACK SUN』を全話一周見終えた時点でのざっくりとした感想であり、ネタバレを含みます。

 

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各話感想(更新予定)

仮面ライダーBLACK SUN 第一話 感想

仮面ライダーBLACK SUN 第二話 感想

 

 

 

いやー、割と面白かったね。完全に娯楽(他人事)として楽しむつもりだったので、まさか泣くことになるとは思ってなかった。ちなみに『BLACK』『RX』はつまんで何話か見たことはある程度でそんなに知らないけど、まぁ全然アリですね。原作見てから本作を見直すという楽しみが残ってるのは単純にアツい。
今回はとにかく思ったことを一通り書き散らしてまとめておきたいだけなので、話もあっち行ったりこっち行ったりしながら気ままに話します。


一本の長いイロモノ映画

全体を俯瞰して見たとき、本当に白倉さんの言う通り一本の長い映画みたいだったなと思う。全話一挙配信ならではのやり方で、1話の終わりに『555』のような取ってつけたようなヒキを用意するでもなく、めちゃくちゃぬるっとしれっと終わるので、すげー気になるとかじゃないんだけどごく自然にそのままの流れで次も見始めちゃうような、これまでにない不思議な視聴感。
正直「徹夜で全話見てやるぞ!」なんてつもりは毛頭なくて、1日1話で2週間くらいかけて見るつもりだったんだけど、一度見始めたら止めなければ次の話が再生され続けるPrime Videoの仕様も相まって、なんとなくやめどころが分からなくなっちゃってる内に結局朝まで見てましたね。たまたま金曜が休みだったのも相まって。

僕はやっぱり、可能なら一気見を推奨するかな……。例えば週1話ペースで2ヶ月とかかけてダラダラ見るのには向いてない。
確かに最低限「今回のバトル」的な部分はそれぞれあるんだけど、根本的にしっとりした雰囲気なのも相まって「めちゃくちゃおもしれー!」ってなる瞬間はないので、その1話だけで楽しもうとするのは無理を感じるし、そもそも作る側としてもそういう視聴方法はあまり想定してない気がする。ふーん、ふーん、ふーん、おっ、ふーん、おっ、ふーん……みたいなのがずっと続くので、ドカーン! ってくるような見どころがそんなにないからこそ、一気見をおすすめしたい。
ただ実際に見てみて「今日はもういいかな」って思ったならそれはそれで引きどきだと思うので、時間とモチベの許す範囲で、なるべく続け様に見た方がストレスないと思う。
BGMのパターンが少ないのかメイン級のやつは聞き飽きるくらい流れるから、飽きてるにも関わらず無理して見続けるとその辺はかなり気になるんじゃないかな。


あと、作品として万人におすすめできるかっていう視点から見るとそれはちょっと微妙かなー。
激辛料理をなんの前置きもなくただ「おいしいよ、食べてみて!」とは薦めないのと同じように、『BLACK SUN』も気心知れてるわけじゃない不特定多数に向けて「面白いよ! 見て!」って無邪気に応援するのは結果的に作品にとって良くないんじゃないかなぁという気もする。
インパクトや訴求力のある展開がある訳じゃあそんなにないはずなのに、やたらとクセが強い。特に思想的な意味で、最初からしてデモ場面が多くて、反怪人側はかなり単純化された上にオーバーな差別主義者だし、反差別側は後で少し触れるけど『ゼロワン』のヒューマギアよりもかなり沸点低くてすぐブチ切れて変身しちゃうしで、割と見ててストレスがあるかないかで言えばある上に、終盤も"アレ"だからね……。
ルー大柴演じる総理も「こういう偉い人間を皮肉強めに描くやり口キライだなー」って感じで、なんだかんだそこは貫いて終わるし。ただルー大柴さんは変わらないんだけど、若い頃が同時進行で描かれることによってキャラとしての厚みが増してくっていうギミックはかなり面白かったな。

エンタメとして楽しむというよりは、今の社会に対する批判的精神を多分に含んだ映画みたいな。
クウガ』『響鬼』あたりのそれとも違うし、むしろもっと酷い形で「うるせー! やかましい!」って言いたくなるような。まぁ少なくとも楽しい気持ちにはならないよね、説教されてるみたいなもんだから。下手したら「かんがえさせられる」以外の感想を封殺してしまう懸念すらある。
自分は差別賛成ですなんて言うつもりはない、ないし、予告から読み取れるだろうとも確かに思うんだけど、それでもやはり「娯楽作品にまで言われる筋合いないよ」と。思ったのは事実ですね。
場合によってはその微妙に不快な感じをそのまま出力して「BLACK SUNつまらなかった、ゴミ!」って言う人も出てき得るし、だからこそどういう心づもりで見るのかというのが大事な作品だし、そういう意味で無条件に「面白いよ」とは薦められない。
「今話題の問題作!」みたいな煽りなら大丈夫かな。『チェンソーマン』とかもそうだけど、分不相応にヒットしちゃうとハードルが不必要に上がって、その結果「そんなにみんなが持ち上げるほどではない」ってなっちゃうから、「自分は今から一般ウケしない"イロモノ"を見るんだ」という認識を持ってもらえるよう紹介するのが丸いと思います。

 

果たして"大人向け"か?

『アマゾンズ』は当然として『BLACK SUN』も「仮面ライダーだからと言って侮るなかれ、大人向けです!」みたいな文脈で語るのは無理あるというのが第一印象。
冒頭からして、僕は「髪の毛出しっぱなしで外科手術は絵面として納得感なさすぎるだろ」っていうのが気になって仕方なかったのよね。よく見ると着てる服からしてネクタイが覗いてたりしてきちんとした手術感はないから、その時はまぁ「そういう設備がきちんとしてないところでやってるというシチュエーションが後々重要になってくるかもな」ってことで一旦スルーしたものの、にしたってねぇ。
衛生というか患者の体内に髪の毛入っちゃうかもみたいなこと気にしないようなマッドサイエンティストなんですよという演出である可能性もあるんだけど、蓋を開けてみたらちゃんとその道のプロである南,秋月博士だったから、まぁ軍には隠れて非公式に施術したからだろうなというのはありつつも、気にするのであればせめてバンダナくらい巻けるだろとも思うし……。
だから、リアリティはこの作品においてそこまで重要なファクターとして扱われてないと僕は理解した。少なくとも「いきなりバンダナ巻いたおっさんがぬっと出てきたら流石にバカっぽすぎるな……いっそ髪の毛出しっぱでいいか」くらいのライン。

翻って、マスカレイドドーパント的な普通の服で隠して顔と手元だけが怪人っていう、絵面のバカバカしさやチープさみたいなのも、隠さずというかむしろ味として出してたとこあるから、正直パッと見の悪印象をそのまま引きずって「出来が悪い」と判断する人もきっと多い。クモ怪人が結構、腸以外の部分はかなり違和感のない映像として仕上がってただけに、実際そうであるかはさておき視聴者目線では、余計にお金かかってない感が強調されちゃってる。
そういう映像のスタイリッシュさを追求する路線を期待してるなら、過去の『仮面ライダーTHE FIRST』を全く超えてこないと言ってもいい。
最近で言うなら『シン・ウルトラマン』とちょっと近いところはあるかも。あれもウルトラマンがぐるぐる回ったりするのがダサいって声もあったけど、そのダサさがいいよねっていう作り方をしてるじゃん。
手抜きでそうなってるんじゃなくて、シュールさをポジティブなものとして捉えられるかどうかが、本作を見るうえで第一の関門かな。

(参照:『シン・ウルトラマン』 感想メモ)


でもって第二に、ストーリーについても僕は手放しで「出来が良かった」とは言えない。
というのも、別に無茶苦茶だとか矛盾が起こってるとかそういうレベルの話では多分なくて、筋は向こうの中で通ってるんだろうけど、それを視聴者である我々に分かりやすく説明しようという気がほとんどないのよね。それ故に、受け取り手次第で容易に「意味分からん」ってなるだろうから、そういった意味で決して"悪い"ことはないんだけど、不親切なのは間違いない。

徹夜で見てた訳だから普通に見逃した可能性もあるが、前半はずっと葵が親と再会するって話はどこいったんだ? って思ってた。そもそも直前に捕まった男女が葵の親なのかどうかもしばらく確信が持てなかった(手配写真と見比べたら分かったかもしれないけど)ので、二話の「行くとこなくなっちゃった」は少なくとも養母を殺された件について言ってるもんだとばかり思ってて、あのシーンが「養母を殺されて、肉親もずっと待ってたのに来なくて……」という二重の意味を持ってたんだと理解したのは後になってからだった。
道中で「来るかなぁ」みたいなセリフ入れるとか、たまにキョロキョロしながらずっと待ってるタイムラプスが入るとか、そういうフォローがあればあそこが親との待ち合わせ場所だったんだって分かったかもしれないけど……分かんなかったなぁ。

四話のバイクで二人乗りするシーンはすごい良かったんだけどね。恋人でも娘でもない葵がいることで、なんとなく自分が"バイク乗り"に抱いてるイメージ……不器用だけど父性を受け入れて頼れる背中を演じる孤独なおっさんというか、ロンリーヒーローっぽさが際立ってた。

説明不足の話に戻ると、ニックがなんで情報通なのかとかも謎だったよね。最後まで見れば、まぁオリバーの息子ならある程度の人脈があってもおかしくないのかなと思うが、いきなり何のフォローもないまま「とにかく情報通なんだよ」ってことで進むから。
風都イレギュラーズはその辺、ウォッチャマンはブログやっててネットに詳しいみたいなのがあったけど、外国人ということ以外にキャラ付けがないから。

あとあれね、これはライダー文脈を多少知ってるからこそ湧く疑問かもしれないけど「石の力で怪人になるんじゃないの? なんで光太郎と信彦はキングストーン取られた状態で変身できるんだ? あぁ、そこを補うために特別に外付けしてるのがあのドライバー(≠キングストーン)って設定なのか?」みたいなところも一切、説明どころか本当に一切微塵も触れないし。
石で言うと、キングストーンを持ってるはずだからあの夫妻は追われてたんだろうなというのは察しつつも、だとしたらなんで娘を確認しないのかも分かんなかったなぁ。


毎話44分もの尺があった割には「説明はしません、ご自分で読み取ってください」ってことがかなり多くて、じゃあ説明セリフを廃してリアリティ志向なのかといえばそんなこともなく、まぁフィクションとしてはあるあるな「登場人物たちにとっては周知のはずのことを物語開始時点でわざとらしく確認するセリフ」はかなり目に付いた印象。
どちらかと言えばエモーション重視で、喋らせることが不粋になるなら分かりにくくても言わせない、という方向なのかな。デモとか宣言とかは口に出すことに意味があるから、その辺があまりにも直接的過ぎるのとは両立可能だし。

尤も、分かりにくいことを根拠に大人向けですって言うのも違うけどね、子供は分からないなりに楽しめる生き物だから。今僕が言ってるのは、きちんと理解して楽しみたい大人であればこそ、読み取りきれなくて不満に感じそう、ということです。

(参照:仮面ライダーは「子供向け」なのか)

 

差別との闘争

まぁ『BLACK SUN』の感想を語ろうと思ったらこの要素に触れないことはできないよねぇ……。と言っても差別されたことがなくて別に一家言とかないし、ありきたりのことしか言えないけど。
最初はかなり抵抗の方がむしろあって、特に序盤はデモの描写が多かったから、あぁいう"運動"自体にアレルギーを感じる身としてはちょっとあんまり面白くなかったというのが正直なところ。デモってそういうもんなのかもしんないけど、あれってあくまでパフォーマンスであって、なんかなるほどそういう考え方もあるのかーみたいな納得とか発見がないじゃん。ただ「はんたーい!」を延々聞かせるだけ。
……なんだけど、警察の目線から描かれたところはかなり面白かったな、その発想はなかった。
表現の自由があるからデモそのものは止めないけど、2つの派閥が衝突することで起こり得る暴力沙汰だけはきちんと抑えないといけない……この表面張力みたいな葛藤の視点から見て初めて、あぁいうシーンを緊迫感や現実感のあるものとして捉えられた気がする。

「反怪人デモってなんだよ」とは薄々思ってて、反差別運動はあっても差別しようぜって方向のデモというのはイメージが湧かない。差別なんてしてるようなやつを憎もう、というひねた捉え方をすれば別だけど、作中でも「怪人が好きだ! 人間も好きだ!」って言ってるから明らかに社会通念上おかしいようなことは言ってないことが分かる。
で、仮に怪人が得体の知れない別種だったとしても、あそこまで似ててコミュニケーション可能な人たち、況してマイノリティに対して大手を振って排除しようという運動が容認される、そもそも多数派がデモを起こすこと自体が考えにくいんだけど、怪人のルーツが日本政府にあるなら、国が怪人にも市民権を与えるような動きを見せて、その社会情勢に反対してる……という流れなんだとしたら多少は納得がいくかな。
まぁ怪人が主に人体改造によって生まれるのであれば、劇中に出てくる怪人が「自分たちは元々捕まってた人間で、改造されてこんな体になったんだ」みたいな話を一切しないことにも疑問は生まれるんだけど、カニ怪人の様子がちょっとおかしかった辺りで頭の中身もいじれるんだよってのを描いてたのかな?
ってことで、怪人差別もある意味では「戦争反対」「兵器保有反対」「徴兵反対」等々に通ずる主張だった……というひっくり返しは、リンチまでさせてあれだけ露悪的に、純粋なる悪かのように描いたことのフォローくらいにはなってるかなと思う。

ちなみに最後の移民反対みたいなのをここで言う差別的デモだとは捉えてなくて、仮に差別的感情が根っこにあるとしても、正当性を全く感じないようなものじゃないのよ。国際法みたいなのについてはよく分かんないけど、仮に今の日本が満場一致で鎖国のようなことをしたいと言ったとして、それを絶対に拒否できるような根拠があると思えないというか、そういう国が存在する自由を認めないというのは、規模の差はあれど個人の自由を認める世の中の基本姿勢と整合性取れなくない? と思うし、少なくとも自分の中の倫理観には微妙に反する。
あくまで国が保障してくれるのは自国民の権利なんだから「国民にする/しない」って線引きはどこかで引かないといけないし。そりゃ「うちの国では合法なので侵略戦争します」とか言い出すのは論外だけど、鎖国はギリ許されてもいいんじゃないのと思う。
世界は当然として日本も経済的に困るだろみたいなのは想像つくけど、実際にするかどうかじゃなくて「もしするとしたら、理屈としてはし得る(許される)のか」って話だからね。自由とか権利って。合法だけど、流石に迷惑かかるからすんなよってことはいくらでもあるし。
余談終わり。


これは汲み取り過ぎかもしれないけど、『BLACK SUN』の全体的なチープさとか色んな違和感、例えば葵や主題歌の英語が日本語的というか流暢に思えなくて聞いてて少し恥ずかしいみたいなのって、全部根幹のテーマたる「自分の中にある狭量な価値観に閉じこもって"違和感"を批判し排除したがる差別の論理、の否定」に通じてるから、多分意図的だとは思うんだけどうまいというかズルいみたいなとこはあるよね。
日本語しか分からない人は当然英語を知ろうとする、英語話者は逆にたどたどしい発言者が何を言わんとしてるか汲み取ってあげるという"歩み寄り"をしないといけないようなつくりになってて、それは着ぐるみが殴り合う"特撮"っていう文化そのものや、全話一挙配信という形式、その他に対するあらゆる「なんかちょっと……」にも言える。
この辺が頭に入ってると大概のことは脳内で「まあまあ棒」がブレーキとして働いてくれる、と思う。
と、せっかくいい演出だと思ってたのに、どうやらあの英語演説シーンには字幕なしで見てても日本語字幕が表示されるようになったらしいです。救済措置はあってもいいと思うけど見られるのがデフォになっちゃうと一気に興が削がれるな……「だがそこがいい」で褒めるのは諸刃の剣よね。

主題歌『Did you see the sunrise?』も、超学生さんのことは存じ上げないけど、まさか今になってこんなかたちで『六兆年と一夜物語』に新たな文脈が加わることになるとは思わなかった。確かに、この曲を小学生が歌ってたというのはそれだけでひとつ意味がある。
怪人として生まれた子供の話として改めて聞くと……すごい。この上手いとはお世辞にも言えない感じがまた、切実な訴えっぽく解釈する余地もあったりして。

小学生が「六兆年と一夜物語」を歌ってみた【超学生】 - ニコニコ動画

 

あとこれは完全に言いたいだけの雑談だけど、僕は視覚優位のきらいがあるので基本日本語の作品でも字幕がないとなかなか頭に入ってこなくて、今回見た時点では日本語字幕がなかったからないよりはマシということで英語字幕で見てたところ、他に目立ったものは見つかんなかったもののひとつでも面白い翻訳が見られたので良しとしました。

「保険かけて色んなやつにしっぽ振っとかねぇとな(I have to "bat" my eyes at everyone to keep myself covered.)」
「コウモリしっぽあったか?(You are Koumori, a bat, after all.)」
「ものの喩えでしょうよ(It was just a metaphor.)」

"bat my eyes"が日本語で言うと"目配せ"に近いのかな、目をぱちくりbatして媚を売るようなニュアンスにしてるらしい。比喩を変えたことでツッコミが「コウモリだけにね」みたいな肯定系になりつつも皮肉っぽさは失われてないのもはぁーってなった。
こういう小さな発見があるから、好きな作品は外国語字幕までしっかり味わえたら楽しいだろうなって昔から思ってる。

 

怪人なんていない方がいい?

生活保護者、独居老人、子供を作れないLGBTQ……怪人やヒートヘブンの材料になる人間は腐るほどいる」
怪人の元になった人間をそもそも社会的弱者にしてしまったのも思い切りがいいよね。初代なんかはナチス・ドイツの優生思想を受け継いでて、頭脳明晰,スポーツ万能な選ばれた人間しか改造手術を受けられず、その他は奴隷労働をさせられるってことになってたけど、確かに怪人をマイノリティの比喩として描くならそっちの方が都合がいい。
更にその弱者であるはずの怪人(の中で選ばれたやつ)がヒートヘブンという形で更なる弱者から搾取してるというのも、人食いって意味で『アマゾンズ』と被るからかあまり大々的には扱われなかったけど面白い。
"子供を作れないLGBTQ"に関しては、最初は「無理解にも程があるだろ」って思ったけど、流石にLGBTQ=子供が作れないって言ってるんじゃなくて、LGBTQの中で子供が作れない(作る気がない)人っていう限定の修飾かな。

 

この改変のキモは、比喩対象である社会的弱者も「望んで弱者になった訳じゃない」ところだと思ってて、最低限度の生活にしても孤独な老体にしても、単なる嗜好(敢えてこう書く)の違いや女性というだけで社会から抑圧されることにしても、心身障害者にしても、そもそもそんな不遇を受けないに越したことはないというのがおそらく大多数なんだけど、そんなことを言っても現実は変わらないからこそ、そのアイデンティティを逆に誇るなどして自分を守る必要に駆られる。……言いながら気付いたけどこの話は現実というよりは主に"エルディア人"を念頭にしてます。本作はかなり『進撃の巨人』をベースにアレンジしてるようなイメージが強いので、もし未見の方はぜひぜひ。
(参照:進撃の巨人 1巻/1期1,2,4,5話 感想)

多数派であっても、大なり小なり誰しも持ってるであろう「生きづらくなるような特性を持って生まれたくはなかった」という自己否定的な気持ちが「怪人にはなりたくない」っていう我々が根源的に抱く感覚と見事にマッチしてて、安易に「共存できたらいいよね」という着地点にはなってない。
現にいる以上は受け入れないといけないけど、本当は怪人なんていない方がいいのかもしれない……そういう感覚のひとつの極地が「エルディア人安楽死計画」、本作なら「創世王を殺す」だったりする訳で。
この辺の感覚は、生来の特性よりは精神障害系の話題によく触れてる人の方が意識しやすいかも。うつ病患者を差別するのは良くないけど、本当はうつ病なんかならないに越したことはないよねっていう。
病気になったおかげで得られたものもあるんだ、だから病気になったことを悲観しなくていいんだ、みたいな論調もあるんだけどね。その辺はニックが担当してたかな。単純に変身願望のある物好きなやつなのか、どうせ社会的弱者(※)なんだったら、最終回のようにワンチャン一矢報いれる怪人の方がいいよねっていう考えなのか、どっちにしても怪人になることをポジティブに捉えるやつもいるって役どころとして。
※黒人……としてキャスティングされてそうだけど、そんなに黒くもない。また別の要因でマイノリティなのかもしれない。

 

他人事ではなく自分事として差別を捉えるっていうのは、無関心ではなくきちんと抑圧してくる人間と戦おうって話でもあるんだけど、差別を自分の"外"に見出してそれを糾弾するよりも、自分の"中"にある自分や同族を否定する気持ちこそが最も根深い問題なんだと気付くことが重要なんだと思う。
これはカマキリ怪人になった葵がまさに体現していたことで、『BLACK SUN』なりの「脳改造を受けていない」の表現なのだとしたらとても良い。自分は怪人で当たり前、人間だった頃なんてないんだと思わされてしまった方がいっそ楽かもしれないけど、敢えてアイデンティティを揺らがせて「自分は怪人としても人間としても生きられるかもしれない、今の自分を否定するかどうか決めるのは自分次第だ」という余白を残しておく。
ちょっと逸れるけど、葵がカマキリモチーフってのもいいよね……創世王を復活させるための巫女的な存在としての説得力を持ちながら、他力本願にお祈りなんかしないで自分のこのカマでぐさぐさ殺しちゃうぞ、オスのカマキリなんか食べちゃうぞっていう攻撃力の高さも合わせ持ってる感じが。

たまたまおすすめに出てきたものの個人的にはあまり好きではないなと思った動画なんだけど、「黒人を一番差別するのは黒人なんだ」という証言が印象的なので貼っておく。

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なぜ好きではないかというと、差別問題にピンとこない我々日本人が喜びそうな論調をとても綺麗な日本語字幕で話してて、"耳触りが良すぎて"気持ち悪かった。「やっぱり黒人の人でもこう思うんだ! 自分の感覚は間違ってなかったんだ!」と思わされてしまうから、こんな意見ばかり聞いてたら価値観が凝り固まってしまうという危機感を覚えた。
ちょうど『BLACK SUN』とは真逆かもね。今作は耳触りの悪い話ばかりしてくるからそれはそれで不愉快、という。
初代のショッカーはナチスのせいっていう言い訳があったけど、今回の怪人は純粋に日本(我々)が生み出したものだからなっていう理論武装もね……。

 

受け継ぐものと終わらせるもの

次期創世王にならんとする秋月信彦と、それを止める南光太郎……。結局BLACK SUNは数秒だけ、SHADOWMOONに関しては一度も出てこなかったよね、ソフビのようなきちんとした仮面ライダー態。
武器として使ったせいでずっと片脚(怪人態のときは羽に見えるのもいい)がもげた状態で、最終決戦前にヒートヘブンでも食べて完璧な状態で決着つけるもんだと思い込んでたら最後までそのまま……なんなら両方もげちゃったからびっくりした。

さっきも言った通り、新たな創世王を生み出さないということは、そもそも怪人なんて生まれてこなければいいという、いわゆる反出生主義的な考えの発露と言える。
創世王が消えて改造手術を受ける人はいなくなっても、既にいる怪人が各々の意思で子供をつくる権利自体は否定していないというエクスキューズはありつつも、そういったネガティブな主義主張を主人公が背負うというのは未だによくあることではない。人間と混血すればするほど、怪人の血は薄くなるかもしれないし、結局行きつく先は怪人の根絶かもしれない。
正直なところ光太郎と信彦の心情変化は初見じゃうまく追えなかったんだけども、光太郎が決着を付けたあとに創世王に飲み込まれてしまったのは、信彦から意思を受け継いだことで自分の中にも迷いが生まれてしまったからなのかな、というくらい。
ゆかりの本音についても父が自分たちにキングストーンを託した理由についても、あくまで光太郎は「本当のことは分からないけど、自分はそう思いたい」というスタンスで描かれていたはずだし、信彦も序盤から割と最後の方まで「創世王がいる限り無限の苦しみが生まれるから倒す」という意見だったはずで、それを最後の最後でひっくり返して自分が創世王となり怪人だけの社会を望んだ訳だから、光太郎にも同じ道を辿る可能性はあった。


そして最終盤、「もう泣かないで」って言いながら仮面ライダーを継承した葵が泣いてて、光太郎が笑いながら安心して死ぬところでもう僕もボロボロ泣いてました。
光太郎……ってかあのアルティメットフォーム(黒創世王)は普通に光太郎を突き抜けて白倉おじさんの話として見てたけど、彼が自己否定して泣きながら戦う重荷から解放されることに対する喜びと、その業までも受け継ぎ背負って生きていく葵に対する悲しみとでぐっちゃぐちゃになったよね。泣きながら戦う仮面ライダーなんて本当はいない方がいいはずなのに、誰かを笑顔にするために誰かが戦わなくてはならない……。
あのシーンで泣いてたんだから、我々も"仮面ライダー"のバトンを渡されちゃったのかもしれない。おも……。
葵に変身ベルトが出現したのもいつも通り説明がなかったけど、あれは創世王が後継者候補として認めた証なのだとすれば、あのタイミングで葵が変身する理由も、過去編で光太郎と信彦の頭をなでなでする創世王の描写も納得が行くかな。だからこそ"世紀王○○ドライバー"なんだろうし。


∞のマークを出すことで"BLACK"のクレストに「永遠に続く戦いに終止符を打つ」って再解釈を施すことにも震えたよね。光太郎がもう戦わなくていいように、今度は葵が戦う。葵が戦いから逃れるためには、また誰かに託さなければならない。
これ、結局のところ「子供をつくるか否か」っていう人間の根っこにある葛藤が滲み出てるのがとても良いんだよなぁ。それは『Did you see the sunrise?』の歌詞を読むとよりくっきりと浮かび上がってくる。

Did you see the sunrise?
Black shining sadness
Tell me, Tell me
Why was it born?

Waiting, Waiting
Believe in promise
Eventually this body decays
Fall in to the "BLACK"……

1番では「Even if this body decays. Waiting over time.」となっていて、いつまでも待ち続ける覚悟はあったはずなのに、自分の体はやがて衰え朽ちてしまうという焦りとともに、暗闇へと落ちていってしまう。
"BLACK"の囁きがあまりにもエッチなのでそういうニュアンスで捉えてるんだけど、苦しみの連鎖を断ち切るために子供はつくらないと決めていたはずが、誘惑に負けて次世代を生み出してしまう泥沼。
そう考えると今度は精子卵子に向かっているマークにも見えたりして、非常に両義的な意味を感じる。

 

その狭間でもがく葵の取った選択が、子供たちを集めてテロまがいの戦い方を教えるというオチも最低最悪だよね……(褒めてる)。
ただあの最後を信彦みたいになったって言ってる人が多くて、なんかその言い方は違うなぁと思う。オーバーに言うと光太郎は怪人が全滅する未来、信彦は人間が全滅する未来を描いてて、その上で反移民デモに差別反対を掲げてた少女は怪人ではなくただの外国人だろうから、2人の中間として人間も怪人も関係なく、ただ一方的に弱者を抑圧するような"何か"と戦うために武力を必要としてるっていう話のはずで、信彦みたいに積極的に人間を攻撃することを計画してる訳じゃあないはず。

そもそも葵で一番印象的なのは、父親をカニ怪人にされ(この辺はノミ怪人から聞いてるものと思われる)、自らも怪人に変化させられた現況であるビルゲニアに対して、「ここで殺しても、誰も戻ってこない! 何も変わらない! でも、いつでも殺せるから。私を舐めるな」と脅しておきながらも、なぁなぁのまま関係を続け最終的には葵は殺さないままビルゲニアは死を遂げるというくだり。
あの描写がある以上、子供たちに戦い方を教えるのは本当に万が一それを使う必要性に駆られたときのためであり、弱者だと見込んで一方的に蹂躙してくる輩に対する"牽制"のための武力である側面が強い。
「人間も怪人も、命の重さは地球以上。1グラムだって命の重さに違いはない」を初めとする、殺傷は良くないという道徳観もまた並行して教えているのだろう。原作の少年戦士では「だがゴルゴムも彼らの人間性までも奪うことはできなかった!」って言ってたけど、同様に葵も彼らの人間性までも奪うことはきっとできないので安心してください。

 

とはいえ、今年の2月頃にウクライナ市民がみんなでせっせと火炎瓶をつくっている動画が「……さんがいいねしました」で流れてきたのを思い出さざるを得なかった。
一般人が戦わんとしてることを肯定する気には到底なれないし、なんかその……みんなで一緒に頑張ろうぜみたいな空気が震災からの復興! とかじゃなくて、暴力性をむき出しにする方向に進むのは、単純に見てて気持ちの良いものではない。
『ゼロワン』なんかも「奪われないために自分の笑顔は自分で守れ」と個人やヒューマギアが武装するような思想を仄めかしてはいたが、ここまで生々しくガチなものを見せられるとやはり尻込みせざるを得ない。頭では分かる、けど……。
(参照:特撮雑談クラブ 第19回「ゼロワン」)

加えて『龍騎』は9.11テロの影響を受けて……みたいな話も飽きるほど見てるにも関わらず、あの事件が起こった背景にどんな思想や摩擦があったのか、という部分に目を向けたことがないことに自分で驚いた。
ただ「テロは良くない」「どんな理由があろうとも暴力に訴えるのは良くない」ってところで思考停止してるようだと、序盤の真司と変わらない。少なくとも葵たちが政府に対して暴力でもって抵抗するのだとしたら、絶対に間違ってると言い切る自信が自分にない。
『555』でも描かれていたようなパラダイスロスト……安心できる楽園を捨てて、葛藤のある地獄を生きるような"混沌"を是とする価値観が如実に、かなり露悪的なかたちで全面に出されている。ある程度は白倉ライダーの文脈を知ってる自分でさえ第一義に肯定はできない訳なので、初見の人に薦めるのはやっぱりどうなんだろうな……。
(参照:混沌への挑戦『仮面ライダー555(ファイズ)』 本編感想)

 

仮面ライダー』があり『BLACK』があり、平成ライダーが生まれ、そしてまた次の世代へ受け継がれていくバトン……過去の意思を受け継ぎつつ、無限に続く苦しみを終わらせるという2つの交わりを描いた『仮面ライダーBLACK SUN』。
本作を経て仮面ライダーが、世界が、そして僕がどう変わっていくのか……楽しみです。

 

86ma.hatenablog.com

 

告知 11/5 21:00〜23:30に特撮雑談クラブ 第20回として『BLACK SUN』について感想を話すスペースを開催予定です。リスナー/スピーカーを問わず、参加したい方がいましたらご自由にどうぞ。

※終了しました。参加してくださった方、ありがとうございました。


スーパー戦隊ランダム視聴 6週目

 

 

36日目

サンバルカン 第19話「危険な100点少年」

・生徒がテストやテスト返しを嫌がったりするのはフィクションではよくある光景だけど、どうしてそんなにも勉強に対するコンプレックスが一般的なものになってるんだろう?
小学校のテストなんて平均点が50点を切るなんてことはまずないというか、もし切ったとしたらそれは教え方かテストの難易度設定に問題があると思うので、"勉強できない子"が多数派になる理由が分からない
・"良い子"であるヒロシの口調が聞けば聞くほど北條さんに聞こえる不思議……「理由は簡単です、私が善い人間だからですよ」

キュウレンジャー 第39話「ペルセウス座の大冒険」

・ラッキーも割と女装似合うな。"整った顔"というのには男女差は関係ないのかもしれない。
・二面性の否定とシシレッドオリオンは相性が悪い気もするけど、まぁ単に悪い人格を否定するだけならいいのかな、つまんなかったからなんでもいいんけど

 

37日目

ギンガマン 第9話「秘密の子猫」

・敵組織は宇宙海賊なのか……なんか変わってるな
檜山修之さんのキャラ、声とか挙動とかなんか好きだ
・ミーちゃんのギミックすごすぎない? 尻尾とか目を動かしたくなるのはまぁ分かるとしても、耳がピクピクするのはマジでビビったというか、あれによって一気に本物感が出てる
Pが高寺さんだからなのか、金かかってんなぁ……
・飼ってた子猫の代わりに、新しく拾った猫に同じ名前をつけて可愛がる……ゼロワンの新イズとかもそうだけど、こういう無邪気な残酷さってあるよな

ゲキレンジャー 第47話「ピカピカ!俺の道」

・ゲキバイオレットとゲキチョッパーって5人揃っても変な色の組み合わせだよなと思ってたけど、リオメレを合わせたら紫と緑、白と黒でちょうど対になるのか。あんまりパッと見で綺麗だなとは思わないけど。


38日目

カーレンジャー 第2話「踊る騒音公害」

・ダップって頭でかいのとヨーダみたいな顔してるから等身低いのかなって思い込んでただけで、結構身長高いんだな……。
・雑魚敵がカラフルなのも然ることながら、それと同じ色を戦隊側でも全部採用してるのヤバすぎでしょ。まったく区別できん。

トッキュウジャー 第24話「分岐点を越えて」

・明、名前が同じことを差し引いても顔が伊達さんにそっくりだ。"諦める/ない"の語感なのかなとは思うけど、伊達さんにも表面化しなかっただけで似たようなニュアンスがどこかにあるのかな。
・30秒しか変身できないシャドータウンでの戦いをこれからも続けるってなかなか扱いにくそうだけどどうなるんだこれ……?


39日目

チェンジマン 第33話「ギルークの最期?!」

・5人も束になってるとはいえ、巨大ロボで等身大の敵にミサイル撃ち込んでる!?
・「もっと子供でいたかった」ってガチ子供に言われるとそれはそれで独特の切なさがあるな……。
・幹部っぽいやつそんな普通に倒せていいんだ。

ジュウオウジャー 第19話「信じるのは誰」

・ザワールド、顔だけフォームチェンジの元祖(?)だけど変形ギミックだから面白みはそこそこあるんだよな。
・さっき見た『ブレイブストーリー』でも思ったけど、(一部の)敵を信じたいって展開は結構ありがちよね。
・レオ,セラの服といい上中下の動物換装ギミックといい敵がコインを入れる描写といい、色んなとこからオーズを感じるのは何故だろう。
・「全てを知る」ってキーワードは、なんとなく生物学っぽいかも。いち個人に限ってもを知ることはできないし、況して全世界なんて無理で、「勝手にまとめるなよ」的な思想を感じる。


40日目

ターボレンジャー 第34話「ズルテンの裏技」

・ヤミマル、敵役にも何か掲げる正義がある……って描き方は確かに古い作品にはあんまりないイメージだけど、同情の余地ある可哀想な過去を持ってるってパターンはその限りではないか。

マジレンジャー 第31話「凄まじき魔神 〜マージ・ジルマ・ゴル・ジンガジン〜」

・荒川脚本ということもあり人外になってもまたイチから家族になろうって決意するのは割といい話かなって思ったのに、それを防ぐ呪文があって送られてきましたってオチはなんか台無しだなぁ……。
神様的な存在が、全部解決できる能力を持ってるにも関わらず試練だとか言ってくんの嫌いなんだよね。本当の本当の本当に全能なんだったら、持てる力のすべてを使えよと言うのは確かにちょっとアレだとしても、自分たちじゃ敵組織を倒せないから人間の力借りて戦わせてる癖に偉そうな顔すんなよ。協力を惜しむな。

 

41日目

デンジマン 第37話「蛮力バンリキ魔王」

・4人中3人が女性幹部なんだな、珍しい。
・名乗りのBGM、イントロがめっちゃよかった。
・犬がベロ変な色にされてて可哀想……たまにあるよねこういうの。敵による自然破壊の表現として、東映自身が自然破壊してない? みたいなことをギンガマンで思った気がする。
・素顔晒してる系の敵が巨大化するのってあんま見ないよね。

ゼンカイジャー 第8話「ドアtoドアで別世界?!」

・そういえば、ステイシーと介人は異父兄弟なんじゃね説とかあったなぁ。懐かしい。
・割とおいしい能力なのに、暗黒ギア速攻で破壊されちゃうからビビったよなぁ。いつの間にかそんなの使わなくてもステイシーはステイシーとして定着したけど。

 

42日目

マスクマン 第2話「怪奇!闇の地底城」

・不思議な力で浮かびますよって映像、これくらいなら合成でそれっぽく見せられますよみたいな、むしろリテラシーを高める可能性すらあるのかもしれん。
強い力を持った地底人と平凡な地上人だって仲良くできる、という筋も割と。
・マスク状態でイヤリングしてるのやだな……。
グレートファイブかっこいい。モチーフがあまり全面に出ない初期デザインの中だと一番好きかも。


ドンブラザーズ 第20話「はなたかえれじい」

・不可殺の者が「私は死なないもん」などと申しており……。イヌの回想って演劇やってるからもあるかもしんないけどちょっとわざとらしいとこあるよね。そこが物語を紡ぐツルと相性が良かったのかな。
ドラゴンファイヤーズ、結構ちゃんといいことしてるのが好きなんだよな。
・獣人の出現とムラサメの脱走に因果関係があるかもって、当たってるじゃん。思ってるよりずっと前から固めてはあるんだな色々。
・ジロウにも強制呼び出しの概念あったのか。

 

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特撮雑談クラブ 第19回「ゼロワン」

7/23(土)21:00〜に行った特撮雑談クラブ 第19回「ゼロワン」の書き起こしです。

 話題候補
夢と笑い、不必要なもの
AIとの共存、命の価値と同一性
お仕事の扱い方
意志と責任/本能とプログラム
社会秩序と社会正義
動機,手段,結果の善悪
令和シリーズ

 

youtu.be

 

やんま「特雑 第19回「ゼロワン」を始めたいと思います。今日は基本『ゼロワン』の話がメインになるんですけど、『ギーツ』も発表されて、脚本が高橋悠也さんってことで。ちょっと『ゼロワン』について改めて、良しにせよ悪しにせよ話してみようじゃないかという回です。
僕は結構『ゼロワン』は手放しで好き派というか。世間的には「最初は良かったけど……」みたいなのが多いですよね。途中微妙になって、まぁ最後ちょっと良かったかな? ぐらいの……あと映画は好評かな、くらいの認識ですけど」
 SONGENさん参加

SONGEN「令和4作目も」
やんま「そうですね、発表されて。なんだかんだ制作陣的には、好評というか、買われてるって感じなんですかね、高橋さんは。白倉さんも使ってたし」
SONGEN「お試し感ありましたけどね、『アマゾンズ』は。買われてるんじゃないですかね、やっぱり。ちゃんと1年脚本書き続けられる人って」
やんま「それは大きいですよね」
SONGEN「あ、予め明らかにしておくと、僕は『ゼロワン』否定派なので、やんまさんから何か投げかけてもらったらそれに対して……」
やんま「あぁ、そういうかたちでいきますか。じゃあとりあえず(話題候補の)上から。『ゼロワン』がテーマをちゃんと扱えてたかどうかみたいな話になるのかな?」
SONGEN「テーマね」

01―不必要なもの

やんま「まずゼロワンって名前は僕結構好きで。好きっていうか洒落が利いてていいなと思うんですけど。
"令和"もそうだし、1作目だから01ってのも分かるし……しかも、1っていう数字を表すのに0ってつける必要ないじゃないですか、1(one)でいいところを、わざわざ01(zero-one)っていう表現にするっていうのは、ヒューマギアもそうだけど「本当は要らないもの」……絶対必要って訳じゃないんだけど、あったらいいなくらいのもの? についての話なんだよっていうのがちゃんと表れてて、すごくいい名前だなと思うんですけど。
っていうのは、ヒューマギアとか、夢っていうものとか、あと笑い……人生についての笑顔とか、そういう、まぁなくても生きていけるけど、でもあったらいいよねぐらいの。ヒューマギアはちょっと難しいとこではあるんだけど」
SONGEN「そうですね、そんなこと言ったら仮面ライダーみたいな娯楽もそうですよね。あってもなくても。仕事とかもね、結構俺そういうものだと思うんですよね。サービス業とか、別にあってもなくてもみたいなところありますよね。なくちゃいけないのもあるけど」
やんま「はいはいはい、そうなんですよね。本当に必要な仕事ってなかなか……まぁインフラとか、警察とか……警察は最悪なくてもいいけど」

転売の善悪

SONGEN「転売みたいなね、本当になくていいのに、そこに無理やり価値を生み出そうとすることもありますけどね」
やんま「いやー、僕転売……」
SONGEN「転売肯定派でしたっけ?」
やんま「肯定派!?(笑) 肯定派っていうのともちょっと違うけど、何が悪いのかまだ実感してない派だから……。自分の欲しいものが転売屋のせいで買えねぇみたいな経験がないからかもしんないけど。逆に、転売屋って言われるものなのかなって思う人から買うことも結構多いから」
SONGEN「あぁ、買ってるんだ」
やんま「んー、あれですよね。直後に高い値段で出してるとかじゃないけど、数年語に新品で定価よりちょっと高めに出してるみたいな人。それもまぁ、転売っちゃ転売だよね新品なんだからっていう。その人が買って、使わないで取っておいてくれたおかげで、まぁ売れ残ってんだか、自分が使うつもりで取っといたのがたまたまやっぱ要らないってなったのかは分かんないけど、それのおかげで僕は買えてる訳だし」
SONGEN「昔はそういうのもあったかもしれないけど、今やってるのは明らかに、在庫枯らして値段釣り上げてみたいなことやってるから、それは違うなと思いますけど。元々あった川の流れを無理やりストップして、旱魃してる地域に水ですよって配ってるみたいな例えがありますけど」
やんま「なんかそれもねー難しいとこですよね。『ゼロワン』のテーマとも繋がってくるけど、転売屋個人個人の善悪とちょっと別の次元の話じゃないですか、それって。テンバイヤー集団としての、集団全体として結果的にそうなっちゃってるだけで……」
SONGEN「いや、そんなことないですよ。集団でやってますよ転売屋って。この在庫枯らそうってみんな示し合わせて在庫枯らしたりとかやってますよ」
やんま「あ、そうなんですか!? へぇ……それはあくどいっすね、確かに。あくどい……うーん。基本はねぇ、市場経済って早いものがちで回ってるから」
SONGEN「資本主義としては間違ってないらしいんだけど。それだけで済むものじゃないじゃないですか、気持ち的にも。『ヒーローと正義』にも、資本主義とか民主主義じゃなくて功利主義だみたいな話ありましたよね、そういう(pp.156-164)。いま資本主義ってことになってるから、この世界は。まぁ見方によるってことですよね」
やんま「功利主義ね……功利主義の考え方でテンバイヤーってなんとかなるのかな……あれですよね、最大多数の幸福みたいなやつですよね。
んーやっぱ釣り上げの値段の度合いにもよりません?(笑) 100円200円とかだったら全然……」
SONGEN「限定品が東京でしか販売してなくて、その交通費分だったら安いかみたいな気持ちで買っちゃう人とかはいるんだろうなって。まぁそういうときは、そんな限定品つくるなよって思いますね」
やんま「東京とかで品薄らしいって話を聞いてるけど、僕の周りでは結構普通に在庫あるなぁみたいなこと結構あるから、ちゃんと転売屋さんがうまく、必要なところで活躍してくれればいいのにな、世の中ちゃんとうまく回るのになって思うんですよね」
SONGEN「まぁそれだったらね、胴元がちゃんと通販してくれるとか、そういうことがあればいい訳であって」
やんま「通販ね……それもだって、利回りがちゃんとしないとできない訳じゃないですか。それを個人個人が勝手にやってくれるんであれば、それは便利っていうか、なんて言う? Wikipediaみたいなシステムですよね。善意の一般人に任せて、価値ある体系をつくるっていう」
SONGEN「まぁ善意ならね」
やんま「メルカリって割とそれに近いところあるなと思ってて。まぁ悪意ある人もそりゃいるけど」
SONGEN「価値ある資源を……SDGsみたいな、そういう空気もちょっとあれですよね、息苦しいですよね。俺は地球単位で言ったら別に、人類が地球を滅ぼしてしまってもいいとは思ってるけど。まぁでもよくあるじゃないですか、人類は地球に住む寄生虫だみたいな。それも分かるなっていう」
やんま「人間ね……別にだから生物って必要だから生まれてる訳じゃないんだよな(ヒューマギアを念頭に)。地球もね、あってもなくても変わんないし(笑)」
SONGEN「まぁ地球はね、人間がいて、観測されて初めて……みたいな考え方もありますよね。なんか、なんの話をしてるのか(笑)」

白暗三原則・親殺し,同族争い,自己否定

やんま「価値あるもの、価値を見出す存在が人間しかいないから、人間中心の考え方になるのはしょうがない……っちゃしょうがないんだけど、そこにヒューマギアが現れたら、もっと多様なものの見方になるんじゃないっていう話、『ゼロワン』は。
そう、ヒューマギアってだから根本的に人間とは違うんですよね、根っこのところが」
SONGEN「ヒューマギアというか、人工生命体シリーズは『ドライブ』から……グリードも人工生命体っぽかったけど、『ドライブ』からやり始めたなぁと思って。見てないんですけど、ちゃんとは。『アマゾンズ』もそうじゃないですか、人がつくった怪物みたいな。改造人間は人間にくっつけてたからあれだったんですけど、『アマゾンズ』俺すごい気持ち悪かったのは、人工生命体だからってところなんですよね。受け入れ難くて。SF的にはよくあるテーマなのかもしんないけど、人間がつくったものだから結局"子殺し"になってくるじゃないですか。だからそこがなんか違うのかなって思ってます。Season2だと本当に子供殺してるけど」
やんま「なんか考えてて思ってたんですけど、平成ライダーシリーズって言うほど親殺ししてないなって。どっちかっていうと同族殺し寄りじゃないですか? 基本がというがベースが。『クウガからして、別にダグバって親じゃないし」
SONGEN「まぁ親殺しって言い始めたのは白倉さんだから、『クウガ』は……」
やんま「そうそう。白倉さんうまいなって思うのは、あの三原則は決して善悪については語ってないってところが。親殺し同族殺しって言うけど、その親とか同族って相手が善か悪かによって本人の善悪も決まる訳だから。悪い親を殺すんだったら善……だし、良い親殺すんだったら悪だしっていう。まぁだからダークライダーもアリなんだよって。
あの三原則をどの辺で言い始めたのかはちょっと気になるんだよな」
SONGEN「俺もよく分かってない……『ヒーローと正義』には載ってなかったな。なんとなく知ってますよね、みんななんか」
やんま「それこそWikiとかにね、載ってるから。仮面ライダーの定義って。一番"親殺し"なのは『アギト』ですよね。まぁ殺してないか、殺してないわ」
SONGEN「大事なのは"自己否定"なんじゃないかなって思うんですよね。それこそ必要ないものなんで、ヒーローなんか」
やんま「なるほどね、自己否定ね。その観点から言うなら、確かに『ゼロワン』は自己否定はしない……し『エグゼイド』もしない」
SONGEN「まぁ、作風が明るくなっていきましたよね。変に話の展開でウジウジ悩んだりとかするところはあるけど、自己否定まではしない。むしろ楽しくヒーローやってるみたいな感じが」
やんま「最近はなんか楽しさ優先ですよね。『セイバー』はシリアスだったけど、バトルに関しては」
SONGEN「でも『セイバー』も割とヒーローやることに対して前のめりというか、俺が救うんだみたいな」
やんま「なるほどね、ヒーローごっこみたいな文脈で……それはある。前向きではあるか。『リバイス』はアレだし。『ギーツ』どうなんだろう自己否定やるのかな、やんない気がするけど。
"仮面ライダー"の定義の話します? 『ゼロワン』の」

仮面ライダーの定義

SONGEN「見つけたんですか? 仮面ライダーの定義(笑)」
やんま「まぁ定義は……昔記事を書いた通りなんですけど、定義なんてなくていいよって思ってる人なので(参照:"仮面ライダー"の定義を考える/自然と自由の象徴として)。
『ゼロワン』における定義って、まぁ『令ジェネ』の文脈っていうのもあるし……基本だから『ゼロワン』の世界では名乗ったもん勝ちというか。本人が「仮面ライダーでありたい」と思ったらそれは仮面ライダーなんですよ、だから別に定義とかって必要なくて。結局その本人の自由意志(意思表明)があるかないかっていうのが一番重要なとこなんですけど。
それで言うと公式読本読んでて、マギアとレイダーも一応仮面ライダーとしてデザインされてるっていう話があって。第1話の予告でベルト(ゼツメライザー)で変身してたから、怪人もライダーみたいに扱われるんじゃね? みたいな話が当時ありましたけど。Vバックルみたいだから。
蓋を開けてみたら意外と普通の怪人だったんだけど、でもよく見るとちゃんと仮面ライダー的な複眼があって、一応仮面ライダーとしても見れるようにデザインされてるらしいっていうのがあって。
だから名乗ってないだけでアイツらも一応ライダーっちゃライダー……そう解釈してもいいかなぐらいの存在なんですよね」
SONGEN「システム的な? ……とかじゃなくて?」
やんま「まぁシステム的な話と解釈してもいいし……うーん……。まぁマギアはちょっと微妙なんだけど、レイダーなんかは特に――」
SONGEN「自由意志の」
やんま「自分の立場とかを守るために戦ってる訳じゃないですか」
SONGEN「小さい正義ってことですか。レイダーって五番勝負編の」
やんま「そうそう。『龍騎』のやつらと同じみたいなもんなんですよ、自分の願いのために戦ってるって意味でライダーなんですよね、彼らは。ライダーってかレイダーだけど」
SONGEN「レイダーってどういう意味でしたっけ、追う者?」
やんま「レイドは襲う……かな。レイドバトルとかのレイドですよね。マギアは魔法使い……(みたいなニュアンス)。
だから『令ジェネ』の話になってくるんだけど、其雄が示した仮面ライダーの定義っていうのは、自分の笑顔は自分で戦って掴み取るっていうのが根本の理念としてあって。だから其雄はフォースライザーを滅亡迅雷に渡したり、ゼツメライザーを一般販売してる訳ですよね」
SONGEN「一般販売して……自分で身を守れよみたいな話でしたっけ」
やんま「ヒューマギアはこのままだと人間に抑圧されて権利が侵害されちゃうから、それに対抗するために武器をとって戦おうぜっていう」
SONGEN「そもそも最初の滅亡迅雷編の滅亡迅雷の行動があんまりよく分かってない……でもあれか、データを集めるかなんかでしたっけ」
やんま「そうそう、ゼロワンと一緒で、ゼツメライズキーの戦闘データを集めるっていう」
SONGEN「あれはでも、勝手にヒューマギアを暴走させてるのであって、そんなに自由意志みたいな感じはしない……」
やんま「それもねー。例えば、戦争に行ってる兵士って自分の意志で戦ってる訳じゃないじゃないですか。あれは、上司の命令っていう義務感とか、自分じゃない何かに突き動かされて、人殺しっていう普段じゃありえないことをしてる訳ですよ。普段の自分だったらやらないことを。っていう意味で、無理やり兵士にする……徴兵制と一緒ですよね。正義のために戦う尖兵にするっていうか(誰かが戦わないと、自分たちヒューマギアが笑える世界はこないので)。悪役として通ってるけど、100悪とは言い切れないくらいのニュアンスで捉えてもいいものかなと思ってて」

(参照:仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション ネタバレ感想)

1クール目の敵

SONGEN「滅と迅が人間に反旗を翻そうとしたのは、ラーニングしたからなんでしたっけ。悪意を」
やんま「滅と迅は、アークにそう言われたから滅ぼすって言ってるだけ、かな。別に本人たちが人間たちに何かひどい扱いを受けたとかはそういうことはなくて」
SONGEN「じゃあそのときも別に自由意志みたいなのがあった訳じゃない……」
やんま「なんかあれですよね、ヒューマギアにとって命令に従うっていうのは、だからごく自然なことなんですよ。当たり前っていうか、本能的なものっていうか、まぁそれは人間も割とそうですけど、指示されたらとりあえず従っとくっていう。そういうものとしてつくられてるし、アークもそれを分かって道具として使ってるし。
迅が破壊されるとき、16話のシーンで、それこそ或人に「人間がお前らに何したっていうんだ」って問いかけるシーンがあるんですけど、それに迅が「知らないよそんなこと」って。「滅にそうやって教えられてきたんだから」って。これは絶対『ONE PIECE』の魚人島編のホーディだなっていうのが見返してて思って。
ホーディはなんか、『ONE PIECE』って一章が長いから、その長い一章のラスボスとして、何も背景がないやつが敵っていうのは、なんか僕は当時納得いかなかったんだけど結構。納得いかないっていうか、フカボシが「あいつの正体が分かった!」って言ってなんか勿体ぶるじゃないですか、あのとき。さもすごいことかのように言うんだけど、結局空っぽってだけだから「あ、そう……」って感じだったんですよね。だからそれを、所詮"1クール目の敵"ぐらいに収めて描いたのは、その魚人島編(伝聞による差別意識)のオマージュとしては結構いい手法だなと思った」
SONGEN「あぁ……まぁ本当にオマージュかどうかはさておいて。1クール目は1クール目ってことなんですよね、だから」
やんま「なんか最近の作品って、1クール目をどう誤魔化すかみたいな雰囲気ありますよね。まぁ販促もこなさないといけないから、本筋はほどほどにしといて……デッドマンズとかも結局終盤まで敵対する訳じゃなかったし。1クール目を繋ぐためだけの役っていう」
SONGEN「1クール目は結構大事なんですよね。まぁでもキャラクターは残しつつみたいな」
やんま「ギーツのデザイアグランプリも多分1クールで終わるんだろうなって思ってて。だって五番勝負編があれだけ不評だった訳だから、いつまでやってんだよ感……」
SONGEN「まぁ1年かけてデザイアグランプリはしないでしょうね、多分ね。それはおいおいってなるからな確かに」
やんま「っていうところで『ゼロワン』の1クール目は結構"サバいてる"感じがして。プログライズキーも結局その「ゼアがつくりました」で済ましてるから、描きたいのは結局仕事? に注力してるっていうか」

AIの文系的/理系的捉え方

SONGEN「結局なんか、視聴者とのズレっていうのはやっぱり、AIものとお仕事もの、どっちなのかみたいな」
やんま「んーどうなんでしょうね、そこは別に僕ズレてないと思うけど」
SONGEN「あ、視聴者がズレてるってことで。視聴者が勝手にAIものとして見てたっていう」
やんま「あー、いやだって、AIって仕事の話じゃないですか」
SONGEN「まぁ活かすものとしては……。その、『ゼロワン』はホントは現実に即したAIものなんだけど、なんかよくある文学作品でのAIもの,アンドロイドものだと勝手に勘違いして……っていう。文系から見たAIものっていうんですかね。AIつくってるのは理系の人たちじゃないですか。でも結構もうSFとしてのAIものっていうのは文系が割と先に色々やってて、そこでなんか倫理観とかロボット三原則とか、それこそ石ノ森作品でもやってるんでしょうし。割と手垢が付きまくってるから、そこで勝負をするつもりは最初からなかったのか……どうかは知らないですけど。大森さんの口ぶりからしたらやっぱりお仕事ものが先にあって、なんとなくAIものやりたかったんでしょうね。本当に何となくだったと思うんですよね、最初は。『エグゼイド』終わった時点で別にやりたいことはなかったらしいので。急に無理やり『ビルド』やれって言われてつくったみたいなこと言ってたから」
やんま「『ドライブ』『エグゼイド』で多分勉強したんでしょうね、AIについて」
SONGEN「したのかな。でも監修はついてますよね、だから」
やんま「多分『ドライブ』の時点でAIについては割と描いてるから、その時点で大森さんはちゃんと調べてるんですよ。ロイミュードをやるにあたって」
SONGEN「どうなのかなぁ……やでも、そこがなんか言及が少なかった気がするんですよね、なんか。インタビュアーとかもそんなに突っ込んでなかったし。『ドライブ』でもやってますよねみたいなのなかったと思う」
やんま「でもそういうツッコミって割とオタク的っていうか、あんまりしなくないですか? 公式で。まぁ最近はねぇ、ちょっとオタクっぽいインタビュアーも増えてるけど」
SONGEN「確かに前作ではこうでしたがみたいなことは言わないのか」
やんま「夢っていうキーワードも多分『ジオウ』から引っ張ってる部分も半分くらいあると思うんだけど」
SONGEN「確かに『ゲイツ、マジェスティ』は『ゼロワン』よりよっぽど夢を描いてたっていう」
やんま「そう。王様になりたいとかさ、ソウゴの夢が現実になっちゃうとか」
SONGEN「結構リアリストなんですよね、大森さんは」
やんま「うん……だから多分頭……いいんだと思いますよすごく」
SONGEN「そうですか?(笑)」
やんま「僕はそう思う」
SONGEN「まぁそう思いたいんだとは思うけど……頭良さそうに見えたことはない」
やんま「まぁね、インタビューとかはアレだけど。喋ってるとき頭良く見える人ってなかなか……難しいですよね」
SONGEN「勉強はできるんだと思うんですよ、勉強は。でカリフォルニアにいったんだと思うけど」
やんま「うーん……創作に向いてる頭の良さとはちょっと違うかもしんないけど、もしかすると。まぁ本人が創作する訳じゃないんでね」
SONGEN「結構『ゼロワン』は割と、大森さんが出てるなっていうのは感じて。だから高橋悠也は悪くないんだって言いたい訳じゃないんですけど。多分どっちも倫理観は歪んでると思うんだよな二人とも。すぐ性悪説っていうところ……それは多分『リバイス』にも引き継がれてしまってるから良くないなと思いますけど」

或人の面白みと倫理観の欠如

やんま「倫理観……倫理観が歪んでるって、表現が難しいですよね。じゃあ実際に高橋さんがなんかヤバいことをしでかすようなサイコパスかっていうとそれはまた違う話じゃないですか。あくまで創作物の中でヤバいことさせるのが好きっていうか、それは別に全然普通(?)っていうか」
SONGEN「飛電或人が子供番組の主人公としてどうなのかってところは、そんな言ってなかったけど結局はそこだと思うんですよね。無邪気に或人かっこいいって思う子供はいるんだろうけど、大人になって見たときに「やっぱりこの主人公ちょっとおかしいな」ってちゃんと気付いて欲しいというか。それで、或人はすごいな! ってまま行って欲しくないというか。どうなんですかね」
やんま「……僕はその、「或人おかしいな」までは理解した上で「いや、でもね」ってところまで行ってる人なんでアレですけど、そこは別に否定しないですけど(笑)
或人はストレートに良いヤツとして捉えちゃうと、面白みに欠けるキャラだと思う。やっぱどこかヤバいやつとして僕は楽しんでるから……ソウゴの魔王っぽさもそうですよ。そういう危なっかしさがいいっていう。"そういう娯楽"ですよね」
SONGEN「そうでもいいんだけど、それをちゃんと……ちゃんと見せようとした結果がアークワンなのかどうかは分かんないんですよね。結局外部の悪意のせいにしてしまってるというか、或人が悪くて闇落ちした訳じゃないんだみたいな。じゃなくて、やっぱ悪意があるからいけないんだみたいな。或人ですら悪意(    )だけなんだみたいな風に言われてしまって」
やんま「いやでも描かれ方としては普通に或人が悪いっていう……あれだと思いますけど。劇中人物は或人の肩を持って、きっとあれは或人の意志じゃないとかって……やってましたよね? 或人の意志じゃないと思ったけど、やっぱり或人の意志だったっていう。ゼロワンの戦闘の動きが一緒でっていう。
まぁ結局、じゃあアークワンが何やろうとしてたかっていうと、滅に倒されようとしてたんだってところに落ち着いちゃったから、そういう意味ではちゃんと描いてないと言えば描いてないかもしんないけど……でも基本的に、セリフ的な意味とかとはちょっと別の次元で、或人って割と人相悪い……ですよね(笑) 人相悪いっていうか、険しい顔し過ぎっていうか、そういう(非言語的な)ところで或人の怖さみたいなのはちゃんと描いてるとは思うんですよ」
SONGEN「ゼロワンが人相悪いですよね」
やんま「割と無機質な感じじゃないですか?」
SONGEN「無機質の怖さというか。『Over Quartzer』の最後が一番怖いと思いますけどね。「始まったなぁ〜!」って」
やんま「あれ怖いんだ、僕めちゃくちゃアガっちゃったけど。あれめちゃくちゃ好きです。まぁ『ジオウ』が好きだったからっていうのもあるけど」
SONGEN「どこまで自覚的なのかっていうのはちょっとね……そこの話なんですよね、結局。俺は多分、ちゃんと考えなかった結果歪んで出力されてしまったと思ってるけど」

責任という概念のない世界

やんま「自覚してないとこの話は書けないと思うんですよね……ちゃんと押さえるべきところは押さえてて。メタルクラスタの前の回かなぁ? で、ちゃんと天津に「今あなたの心を支配するものこそ、紛れもない人間の悪意だ」つって指摘させてるし(これは22話だが、21話でも似たような話はしてる)。メタルクラスタとは別に。まぁアサルトホッパーもアークの力使ってるから(外的要因のせいにしてると言われれば)それはそうかもしんないけど。
そのセリフをちゃんとフォーカスして見てみると、『ゼロワン』の中で主に扱われてる"悪意"っていうのは「誰のせい」っていう風に割り切っちゃって、一方的に責めることが悪として描かれてる部分はあると思ってて。或人が全部天津のせいだっていう風に責めるのも人間の悪意として描かれてるし(、滅亡迅雷が環境破壊、マギアたちがいじめに対して人間が全部悪いから滅べばいいって主張するのも)、これはちょっと作品外の話になるけど、全部ヒューマギアつくってる飛電社が悪いじゃんって風に言っちゃうことも、一個の悪意だと思うし……悪意っていうか"敵意"ですよね。
『ゼロワン』が描きたいのは、責任っていう概念が存在しない世界なんですよ。っていうとちょっと言い過ぎだけど」
SONGEN「"責任っていう概念が存在しない世界"……すごい(笑)」
やんま「誰かのせいにするっていう概念自体要らないんですよ、ホントは。そういう考え方があるから、誰かをそれこそ敵にして、やり玉に上げてっていう話になる訳ですよ。誰のせい? 誰のせい? っていう(多分『20世紀少年』の話)」
SONGEN「じゃあ僕が大森先生のせいだと言うのも……」
やんま「そうそう、それは別になんか(多分誤解して勝手に話広げてる)……うーん。責任がない世界っていうのは、即ち自由意志がない世界ってことにも繋がるわけで……SONGENさんが大森さんを責めるのはSONGENさんのせいじゃない、ってことはSONGENさんは自分の意志でそれをやってるんじゃなくて、例えば大森さんの行動がちょっと勘違いさせるようで悪かったかもねとか、ちょっと高橋さんも悪かったよねとか、周りの環境のせいにしてしまうことで、本人の意志が尊重されなくなるっていうか。関係なくなるんですよね、あってもなくても。
"意志"にも2種類あって、既に起こったこと,過去に対する意志が"責任"っていう考え方で、未来に対する意志っていうのが"夢"っていう描き方だったと思うんですよ。既に終わったことをぐちゃぐちゃ言ってもしょうがないっていうか」
SONGEN「すごい話ですよね」
やんま「まぁヒューマギアは現在進行形でつくられてる訳だから終わったことじゃねぇだろって言ったらそれはそうなんだけど」
SONGEN「なんかね、檀黎斗もそうなんだけど、新しい価値観のイノベーションが起きる瞬間の話ですっていう風にしたいんだったら、ヒューマギア革命を起こそうとしている……檀黎斗だったらデータ生命を誕生させようとしてるみたいな話だったら、まぁ通るのかな? って言うとおかしいけど、綺麗には見えると思うんです。でもなんか、それを肯定もしてないというか。いいのか? それっていう。既存の倫理観に切り込んで新しいものをぶつけてきてるんだったら、それは挑戦作だなって言いたいけど、そうはなってないかなって思う。結局視聴者がついてこれてないってのもそうなんだけど。未来にね……未来に向けて……聞こえは良いけどなぁ」
やんま「今は、責任を追求するのが当たり前の社会だから……そうすることでしか、悪に対抗する手段を持ってない、我々が。結局責任の所在をハッキリさせて何がしたいかって言うと、報復……をしたい訳ですよ。罰を受けさせて、お前らこういう罰受けたくないだろ? だから何も悪いことするなよっていう方法しか持ってない。んだけど、もう終わったことに対して報復したって、死んだ人が返ってくる訳じゃないし」
SONGEN「でも過去を反省して、良くしてこうってしてる歴史が、人間の文化なんではないでしょうか(笑)」
やんま「殺しちゃったら、反省できないじゃないですか」
SONGEN「殺しちゃったらね。というか、先人の過ちを改めて……」
やんま「だからその責任の問題こそ、これからアラタめ(検め,改め)られるべき価値観……なんですよ(笑) 分かんないけどね、分かんないけど。それはこれからの世界次第だから。僕は少なくとも、それに賛同するし……」
SONGEN「責任のない、社会……」
やんま「そう、責任取りたくないから(笑) みんな僕をね、無責任なやつだって言うんだけど、みんなも責任取らなくていいじゃんって思うんですよ僕は。なんでそんなに責任負っちゃうのって。
……そうこの話もしたいんだよな。僕みたいなASD……てか空気読めないやつ? が、社会にとって必要か否かっていう(笑)」
SONGEN「そんな……こと言っちゃいます?(笑)」

空気読めないやつは「ズルい」のか

やんま「なんか前にツイートで面白いものがあって、アスペの人は空気を読めないんじゃなくて、みんながなぁなぁにしたいってことは分かってるけど、敢えてその場を改善するために自分が汚れ役を買って出て、みんなが指摘しづらいことを言ってあげてるっていう、自分=ダークヒーローみたいな図式がアスペの人は持ちがちで……きもいよねみたいな(笑) 僕それすごい分かるなって思って(参考:アスペルガー気質のある人で「すぐ本質を突くから周りから距離を置かれてしまう」とか「正しいことを言ってるのに勝手に周りが怒る」みたいな認知になってる人っているよね - Togetter)」
SONGEN「自覚があるんですか?」
やんま「うん。空気読めない発言をするときは、読めないんじゃなくて読まないというか。分かってるんだけど、これは言ったほうがいいなと思ってるから言ってるんですよね」
SONGEN「それはでも分かるかもしれない。俺も既存の社会って気持ち悪いなみたいな気持ちはあるし……逆張りじゃなくてね、なんだろ。それってなんだろうな……ダークヒーローはね、かっこいいですよね確かに」
やんま「フェミニズムとかもそういうきらいがあると思ってて、フェミニズムも社会の空気というか、女は黙ってろ的な空気に対して反旗を翻して、それじゃダメだっていう風に言うっていうのが彼女らじゃないですか」
SONGEN「"彼女"らかは分かんないけど、そうですね。大筋はね」
やんま「そういう自由への革命……っていうか、空気に反逆すること? をする人たちって、まぁフェミニズムは変な人もいるから話違ってくるかもしんないけど、今まで虐げられてきた人たちを救うことって、社会全体の最低ラインを底上げすることであって、全人類に対して割と良い影響をもたらす……はずのことだと思うんですよ。女性の価値を認めたからと言って誰かの価値が下げられる訳じゃない、っていう風にあるべきで。一部は、女尊男卑な方を言いたい人もいるんだけど。障害者の権利とかもそうで、障害者"も"幸せになれたらいいよねって話で。
だからヒューマギアの権利とか奴隷の権利とかもそうだけど…………うーん、"責任逃れ"をするやつ(新たな権利を手に入れるやつ)が「ズルい」って思われる社会なんですよね」
SONGEN「今はそうですね」
やんま「でもズルいっていうのは、今ある"空気"のせいで「お前は許されてるけど、俺だったら多分許されないかもしれない。だからお前は許されてズルい」って話なんですよ。でも革命派が言いたいのは、俺も"お前も"許されたらいいよねっていう話なんですよ」
SONGEN「言ってることは分かりますけど……。フェミニズムも、俺そんな詳しい訳じゃないけど、結局何がしたいのかなみたいなところは。どうなったら実現するのかなってところは。結局ただ"騒いでる人たち"みたいに捉えられちゃうのは確かに良くないと思う。なんかその、責任のない世界もそうだけど、ゴールはやっぱ見えないとねってところは。リアルなものとして実現可能なのかってところはどうなんでしょう。結局『ゼロワン』でも実現してないんじゃないですか、そういう世界は」

『ゼロワン』における責任の線引き

やんま「『ゼロワン』はね、結構シビアな線引きをしてて。『REAL×TIME』がその話なんだけど、エデンみたいないち個人だったら、過去のエピソードなりを知ることで共感して、お前も色々あったんだなっていう風にできるんだけど、シンクネットみたいな大勢になるとちょっと流石にキャパオーバーで、いちいち過去とか分かんないし、同情するほどの手間がかけられないから許せないっていう。そういう線引きになってる」
SONGEN「シンクネットの人たちこそ結局社会の弱者じゃないですか。だからなんか、結局『REAL×TIME』って勢いだけで誤魔化されて映画は良かったって言ってる人が多いじゃないですか(笑)」
やんま「『REAL×TIME』絶賛界隈のことはあんまりよく分かんないんだけど、僕も(笑)」
SONGEN「僕がこないだツイートしたの↓って、別にふざけてる訳ではなくて、結局そういう人たちに目を向けてないっていうことは、違うじゃないかなと思うんですよね」

やんま「確かに綺麗事を貫くんだったら、向けなきゃいけないところではある」
SONGEN「分かんないですけどね、シンクネットが本当にゴミの受け皿としてネーミングされたかどうかは。ダジャレとして。分かんないけど、本当にただの弱者に目を向けさせて、主人公たち側はいい人間ですみたいにしちゃうのは、いやホントに良くない手法だなと思って。あれが一番駄目だと思うんですよね、『RT』が」
やんま「でも僕それは……今までのライダーの文脈で見ると、ちょっとズレが起こるとこだと思ってて。シンクネットのやつらは、アバターじゃないですか所詮。生身に攻撃してる訳じゃないから」
SONGEN「あぁ、そこのズルさってことですか」
やんま「ズルさっていうか、巧妙さっていうか、仮面ライダーとの戦いで倒すことは彼らに対する"罰"には実質的になってないんですよ。ちょっと論破されたくらい、ネットで。刃たちが「お前たちに同情の余地はない」って言って、チクショーって顔真っ赤にしてるだけ、くらい? だから味方側が懲罰としてすごい酷いことをしてる訳でもないし。その辺はちゃんとセーブされてるというか、考えられてるとは思うんですけどね」
SONGEN「なるほど、懲罰はしてないっていう……確かになぁ」
やんま「お前ら本当にそれでいいの? って煽るだけっていう」
SONGEN「或人側も、天津にさえも懲罰をしない」
やんま「そう……罰を与えるっていうことはだからやっぱり過去志向だから、『ゼロワン』は本当に未来未来の話なんですよね。天津に対してもこれからの行動で示してくれって言ってたけど本当にそうで、これからどうするかで全て決まるっていうか」
SONGEN「過去を振り返らない……それが、令和1作目の覚悟だと、いうことなのかな」

自由意志とラーニングへの還元

やんま「自由意志っていうテーマを考え出すと、やっぱり過去を振り返らないっていう結論に至らざるを得ないというか」
SONGEN「『ジオウ』で過去は振り返ったから」
やんま「そうそう。やっぱ過去ばっかり見ちゃうと、結局じゃあお前の行動はそれまでの……或人だったら其雄がデイブレイクのときに守ってくれたっていう記憶をラーニングしたから、ヒューマギアを擁護してるだけで、別にそれって或人の意志でもなんでもなくて、たまたまそういうラーニングしたからだよねって。不破は不破で、たまたまデイブレイクで襲われたっていう記憶があるから、ヒューマギアに対して敵意を持ってると。……っていう風に、全部それに還元されちゃうって解釈すると、人間の自由意志の入る余地ってなくなっちゃって、そうなるとだからもちろん機械にも意志なんてないってことになるし。
僕は別に意志なんてないって価値観もアリだと思うんだけど」
SONGEN「あ、意志すらなくて……」
やんま「意志っていう価値観は、そもそも責任を問うための概念だから。まぁプラス自我同一性を保つ、アイデンティティの問題としてあるくらいかなと思うから。
僕は「自分はこういう〇〇主義です」みたいなのあんまり言わないし考えたことないけど、多分僕は自然というかあるがままが好きな人で。意志っていうとちょっと変わってくるから感情の話に変えると、例えば恋人とかで「俺はお前のこと好きだよ」とか「一生愛してるぜ」とか言う人の気持ちが全然分かんなくて。それって嘘……というか、恋人っていう役割だから、そういう立ち位置になってるから、こういうこと言うもんだよなっていうのがまず前提にあって、言ってるうちにその嘘が自分の中で自己イメージとして強化されてっちゃって、「俺ホントにこの人のこと好きなんだ」って自己暗示のループになってるところがあると思ってて。それはいい側面もあれば悪い側面もあるんだけど。
僕はその、自己暗示で自我を強化するってことに対して、それしなくて良くない? って思ってる人で。自然のままというか。無理に「好きだよ」とか……まぁ言わせたがる人もいるし言いたがる人もいるし、そういう枠に従ってるのが好きな人もいるから……好きっていう概念も意志なんだよなぁ。
基本はだから好きにしたらいいと思うんですけど。意志って概念が生まれたのも自然なことだから、すごい声高に、それこそフェミニズムとか障害者の権利とかLGBTみたいな、声高に主張する必要はないと思ってて。意志いらなくね? 責任いらなくね? くらいの軽い感じなんだけど」

 

ゼロイチにならないバランス

SONGEN「責任……はまぁ分かったんですけど、『ゼロワン』作中の話で言うと、その行為は……責任はないとしてもその行為は別に、称賛されるものではないみたいなのは、思うんですか? テロ行為とか。
結構テロの話ではあると思うんですよね、だから。一応、武力でもって……まぁそういう話をしたかったのか分かんないけど、なんとなく『ビルド』で仮面ライダーは兵器ですみたいなことやっちゃったから、もっかいやっとこうかみたいな感じなんだと俺は思ったんですけど」
やんま「テロもね……難しいテーマですよね。あんまり僕知らないけど、テロもやっぱ何らかの正義があってやる場合もある訳で。正義っていうか、今の政府っていうか体制に対して不満があって、それを正そうっていう活動の一環な訳じゃないですか。滅亡迅雷だって、あんまりそんな素振り見せないけど、一応地球上の人類以外の生物種を守るために戦ってるっていう大義があって。人類このままほっとくと他の生物が絶滅しちゃうから、だったら人類滅ぼそうぜっていうのがあるんだけど。まぁ、それはヒューマギア自身も含めて。それって確かに、分からなくもない……」
SONGEN「そういうテーマ自体はよくあることだし、もっとうまくやってる作品は結構いっぱいあるのに、どうしてこうも『ゼロワン』の見え様が悪くなってしまったのかっていうのは、多分なんかあると思うんですよね、原因が。それは視聴者が分かってないのか、それとも作り手側が何も考えてなかったのかっていうとこにはなると思うんですけど」
やんま「まぁ、実際好評じゃないってことから、作り手側の意図と視聴者側の意図というか受け取り方にズレがあるのは事実としてあると思うんですよ。でもどっちが悪いとかじゃないじゃないですか? それって。
だからこういう言い方は身も蓋もないけど、たまたま当たらなかったっていうだけですよね(笑)」
SONGEN「や、なんかどっかでストップを……さっきまでのやんまさんの言うことが正しいとすると、どっかでセーブをかけてしまったとかがあるんですかね。現実には即してない話だから」
やんま「セーブっていう言い方とはちょっと違うかもしれないけど、ゼロイチで割り切らないっていうのは1個あると思うから、そっちの思想に偏りすぎないっていうのはあると思う。さっき『ゼロワン』は未来しか見ないって言ったけど、エス/エデンなんかは恋人との過去を知って、あぁそういうことがあったんだっていう同情,理解をした訳で。だから過去を絶対見ないって訳ではないし、バランス……の話でもあるんだよな。人間とヒューマギアのバランスだったり、其雄からして見れば力のバランス(均衡)だったり。
最初期のベルト(ゼロワンドライバー,エイムズショットライザー,滅亡迅雷フォースライザー)も三竦みってことになってると思うし、ってか大森さんが言ってたのかな、三竦みでつくりたいっていうのは。まぁ(正確な意味で)三竦みにはなってないけど(笑)」
SONGEN「それもね、なんかどういう、どこまでの……。結局刃とかね、互いの意見をぶつけ合うまでもなく終わったじゃないですか」
やんま「……って言うと? あぁ、唯阿と或人がってことか」
SONGEN「唯阿と或人も……」
やんま「そうですね、あの二人は全然絡みがなくて」
SONGEN「三竦みっていうのはでもあれなのか、滅亡迅雷とA.I.M.S.と飛電社なのかな?」
やんま「まぁ三竦みっていうのは比喩というか、そんなイメージっていうだけであって、実際に……」
SONGEN「そこを確かに書けそうではあると思うんだけど、逃げたのか書きたくなかったのか、よく分かんないんだよな」
やんま「綺麗なグーチョキパーみたいにはなってなくて、ぐちゃぐちゃしてるんだけど、ぐちゃぐちゃしてるっていうのはリアル……っていうとちょっと違うけど、フクザツ」
SONGEN「僕自身は最初っから『ゼロワン』に期待して見てた訳じゃなかったから、期待はずれで叩いてる人とはまた違うんですよね。何を期待してたのかがよく分かんないから。まぁなんとなくは分かるつもりではいるけど。面白くなりそうってみんな思ったらしいんですよね、最初に。そこが違ったっていうのはみんな言ってるところじゃないですか。なんだろうな?
結局だからそこの、自由であって責任がない世界を書きたかったんだとしても、そこがメインテーマではないのかなっていう」
やんま「ほぅ」
SONGEN「メインテーマなんですか?(笑)」

「新しい価値観」の刷り込み

やんま「メイン(表層)っていうか、中核(深層)ではあると思います。責任って自由と正反対っていうか、『ゼロワン』のテーマが自由(井上P曰く)っていうのはあると思ってて。責任から自由である……」
SONGEN「そこがなんか、結局作家・高橋悠也から滲み出てきているだけなのか、それを本当に世に示していきたいのかっていう、そこは重要じゃないですか? 俺は本当に、"そういう人"なんだなって。『エグゼイド』とかがどうだったかは分かんないけど」
やんま「でも高橋さんは割と理詰めで書く人だなって思いました、見返してて。理詰めだからこそ(思想的に重要なポイントには)セリフで"触れてはいる"んだけど、これ視聴者の感情ついてくるのかなみたいなところは、確かにあった。僕はAIの本とか自由意志の本とか読んで色んなものにアンテナが立ってるから、このセリフこういう意味で言ってんだなっていうのがちゃんと頭の中で整理されて入ってくるけど、そういう素養がない普通の、子供とまではいかないにせよ一般の人? 一般の、普通に仕事してて、日曜日はなるべく何も考えたくなくて、ゆっくり娯楽を楽しみたいぐらいで見てる人……ごはん食べながらとかさ。そういう人に対して伝わるのか? っていうところは結構あると思うし。
そもそも伝える……口で言って伝わるもんではなかなかないと思うんですよ。現代的な価値観の、本当に根本のところをひっくり返す価値観だから」

SONGEN「じゃあもう本当にサブリミナル的に……」
やんま「そうそう、刷り込んでいくって言う。現代の子供たちにもそうだし……」
SONGEN「それってめちゃめちゃ恐ろしくないですか? だって(笑)」
やんま「恐ろしい(笑)……っていうか、まぁだからそれも別になんか、それが悪いっていう話じゃないんですよ。それで、あぁそうかもなってサブリミナル的に思ったんなら、それはその人の中にそれを理解するだけの土台があったってことですから。洗脳(他に選択肢のない閉鎖空間でひたすら思想を聞かせる的なコト)してる訳じゃ、ないじゃないですか」
SONGEN「や、でも……。まぁそれは確かに俺が保守的なのかもしれないけど。結局、或人みたいな人間、天津みたいな人間が許される世の中になったら本当に怖いなとは思うし……」
やんま「んー、まぁ天津は分かるんですけど、或人が許されないっていうのは具体的にどの辺がですか?」
SONGEN「或人も結局テロ的なことしてるし……まぁ責任取らないってとこですよね、だから。会社の"社長"を……テーマにしてるかは分かんないですけど、ただそれもなんか話を動かしやすくするために社長にしたっていうのは大森さんも言ってて。大森さんの考えてることと高橋さんが考えてることが、多分そこまで話合ってないんじゃないかなと思うんです。ただなんとなく社長にしておいて、それで責任を取らないキャラっていうのは、仕事の見せ方を示したい番組としてつくったものとしてはどうなのかなって」
やんま「『ゼロワン』っていう作品の中の価値観だと、或人は別に悪いことしてないんですよ。責任を取るような悪いことはしてなくて(言い切り過ぎた)」
SONGEN「でも世間を混乱に陥れた原因は飛電社にあるってなって、世間から飛電社が責められるっていうことになっても、そういう描写があってもおかしくはないですよね……あったか? ちょっと『バルバル』そこまで……」
やんま「あぁ、飛電社を責めたりはなかったですね」
SONGEN「A.I.M.S.が責められてた感じはしたけど。結局最終的に刃がテロリストみたいになって終わったけど」
やんま「その解釈僕よく分かんないんだよな。今回買って見たんですけど、あれだって別に……あの2人はテロリストとして、滅亡迅雷としている訳じゃなくて、ソルド9と20はA.I.M.S.に入隊したっていう話だったじゃないですか」
SONGEN「え、なんかめちゃくちゃ宣戦布告して帰っていきませんでした?」
やんま「まぁあの上司(大門寺)にはね、確かにそうだけど。でもちゃんとA.I.M.S.の隊員服着てて」
SONGEN「だけどA.I.M.S.が勝手に動くってことじゃないですか、あれは。独立組織みたいになって、上司の元を離れて武装組織として……。だから今度『ガールズリミックス』でバルキリーどんなつもりで出すの(笑) まぁ僕は(   )じゃないから、別にどの時点での刃唯阿でもいいんだけど。あんだけのことやっといて今更「女子ライダー集合!」って集まれるもんなのかなってね、思いはする」
やんま「あの最後はね、確かに……でもまぁ小説はあるんじゃないですか? 普通に」
SONGEN「まぁね。結構『バルバル』とかは内省的だった……あんまり大森さんの手を離れてる感じはして。内省的な部分はあったのかなって、それは色んな人が言ってると思うけど」

話は映像に優先されるか?

やんま「あー。なんかそう、僕は『滅亡迅雷』と『バルバル』はつまんなかったなって思った、普通に(笑) テーマ的には分からんでもないけど……まぁ復コアと同じかな、映像がつまんないし」
SONGEN「映像がつまんないはね、Vシネに共通して言えることだから、あんまり言ってやんなよって感じするけど(笑)」
やんま「いやでも、あの〜トラックの中でさ、なんかポコポコやってる映像(『滅亡迅雷』19:45〜)とか、あれフザケてないですか?(笑) あれは経費の節約とかそういうのを色々超えて……」
SONGEN「トラックの無音演出ですか? じゃなくて?」
やんま「その直後かな。直後に、あのレイダー達……(レイダーじゃないんだけど、名称的にはマギアなんだけど)が、滅かな? とトラックの中に入ってって、トラックの中でボコボコって戦ってて、トラックの側面が『555』の第1話みたいにボン! ボン! ボン! ってなるだけで戦いを表現するっていう……」
SONGEN「あれは……あれこそ何かしらのオマージュなんじゃないかなと思うけど」
やんま「あぁ、オマージュね(笑)」
SONGEN「結構力入れて……筧さんでしたっけ、監督がね。よくあるシーンなんじゃないかなと思ったけど。まぁアクションとか見た目で『ゼロワン』好きっていう人は多分いっぱいいて。そういう人は結局その、僕が言ってることも多分やんまさんが言ってることも理解してないというか、気にして見ようとしてない……人たちが、多くの『ゼロワン』のファンなのではないかなと思うけど。なんの話でしたっけ?」
やんま「でも実際……『ゼロワン』のアクションってずば抜けて冴えてますよね、結構。アクションっていうか絵作り?」
SONGEN「あー、どうなんだろ。そうなのかなぁ」
やんま「まぁね、冷めて見てるとまたちょっと違う(鼻についたりする)かも知んないけど、僕はやっぱり映像的にも一番好きだし……」
SONGEN「デザインとかにもね、文句言いたいことは確かに色々あるけど、そこは捨てて言ってるかな」
やんま「度外視してね」
SONGEN「映像はね、確かに……」
やんま「やっぱ結局"特撮作品"だから、映像が面白くてナンボだと思うんですよね、まずは。その上で話をどう転がすかっていうか。まぁVシネはね、また違うかも知んないけど。客層とか」

SONGEN「(話題候補を見ながら)"社会秩序と社会正義"……」
やんま「これはあれですね、滅亡迅雷のテロとかの話について、テーマとして置いといた感じですね。秩序を乱すけど、掲げてるのは社会正義っていう」
SONGEN「なるほどね、秩序と正義はまた違う……」
やんま「『リバイス』もね、今似たようなことやってますけど。平和と自由か」
SONGEN「その辺はね、確かに『ヒーローと正義』とかでも触れてた気がするけど……。言葉が、違いますよね、正義と秩序は違う。俺もなんかテーマ候補を挙げとけばよかったな」
やんま「正義は一応『滅亡迅雷』で否定されてて……正義は迷わないっていう。シンクネットの連中も彼らなりの……まぁこれは広く取り過ぎな正義なところはあるけど、彼ら的には今ある世界に存続するだけの価値を見出せてなくて、破滅願望を持ってしまうってところに行ってる訳ですよね」
SONGEN「あれ、でも彼らって逮捕されませんでしたっけ? 最終的に」
やんま「あーそっか、されてました。そういう意味では懲罰か」
SONGEN「懲罰というか、まぁ……警察がね。一回出てきたか、パトカーに追われるゼロワンみたいな絵面もありましたけどね。あれは確かに意識的にやったと言われてしまうとね」

シャイニングホッパー回の脚本

やんま「……警察から逃げることの何が悪いのか、僕全然分かんないんだけど、当時から(笑) まぁ社長としての社会的立場ってことなのかなぁ。まぁだとは思うんですけど。ちゃんと任意の事情聴取って言ってたはず……あ違うそれは2話か、2話のA.I.M.S.の事情聴取かな。ちょっと混同してるかもしんないですけど。(12話では任意という単語は出ておらず、令状が出ているので強制的なものと思われるが、警察が強制的にラボを開けようとすることを邪魔はしないけど自分はパスワードを忘れたから開けませんと言い張るのが違法なのかは調べた限りなんとも)
……でもまぁ、あの回は僕キライだから叩いてもいいんだけどね(笑) シャイニングホッパー登場回(12,13話)」
SONGEN「それはどういう理由で嫌いなんでしたっけ?」
やんま「三条陸さんの話づくりが……ナメてると(笑) 土壇場で任されたからっていうのもあるんだろうけど、ラボは今ダメなんですよっていう誤魔化し方が雑すぎるっていうか。別に、今ドードーマギアを倒すために(シャイニングホッパーキーつくってて)、ドードーマギア暴れちゃったら警察だって困るでしょって話でちょっと待ってくださいって正直に言やぁいいのに。隠す意味がないし、それに対する理屈を用意するでもないし、ラボだけはまずいんですよとだけ言って、変身して逃げるっていう……話運びの無理やりさ加減が。しかも、頑張って解き明かした祭田ゼットの謎がクソどうでもいいっていう。暗殺ちゃんが蘇ることに対して誰も何も疑問を抱いてなかったはずなのに、それを勝手に謎として取り上げて、実は祭田ゼットを回収してて、なんか闇ルートで売るやつがいて……」
SONGEN「それはでも『エグゼイド』とかもそうじゃないですか。別に永夢が変身できるできないとかどうでもいいのにみたいな(笑) エボルトが本当に仲間もいないでこんなことできると思ったか? みたいな、劇場版の。あぁいうよくある種明かしみたいな」
やんま「うーん、それとはちょっと違うと思うんだよな方向性が……三条さんのは、だからナメてるんですよねこっちを。説明する気が最初からないっていうか」
SONGEN「基本的には三条さんは一応信頼できる脚本家で通ってるじゃないですか、多分」
やんま「そうそう、世間的にはね」
SONGEN「世間的にもだし、三条さん頼ったのも結局大森さんが信頼できる人として……」
やんま「結局、公式読本でもベタ褒めしてましたからね。まぁだから、それこそごはん食べながら日曜朝にぼーっと見てる層にしたら、まぁあれぐらいの説明で全然いいとは思うんですよ。『W』の謎解きもね、ぶっちゃけそんな面白いか? って感じだし僕からしたら。だから、謎解き"してる感"? 何かしらの事実と事実が頭の中でくっつくっていうだけをカタルシスとして用意してる……だからやりたいことは分かるんだけど、うーん……ムチャクチャなんですよね、本当にあれは。(窃盗団が)顔変えてるんだったら祭田ゼットの元の顔が一緒である意味って全くなくて、あの5体だけが同じ顔してる理由には全くなってないし……まぁ一応擁護しようと思えばできる(同じ顔になる必要性はないけど蓋然性は高いかなとか、暗殺ちゃんの意識データをインストールするには外見だけじゃなくてAIの中身も似通ってた方が再現度は高まるのかなとか)けど、作中での説明(謎解きとして聞いてて面白い説明)には全然なってないし、説明してるようでしてない感というか。まぁ、だから僕があれ嫌いなのは、三条陸だからっていうのは一定数あると思う。……別に三条陸が嫌いな訳じゃないんですけど、(脚本家がいつもと違うって意味の先入観で)あの話だけすごい」
SONGEN「浮いて見えるっていうか」
やんま「そう。まぁワズが嫌いっていうのもあるか」
SONGEN「設定のズレとかもね、生まれてるんでしたっけ?」
やんま「あー、ゼロワン計画の個体はバックアップ取れるのか取れないのかみたいなね」
SONGEN「要らない設定が生まれたみたいな感じなのかな」
やんま「あれはまぁ別に、あれはギリいいと思うし(『ゼロワン』という作品、引いては高橋作品における言葉遣いの緩さ的には)……そう、今回見返してて、結構テーマ的には大事なところを担ってるなって思ったんですよ。それがまたなんか悔しいというか……。或人が、こんなダメ社長な俺でもちゃんとバックアップしてくれるイズってすごいじゃんみたいな、あのテーマって結構『ゼロワン』において大事な話だと思うし。ちょっと他に感じたのは思い出せないけど、まぁポンコツでもいいじゃんって話ですよね。そのテーマをちゃんとセリフとして起こすって意味では、大事な回だったなと思って」

 

見たことある展開と夢Tシャツ

SONGEN「改めて、視聴者が望んだ『ゼロワン』っていうのは、なんだったのか……」
やんま「あー、なんかそれは考えるだけ無駄というか……な気はしますけどね。だって……うーん、これは難しいな」
SONGEN「それこそね、もう終わったことだから(笑)」
やんま「まぁ、分かりやすいとこで言えば、アサルトグリップはちゃんと不破から或人への信頼の証として渡して欲しかったみたいなとこ? あの辺はまぁ……」
SONGEN「あーいうのはありましたね。それもだから、あれですよね、キャラクター同士のみたいな。でも結構、"見たことあるもの"を求める人が多いじゃないですか、ライダー界隈。『ギーツ』もクリスマスに誰か退場するんじゃないかみたいなのとか、そんな見たことあるもの見たいのかなぁ? って思うというか。これはこうなるんでしょって考察がしたいのか知らないですけど」
やんま「そうですね、知らないものについては語れないから。やっぱ知ってるものとの類似点を探していくしかないですよね、結局は。なんかね、これは過去作オマージュだーって言っちゃうのは色々どうなのみたいな話もありますけど。その作品としてね、単体として楽しむべきなんじゃないのみたいな。まぁ分からんでもないけど……」
SONGEN「過去作を振り返ることは別に……いいと思う」
やんま「っていうかそう……『ゼロワン』の『555』推し? あの夢Tシャツ(真実と夢のTシャツ)ですけど」
SONGEN「あぁその話……もしていいんですか?(笑)」
やんま「筧さんのインタビュー(公式読本)読んだら、平成ライダーはほぼ見たことないって話で、どうやら。あの夢の回(33話)が筧さんなんですよ。『W』と『オーズ』をちょっと見たぐらいで……っていう話で。まぁもしかしたら、"そうだった"けど『ゼロワン』書く前に見ましたよって可能性もあるけど、若しくは大森さん側からね、これ見といてくらいのことは言われたかもしんないけど、なんか脚本家が私情で(オマージュした)みたいなことではないのかなっていうのは、言質として。大森さんがどういう意図でっていうのはちょっと分かんないですけどね、言ってなかったんで」
SONGEN「でも実際Tシャツ発売してるからなー。でなんか、あの夢の話が全然違うのは誰でも分かることじゃないですか。『555』が言ってる夢と『ゼロワン』の夢と……まぁ文脈が違うからそりゃ違うんだけど。でも言い方結構『555』でしたよね。でやってることは辞表パンチだから……。
あれもそういうことなんですかね。別に引き継ぎも何もしないで辞めるみたいな、無責任さというか」
やんま「辞表パンチね、僕はあの演出ずっと嫌いだったんけど、公式読本で、生身の人間が生身の人間を殴るシーンは演出的にケアしないといけないっていう演出意図が書いてあって、それならちょっと分かるなと思っちゃったから」
SONGEN「殴るのが優先だったんですか?」
やんま「元々殴るっていうシーンだったらしくて、「こ れ が わ た し の」って演出は(後から)」

天津は悪役か/1,2クール目の構成

SONGEN「結局なんか、五番勝負編があって、そこは路線変更なのか知らないけど、天津をボコボコにする流れに持っていったじゃないですか。その後から。『スカッとジャパン』的なことをやりたいのかなみたいな。そこはやっぱ路線変更があったと思いますよ。テコ入れというか。責任取らせない代わりに、ボコすよみたいな。亡が服切り刻んでパンツ一丁にするよみたいな」
やんま「うーん、どうなんだろう。なんかその、構成としてはまず1クール目がゼロワン編じゃないですか、或人編で。で2クール目の五番勝負編がサウザー編なんですよね。サウザーがほぼ主人公として活躍して、ゼロワンはやられ役っていう。まぁメタルクラスタ(反撃)もあるけど、基本はサウザーが活躍して五番勝負にも勝って……っていう天津が主役の編なんですよ。だから或人が(1クール目)勝ってて(2クール目)負けてっていうのが続いて、今度は天津が勝ってたから、負ける番なんですよ。っていう構造として、3クール目は天津負けるよねっていうのは、まぁ筋通ってるっちゃ通ってるんですよね。或人も割と2クール目やられっぱなしだったから。だから垓を2人目の主役として捉えるなら、全然……たくさんやられてるとこ(30〜33話)は元から考えられてたのかなと思うところもあり。元の予定だともうちょっと早く仲間になってたのかもなとは思うけど」
SONGEN「じゃあダークライダーでもない? っていうか。まぁでもなんだろうな、結局は檀黎斗的なことやろうとしたんだとは思ってますけど」
やんま「ダークライダーも難しいですよね、定義が。(ゼロワンと対立するという意味に限定して)ヒールライダーではあるけど。まぁでも悪側の主人公みたいなあれでもいいんじゃないですかね、木場みたいな。……まぁ、天津は木場と違って人殺してないし(苦笑)」
SONGEN「えでも間接的に……殺してるんじゃないんですか? デイブレイクとか」
やんま「まぁね。そう、デイブレイクは死んでんだよな。あれもだから結局"分からない"ようになってるんですよね、誰のせいなのか。天津がやろうとしてたことってもしかするとアークを打ち上げることだったかもしれないし、爆発させたのは其雄じゃないですか。まぁ其雄だったり桜井郷くんの父親(4話)だったりっていう。だからデイブレイクっていう大災害が起きたことは、天津のせいとは限らない……まぁまぁ、アークに悪意をラーニングさせたことが発端だからっていう意味で言えばそうなんですけど。それは結局、一転二転した後の結果だから、そこまで天津が描いていた想像どおりだったかっていうと分かんないし」
SONGEN「天津……は、そうですね……天津はなんかどうでもいいな(笑)」
やんま「(笑) なんかね、ゼロワンアンチ界隈ではサウザーがむしろヒーローだっていう風に持ち上げる流れも(ネタとして)ありますけど」
SONGEN「それはね、俺は別に称賛してないけど。まぁ、人間側に立ってるからっていうね」
やんま「それはまぁぶっちゃけ無理くりだなぁと思うけど、逆張りというか。人間側に立ってもないんだけどね、ヒューマギア否定派ってだけ」
SONGEN「保守派……でもない」
やんま「どっちかって言うと革命派ですよね。全人類がレイドライザー持って争い合うみたいな」

さうざー回まではコロナのせいにできない?

SONGEN「でも結局はなんか、矮小化されたじゃないですか。セクハラパワハラ三昧の小悪党ですよみたいな。それで良かったのかなみたいなのは、もう一人の主人公なんだとしたら。そういう意味でキャラを大事にしない感じはするかなぁ」
やんま「なんかあのさうざー、ひらがなのさうざーの回(38話)までは脚本できてましたって色んなとこで言われてるじゃないですか、コロナの変更で……あそこまでは既定路線だった(だからコロナのせいではない)っていうのは流れてるけど、実際見てみると、飛電のラボの中での戦闘って結構異質なシーンだったじゃないですか。あの、山下とか福添に対して、サウザーが変身して斬りかかるっていう無茶苦茶なシーン。無茶苦茶過ぎて、僕はあれ見たときえぇ? って思ったんだけど、あれがもし仮に、コロナでロケとか行かないで撮れるようにラボの中での戦闘ってことにしたんだったら、多少無理あるけど……だから、脚本の筋は決まってるけど、舞台とかはちょっと変えてる、手を加えてるのかなって思ったんですよね。だからサウザーの扱いももしかすると、飛電のラボに自分のデータを揉み消すために立てこもりっていう流れではなかったかもしれなくて。もしかすると、外で戦う流れがあったかもしれないから……(そう思えば許せるかな)とは思いました。
まぁコロナのせいにするのもどうなんだろうと思いますけどね」
SONGEN「まぁでもコロナで疲れたとはね、言ってるからまぁ。大森さんも」
やんま「東奔西走したのは事実なんでしょうけど」
SONGEN「てかコラボ好きですよね、だから。対外がうまい人なんだなと、外ヅラがいいというか」
やんま「っていうか、他の人はただやらないだけなんじゃないですか? やりゃあできるけど」
SONGEN「俺は結局、本作品だけでやる自信がないから、コラボとかで誤魔化し誤魔化し……まぁ他の層から引っ張ってくるって意味もあるのかも知んないけど。空気階段とか。なんかそういうしょうもない手法が、1クール目の誤魔化しもそうですけど、しょうもない手法ばっかり引き継がれてしまってるなとは思う。Aiboコラボもそうだけど、なんか色々ありましたよね。レタスもコラボだっけ?
基本はだから、子供にお仕事を、大人にAI社会を見せたくて、それで何がしたかったのって話なんだよな。これは井上敏樹も言ってるけど、一般論でしかないことをわざわざテレビでやるのって面白いのかなっていうのが、僕は結局一番の肝で……『ゼロワン』に対して。そこはなんか本当に、『響鬼』の失敗と同じことをしてるなっていう」

自己犠牲は時代遅れ?

やんま「いやぁ『ゼロワン』はだから……この話前もした気がするけど、一般論に留まらないところが、いわゆる"倫理観がおかしい"として批判されちゃってるから、一般論に留まらないことは言ってるは言ってるんですよ。漫画の先生に「それでお仕事が楽しいんですか?」って言ったり。あれは別にお前が口出すことじゃねぇだろって話なんだけど、なんだけど口出して、その結果彼は心が救われて良かったねって話で」
SONGEN「なんかね、お話としては丸く収めようとしてましたね」
やんま「ヒューマギアが労働から解放されるんだったら、まず人間も解放されないと……ヒューマギアの権利を認めるには、だから"ズルい"って話になっちゃうから結局。だからお互いに自由にならなきゃ駄目だよねっていう。
そこがね、これからの社会に重要な概念だと思ってて。『シンエヴァ』もそうだったけど。だから自己犠牲は古いと思うんですよ、僕は。「他人のために自分が幸せになる」っていう時代だと思うんですよ、もう今は。
「あの人があんなに頑張ってるんだから、君もちょっと残業しなよ」とか言われるじゃないですか(イメージ)。僕ニートだからアレだけど(笑) そんなようなこと(雰囲気)があるって聞くじゃないですか」
SONGEN「働き過ぎの日本人に対しては、そうなんだろうなぁ。だから……え? 結局、ヒューマギアが労働を担って、それこそウィルが言ったみたいに賃金を貰うが正解なんですかね」
やんま「んーだから"働き方改革"ですよ、いわゆる。ヒューマギアは不当な扱いを受けてることに反感を持ってる訳ですよ。で、不当な扱いって言うんだったら人間だってパワハラセクハラ色々あって、ストレスの中で仕事をイヤイヤやってる訳ですよ。だからその、まず人間の労働環境を改善して、これからの未来の子供たちのためにもね、自分たちの労働環境をちゃんと見直して、"楽しく仕事"ができる場にしてこうぜ、そういう社会にしてこうぜって。子供たちが夢見る、こういう仕事に就きたいあぁいう仕事に就きたいっていうその夢を壊さないように、社会に出ても楽しめる世の中にしようぜっていうのが、まぁ理想論として『ゼロワン』が掲げてることだと思うんだけど。まぁ僕が思ってること、でもあるんだけど()」
SONGEN「まぁ僕が……結局大森さんが言いたかったのは、そこまでのことなのかなっていうのは。AIに仕事取られちゃう前に人間が頑張れよみたいな話だったんじゃないかなとは思うんですけど。よく言うね、結局は都市伝説であるレベルのAI知識で語り始めたのかなと思って。その後でね、つくりながら勉強したのかもしれないけど、(  )としては、これからの時代……未来の象徴としてAIをテーマに選んだだけなんじゃないかなとは思って。それ以降の話はそんなに……」
やんま「いやー、これは平行線かもしれないけど、絶対『ドライブ』でAIの勉強はしてると思う(笑)」
SONGEN「勉強……勉強したかなぁ?っていうとこ」
やんま「まぁ"勉強"っていう言い方はちょっと違うかもしんないですね、色んな人と関わる中で学んだっていうか。僕みたいに本読むとかそういう勉強の仕方ではないかもしんないけど。色んな人に取材するとか。で、そのAIについての概念っていうのは『エグゼイド』でも絶対引き継がれてるし、だから大森さんとしてはもうやりきったテーマなんですよ。やりきったテーマなんだけど、まぁ時代が変わってね、令和ライダーから見てみるかって人もいるから、もう一回やりますかってことだと思うんですよ、大森さんとしては。で、自分としてのモチベーションがAI一本だと、もうやったしなぁってなるから、じゃあ"仕事"っていう側面から色々描いてみたらどうだろうかっていう……まぁ仕事も描いてましたけどね」
SONGEN「仕事も結局そうじゃないですか、職業ライダー。警察官,医者……物理学者はよく分かんないけど。結局そこがやりたいんだろうなとは思うんですよ。大森さんは多分コラボとかしてる内にどっかに引き抜かれたりした方がいい人だと思うんだよな、多分(笑) 別にそんなに特撮ドラマつくりたそうじゃないから。お仕事ドラマとライダーの親和性が、ないじゃないですか、意外と。お仕事ドラマはよくあるじゃないですか、医者ものとか刑事ものとか定番で。弁護士ものとかもあるし。そういう一般ドラマに憧れてるコンプレックスがあるんじゃないかなぁきっと」
やんま「そうか、僕一般ドラマあんまり見ないから分かんないけど。でもまぁ一般の感覚で見てて、お仕事ドラマと仮面ライダーのドラマが乖離してるなって思っちゃうのは分かるけど、テーマ的には結構繋がってるし、ちゃんと読んでけば必要な話ではあるなっていうのは分かるんですよ。仕事ってだから、自分の意志でやってるのか他人の意志でやらされてるのかっていうのが曖昧な概念じゃないですか。さっきも似たような話したけど。だから自由意志、AIに意志は宿るのかとか、心はあるのかとか、責任は誰のせいなのかとか、ってことを考える上で、仕事っていう概念はちゃんと扱わないと、まぁ扱わないとっていうか考えといて損はないテーマで。で『ゼロワン』の中でもちゃんとお仕事として描かれてはいるんですよね、必要なトピックは。それが伝わってるかは、分かんないけど(笑) 僕には伝わったんだけど」
SONGEN「仕事ね。なんだろうな、学校の先生とかって学校卒業してそのまま学校っていうコミュニティに就職するから、結局社会を知らないみたいなことをよく言われるじゃないですか。それと同じようにっていうか、結局テレビ業界って特殊な世界だから。大森さん……が仕事論を語るに値する人かどうかっていうのは多分あると思うんだよな。普通の一般の企業とかで働いた人じゃないから」
やんま「はいはい。……それはさっきの話ですよ、そういう空気読めないやつ(少数派)が、世界を変えてくんですよ(笑) 現実を知って周りに流されちゃったら意味ない、一般論になっちゃう訳ですよ。特殊なところにいる人が、変わった思想……というか。うん、仕事が楽しいって思えてる人ってやっぱり一握りだと思うから、仕事はつらくて当たり前っていうのがまぁ世間一般の認識じゃないですか。それ以上を求めるのは欲張りというか、っていう認識をそもそも変えていかないと、これから先の子供たちに対しても、あれだよねっていうのが」
SONGEN「うーん、どうなのかなー」

やんま「幸せの押し売りって言うとちょっと近いかなぁ。宗教っぽいとは思う(笑)」
SONGEN「仕事論ってことですか?」
やんま「んー『ゼロワン』がっていうか、今日僕がしてる話が(笑) 私たちはこの思想で幸せになれるから、あんたらもこれで一緒に幸せになろうぜっていう、幸せに対する同調圧力っていうか……感はすごいあると思ってて。別にそんな幸せじゃなくても(楽しく仕事なんかしなくても)いいんだけどなって人は世の中にはたくさんいて。その諦めっていうか……"諦め"って言うのもちょっと違うんだよな、別に求めてないからそもそも。欲しくて諦めてる訳じゃないから。そこでもっと「欲しがれよ」って言うのは、すごい圧力的だと思うし。『オーズ』じゃないけど、もっと欲張れって言うのは、変な話というかだからその、迅が3クール目(31話)で「お前は自由意志で生きるんだ!」っていうのを押し付ける感じにすごい似てるとは思うんだけど。別にジーペンは流されて生きてて何も不満がない訳で、すごい酷い扱い受けてる訳でもないし。そういう人にわざわざ自分の意志を持てとかって言うのは、それは別にいいんじゃないっていうのは、すごい分かる。"息苦しい"っていう感想は、すごい分かるんだよな」
SONGEN「息苦しい……『ゼロワン』がですか?」
やんま「そうです。綺麗事っていうか、夢夢夢夢うるさい! っていうこと?(笑) 刃なんかはそういうキャラですよね。別に夢とかそんな大層な目標はないんだけど、なんとなく不満があって、くらいの。まぁ最終的には或人陣営に吸収それちゃったけど、それこそ最後テロっぽくなっちゃったりもして」

※第17回「身体」での会話↓が念頭にあります。
のーと「ゼロワンって、そんなみんな……自分の人生に生き甲斐とか、仕事にやり甲斐とか求めてることって、そんな前提になるかなって思って。大多数の人はそうじゃないんじゃない? って」
やんま「うんうん、なんとなくっていうか」
のーと「別にヒューマギアだって、みんながみんなあぁ言う訳じゃないだろって思う。すごく素朴なやり甲斐信仰というか、そういうのがあるなと思ったり」
やんま「そうですね、なんかやっぱ生きる意味っていうか、目的意識みたいなのはすごく重視しますよね『ゼロワン』は」
のーと「まぁそれをなんて言葉で表現してもいいんですけど、『ゼロワン』的用語だったら"夢"ってことになるのかもしれないですけど、別にそんなのなくてもいいのにって思うところはあるかもしれない。まぁあるに越したことはないけど。でもそれをなんか言われ続けるのはちょっと息苦しいなって思ったりはしました」
やんま「あーなるほど。或人はやっぱ綺麗事が好きだから、綺麗事ってやっぱりちょっと息苦しいですよね」
のーと「それはそうかもしれないですね」
SONGEN「大森さん自身にそんな夢がないんじゃないかなとは思うんですけど」
のーと「え、逆かなって思ったんですけど」
SONGEN「大森さんに夢があるから、押し付けてるようにってことですかね?」
のーと「お仕事とかにやり甲斐ある人なのかなって思ってましたけど」
やんま「お仕事でも楽しそうですよね」
SONGEN「いやー仕事人間だとは思うけど……(そういうの)ないのに言ってるから空虚に感じるんだろうなって思うんですよね『ゼロワン』は」
やんま「や、だから多分大森さんはクリエイティブなね、仕事をしてるから多分仕事が楽しいんだろうけど、だから仕事って楽しいですよっていうのを言えるんだろうけど、現実の仕事ってそうじゃないよねっていうところが、一番の齟齬なのかなって気はしてる」
のーと「そうですそうです(笑) 大半の人にとって仕事ってそこまで……」
やんま「まぁそこは敢えて、やってるところではあるとも思うんだけど。そうであったらいいよねっていう、そうなったら嬉しいよねっていうのはあると思うんだけど」
のーと「あぁ、子供が見る番組だから……」
やんま「そうそうそう、そうあってほしいなっていう。でもまぁ、根本的なズレは感じるだろうなぁっていうところは」
のーと「あーそうなるとじゃあやっぱりもう"お客さん"じゃないんだなぁ。当たり前か、当たり前の話だった(笑)」
やんま「大人になっちゃったから……仕事を実際に経験してるかどうかっていうのは、結構見え方変わってきますよね」

 

私的暴力の正当化

やんま「あ、でも『バルバル』唯阿の過去話はすごい良かったと思う」
SONGEN「あぁ、戦争の……。そう、いきなりフィリップの話ですけど、「拳銃をつくる人は犯罪者かい」みたいな。拳銃をつくる人は犯罪者じゃないけど、拳銃を持ってるじゃんみたいな、仮面ライダーは。或人たちが本編終了後の世界で仮面ライダー名乗り続けて、武力を勝手に個人の意志で行使してることが問題だと思ってて……問題じゃないですか? 単純に」
やんま「それは……あれですよ。単純に、武力を持ってることが問題なんじゃなくて、或人たちに信頼ができてないって話ですよね。武力を正しく使うかどうかの信頼が置けてないっていう」
SONGEN「いや、基本的にそこに"自己否定"があるべきで」
やんま「あー、なるほど」
SONGEN「まぁ僕が知ってた仮面ライダーはそうだった、だけなのかもしれないけど。なんか結局それも、"わたしたちライダー"はいい武力、お前たちのは違うみたいな。そういう要らん仲間意識が生まれてるのが最近の仮面ライダー……要らんのですよね」
やんま「人数が多いが故にね」
SONGEN「『ビルド』みたいな大学生ノリみたいなホモソみたいなのが気持ち悪いのとは元々また別であって、それが最近の仮面ライダーにずっと……『リバイス』も家族ぐるみでライダーやってる、気持ち悪いですよね」
やんま「そうですね、令和ライダーはその辺すごい意識してるっていうか、僕もちょっと前に言いましたけど、ショッカーから離反して、離反した奴らがまた新たにイチから組織をつくるっていう感じがありますよね、すごく。『セイバー』の2クール目かな?」
SONGEN「仲間割れ五番勝負」
やんま「ソード・オブ・ロゴスが仲間割れして、飛羽真が一人ひとり取り返していってみたいな」
SONGEN「あれはそうですね、SOLこそがショッカーだったみたいな見え方ですよね」
やんま「そう、だから新たに自分たちがコミュニティをつくろうっていう流れが、飛電製作所然り」
SONGEN「それは、意識してやってるとこなのか……」
やんま「まぁ、人数増えてってそうせざるを得ないみたいなところはあるのかな。でも別に対立させようと思えばさせられるけど、でもさせたらさせたでいつまで仲間割れしてんのみたいな言われ方をしたりもするし。『セイバー』なんかは最初仲間で、敵っていうかちょっと対立してっていう……まぁあれか、対立の流れがちょっとしょうもなかったっていうのもあるけど」
SONGEN「そもそもなんか不思議なあれですよね。今どき正義の剣士が存在するみたいな、始まりがすごいふわっと、現実感がない感じの。そこに……まぁでも裏切り者がいる! とかで引っ張ってるのはちょっと『ビルド』的だなと思って。結局は展開で動かしてくっていうのが今の手法なのかなって思ってて、そこにテーマ性があるのかどうかっていうのは確かに」
やんま「いやーまぁ『リバイス』は分かんないけど、『ゼロワン』『セイバー』はテーマの元にちゃんと展開つくってますよ、割と」
SONGEN「章立てがあってってことですか? でも『セイバー』とかも割と結構最後の方テコ入れテコ入れでうまくまとめたなみたいな話なんじゃないんですか?」
やんま「その、なんだろう。具体的な展開を変えることとテーマが変わることってまた、一緒じゃないから。キャラクターの動向とかは変わっても、テーマは変わらないで貫くことは可能だし、逆に……逆はないか。展開が同じでテーマが変わるっていうのは」
SONGEN「『セイバー』は割とそうですね、テーマに沿って終わった感じが」
やんま「『ゴースト』『セイバー』の組はまぁ、テーマ前に出しすぎっていうか」
SONGEN「そこがつまんなさでもありますよね多分。言い切っちゃうのもあれかもしれないけど、それこそ一般論なんだよな多分」
やんま「もうちょっと知識が僕にあれば、面白がれる部分もあるのかもしれないけど」
SONGEN「白倉さんが『ゴースト』辺りの時に言ってた、あの『アマゾンズ』の、最近のライダーに牙が足りないって言ってるのが、大森高橋ペアの倫理観のちょっとズレた、そういう牙であって欲しくはなかったなって思うのが実際のところで。そういう毒みたいな、そういう牙じゃなかったなぁ、と思って」

龍騎』ストレスのかかる展開

やんま「でも最近僕言ってますけど、真司とかって倫理観ヘンじゃないですか? ちょっと。倫理観って言うと……倫理観って言葉あんまり好きじゃないけど。性格悪いっていうか、悪くはないんだけど……2クール目終わるまで、何も知らずに戦いを止めるって言うのは、視聴者とのズレっていう意味でもすごい歪なキャラだと思うんですよね。こっちは蓮は恋人のために戦ってるってのが分かってるのに、真司はいつまで経ってもそれを知らないまま……何も知らずに否定してっていうストレスは、僕は(後の展開を)全部分かった上で見てるからっていうのもあるかもしんないけど、すごいストレスだったんですよね、序盤」
SONGEN「あー、そうなんですね。俺は……蓮のこと分かってても、うじうじして気持ち悪いやつだなって思って(笑) なんかあるじゃないですか、「これ女ものの……」みたいな」
やんま「あー。そうなんだよな、なんかどう転がしてもうまくいかないっていうか、それが『龍騎』の型っていうか枠じゃないですか。一番いい道なんかないんだけど。多分どう転んでもストレスがかかるっていう作り方ですよね、あれは」
SONGEN「答えが出しづらい番組ではあったのかな」
やんま「だから蓮の正しさを知らないって意味では、そっか、まぁ『ゼロワン』の第1クール? 滅亡迅雷っていう敵が割と空っぽで、特に掲げてる正義とかもそんななくて、ただヒールとして、やられ役としているよっていうのはまぁ、ちょっと構造としては似てるのかもしんない」
SONGEN「それは龍騎に対するナイトをヒールとして見た場合ってことですか?」
やんま「んーヒールっていうか、相手の正義を知っちゃうと、それに対するときにストレスがかかっちゃうって意味で……」
SONGEN「あぁ、だから滅亡迅雷に別に正義がないっていう……方が、ストレスがないと。どうなんだろうなぁ。
さっき言いそびれましたけど、迅って最初トリロバイトに拳銃ぶっ放して笑ってるみたいな、なんちゃってサイコキャラみたいな造形だったじゃないですか。まぁそこが多分ウケてたし、一部の層には」
やんま「でもあれは別に、キャラブレでもなんでもないと思うけどね、僕は(笑)」
SONGEN「キャラブレというか、所詮そのぐらいの記号的なキャラだったというか」
やんま「あー、記号的っていうかだから、うーん…………記号的ね、なるほど。まぁ一見矛盾してるようなことをするっていうのは、キャラに深みを与えることだとは思うんだけど、深みを与えるっていう目的の元で"安易に矛盾させる"っていうのは、確かに高橋さんの手癖ではあると思ってて。まぁ迅のあれは、高橋さんのアイディアではないけど。
そうなんだよな、高橋さんの脚本のヘンなところって、絶賛してる層が(彼のやってることの面白さを)分かってないんですよ、何も。それがなんか気持ち悪いなとは思ってて。『エグゼイド』も、面白がりようは多分あると思うんだけど、AIとか色々考えて見たら。倫理観とかも、僕最初はやっぱ拒否反応あったけど、一旦そこを度外視して落ち着いてみれば面白いところもあると思うんだけど」
SONGEN「『エグゼイド』は今、再評価してるんでしたっけ?」
やんま「そう、僕しようとしてて……結局配信リタイアしちゃって。感想もね、1エピソードにつき否定/肯定両方書くとか言ってたけど、止まっちゃって」
SONGEN「でも確かに『エグゼイド』の話も、『ギーツ』始まるからした方がいいかも。分かってない層はやっぱり、『エグゼイド』は良かったけど、『ゼロワン』はたまたまコケたんだみたいなことを言いたがるから。何も分析せず」

 

「お仕事五番勝負編」は必要?

やんま「五番勝負編の失敗は、大森さんらしい失敗というか。前にもここ(特雑)でちょっと話しましたけど、クール毎の目標っていうか「こういう編ですよ」「こういう章ですよ」っていうのを設定して話を組むところがあるから、でそれを前面に出して銘打っちゃったのが失敗だったっていうだけで……だけでっていうか、『ゼロワン』がなくてもいつか大森さんがぶち当たってたであろう課題というか」
SONGEN「五番勝負の壁というのは」
やんま「だからその、うーん……"五番勝負"って結局"2クール目"を言い換えてるだけじゃないですか。だから言い換えてるだけでやってることはこれまでと何も変わってないんだけど、お仕事五番勝負ですって劇中で言っちゃったがために、だからパッケージングですよね、パッケージングで損してるっていう。でもそれはしょうがないっていうか、どうしたらいいのか、僕まだよく分かんないんだけど」
SONGEN「パッケージングがミスってた? やったことはじゃあ間違ってなくて……五番勝負長ぇよみたいな結局ね、大元のあれがあるから」
やんま「お仕事紹介は興味ねぇよって客も絶対いると思うから、そこを人間vsAIっていう"勝負"にして興味持たせようぜっていうのは、意図としてすごい分かるんですよ。そこがそのままマギアvsレイダーっていうバトルにも繋がってくるし、そうなると必然的に仮面ライダーも登場せざるを得ないし。人間側のAIに仕事を奪われていく恐怖っていう、"いわゆるAIもの"としての描き方もノルマ的にやってるし、1クール目とかで言われてた"人間の悪意"ってのがじゃあどうやって生まれるのかっていうのは、人間同士の……仕事のストレスで、本人だって好きで悪意持ってる訳じゃないんだけど、ある種やむなく、プレッシャーなりなんなりでいわゆる悪いことをしてしまうっていう。
だから、あの2クール目は本当に、人間の悪意とは何かを描くものとして、『ゼロワン』の中で絶対に必要なパーツではあるんですよ。あれがないと、人間の悪意ってなんなん? って話になっちゃうから。
だから、デザイアグランプリっていうのはちょっとうまいなって思ってて。別にトーナメント戦じゃないっぽいから……ポイント制って話でしたっけ、今のところ?」
SONGEN「でしたっけ、人助けしたりとかも……ある」
やんま「何番勝負とかじゃないから、枠としては決まってるけどいつ終わるか分かんないっていう……まぁ分かんないと言いつつクール毎のどっかの節目で終わるんだろうなとは思うけど。
そう、だから"終わらない"って確約をしちゃったことが駄目だったんですよね、多分。
結果として1クール……まぁ2話×5で10プラスメタルクラスタとか含めてほぼ1クールですけど、1クールかけて、でしかも飛電が負けるっていう終わり方はどうなのっていうのは、僕はあんまり分かんなくて」
SONGEN「負けるのはね、別にいいんですねどね。負けるとやっぱり視聴者の溜飲が下がんない」
やんま「そうですね。負け続けてきて、でまた負けちゃって……まぁ3クール目があるから、制作陣としてはタメですよって分かってるからそういう考え方ができるんだろうけど。
先が……読めるのか読めないのかよく分かんないんだよな。
たぶん五番勝負が始まったときになんであんだけ、「なんで5回もやんの?」って言われてたかって言えば、絶対「どうせ飛電勝つんでしょ?」っていうのがあったと思うんですよ」
SONGEN「最初は……そうなのかな」
やんま「で、だからじゃあ飛電が負ければ予定調和ではなくなるっていうのは、ロジカルな話ではあるんだけど(勝たせるならむしろ三番勝負でもよくて、飛電が負けて或人が大きな喪失を経験するということに対する説得力のために、五番勝負という大きなスケールが要請される)。
でもそれをじゃあ、3ヶ月に渡って引っ張り続けるっていうところですよね」
SONGEN「まぁそこに関してはやっぱ「裏切ってやるぜ」だけじゃあなかったと思う」
やんま「3ヶ月って……長いよなぁ」
SONGEN「途中ね、お見合い回とかもあったしね」
やんま「そうあれもね、悪い方に悪い方に転んでましたよね。いいから早く五番勝負終わらせろよっていう。絶対制作陣としては、口直しというか、気分転換として入れてるはずなんだけど。五番勝負の決着が先延ばしになったっていう悪い方に転がっちゃってて。
なんかだから、世間の評価って一回ひっくり返るとなかなか戻せないんだなぁってとこですよね」
SONGEN「うーん、五番勝負でコケたからみたいなところ?」
やんま「五番勝負……でも終盤は割と(好評な印象もある)」
SONGEN「『エグゼイド』のつくりかたからしてみても、注ぎ足し注ぎ足しみたいな感じでやっていく訳だから、息の長い……1クールくらいがホントせいぜいなんですよね。まぁ滅亡迅雷編1クール目で解決せずにずっと乳繰り合ってたら面白かったかといえばそれは違うと思うけど」

 

「共感できない主人公」と「牙を抜かれた仮面ライダー

SONGEN「或人が結局共感できない主人公だから。共感できない主人公みたいなのは、けっこう厳しいですよねやっぱり。それは、ソウゴとかもそうなのかもしれないけど。だかは『ドンブラザーズ』がうまくいってるのは、はるかをやっぱり一応一般視聴者の視点においてから、はるかはブレちゃいけないっていう風に(   )」
やんま「共感ね、難しいなぁ。僕……そっかぁ。「或人に共感してました」とは言えないんだけど、そもそも僕共感ってあまりしない人だから。
でも……たぶんその"共感"に寄り添った結果が「牙のない仮面ライダーシリーズ」だと思うんですよね。当たり障りないというか、一般の人の価値観から大きく外れないヒーロー像というか」
SONGEN「うーん……まぁまぁそうか。白倉さんが言ってたことはいい子ちゃん過ぎるみたいなことだったから。まぁいい子ちゃんかと言われると、泊進ノ介とかが本当にいい子ちゃんだったのかはちょっと分かんないけど。それは警察官としてどうなのとか、永夢が医者としてどうなのとかはあったけど……まぁそうですよね。
次の『ギーツ』の主人公(浮世英寿)が、割と勝ち気キャラなんでしたっけ? 例によってDQNネームですけど。割とその、物語を牽引する力のあるキャラクターにやってんのはいいなと思うけど」
やんま「あー、どういうキャラになるんだろう(当時、僕だけが夏映画の先行登場を見ていた)……。
なんか、どこまで言ってもその、本質的な意味で共感はなかなかできないと思うんですね、ヒーローって。人助けする機会なんてなかなかないし。せいぜいお年寄りに席譲るとか、そんなもんじゃないですか僕ら一般人って。悪者がいる訳でもないし」
SONGEN「うーん、正義ねぇ。でもなんか、何でもいいんだと思うんですよ。やっぱりその、ヒーローに飯食わせたりとか、そういう人間らしさ? そこは何でもいいのかなと思うけど」
やんま「或人はね、メシは食わなかったですねほぼ。コーヒー飲んでたくらいで」
SONGEN「あぁそうか。まぁそこはね。井上先生の方法論とかもあるかもしれないですけど」
やんま「そうですね、或人は公私の私の部分が描かれてないんですよね。公に私が混じってるけど」
SONGEN「やってることは私的な感じするけど」
やんま「はいはいはい。プライベートが描かれてないから、そういう意味で共感はしづらいのかなぁ確かに。みんなそうか、(『ゼロワン』のキャラは)みんなプライベートないのか。本当に『EVERYONE'S DAILY LIFE(ショートアニメ)』ぐらいで……あれも日常じゃねぇしな別に(笑)」

広がるスピンオフアニメ

SONGEN「『EVERYONE'S DAILY LIFE』もねぇ……ちょっとどうなのかな。あれは湊さんの仕事だと思いますけど。」
やんま「まぁあぁいうのやる……やって害はないから、やればいいと思うけど。僕は基本見ないよってだけで」
SONGEN「流石に見てないけどな(笑)」
やんま「あ、今回は(トークテーマとして扱うにあたって)見ましたけどね、ちゃんと。そんな面白くなかったですけど」
SONGEN「じゃあ全てを網羅して……」
やんま「全てではないですね。ファイナルステージ……は1回見たか。でも今回は見返せなかったし。
『お昼のショッカーさん』も、別に勝手にやってる分にはぜんぜん良かったけど、映画(『ドンブラ』/『リバイス』)で急になんか、求めてもないのに見せられるっていうか、あれが1000円の値段に含まれてるって思ったら、なんか腹立ったっていうか(笑)」
SONGEN「そういうことなんですか? 1000円外の部分……」
やんま「だってあれに尺取られてる訳ですよ。まぁ『リバイス』の尺は別に要らないけど、その分じゃあギーツ(の先行登場)を描けたんじゃない? って思うなら……」
SONGEN「映画はまぁね、時間に対しての1000円じゃないから……まぁ宣伝はしたかったんでしょうね。『ショッカーさん』がやってるのは知ってたけど」
やんま「一応テレビ放送もしてるみたいで」
SONGEN「あぁそうなんだ、それは知らなかったけど。ウルトラ怪獣がなんか……やったりとかしてるから、そういうことがしたいんだなとは思うけど」
やんま「なんか、枠が多様なのは喜ばしいことだと思いますけどね。『DAILY LIFE』はつまんなかったけど、『リバイス』のがもしかすると面白いかもしんないし、『セイバー』のアニメが面白いかもしんないし、『ギーツ』のアニメが面白いかもしんないし」
SONGEN「『ギーツ』もやるのかな?」
やんま「まぁやめる理由はそんなに……まぁあるか。人気なかったらやめればいいか」
SONGEN「どうなんですかね、TTFCのコンテンツ増やそうとしてるところはあるし」
やんま「なんかTTFCのオープニングみたいなのつくってましたもんね」
SONGEN「あーありましたねなんかね。あれで見たかな、仮面ライダーキマイラのやつで(『Birth of Chimera』)」
やんま「まぁでも、あのアニメ目的で入る人はなかなかいないんじゃないかな(笑) いるのかな? まぁ映画でね、エピソード無料で見れますよみたいなの(https://tokusatsu-fc.jp/contents/news/0317/)があったから、あぁいう導線があればそういう人もいるのかなと思うけど、せっかくだからっつって。だってね、1話5分くらいだし、5分くらいのが5話だから……5×5=25分でまぁそっか、30分番組(CM抜き)1本分くらいなのか。だいたい」
SONGEN「コロナ休止期間とかにね、やればよかったのに」
やんま「あー、そうですね。『キラメイジャー』は『エピソードZERO』やってましたもんね。あそこで『令ジェネ』解放するとかでも良かったと思う。
まぁ、あの振り返り回も良かったというか、やって無駄じゃなかったと思うけど」

『令ジェネ』はパラレルではない?/受け継がれる"仮面ライダー"

やんま「『令ジェネ』って、あれパラレルに見えてちゃんと本筋に関わってるから、だからまぁ、編集して放送しても良かったのかな? してほしかったな? ぐらいは思ってるけど。
或人の本編の回想でね、「それが仮面ライダーゼロワンだ(25話「ボクがヒューマギアを救う」14:35〜15:52)のところで、回想してるシーンが『令ジェネ』なんですよ。本編時空では或人が子供の時に其雄は死んでるけど(1話)、今の(青年になった)或人が其雄を看取ってるシーンが回想されてるんで、きちんと『令ジェネ』の記憶が或人の中にあって、それを踏まえてあの「仮面ライダーゼロワンだ」ってセリフを言ってるっていう流れだったから。
(みんな急に「仮面ライダー〇〇だ」って名乗りだすけど、そもそもゼロワン世界における"仮面ライダー"ってなんなの? という部分は『令ジェネ』で描かれている)」
(参考:仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション ネタバレ感想)

映像とストーリーの良し悪しを分けて見られるか

SONGEN「『令ジェネ』はね、なんだろう……其雄の人もなぁ。なんか、今となっては、あっちの『シン・ウルトラマン』で」
やんま「メフィラスね。でもあのキャスティングは僕、あぁ庵野さん『令ジェネ』好きなのかなって思いました(山本耕史→其雄→メフィラス,和田聰宏→ウィル→神永がザラブに拉致されたときに場所を突き止め浅見に教えた元同僚・加賀美)」
SONGEN「いやぁ〜どうなのかなぁ(笑) 俺庵野が『ゼロワン』好きだったら本当にやだな〜」
やんま「でも『555』好きなら全然好きとか有り得そうじゃないですか? 話とかじゃなくてメカっぽいライダーとして」
SONGEN「結局その程度なのかなぁって思っちゃうんですよね。なんかその程度で見る人って多いじゃないですか、その程度って言ったら悪いけど。その可能性が確かに捨てきれないから……」
やんま「別にそこはなんか、同居できるもんだと思いますよ、一般の人でも。分けて見られる人っているから」
SONGEN「そうなんだよなー、それが分かんないんだよな俺は。なんだ、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い?」
やんま「なんかその、不思議なんですよね。『ゼロワン』の話が嫌いっていうのはまぁ分かるんだけど、映像の迫力とかは感じないものなのかなぁって。デザインは好き、とかでもいいし、玩具音声が好きとかでもいいし」
SONGEN「迫力……まぁそうね……。プログライズキーの音声で言えば、英語みたいなアレは、嫌いですね普通に(笑)
デザインとかも、スタイリッシュにしてやったぜみたいなのも嫌いだし」
やんま「なんか大森さんぽさはありますよね」
SONGEN「なんか外ヅラだけよくても……別に人間は見た目じゃなくて中身だとかそういうことが言いたい訳じゃなくて、外ヅラだけよくして中身が伴ってないということに対して、嫌かなぁという。
確かになんか、嫌いだから(より)嫌いに見えてるだとか言われるとそうじゃないかなぁと思うけど」
やんま「僕が今『リバイス』が映像的にもつまんないなと思ってるから、そこは連動するものなのかそうじゃないのかよく分かんないんだけど。……でも『セイバー』はあれだな、序盤(話はノれてなかったけど)映像はまぁ普通にいいくらいに思ってたかな」
SONGEN「リバイスはでも見た目最初いいかなと思いましたね、その中では。ベルトとかね」
やんま「へぇー、ベルトか。ベルトはなんか僕、正直ダサいなぁと思って見てますけど。情報量が少なすぎるっていうか」

『ギーツ』先行登場

SONGEN「ギミック……それからしたらギーツのやつ(デザイアドライバー)はちょっとなんか、あんま面白みに欠けますよね」
やんま「うん、あれはどうかと思う(笑) あれかな、(夏映画の)ネタバレしていいのかな? まぁいいか」
SONGEN「ネタバレなのかな、デザイン出てる分には、あまり面白くなさそうだなと思いましたけど。もう『ギーツ』の話でいいかな」
やんま「あのベルトはなんか、それこそ「置きに行った感」というか」
SONGEN「銃がすごい実銃っぽい感じで。おもちゃおもちゃしない風にしたいんだなみたいな。……の割には折りたたみ式で中身スカスカでいいのかみたいな(笑)」
やんま「どうかと思うんだよな、それやったら結局その、それ(再現)をガチでやってるおもちゃには勝てない訳だからどうせ」
SONGEN「サバゲーとか『FORTNITE』か。FPSとか楽しんでる子供の層に訴求したい、年齢層高めの子を引き止めたいみたいな、流れてく子供に対して追っかけてる感じが、戻ってくれよみたいな感じがダサいというか。そういう感じかな」
やんま「FPSね、画作りとしては新しいものになるかもしれないけど」
SONGEN「どうなんすか、登場シーンとかあったんですか? 映画は」
やんま「映画で見れる範囲では別に目新しいことはないかな(ルパパト撃ちとか……)って思いました僕は。Twitterでは割と絶賛されてたけど。『ゼロワン』のね、線が走って勢いをつけるみたいな特殊なエフェクトがある訳でもなく、九尾だから(?)勾玉っぽいエフェクトとか出るのかなーと思ったけど別にそういうこともなく」
SONGEN「和(?)を推してくるなら面白いかなと思いますけど」
やんま「(聞き取れず)ワン……?」
SONGEN「銃ライダーってのが、いないところではある」
やんま「銃が主役って、ファイズがまぁ使ってますけど(変形がアリならカブトとかディケイドとかたくさんいるか)」
SONGEN「メカニカル……『555』の意識はありますよねきっと」

AIを扱ったゲーム『デトロイト』の話

※『Detroit: Become Human』……人間そっくりの人型アンドロイドが普及したアメリカ・デトロイトの街で、コナー,カーラ,マーカスという3人のAIの視点で選択をしていき、エンディングを目指すPS4のゲーム。2018年発売と時期が近かったこともあり、『ゼロワン』当時は世間的によく引き合いに出されていた。以下の会話はネタバレ注意。

SONGEN「『ゼロワン』が『デトロイト』を意識してるかどうかっていうのはそんなに……流行ってはいたかもしれないけど、『ジュウオウジャー』が『マイクラ』っぽくしたのとはまた別で、結局AIものってなるとそこに集約されるだけであって」
やんま「でも三竦みっていうのは意識してるんじゃないんですか? やっぱ、最初からそうっていうのは」
SONGEN「三竦みね……まぁやってなくてもいいと思う。なんていうか。最近のね、湊とか松浦見てると、なんかそういう最近のゲームカルチャーとか取り入れたいんだろうなって感じがするけど、『ギーツ』みたいな計算して「今の子にはこれが流行ってるからこれにしよう」みたいなそういう(   
)とは別じゃないですか?」
やんま「『デトロイト』が流行ったから(AIをテーマにした)って訳ではないと思う」
SONGEN「ピンポイントで『デトロイト』流行ったかって言うとそうでもない……実況で流行ってたかもしんないけど」
やんま「正直僕も『ゼロワン』始まるまでそんな注目してなかったし」
SONGEN「逆に言うとだからその、AIもので言ったら最近『デトロイト』っていう名作があったけど、そこを超えられるのか? みたいな(      )だけなので、別にそんなに意識されてもってところではある」
やんま「逆にじゃあ『デトロイト』がどう名作だったのか聞きたいです」
SONGEN「あぁ『デトロイト』が面白いのは……あんまり良くなかったんでしたっけ? そっか」
やんま「いやまぁ面白いとは思いますけど、プレイしてみると(実況で見るのとは)またちょっと違ったかなって感じ、見え方が。結局その最後が、僕のエンディングが悪かっただけかもしんないけど、投げっぱなしエンドっていうか、こんだけ頑張ってプレイしてきてこの……これ? みたいなのがあって(人間とAIとの関係に決着がつかない)」
SONGEN「あぁ、そうだから綺麗には終わんないですよね。綺麗に終わんないところが……まぁいいというか。投げっぱなしっていうのは違うかなと思ってて」
やんま「なんか「ヒヨってんな」と思ったんですよね」
SONGEN「あれで共存しちゃってもそれはそれでヒヨってるかなって思うけどな、俺は」
やんま「そうだなぁ……"ゲームだから"していいと思うんだよな。だって『マリオ』全クリしてピーチ姫死んだらヤでしょ?(笑) 嫌っていうか、後味悪いでしょ」
SONGEN「あ、死んだら(デッドエンド)ってことですか?」
やんま「死んだらっていうか(直面してる苦難から)助けられなかったら。今まで俺たちがやってきたことなんだったんって話じゃないですか。でもデッドエンドがあるからいいのか別に? デッドエンドが許されるなら……」 
SONGEN「そこはまだ本当に、社会が落ち着けないところというか……。結局でもAIを通して人間を描いてるっていうところでは、『デトロイト』はやってたと思うんで」
やんま「え、人間描かれてないですよ? 人間ひとりもいない……あぁひとりはいるか」
SONGEN「あ、違う人間キャラじゃなくて、AIが人間になってくって過程で」
やんま「あー、はいはいはい。……でもそうなんですよね、とにかく人間不在なんですよね、ほぼ」
SONGEN「だから徹底してそっち側で……でもハンクは居たけど」
やんま「うん、(全編通して出てくるのは)ハンクくらいか」
SONGEN「ハンクとかカムスキーとかいるけど。
……なんか結局、ハンクとコナー(AI)のBLとかが流行ってるの見ると、まぁ面白いとは思うけど……(苦笑) なんかそれだけで満足しちゃいけないなとは思います。そこ2人だけうまくいってるから「AIと人間の共存はできるんだ」ではなくて、もっとしていきたいねって思うのが、うん。いいのかなって思うけど。
まぁゲームとして面白かったってだけですかね。俺はもっとアクションとかあった方が面白いと思うけど」
やんま「そっか、やっぱゲーム慣れてる人からするとそうなんだ。僕QTE(操作)難しすぎて……(笑)」
SONGEN「QTE嫌いなんですよね、なんか(笑) 『ONE PIECE 海賊無双』っていうのがあって、それで初めてQTEってものを知ったんだけど、ツマンナ! と思ったんですよね。まぁそれにしては面白かった方だとは思います『デトロイト』は。それで選択肢とか変わったりするし。
俺はマーカス(AI)のストーリーが割と好きなので。それこそね、(人類に対する)革命を起こそうとする側なので、そういうのが好きなんですよね結局だから」
やんま「へーなるほど。え、どっち選びました? テロと平和と」
SONGEN「俺は……自分がどのルート行ったかちゃんと覚えてないんですけど、どのルートって名称なのかは覚えてないけど、最後なんかみんなで歌って……終わるエンドです(笑)」
やんま「あー、じゃあ割と平和的な方なのかな」
SONGEN「あぁそうでしたね、結構仲間撃たれて死んでったけど……。"歌う"ってことで、人間に近付いたことを示したみたいな感じの終わり方だったかな。まぁ、そこは計算じゃなくて、なんか歌うみたいな感じだったと思うんだけど。ニュアンスとしては」
やんま「僕は先に調べちゃった(実況も見てたし)からあれなんだけど、ハッピーエンドに行く道が、アンドロイドが歌うか、マーカス(AI)のヒロインなんだっけ、ノース(セクサロイドAI)か。ノース(AI)にキスするかの2択しかないらしくて……(苦笑) そのどっちかなんですよ(僕はノース(AI)が個人的に好きじゃなかったのでしたくなかった)」
SONGEN「ありましたねなんか。俺もノース(AI)とキスはしなかったですね、確か。あれキスした方がトゥルーエンド行くんでしたっけ?」
やんま「いや、キスと歌うはたぶん似たようなエンドかな」
SONGEN「俺キスはしたくなかったんだよな、確か。ノース(AI)の心の傷を抉ることになるのかなとか思って」
やんま「あ、それは、それは逆じゃないですか? 僕逆にそう、ノース(AI)がキスしたいって思うんだったら、思えるようになって(トラウマを)克服するんだったら、(マーカス(AI)の心情としては)してあげればよかったのかなと思った」
SONGEN「あーそういうことか。いやでもうーん、やっぱ"その表現"が、キスしかないのかなみたいなとこ……」
やんま「あーなるほどね」
SONGEN「そこを使いたくないなと思って。だったかな、多分。そんなに自信を持って当時の選択肢を思い出せないけど。結構でもちゃんと決断しようと思って決断迫られるところが……。ただ好感度稼ぎたいんだったら、攻略とか見ちゃうかもしんないけど、全てに一応結末がついてくるから」
やんま「(『ゼロワン』は)没入感って意味では、やっぱゲームには勝てないですよね」
SONGEN「そうですね……。あとは、割とカーラ(AI)ルートも割と楽しんだ……コナー(AI)があんまり面白くなかったな、捜査パート。まぁ面白かったけど……コナー(AI)と接触するじゃないですか、みんな。俺だとコナー(AI)が結局マーカスに吸収される感じになっちゃったから……」

通信トラブル

どうなる『ギーツ』

SONGEN「『ギーツ』は一応期待したい方ではあるんですか?」
やんま「僕は……『ギーツ』期待しないでおこって思いました」
SONGEN「しないでおこうと、ね。それはまぁ、自分のために? というか。ガッカリしたくないために」
やんま「んーガッカリしたくないためっていうか、そういう別になんかアレがある訳じゃないんですけど、単純に期待できないなって思ったっていうか、今んとこ面白そうではないなっていう感じ? ちょっと話し出すと、映画のネタバレになっちゃうんで……まぁそんな大した話でもないですけどね?」
SONGEN「ギーツってキツネ?」
やんま「まぁもじりですよね」
SONGEN「……いや確かにそんなに別に話したい訳でもないから、そのくらいなんだよな」
やんま「多人数って言ってるけど、言うて『エグゼイド』もまぁメインは5人? くらいですよね」
SONGEN「高橋悠也(大森P?)の多人数と、武部直美の多人数……はちょっと意味合いが違う?」
やんま「武部さん……はそうですね。武部さんのは割と途中から参戦する人も多くて(『キバ』『鎧武』)、『エグゼイド』『ゼロワン』は最初から4,5人いて、一応そいつら中心で話回してく感じ……。
僕玩具的にはそっちの方がいいんだけど。やっぱなんか、フォームチェンジはあってほしいから、各ライダーごと。バロンがマンゴーになってバルカンがゴリラってぐらい……で終わってほしくはないけど、2号3号くらいまでは強化してほしいし。
(デザイアドライバー)はせっかく2つ付ける訳だから、組み換えみたいな楽しさは描くのかなぁとは思ったけど。……そう、販促はたぶん重点的にやるんでしょうね。販促だけに重点を置いたライダーをやりたいって言ってたから」
SONGEN「それは高橋(悠也)さんが言ってたんでしたっけ?」
やんま「そう結構前に……次やるならそういうのやってみたいって(『ゼロワン』以前のインタビューだったかも)」
SONGEN「すごいですね、みんな販促嫌がるのに」
やんま「や、まぁそれはちょっと、高橋悠也っぽい(僕の勝手な先入観)っていうか(笑) それで面白くならなかったらバンダイのせいにできるじゃないですか。そこはちょっとぽいなと思ったけど(他人の意見をたくさん汲んでくれる脚本家だという話は、インタビューでちょいちょいされている)。
キツネモチーフもなんか……他のライダー……」
SONGEN「どうなんですかね、他のライダーでどうなるか。何でもアリだとちょっと、本当に『リバイス』みたいになっちゃうから。和系で揃えるのかお面系で揃えるのか、妖怪とかやっても面白いと思うけど」
やんま「和風系で揃えるくらいの……まぁ和風系っつってもね、『鎧武』は全体としては和風だけど洋風もいるよぐらいの、あのぐらいのニュアンスでまとまってくれるならいいと思うんだけど。今回はちょっと何でもアリ感がすごい強くて」
SONGEN「なりそうですよね、そう」
やんま「なんか本当に『ビルド』と同じときの、同じようなにおいを感じてます(笑) ノンモチーフで、縛りなくやりたいのかなっていう。
キツネモチーフってだって、広がりようがないというか」
SONGEN「あるならお面なのかなぁとは」
やんま「なんかアルファベットのライダー出すんじゃねみたいな話もありますけど、英寿(ACE)で。アルファベット縛りはちょっと緩すぎないかとも思うし」
SONGEN「でもそのぐらいでいいと思うけど、たぶん」
やんま「人数によりますよね。本当に26人とか出るんだったら、それくらい縛りは緩めないと駄目かもしれないけど、まぁメインライダー4,5人くらいは、なんか他の縛りというか、もうちょっと訴求力のあるものを……」
SONGEN「そっか『555』がだからギリシャ文字縛りだから、確かにありそうだなアルファベット縛り」
やんま「なんか『555』って話いっぱいありますけど、そうなのかなぁ。まぁ分かんなくはないけど」
SONGEN「『555』っぽい『龍騎』っぽい……あとはまぁ『エグゼイド』っぽいもあるか」
やんま「そうなんですよね、『ギーツ』に備えて絶対『エグゼイド』予習しないとなっていう」
SONGEN「でもそんな、まぁゲームか」
やんま「まぁどっちかというと医療寄りですよね。"どっちか"っていうと」
SONGEN「どっちかっていうと医療寄りでもない気もする(笑) なんか『エグゼイド』が面白くないのって、結局は医療機関とゲーム会社の間の話でしかないというか。途中なんかクロニクルとかで一般人参加してくるけど。なんか、そちらで収めてくれてればいいだけの話を延々と見せられてる感覚というか」
やんま「まぁ内々で話を回す感じはありますよね」
SONGEN「内々で話をというか、内部の不祥事をずっと見せられてる感じというか」
やんま「不祥事……好きなんじゃないんですか? みんな(笑)」
SONGEN「スキャンダルとかですか?(笑)」
やんま「実は……! っていう。デザイアグランプリの裏には実は……! っていう」
SONGEN「まぁそうなっちゃうんでしょうね、きっとね。
『ドンブラザーズ』が結構なんか、世界観自体がなんかよく分からない……まぁ最近はなんか、現実世界に脳人レイヤーが重なってるだけなのかなって、なんとなく分かってきた気はするけど。デザイアグランプリは本当になんか、世界観自体がハックされてるというか、感じはありますよね。普通の現代の日本じゃないっていう感じはするというか。そう言うと『ビルド』っぽさもあるのか。日常じゃなくなってる」
やんま「たぶん、ビートライダーズぐらいのノリで進行してくんでしょうね」
SONGEN「ビートライダーズもやばかったけど(笑) ビートライダーズみたいにホント、ガキのケンカみたいな感じでデザイアグランプリやってるのか、本当にもうポピュラーなイベントとして……てかもう全員参加型なのか、そもそも規模が」
やんま「そこはあれなんじゃないですか、ランダムに選ばれた何人かがみたいな。ランダムじゃないと逆に描きづらいと思うけど」
SONGEN「どうなんだろう。ほんと、あんまり期待してないんだよなー。高橋悠也脚本くらいだったら別にそんなに、息巻いて見ようかなって感じは。『リバイス』と違って見るかもしれないですけどね、ちょっとは。見はすると思うんですけど。
『リバイス』は本当に未知数ではあったから。望月Pと脚本の木下さんと。そういう意味の期待はあったけど、本当に、武部×高橋ペアっていう、そういう意味の期待のなさはありますよね」
やんま「「知ってた」っていうかね。最近のライターでヒットした人って言うと、高橋悠也くらいしかいないし。毛利さんに書かせるのかって話にもなってくるし。でもサブには入るのかな?」
SONGEN「サブには入るでしょうね、きっと。それも言ってましたね、もっと入れて……入ってもでも、サブサブくらいですよね」
やんま「そう『ゼロワン』て意外と筧昌也さんが世界観つくってるというか、世界観というとちょっと違うけど空気感というか。舞台設定だけは高橋さんがやってるけど、本当に5話以降は1クール目のクライマックスまで、基本筧さんで。だから高橋さんは要所要所しか書いてなくて。1クール目の要所と、2クール目(ほぼ)全部と、3,4クール目の要所か。
だから、通常運転みたいなところは全部筧さんがやってて」
SONGEN「それはあれなんですかね、劇場版とかの予定が……。空気か、あの面白くないギャグとかは監修付いて」
やんま「はいはい、ハッピー遠藤さん」
SONGEN「ハッピーエンド(笑) 空気が重くなりすぎないためにギャグを置いたみたいな……それもよく分かんないっていうか」
やんま「まぁだから「必要としてもらえない人(≒01)」ですよね」
SONGEN「道化としての」
やんま「AIが台頭してきて、人類は必要なくなるかもしれない……でも必要なくてもいていいよねっていう。そのための、配置というか。「AIがポンコツでもいいよね」もそうだけど」
SONGEN「いや、それはなんていうか、番組としてのコメディリリーフを、主人公に置いていいのかっていう素朴な……。
まぁ、だいたい『ゼロワン』については話せましたかね」
やんま「そうですね、思ったより話しちゃったな僕は今日。まぁね、(いつも積極的に喋ってくださる)のーとさんが急遽来れないということで。
僕は何ならちょっと(今回は,今回も?)聞き専になろうかなぐらいの気持ちでいたんですけど(自分がゼロワンを好きな理由は既にブログで散々書いているので)」
SONGEN「あんまりね、今話したいって人がいないのかもしれませんね、『ゼロワン』について。まぁ、でも良かったです。ツイートでされてた以上のことは聞けたかなとは」
やんま「じゃあそろそろ締めますか?」

やんま「さっき言いそびれちゃったけど、『ゼロワン』がコロナで休止したのは逆に良かったと思う」
SONGEN「それは俺も思ってますよ」
やんま「みんなが同情ムードになったから(笑) それで終盤ちゃんと、五番勝負が云々抜きで楽しむ人は楽しんでもらえたっていうか、感じはしてるから。あそこでリセットできたのはよかったんじゃないかなぁと」
SONGEN「それもね、本当にひどい話だと思うけどな……そんなところで(笑) いや本当にね、見る側の質というかね、それも必要だとは思うんだけど、それを言い出したらそこはキリがないというか。そこはね………。
それこそ、変えていきたいなと僕は。空気読まないと思われても、アンチをすることによって変えたいなと思ったけど、変わんないなって思った結局。俺は別に制作者を殴りたくてアンチをしてた訳じゃなくて、ちゃんと言ってることを分かってもらえる人を探すつもりでアンチしてたつもりだったけど、まぁ実を結ばなかったかなと思って、今こうやって別に何もしてなくて(笑) まぁ『リバイス』は別に叩く気も起きないけど。『リバイス』の結果は、僕が今まで叩いてきたけど、何も変わらなかったことの成れの果てが『リバイス』だよってつもりでいるので。だからまぁ、『ギーツ』もそういう意味では、成功は……してほしくないというか?(笑) しないだろうなっていうのが先にありますけどね。
本当は成功した方がいいんすけどね、本当はライダー盛り上がった方がいい……50周年超えて。
それがまぁ……遺言ですかね(笑)」
やんま「『ギーツ』面白くなればいいけど」

2022年になって改めて『ONE PIECE』を読んだ感想メモ

僕がONE PIECEを始めて見たのは、アニメ女ヶ島編。そこから少しずつ劇場版やら再放送やらで全容を把握していって、唯一つまらなくて見るのやめた空島編を除けば、パンクハザード編まではおおよそ知っているという状態。
人並みには知ってるがめちゃくちゃ好きという訳でもなかった僕が、気まぐれでコミックスを90巻(中古で1万円)まとめ買いしたところ、面白すぎて止まらなくなってしまった。暇さえあればずっと読み進め、1ヶ月かけて90巻読みきったのが大体今から2ヶ月前。
『FILM RED』公開による世間のONE PIECE熱の高まりに合わせて、読んだばっかだけどまた読みつつ、Twitter上に流した感想をブログにまとめておくことにした。少しずつ追記していきます。
そういうことなのでいわゆる"初見の感想"ではないものの、全編を通して思ったことをまとめるというのはあんまりないと思うので。
最新話を追いながら毎話コメントしてるサイトは割とあるけど、あんなの読みきれないしね。編ごとにざっくり感想を呟くイメージです。

 

東の海(イーストブルー)編

フーシャ村編

・飽きるまでONE PIECE実況の人になると思います。尾田栄一郎氏、1巻のコメントからしてセンス抜群すぎてちょっと生きてる次元が違うな。夢を与える職業として素晴らしすぎる。
・ルフィが目の下に傷つくるとこ、目ん玉くりぬこうとしてるのかなってとこまでは分かるけどなんでわざわざ目なのかずーーっと不思議に思ってたけど、これ目を怪我すれば眼帯をすることになって海賊らしいだろ? ってことなのか……ことなのか?
もちろん、シャンクスと同じだからっていうのはあるにしても、同じにしたいならあんなくり抜くようなやり方じゃなくて表面に傷をつけるだけでよかったはず。
・元々カナヅチなのね
・ルフィ、サボとの回想が長かったから割と劣悪な環境でサバイバルしてきたみたいなイメージが強かったけど、宝払いとか言ってなんだかんだ村の人から可愛がられてるの改めて見るとめっちゃアットホームだな。ナイフで自傷してアットホームもクソもないけど。

・シャンクス相手に強気に出る山賊は何者なんだみたいなの、ちょっとした笑い話としては正直ちょっと好き。ないと思うけど変に再登場でもされたらキレる。
ONE PIECE世界において「56人殺したのさ」とか「俺ぁウン千万ベリーの賞金首だぞぉ!」って社会からの評価を誇らしげにするのは十中八九悪役ムーブだが、それはそれとしてゾロとサンジは懸賞金の高い低いで喧嘩する。
・「やられっぱなしなんてかっこわるい」って、子供の主張としては分かるけど後のルフィが持ってる独特の価値観とは若干ズレを感じるんだよな。かっこいいかかっこ悪いかみまいな、"周りからどう見られるか"を気にして生きてる感じはあまりしない。あの性格はどういう経緯で形成されたものなんだろう。
・ルフィから手を出したって話なのに、賞金首の仲間だからとはいえ先に撃ち殺すシャンクス海賊団、未だに衝撃的。"どんな理由があろうと"と言ってる通り、正しいとか正しくないとかそういう価値基準とは全く違うところで、例えルフィが大悪党だろうが、友達だったら助けるんだろう。
ONE PIECEは"王道"だと言われがちだけど、最初っからいわゆる正義とか勧善懲悪みたいな話はしてなくて、アウトローな価値観を未だに貫いてるから面白い。
・ルフィって麦わら帽子被ってるから、子供でも描きやすそうだな。

シェルズタウン編

・アルビダに媚びを売るからコビーなのかな……ひどい名前だ……。
・アニメではここが1話だけど樽からルフィ登場するの、明らかに桃太郎的な異常出生譚のノリよね。
・ワンピースって、人と人を繋ぐみたいな解釈が流布してるから完全にそっちの文脈で読んでたけど、コビーが言うには「富と名声と力の"ひとつなぎの大秘宝"」とのことで、どうやら文字通り富と名声と力という3つをひとつにまとめたお宝のことを言うっぽい。明確に形あるものだってのは言われてるし、少なくとも力が入ってる以上は武力として成立するものってことになる。でもただ兵器で支配するなら富は手に入っても名声は手に入らない、悪名くらいしか。
その3要素を兼ねるものってなんだろうな。まぁ悪魔の実なら力ではあるけど兵器っぽくはないってことであるかもしれんけど、あんまりピンとこないかな。
・オカマの扱いとかで揶揄されがちけど、この初っ端から「自分の気持ちを偽って美しいと言わされるなんて嫌だ。ブスだと思ったらブスだって言う、それが自由だ」みたいな価値観は如実に、というか芯にあるテーマとして描かれてるの面白い。
麦わらの一味は差別発言することに抵抗ないよね……。「自分が言いたいこと言う」のと「相手の権利を物理的に制限する」のラインは分けてて(ただし悪いやつはぶちのめす)、ルフィ的には「言葉の暴力によって自尊心を削られ、自分で自分の自由を殺してしまう」ようなケースは「お前暗いなー。おれ、お前キライだ(訳:自由になれよ)」で済ましそう。
・あとアルビダは「自分のことをこう認識しろ」と押しつけてくるのに対して、ルフィは「お前らが勝手に決めろ」なのも対照的かな。ルフィ的にも、"海賊王"の称号は他人から認められて呼ばれるものであって、恐怖で無理やり「あなたは海賊王です」と言わせてもなんの意味もないと分かってるからこそ、そこはきちんと一線を引いているという感じなのかな。賞金の額に一喜一憂したり、意外と社会からの評価を気にする一面もあるよね。

・ゾロって仏教に縁がある訳だけど、この登場シーンからして断食してるようなもんだし、他にも色々と苦行を乗り越えてきたのかもしれない。あの少女はブッダにおけるスジャータみたいなものか。お粥じゃなくておにぎりだけど。
・でもゾロのピークって割とマジで、このおにぎり食って「うまかった」って言うとこじゃないかな……。
根本的にごちゃごちゃと込み入ったドラマを描けるキャラじゃないから、他のキャラに対する優しさとかっこよさが一番両立してるのはここのシーンだと思う。他に候補があるとしたら「何もなかった」かもしれないけど、それ以外にドラマらしいドラマが思い当たらない。
見せ場の大小としてはスリラーバークの方が絶対大きいけど僕はなんでこっちの方が好きかというと「ひゅー、かっこいいぜ旦那!」みたいなこと言って変に持ち上げるやつがいないから。本人たちも言ってたけど野暮過ぎる。
しかし踏み潰されたおにぎりをひと粒残らず食ったって報告されて感想が「うれしい!」なのウケるな。

・性別によって全く何も違わないと言ったら嘘になるけど、創作において性別による差別化をしようとすると大抵生々しい話になって気持ち悪いと思う。
たしぎじゃない方とか、メジャーの涼子とか、意外と例はあるか。あれらは気持ち悪くない代わりに、幼い僕には理解ができなかった。
「女の子はなんでか知らないけど、大人になったら夢を叶えられないらしい」というふんわりした理解はしてたけど、それって逆に女性は抑圧されるのが当たり前みたいな価値観の刷り込みになってる気はする。「女性だけは胸が大きくなる」という事実からして認識できてなかったからどうしようもないけど。
「女の人が不幸な目に遭ってるのは物語として美しい」みたいな感覚は自分の中に結構根強くある。まぁ不幸な目っていうか、単純に涙を流す姿とか、割と綺麗めに演出されがちだから。くいなも涼子も、「私は女だから……」って悔しがるのはドラマとして普通に好きだし消費してる。
「おれに勝っといてそんな泣き事言うなよ、卑怯じゃねェかよ! お前はおれの目標なんだぞ! 男だとか女だとか、おれがいつかお前に勝った時もそう言うのか、実力じゃねェみたいに!」
でもこの回答はかなりベストだと思うわ。くいなをちゃんと個人として見てる。

・銃が効かないゴムゴムの実の能力って、シャンクスの「銃を抜いたからには命をかけろよ」を体現してるよな。いわゆる撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけなので、撃ったやつに弾丸が跳ね返ってくる。まぁ、つまんないからそれを攻撃として使うことはほぼしないし、あっても危ねえって避けるくらいだけど。

続く ※そのうち追記しますが、読みながら実況したものはTwilogで読めます

twilog.org

 

 

おまけ:アニメ映画

『デッドエンドの冒険』

・麦わら海賊団って自称したぞ今。やっぱ大なり小なり違和感はあるもんなんだな、ONE PIECEの劇場版は。
・面白かったか面白くなかったかで言えば面白かったけど、あまりにも二次創作感がキツくて頻繁に我に返らざるを得なかった。原作にある展開のコピーかちょっとしたアレンジばかりで、解釈がどうこうとうるさい連中が好きなのってこういうのなんだろうなと一人で納得した。
要するに「自分の理解の範疇に収まるものが欲しい」のであって、その注文への一番安易なアンサーがこんな感じで本編のシーンをパクってツギハギして提出することなんだろうなと。
別の作品でオマージュするのは好きにすればいいけど、同じタイトルで同じ展開繰り返すのってよくないことじゃない?
視聴者には想像力があったりなかったりするので、根底に流れるテーマが同じでも描き方や見え方が変わっただけですぐ同一性を見失ってしまう。そりゃ「解釈一致!」って言わせたいなら丸パクリするのが一番いい。
「そのために戦って死ぬんなら、別にいい」って、ただでさえ原作セリフをほぼそのまま引用してて既視感あるのに映画の中でも2回同じこと言わせるから信じられない。
・あれかな、デッドエンドの冒険はこれまでのONE PIECEをほぼ知らないし読む予定もない人に「なんとなくこういうことやってる作品だよ」って紹介するのが目的の作品なのかもしれない。尾田さんも、最近読み始めた人に昔のエピソードを知ってもらうにはどうするかで苦心してるみたいだし。

『呪われた聖剣』

・ウソップがナミに「裏切りはお前の十八番だろ」って言うのは確かに変だって言われても多少理解できるけど、自分も過去に同じことしたとかも長い付き合いだから心中を想像するでもなく、ゾロが裏切ったことに「信じらんない!」と吐き捨てるナミはキャラクターとして圧倒的に正しい……。
ONE PIECEの世界設定として、人の生気を吸い取って死者のゾンビをつくりだす不思議な花はあってもおかしくないが、不思議な宝玉で儀式して結界作り出すのはなんか違うよなぁ。
子供の頃でも明らかに別物だなって思ったもん。
能力者でもない人間が儀式で不思議な力を使えるとなると、それはあの"世界"自体に利用可能な不思議パワーが漂ってないとおかしい訳で、そんな概念が存在するならあのパワーインフレ起こしてる世界においてはなんらかのかたちで研究・利用されてないはずがない。
・『呪われた聖剣』は『デッドエンドの冒険』と同じ脚本家とはとても思えない変わりようだった。あれだけしつこかった本編オマージュが鳴りを潜めて、まぁ探そうとすればあるけどかなりオリジナル要素が多くて、ただあんまり面白くないだけの1本だった。
でもゾロを主軸に据えた物語ってなると、そりゃナミほど湿っぽい話にはできないし、本編でやってないからこそ実は幼馴染がもう一人いたってことにしてでもオリジナル要素強めて描く意味は、本編をコピーするよりは十分あったと思う。
単純に、ゾロというキャラが面白くないというか、ドラマ向きじゃない。

オマツリ男爵と秘密の島

『ONE PIECE オマツリ男爵と秘密の島』は偏見で叩かれている(感想)

・舞台設定がほとんど同じなスリラーバーク編で麦わらの一味が団結して敵に立ち向かう展開をやったのはオマツリ男爵への当てつけ説、確かにそれはすごくぽいなと思うけど「あれはあれであっていいけど、そうじゃない描写もないとバランスが取れない」っていう意図の可能性もなくはない。
てか、シャボンディ諸島でパシフィスタと黄猿にやられるシーンって、じっくり全員の奮闘を描いた上で全滅してるからなんならオマツリ男爵より酷いよね。結果無事だった、というのも同じっちゃ同じだし、仮にくまが敵だったら(ルフィがドラゴンの息子じゃなかったら?)あそこでゲームオーバー。
・ゾロとサンジのはいつもの延長だから特に深い理由もないけど、普段しないナミとウソップの喧嘩はどちらも自分が仲間を裏切ったと言われて感じた罪悪感に端を発してて、その感情はオマツリ男爵の仲間を救えなかった後悔と繋がってくるのは、作品的な意図なのか、男爵の意図なのかどっちだろう。
・でもさー、オマツリ男爵についてこれだけは本当に言いたいんだけど、ルフィって仲間判定するに当たってそこまで重くもの考えてないよ。"仲間にしたくないやつ"については一家言あるみたいだけど、ナミ,ロビンは成り行き、ブルックに至っては初見で「面白ガイコツだから仲間にしよう」だしね。軽い。
・オマツリ男爵当時の彼がどれほどかは知らないからともかく、少なくとも今になって見た人は「監督:細田守」のネームバリューくらい知ってるはずでしょ。にも関わらず「ONE PIECEかと思ったら細田守で期待はずれだった」は成立しないんでないの? 和風ハンバーグって書いてあんのに洋風期待すんなよ。
仮にオマツリ男爵はONE PIECEをやるべきところで細田守が我を出し過ぎたんだとしても、あのインタビューは間違いなく細田守が主役なのにどこの馬の骨とも知らねぇインタビュアーが出しゃばって変な解釈流布してんなよな。
・そこをツッコんでる人あんまいないから考えてないけど、リリーカーネーションの能力ってどう捉えるのが正解なんだろうな。死者蘇生の応用で仲間割れさせてるのか、仲間割れの応用で死者蘇生してるのか、2つ能力持ってるのか。花言葉からは分かりそうにないが、描写から"後悔"がキーなのは間違いない。
ナミは仲間を裏切ったこと、ウソップはナミを置いて逃げたこと、サンジは仲間の消失に気付かなかったことがトリガーで酷いこと言ってる訳だから、リリーカーネーションの花粉か何かが後悔の感情を刺激することで仲間割れを起こしてるのはまぁ十中八九。
一転して、死者蘇生の能力はオマツリ男爵の持つ後悔が生み出す矢、これは山頂の太い茎に集まっている。オマツリ男爵の後悔を呼び起こすことでムチゴローたちは願いの形として実現する? もうちょっと考えよ。
・レッドアロー海賊団は水棲生物がモチーフなのに植物が生えてんの、海を渡る自由気ままな海賊だったはずなのに、過去にとらわれてあの島やリリーカーネーションから離れられなくなりオマツリ島に根付いてしまったんだからなんもおかしいところがない。
・ウソップがナミに任せて試練を離脱するの金魚すくいも合わせると2回目だったり、助けてくれたサンジが海に落ちても気に求めないナミだったり、この時点から若干導線は作られてるのか。
お祭りの金魚って、せっかく家で育て始めてもすぐお別れすることになっちゃうよなぁ。
・「オマツリ男爵もブリーフも私の息子だ」ってことは、脚本段階ではお茶の間海賊団はいなかったのに細田守が無理やり足したってこと!? やはり家族観ガー
小黒 脚本で、チョビ髭とお茶の間っているの?
細田 いますよ。
・「麦わら一味の女子がムチゴローにお酒を飲ませながら話を聞こうとしたら、様子がおかしくなってしまう」って展開をひとつの映画で2回も、同じ絵の構図でやってるのはどういう意図なんだろうな。
・ウソップを避けるナミが性格悪いっていうか、ちょっと喧嘩してるナミの横にわざわざいくウソップが悪いよな……仲直りしたいにしても間が。
・オマツリ男爵、そういえばロビンに対するサウロの「この世に生まれて一人ぼっちなんて事は絶対にないんだで」の話だよな。大切な人を全員訳も分からないまま殺されて。
・オマツリ男爵もチョビ髭もお茶の間海賊団も、あの島に居着いてる幽霊だって風に見ることは、できると思う。男爵だけは肩から花が生えてるだけだけど、残りのゲストはみんな被り物をしてて、頭に葉っぱが生えてたとしても見えないようになってる。5人中5人はちょっと、偶然にしてはできすぎてる。
・リリーカーネーション蓮コラみたいなんじゃなくて蓮だよな、何回見ても。

カラクリ城のメカ巨兵

・オマツリ男爵では絵柄から何から違ったから「そういう作風」で済んだけど、いつもの感じで聞かされるとカラクリ島の麦わら一味かなり違和感あるな。キャラクターの信念がどうこうって話にはならないけど、そういう言い回ししないだろっていう。ルフィがゾロのことマリモって呼んだことないでしょ。
・宝箱から変なバーさんが出てきたから、戻して紐でぐるぐる巻きにして明らかに出られない状態で海に捨てようとするルフィ、本当にギリギリ天然でやりそうだけどやらない。
・全然関係ない話してるのに間を繋ぐためだけに何の脈絡もなくナミの胸をSE付きでボヨボヨさせるのゴミ。サンジがメロリンするときに性的ニュアンスを強調するのはいつもやってるけど、そうやってギャグとして消化するでもなくただ静かに、視聴者だけに向かってこんな描写するほど下品な作品じゃない。
・「おれは樽で」「ドラムの城を思い出すなぁ」
きしょいきしょい。オマツリ男爵に対して本編と解釈違いだと思ったのか知らねぇけど原作読んでますよアピールばかきしょい。ただセリフで言及させるだけならアホでもできるわ。
・「バーさんがあるって言い続けてたんだからある!」
ようやく初めてそのキャラっぽくていい感じのセリフが出てきたな。殺しかけてたけど。
・「前作が喧嘩ばっかりでギスギスしてからゾロとサンジにも喧嘩させません」みたいな変な逆張りしてないのはちょっと見直した。
・「刀の切れ味が良すぎるからブレーキにしたいのに止まれない」って、うっすら本編にもあったような気がしないでもないけど、表層的な部分しか真似できてないのが出ちゃったな。いい刀は持ち主の斬りたいものだけ斬るって話をアラバスタで既にやってるはず。
・ぎ、ギア2をルフィが思いつくくだりがあるだと……? こんなクソ映画で!?
・つまんなくないところはあるっちゃあるけど差し引きスーパーマイナスでホントつまんなかった。こんなのつくっといてよく脚本を改悪されたなんて怒れるなぁ……。
オマツリ男爵はONE PIECEとして見なきゃ面白いって辛うじて認められてるけど、ONE PIECEとして見ても見なくてもつまんないからどうしようもない。
予告と子供向けって話から色んなカラクリが出てきてドタバタやるんだろうと期待してたのに中盤しょーもないオヤジギャグの解読しかしてないし、僕オヤジギャグ好きな方だと思うけどあれを面白がるのは無理。子供が好きなタイプの言葉遊びでもないと思う。
・オマツリ男爵の批判ポイントと照らし合わせるなら、鬱展開やホラーっぽい映像はないけど本当にただそれだけで、大量のギャグ要素は終始スベってる。これは脚本というより見せ方も大いに悪いと思うけど、BGMなしでゆったり会話するのオマツリなら不穏な演出として成立するけどただ間延びしてるだけ。
これは邪推だけど、オマツリ男爵の映像って「手の抜き方がうまい」という印象を受けてて、全体的に平面的でベタッとしてるのも、動きを最低限にして不気味さや迫力を出すのもそういう味になってるんだけど、あれはもしかすると予算的な都合を逆手に取ったのかなと。で、カラクリ城はそれができてない?
・「"ふたつのつき"は月じゃなくて突きだったんだ!」「"飲み干すとき"は飲み干した時じゃなくて、トキが飲み干すってことだったんだ!」
このオヤジギャグで子供が笑ってるところが全く想像できない。何言ってるのか理解できないと思う。僕でさえ理解できないもん。なに、ふたつの突きって。
・90分間、ほぼ麦わらの一味っぽい誰かたちが麦わら一味っぽいギャグ的なやりとりをしてるだけで間をもたせてるんだけど、本当に表層的な真似でしかなくて、子供はともかく作者の存在を意識できる大人はたぶん作為的なものを感じてしまって全く自然に見られない。ひどいことするわってあんま言わないよ。
90分間、ほぼ麦わらの一味っぽい誰かたちが麦わら一味っぽいギャグ的なやりとりをしてるだけで間をもたせてるんだけど、本当に表層的な真似でしかなくて、子供はともかく作者の存在を意識できる大人はたぶん作為的なものを感じてしまって全く自然に見られない。ひどいことするわってあんま言わないよ。

仮面ライダーギーツ 制作発表 感想

だいぶ旬も過ぎてきたけど、2週間前の8/7にギーツの制作発表があったので、毎年恒例だし初見の感想を残しておきます。意外と読み返すと「この時期はそう見えてたのか」って、自分でも面白かったりするし。

前年のリバイスから壇上の記者会見ではなくて劇中セットからのライブ配信というかたちになってて、今年はついに"会見"の2文字が消え、生のライブでもなく事前に撮影・編集も済ませた動画のプレミア公開に。
テロップが付いてるので見やすくもあり、でも見心地が完全にウラ仮面ライダーなのでなんとなく俗っぽさもあり……。トークさせっぱなしじゃなくてカットもして、更に編集する手間もあるからなのか、時間も30分と短め。グダグダしないで番組風にまとまってるのはいいと思う。


……なぜ今回、こんなにだらだら前置きをして本題に入らないかというと、特筆して話したいことがないから。『バトルファミリア』の先行登場を見たときからずっとピンとこなくて、制作発表を見た今もその印象は拭えずにいる。
だって『ギーツ』、今のところまだ何者でもないんだもん。掴みどころがない。
前提として、高橋悠也は「次やるなら玩具のギミックだけを魅せる仮面ライダーをやってみたい」的なことをどこかで言ってて(エグゼイドの頃だったかも)、多分武部さんも玩具売りたいから起用したんだろうけど、その玩具があれかぁ……ってのが正直なところ。

現状出てるデザイアドライバーの情報を見る限り、色んなレイズバックルが発売されることである意味では「どんなギミックも楽しめる"お買い得"なベルト」ってことになるんだとは思うのよ。その点に関してだけ言えば僕も楽しみっちゃ楽しみではある。
今出てるギーツのマグナムブーストみたいにハンドルとして回したりあのディスクを回転させたりするの、やろうと思えばカブトゼクターみたいに開いたりメタルクラスタみたいに何かを折りたたんだり、見た目が変わるのは当然として後付けで無限にギミックの幅を増やせる。ちょうどフォーゼドライバーみたいな感じ。

 

けど、それってもうナンデモアリ過ぎて"ギーツの個性,売り"が何も見えてこない。"デザイア"ドライバーだからギミック欲張りのナンデモアリなんですよ、アーマーの共有とか上下の反転とかで交換可能性を表したいんですよだから筋通ってますよって言われたらそれはそうなんだけど。
ビルドドライバーのレバー操作、ジクウドライバーの360度回転、ゼロワンドライバーのキー装填、ソードライバーの抜刀みたいな「1年通して"このギミック"を堪能してください!」ってのが無い。リボルブオンはそれなんじゃないと思う人もいるかもしれないけど、ジクウドライバーと被ってるからなのかほぼオマケ機能みたいなもんで、変身音声もおそらく共通の簡素なものとなっていて、明らかに主力ギミックではない。

そのうえ音声も機械的で無個性と来てる。巷ではファイズみたいだと言われてるらしいけど、イメージとしてはむしろアマゾンズドライバーに近い。音楽に乗って歌わないだけで、ファイズのシステム音ほど無機質ではなくてきちんと抑揚はある喋り方。
僕は玩具の面白い音声目当てで特撮を見てると言っても過言じゃないので、その視点でいうとデザイアドライバーは死ぬほどつまんない。『555』世代なのであぁいう無駄がないのがカッコいいって言う感性も確かに持ち合わせてはいるけど、色んな種類があることを売りにしてる最近の路線であそこまで音声の印象が変わらないとなると、ほぼ同じものが無限に登場することになる訳で、どう考えても面白くない。
もちろん、マグナムとブーストはギーツ用だから似せてるだけで、SEに関しては色々特徴出してくるんだとは思うけど、やっぱ口で簡単に真似できるのは音声の方だからなぁ。

 

ビルドと同じで実質的にノンモチーフで自由にやりたいんだろうなというのは伝わってくるけど、この調子じゃ多分キツネから始まる和風テイストは作品の骨子にはならなそう……というか仮に狐狗狸(コックリ)が揃ったとしても全然パッとしないし、バトロワものってのもあくまで1クール目までの話ですぐ終わって新展開始まるだろうし、何回も言うけど"1本突き通す筋"みたいなものが感じられない。何か真実を隠すために虚飾でごまかしてるんじゃなくて、ただ中身がないのを誤魔化してるだけに見える。

つまり「制作陣のやりたいこと」が不在のまま、ただ売れそうなことを切り貼りしてるだけ……という印象を強く受けた。
"キツネの面"だけはフォームチェンジしても変わらず一貫させるらしいから、そこを軸にしてきちんとテーマ性を確立して欲しいんだけど、現状僕がその肝心なキツネ面をダサいと思ってる(そろそろ見慣れてはきたが)のでうーん……。

 

続く

 

『ONE PIECE オマツリ男爵と秘密の島』は偏見で叩かれている(感想)

結論:これを過剰に叩いてる人はちょっと見方が偏ってると思います。


現在は2022/08/14、ちょうど『ONE PIECE FILM RED』が公開され『STAMPEDE』と視聴者投票で(予定調和ながら)選ばれた『STRONG WORLD』がTV放送された時期。
先日ONE PIECEのコミックスをWCI編まで買って改めて一気読みしたのもあり、少し前に放送された『時をかける少女』を見て個人的に細田守熱が高まってたのもあり、Twitter上で悪評がたくさん流れてきて気になったのもあり、本作『オマツリ男爵と秘密の島』を見てみたところ、いわゆる"解釈違い"だとやたら騒ぐ世論に対しておかしいなと思ったので感想をネット上に残しておこうと思い立った。
結論を最初に書いた通り、本作を叩きたいだけの人は読んでも得しません。承知の上で読むように。

 

 目次

 

良かったところ

まず序盤の印象として、普段のONE PIECEアニメとは毛色の違う今回の絵柄が僕はかなり気に入った。デフォルメのきいたキャラクターは『時かけ』の細田守を期待して見た身としてはかなり満足のいくもので、映像的にはすごく素敵だなと。

金魚すくいまでの冒頭シーンは特に、いわゆる「展開にキャラが動かされている」という表現をしようと思えばし得るけど、映像作品として素早く画面を切り替えながら進んでく"テンポ"の良さは見ててすごく気持ちがいい。馴染みのとこで言えば『仮面ライダー響鬼』に近く、シーンの連続感よりリズム優先の見せ方。

にも関わらず、敢えてBGMなしのまま定点カメラで捉えたり複数アングルを切り替えたりして、没入感よりもどこか"客観性"、流れをそのまま追ってるライブ感よりは起きてる事実を淡々と観察するような視聴者との距離感を演出してるのが後々の展開を思うといいのかもしれない。必要以上に感情移入するとつらいから。まぁつらかったけど。

ナミとサンジがぺたっとひっつくシーンも、本編だったらなかなか考えられない光景だけどこの絵柄だとしっくりくる不思議。
本編のナミは自分のこと"オンナ"だと思ってるしもちろんサンジもそう認識してるから二人が身体的にくっつくことはないんだけど、多分この世界観では"男女"という概念や意識が、少なくとも仲間内にはなくて、むしろ見やすい。

 

「めちゃくちゃ面白かった!」みたいな基準とは別軸で、「これは押さえておいてよかった」って思う作品があるじゃない。良くも悪くも異色だから、作品の振り幅としてチェックしておくべきみたいな、それこそ響鬼みたいなやつ。オマツリ男爵はまさにそんな感じで「見といてよかった」と思った。

前半は絵柄も相まって、子供を飽きさせないようになのかひとつひとつのリアクションがオーバーになってて、先述したリズムも独特で本編のそれとは確かに違う。
違うけど、せっかく細田守という名のある監督を呼んでるんだから彼の味を出してもらうのは当然で、お互いに普段なら見られない一面を引き出し合うのがコラボというものな訳で。

RADWIMS『Twilight』のスペシャルMVでも蜷川実花さんという写真家とコラボしてて、あれ読者ってことなんだろうけど実写の人間ばっかり写ってあんまりONE PIECE関係ないなぁと思って僕はちょっと退屈だったり、アニメ映像も魔改造されてて迫力ありすぎて違和感あったんだけど、あれは"あぁいうもの"じゃん。本作も同じ。

少なくとも尾田さんが出張ってくるようになった後の劇場版って、なんだかどれも似たような雰囲気になっててわざわざ見てみようかなって気にならないというのが本音なので、別の作家さんだからこそ描けるONE PIECEの世界っていうのをまたやってもいいんじゃないかな。尾田さんに頼らなければ、もう少しコンスタントにつくれるでしょ。尤もREDの監督は僕も知ってるから、その気はもしかするとあるのかもしれない。

youtu.be

 

世論の通りキャラ崩壊してるか

デフォルメされた絵柄や、極端な崩し顔、独特のリズム感に後半の過剰な絶望的演出……これらが異彩を放ってるのは事実だけど、一転、話の筋としてONE PIECEのテーマと矛盾してるとかキャラ崩壊とか、そういうレベルでは全然なかった。そこまで言ってる人は前者に対して覚えてる違和感が飛び火して全部悪く見えてるだけで、あれくらいなら本編にもある。

 

事前に「サンジが腹空かしてるやつに飯をあげない」って聞いてたからかなり心配してたんだけど、もしゾロにお好み焼きそば食うなって言ったシーンのことを言ってるんだったら、過敏になりすぎだと思う。本編でも女子にだけデザートだかなんか食わせて男子にはあげないとか、男には腐りかけの食材で十分って言ったりとか、ゾロにカミソリ食わせたりとかしてるし。

ゾロも「腹減った」って言ってる訳じゃないし、単なる嫌味であげないって言ってるだけではあるけど「応援もしないで寝てたから」って言い分なら「だからお前は腹減ってないだろ」という意味にも取り得るし、つまり「サンジが腹空かせてるやつに飯をあげない」というのは、キャラ崩壊してるという結論ありきで歪めて見ているとしか思えない。

 

あと主に変だと言われてるのはナミとウソップの2人だが、ナミに関しては「ワガママなやつ」として描かれてたと思うし、実際程度の差はあれどそういうキャラだろう。
そもそも2戦目の輪投げは、四賢人……というかケロケロ四人衆に乗せられてナミがやる、自分に任せろと言い始めたのが発端で、どういう流れかは描かれてないがウソップはそこに巻き込まれたことになる。だからウソップはアクシデントでナミを置いて逃げたかたちになっても空の旅を楽しむ余裕があるし(船の火事も最悪クリマタクトから水が出るはず)、最終的には自分のおかげで勝てたんだからむしろナミの尻拭いをしたと言ってもいい。

ウソップが元々持ってる軽薄さのせいで「ナミを傷付けた」という見え方にはなってしまってるし、実際「裏切りはお前の十八番だろ」は酷いけど、そういう流れを踏まえるなら「ナミが思い通りにいかなかったからって八つ当たりした、ウソップはウソップで負い目があったからキツい言い方をしてしまった」と見た方が自然(※)。

時かけ』の真琴も結構ワガママなやつで、千昭の告白をなかったことにした癖にいざ他の女の子と付き合い始めると嫉妬し始める。でもそれって自分本位にものごとを考えてるからとは少し違って、本人も自分の中に湧き出てくる感情に戸惑って振り回されてる側というニュアンスになってるから、まぁ余計にタチが悪いとも言えるし、その言動に嫌味さはないとも言える。

そう考えると、ある意味で彼女はルフィにすごく近い性格……という解釈がなされているのかもしれない。自分のワクワクのためなら仲間を危険な目に晒すことも厭わないし、誰にどう思われるとかを気にせず自分の思うがままに振る舞うタイプ。

2023/11/15追記

※ウソップのナミに対するガチクズムーブは、この件↓があるので「キャラ改変とかじゃなくてもっとウソップ本人が叩かれろよ」くらいの気持ちは正直あったりもする。

 

元来、麦わらの一味……ひいてはONE PIECEという作品はそういうところがあるし、むしろそれがテーマである側面も非常に強い。「この海で一番自由なやつが海賊王」にも表れてるが、例え海賊旗を掲げることで怯える人々がいようとも、世界政府に楯突くことで世界が混沌に陥ろうとも、そんなことは意に介さず「やりたいからやる」を貫くのがルフィだし、一味のメンバーもデコボコで目指す先も様々。

それでいうと『STAMPEDE』のオチに対して僕はあんまり納得いってないのよね。目の前の危険を避けようとするのはまだ分かるとしても、海賊王への近道でさえも船長の意志に反して欲するクルーってどうなんだ。ルフィを型破りなキャラにしたい+バラバラの方向を向いてる奴らが集まってる感を出したいからと言ってさ。
ナミは航海士として、目的地に正しく導く責任がある……うん、まぁそれも分かるよ? 分かるけどそれは理屈だよ。なんのためにルフィの旅を支えたいかって言ったら、まず前提にルフィが好きだからでしょ、なのにそんなことも分かんないの? っていう。況してや時系列的に「つまらない冒険なら俺はしねェ」を既に聞いた後だよ。

 

"統一されてない自由な奴らの集まり"という一見矛盾したところにいるのが彼らであって、今回の映画が特殊なのはそういう意見の相違やワガママによる対立を、いつものようにギャグで茶化さずに真面目に取り扱ったこと。
クルーは基本的にルフィについて来てるから、必ずしも仲間のことが大好きって訳ではないのはゾロとサンジの喧嘩にも表れてるし、そのルフィとだって臆病組は毎回「やめようぜ」って意見が一致してない。ぐるわらの一味なんて隕石にビビって仲間置いて逃げ出したし。

だからあの仲間割れは「やってることはいつもと同じだけど、演出を変えてみたらかなりギスギスして見えるよね」の範疇にギリギリ収まってて、でも最後の一線として、最終的な喧嘩の理由は「仲間がいなくなったのに誰も気付かないなんて」ということになってるし、みんながやられたあの"矢"は、話を聞く限りどうやら仲間を失ってしまった悲しみや後悔を植え付けることで対象を一時的に無力化する力を持っているようなので、彼らがやられたのもそれだけ仲間を思っていたからこそということになって、一味の仲が本質的な意味で悪いという描き方にはなってない。
見た目的には、喧嘩しっぱなしというか挽回するシーンがなかったので悪く捉える人が多いんだろうけど、そうじゃないのはそれこそ本編見てれば分かるよね。本音じゃなくてリリーカーネーションかなんかの能力で正気を失ってる、と考えるなら最初からキャラ的には何も問題はないし。

ゾロとサンジにしろナミとウソップにしろ、ちょっとしたことから一時的にこじれてるだけで、あのまま一生口も利かないとかそれが原因で一味を抜けるとか、そんなことはあるはずないし作中でも実際ないんだから、逆にメリー号の進退を巡ってガチ対立してたときの方が僕は胸が苦しかったな。
これは僕自身が、仲良い人に暴言とか吐くタイプの人間だからというのもあるかもしれない。兄弟喧嘩みたいなものというか、どうせ明日とか明後日になればまた一緒に飯食ってるという確信があるから安心して、素直に感情を吐き出せる感じというか。

少なくとも「仲間割れ」という表現はオーバー。

 

細田守のインタビュー記事

そしておそらく、視聴者をそういう否定的な意見に傾けている諸悪の根源なんじゃないかと思うのが、Twitterでも矢面に立たされているこれ。

『ONE PIECE ―オマツリ男爵と秘密の島―』細田守インタビュー  WEBアニメスタイル_特別企画

見つけたからちゃんと全文読んだ、ミニインタビューって書いてある癖にめっちゃ長い。
もしかしたら視聴者の代弁として義務でやってるのかもしれないけど、切り抜かれてる一部だけじゃなくて全体通して読んでもインタビュアーの人がかなり『オマツリ男爵』という作品に対して敵意を感じる質問↓を繰り返してて、誘導尋問よくないなと思った。

・『ONE PIECE』ファンにとっては、ちょっと危険な回答を含んだ映画になっているよね。
だって、今回の映画では、サンジやゾロも結果的に助かって、いつもの冒険に戻るんだけど。みんなが死んじゃっても、ルフィはお茶の間海賊団とか、チョビ髭海賊団と一緒に旅を続けられる可能性を示しちゃってるじゃない。
・だってさ、オマツリ男爵の魔力のせいで仲違いする前から、ルフィ達は仲が悪そうじゃない(笑)。
・それから、前半で極端な崩し顔が、何度かあるじゃない。あれは誰の意図なの。
・お茶の間のパパが弓で打ち抜いちゃったところで、物語的にはほぼ終わってるんだけど、あれはあれでよかったの?
・あの時に、ちょっと話がメリー号の事から外れて、「本当は、お前は俺の事なんか必要じゃねえんだろ」みたいな事をウソップが言うじゃない。あれは多分、作品の本質的なところに触れているよね。
細田さんの嗜好から言うと、ああいうふうに自分のまとまりきらない思いをフィルムに叩きつけるのは、どちらかというと、嫌なんじゃないかっていう気がしたんだけど。

このインタビュアーの小黒さんって方、ルフィとオマツリ男爵の仲間に対するスタンスの違いは読解(曲解)できる癖に、ブリーフはともかくデイジーの名前も知らなくて、細田さんも「仲が悪そう」に対して「ちゃんと観てくださいよ。ホント」って言ってるけどマジで"ちゃんと"見たんか? と思う。
あたかも「他のやつに乗り換えられるということは今のクルーたちに愛着がないように描いている」かのような言い方だけど、本気でそう読んだならひねくれすぎてる。仲間が死んじゃったことで全身真っ青になって、ホラーというかかなり気持ち悪い見た目になるくらい落ち込んでたんだぞ。"後悔の矢"を合わせて2回も。

「ルフィの目的は海賊王になることであって今の仲間と旅することでは必ずしもない」っていうのは、まぁ言葉としては正しい。
「お前がいねぇとおれは海賊王になれねぇ」と言ってる通り、海賊王=この世で一番自由なやつなんだから、意に反して仲間を失ってしまったら本当に自由なやつにはなれない。
でもエースには結局死なれてしまってるので、本当に一人も脱落させちゃいけないほどキツい称号ではないし、何よりオマツリ男爵のように死んだ人間の亡霊にいつまでも取り憑かれてたらそれこそ"不自由"の極みなので、生きてる間は絶対に死なせたくないから死なせない、でも死んじゃったら引きずらない。単にそういうことでしょ。

 

僕がこの記事を書いてるのは、インタビュアーに対して腹が立ってるからというのが一番大きい。細田さんは笑いながら受け答えしてるし、もしかしたら割と旧知の仲だからこそあぁいう突っ込んだ聞き方できてるってことなのかもしれないけど、聞き手がこれだけ敵対的なのに「細田守の発言が尖ってる」って言われてるの理不尽過ぎる。

・あの時に、ちょっと話がメリー号の事から外れて、「本当は、お前は俺の事なんか必要じゃねえんだろ」みたいな事をウソップが言うじゃない。あれは多分、作品の本質的なところに触れているよね。

この辺までちゃんと読むと、この小黒って人が勝手に歪めてるだけだって分かると思う。ウソップの話を変な風に引用して「だからオマツリ男爵では一味なんて必要ないって言いたかったんでしょ?」なんて風に悪意しかない遠回しな質問して。どっちが性格悪いんだよって話。

 

作品そのものでAを描いてるから、インタビューでは敢えてメタな視点に立ってAに否定的、あるいはBという別の視点に立ってフォローするように話をしてることってたまに見受けられると思うんだけど、変に真に受けてそのメタな視点でもって作品を解釈しようとして変なことになってる人もたまにいる。
予想してた通り、オマツリ男爵の前評判はほぼこれだった。ルフィは仲間のことは折り合いつけてお茶の間,チョビ髭海賊団やるなんて一言も言ってないし、仲間に手を出すなみたいなことはことはきちんと言ってるし、あのインタビューはあくまで「穿った見方をすると」の話でしかない。

僕は序盤はともかくそれ以降の本作に対して「すげー面白かった」と思ってる訳じゃあないんだけど、にしてもこれを根拠にした批判は軒並み先入観でものを見て喋ってるとしか思えない。

 

あと脚本家の伊藤正宏って人のブログ↓も僕嫌いです。
二年ぶりの約束: sometimes i speak!〜放送作家伊藤正宏のノート〜

原作者の尾田栄一郎さんがオマツリ男爵を嫌ってるってソースがちょっと探した限りあれしかなくて、仮に本当に不満を抱いてるとしても、それが大っぴらになってないのはみんな大人だから口を噤んでるってことなんじゃないの? あくまで当人同士の話として言ったことであって公式見解ではなかったものを、あの人が個人的な恨みで勝手に晒したってことなんじゃないの?

「言葉」じゃなくて「作品」で伝えたいとか綺麗事言ってる癖に、結局この原作者の名前使ったチクりブログが細田守を否定する主な証言として扱われてるんだからどうしようもない。
ちなみに『カラクリ城のメカ巨兵』見たけどバカつまんなかったです。本当にただ鬱展開がない"だけ"で、予告と子供向けって話から色んなカラクリが出てきてドタバタやるんだろうと期待してたのに中盤しょーもないオヤジギャグの解読しかしてないし、僕オヤジギャグ好きな方だと思うけどあれを面白がるのは無理。子供が好きなタイプの言葉遊びでもないと思う。問題点であるキャラ解釈についても違和感は普通に引き続きあって、むしろ絵柄がいつもとそんなに変わらない分だけ余計に浮いて見えた。
オマツリ男爵はONE PIECEとして見なきゃ面白いって辛うじて認められてるけど、ONE PIECEとして見ても見なくてもつまらないので……。

 

ルフィと仲間

オマツリに話を戻すと、そもそも「仲間を使い捨てにしようぜ!」「駄目になったら乗り換えようぜ!」なんて話は敵方であるオマツリ男爵でさえも1mmも言ってないし思ってもない。ただ「死人に囚われて今生きてる自分や他人を犠牲にするのは良くない」としか言ってないんだから、あのインタビューを真に受けて批判してる人は皆的外れ。

ただの事故で仲間を失ったオマツリ男爵が仲間割れを求める理由って確かに少し分かりにくいけど、素朴に嫉妬と理解してもいいし、「生贄にする罪悪感を正当化するために相手の心の醜さを暴いてやりたい」「仲間を最後まで諦めなかったなら自分の選択が肯定されて嬉しい」ならどっちに転んでも得だし、「本心では虚しいので仲間になんて価値はないと思いたい」でも、色々解釈の仕様はあると思う。

オマツリ男爵の本編内では一貫してルフィは仲間のことすごく、重すぎるくらい大切に思ってるような描かれ方がしてるので、むしろ僕は本編で珍獣を見つける度に「あいつ仲間にしようぜ!」ってノリで言ってるときの方が「お前にとって仲間にするってその程度のもんなの……?」って思う。
チョッパーのことも何回か非常食って言ってるしな。人間に対しては「お前は嫌だ、仲間にしたくない」って断りがちだけど。

 

細田守の家族(血縁)観というよくある批判的視点からオマツリ男爵見てる人も多いけど、別にあのお茶の間海賊団って船長が集めた孤児でも成立するし(染めてるのか髪色バラバラ)、単純に積み重ねなしに絆があることにしたいときの便利キーワード以上のものは感じられない。
ファミリー海賊団じゃなくてお茶の間海賊団って名前からして分からんかねぇ……血の繋がりじゃなくて、お茶の間を共に過ごすことこそが彼らのアイデンティティなんだろうし、そもそもオマツリ男爵が公開した2005年の時点で麦わらの一味って「おれたちはファミリー♪」って曲歌ってるよね? 仲間は家族も同然だし、だいたいルフィが仲間死んだあとお茶の間海賊団に入れると本気で思ってるなら血縁至上主義でもなんでもないんだよ。どっかで聞きかじったことを適当に切り貼りしてるだけだから、言ってること支離滅裂すぎるんだよ、オマツリ男爵否定派は。
ひとつの作品に対する読解力もONE PIECEへの理解度も低くて自分の頭で考えられないから、ただ他人(小黒氏や脚本家や変なツイッタラー)が言ってたことをなんとなく真似してるだけ。

細田守が血縁関係しか認めてないってのも多分『未来のミライ』とかを見て特に曲解された要素なのかなって思ってるんだけど、あれだって別に「人と人との繋がり」の象徴でしかないし、究極この世にいる全ての人間って血縁関係にあるようなもんだしなぁ。そもそもくんちゃんの年齢なら家族が全てで普通だろ。

尤も『時をかける少女』を先に見てたら、時間のちょっとした改変で主人公のこと好きだった男が別の女の子と付き合ってたりするから、そういうところから逆算して「仲間は代えがきくと思ってる、それが細田守作品の作風だ」と思って批判してるならまだ分からんこともない。

 

……ないが、仮にオマツリ男爵における仲間の扱いが普段のONE PIECEから見て少し特殊だとしても、それはその時点で本編がたまたま、敵幹部だったのになんとなく乗船してたロビンが離反してメリーはもう駄目でウソップも船を降りて……っていう試練の時期だったから間が悪かったというのが一番理由としてしっくりくるとは思う。
件のインタビューの通り「ルフィは仲間が死んでもまた新しいやつを見つける」というテーマを描いてると捉えたとしても、それって本編でやってる「船は乗り換えることにした」「ウソップは降りたからケジメはつけないといけない」「エースの死を乗り越える」達と意味合いはさして変わらない。後で気付いたけど、ブルックに至っては「仲間が全滅してもいつかは立ち直ってまた新たな仲間と旅をする」のいい例じゃんか。つくづくオマツリ男爵否定派ってONE PIECEニワカなんだな。


そもそも「ルフィは仲間が死んでも立ち直れる」じゃあなくて「仮に死んでしまったなら立ち直るしかない」が正しい。メリー号がもう駄目なら断腸の思いで乗り換える決断ができるし、兄であるエースが死んでも仲間がいれば生きて旅を続けるまでに立ち直れる。特にルフィは自分が処刑されそうになったときも「わりい、おれ死んだ」と笑うような人間だし、変えられない現実を前にしたとき意外と彼は受け入れる。
だからといって、それを以て「大切に思ってなかった」と解釈するのはおかしい。

本当に今の仲間なんて必要ねぇって話なら、一味を殺されたことにルフィがブチギレて一人で男爵ぶっ倒す流れでいいはずなんだよ。ルフィの強さについていけなくて、って話なら。
でもルフィですら負ける。それは「仲間を失ったらルフィは無力になってしまう」という描き方で一味の必要性を描いてるからであって、決して蔑ろにしてる訳じゃない。
船長がつらいときにそばにいてやれなかった仲間に代わってルフィを支えてくれたジンベエは結局仲間に加入しただろ。船に乗せるとは言ってないけどお前らも仲間だよって認めること自体の何がそんなに不満なのか分からない。

 

良くないところ

演出云々を抜きにして"話の筋として"唯一よくないと思ったのは、仲間が全員殺されかけるまでの流れっていうのが大敗を喫してボロボロになってたから仕方なくとかじゃなくて「成り行きでおっさんの話を聞いてたらいつの間にか全滅してました」だったこと。そりゃあルフィが感知してたら何がなんでも助けちゃうから仕方ないけどさ。
ウソップがピンチのナミを置いて飛び去った(故意じゃない)とかナミが水に落ちるのサンジが助けないとか、ゾロ達が仲間がいなくなったのに気付かなくてサンジにボロクソ言われるとかは「仲間として信頼してるから放置できる」でギリ通るが、ルフィが知らん間に仲間全滅は流石に度が過ぎてて「じゃあ弱くて信頼を裏切ったあいつらが悪いじゃん」になってしまうので良くない。

ピンチへの陥り方で言うとストロングワールドもちょっと酷かった。初戦の負けは「ギア2出す前にやられた」という謎の展開で、シキの能力を学習したから2回目は負けないみたいな説得力もない。精々ビリーと天候の力を借りたからで、初戦はただルフィが弱いorナメプしてるから負けてる。


ちょっと話変わるけどONE PIECE本編においては、特に新世界編へ入ってから、ルフィがあんまり話に絡んでこない気がするのよね。単純に仲間の話をするターンが終わったから自然と他人事に首突っ込んで、でも詳しいこと理解する気はないから目の前のことにあひゃあひゃって楽しんで敵にはちょっと怒ってっていうムーブしかやることないのかもしれないけど。
ナミを取り返すぞ! ロビンを取り返すぞ! エースを助けるぞ! みたいな、ルフィの方に能動的な動機があることがまずもって少なくて、ストーリーはその地のゲストに任せて、ルフィは本当に「お前に勝てる」だけのキャラになってる気がする。ワノ国編はまだ途中までしか読んでないから知らんけど。
グランドラインでも空島編は特にその傾向が強くて、僕あのルフィのノリずっと苦手なんだけど多分尾田さんの理想とするONE PIECEってあんな感じなんだろうなと思う。

ルフィの持つ味方をつくる能力って、"ひとつなぎ"にも通ずる物語の根幹を成すテーマのはずで、その意味で言うとゲストに過ぎないチョビ髭ことブリーフやお茶の間海賊団がやたら活躍することには筋が通ってるし、仲間がいない一人ぼっちの状況でもそこにいる人間がどんどん新しい仲間になって支えてくれるっていう流れ自体はそれこそインペルダウン-頂上戦争編で遺憾なく描かれたことだし、雰囲気が気に食わないとかを超えて『オマツリ男爵』がONE PIECEのテーマと根本的に矛盾してるっていう否定の仕方は僕の考えが及ぶ限り"間違ってる"としか言いようがない。

 

ただし、結果的に大勢の人が否定的な見方をするような演出のバランスになってしまったこと、そして作品に対して不利なインタビューをする小黒氏に対して「そういう見方もできるかもね」みたいな偽悪的なスタンスを取って勘違いを招いてしまったプロモーションの失敗、という意味では良くなかったのかもしれない。
世の中には作品をきちんと理解できず、ヘンテコな見方をしてるインタビューに流されて的外れな批判を量産してしまうようなお客がたくさんいることを甘く見ていたと。
……まぁ、そうじゃなくても細田守作品って、有名なのも手伝って割といつも賛否分かれてたりする印象だけど。本作に限って言えば、必要以上に否定されすぎです、絶対に。
このことをきちんと、少なくともこの記事を見つけた人には伝えておきたい。何か反論があればどうぞ。

 

本編の感想

86ma.hatenablog.com

DXドンオニタイジンへの落胆(暴太郎戦隊ドンブラザーズ)

僕はDXドンオニタイジンが! 嫌いです!(どーん)

戦隊ロボ史上最大級のビッグサイズと戦隊ロボらしからぬプロポーションとフル可動の実現により、過去最高傑作……とまでは意外とあんまり言われてないもののともかく大絶賛の嵐なドンブラザーズの1号ロボ ドンオニタイジンですが、僕は発表から現在に至るまでずーっと愚痴を吐き続けて未だに買う気になれていない。※訂正、買ってなおも文句を言い続けている。
Twitter上でのぼやきが気付くと5000字を超えていたので、もういっそひとつの記事にまとめておこうと、そういう回です。
ドンオニタイジンすげー! 最高! 大革命! 戦隊ロボのニュースタンダードになってくれ! ……という盛り上がりに水を差されたくない方は読まないことをオススメします。少なくともTwitterで検索する限りではドンオニタイジンに完全に批判的,否定的な人って本当に僕以外には0人でびっくりした。まぁ物珍しい意見として面白がってください。

 

 

発表前の期待

まず話の前提として、僕はゼンカイジャーのロボットが全く合わなかった。これまで触ってきたDX戦隊ロボの中で一番"嫌い"かもしれない。
センタイギアが共通企画だったりエンヤライドンという橋渡しもあったりと最初からドンブラザーズとの2ヵ年計画だった……のかは定かではないものの、それが理由で手を抜いたんじゃないかとさえ本気で思ってるぐらいあまりにも酷い出来だと感じている。
その話はまた別に記事を書いてもいいけど、今回問題になるのはそれを踏まえて僕はドンブラザーズのロボットにそこそこ"期待"をしていたということ。
ゼンカイロボはとにかく遊んでてイライラするので、次作品ではもっとシンプルで全く頭を使わなくても遊べるようなものになってくれと。

そんな風に楽しみにしていたところにまず出されたのが「エンラヤイドン/ドンゼンカイオー」と「ドンモモタロウアルター」。
前者は言わずもがな、作品の垣根を超えた合体ロボというコンセプト自体は面白いものの、ゼンカイロボの悪いところがほぼそのまま残っていて、取り外すパーツがあまりにも多過ぎて煩雑だし、アルターに至ってはDX玩具じゃねぇ。チェンジヒーローズシリーズってただラムネが付いてないだけの食玩みたいなものだからゼンカイの頃からまだ一度も買ったことなくて、同じサイズな勇動の3倍くらいの値段する癖にシールとは言え色分けでも負けてて何もいいとこない。
その同規格として出されたアルターも、要はミニプラと枠としてダダ被りしてて全く魅力を感じない。

これは最近気付いたんだけど、僕は"可動"が好きじゃないらしい。ポージング技術もないし、そもそもフィギュアの可動なんてたかがしれてるし(肩アーマーが腕と一緒に回ったりとか)、だったらいっそのこともう動かないソフビでいいやっていう結論に先日至った。下手に色んなとこが動いたり取れたりしてイライラさせられるくらいなら最初からポーズが固定されてて飾っといてカッコよければそれでいい。
そんな僕にとってアルターは最初から眼中になく、更に1号ロボに対する期待というか、"おあずけ感"が募りつつあったところで出されたのが、あの「DXドンオニタイジン」ということになる。


可動は要らない

正直、全く食指が動かなかった。
第一コンセプトであるはずの可動に魅力を感じないのは今言ったとおりで、何なら僕にとってはマイナス要因ですらある。変形と無関係なところが動くのは、少なくとも変形させてる最中はストレスでしかないので。
そもそも、ぶっちゃけあの程度で可動できるヅラをされてもなと僕は思いますよ。ただ関節があって動くってだけであって、どうせ大したポーズも取れやしない癖に。
例外もあるけど、宣材写真ですら8割がたかっこいいポーズ取れてないんだから、あんな可動あるだけ無駄でしょ。下手に動くせいで「なんでその変な姿勢で止まってるの」っていう画像ばっかりだもん。かっこいい直立でキチッと止まってくれることの何が不満なんだ。

そんなにポーズ決めたかったら、DXと並走して可動するバージョンをチェンジヒーローズなりミニプラなり、ファイティングアクションロボなりで出せばいいじゃんとしか思わないんだよな、本当に。
二兎を追って二兎とも取れてるならまぁいいけど、少なくとも僕はドンオニタイジンについて中途半端になってない長所は"デカい"という一点のみだと感じている。

 

あんなちょこっと武器を構えて顔が振れる程度の可動で喜べるんだったら、仮面ライダーで出てるタイムマジーンとかブレイキングマンモスとかキングオブアーサーとかも大して変わんないと思うけど。
……いや、アーサーに至っては下半身動かないのに一緒にするなよって思うかもしれないけど、僕の基準では「遊んでる人の"個性"が出るようなポーズ」を取れて初めて可動を売りにするフィギュアとして一人前、それ以下の容易に想像できるような……或いはポージング下手な僕でも取れるような武器構えとかしかできないのは「まぁ一応動くよ」程度だと思ってるので、ドンオニタイジンも含めてこいつらは一緒くたの認識。

だってその程度なら「素立ちより構えてた方がかっこいい」っていうだけの話であって、じゃあ構えた状態の固定フィギュアでもいいよね? っていう話になる。HDM創絶みたいな食玩シリーズ復活してくれたらちょっと嬉しい。
可動をウリにするからには、固定フィギュア化されるような劇中の代表的なポーズはなんとなくでもできて、その上で更に各々好きな風に動かして遊べないと意味なくて、その点ドンオニタイジンはパッケージの座り状態すら、足を外してなんちゃって再現するしかないんでしょ? 可動する意味ないよ、もうそれは。
なんか発売前からサンプル品を改造してスカート曲がるようにしてポーズ取ってる画像も出回ってたけど、あんな写真を宣伝に使っていいの? 普通に詐欺じゃん。絶対いると思うよ、あれとかパッケージを見て「足ここまで上がるんだ」と勘違いして買った人。

 

ドンオニタイジンもこれまでの戦隊ロボと同じで、結局素立ちが一番無難にかっこいいと思うよ。剣構えてるのは写真だといいけど下半身まで見えるとなんかなぁ……ってのが多いし。
これまでは他に色々コンセプトがあったから眼中になくて、腕が回るだけで誰も文句言わなかったけど、可動を中心に据えたせいで途端に"妥協"に見えてしまうんだよな。「所詮は子供向けだからこんなもんで十分でしょ」ってさ。
ドンオニタイジンは大人も客層として狙う方向に舵を切ったと言われがちだし、実際大人が喜んでる姿ばかりがネット上では目立つ訳だけれど、まぁ理屈で言えば、今までのロボは変形という"途中"を楽しむものだったから、完成したあとはその形のままブンドドするか見て楽しむかしかなくて、それが可動することによって完成してからも"動かして遊ぶ"ことができるようになったっていうのは、間違いなく子供にとってもメリットだとは……思う。
でも僕個人は反対です。

 

保守的なデザイン

ドンオニタイジンのもうひとつ好評なポイントは「戦隊ロボ離れしたプロポーション」らしいのだけれど、これも僕は全く興味がない。
そもそも戦隊ロボにプロポーションの良さは全く求めてなくて、むしろ多少ずんぐりむっくりであって欲しい。綺麗な人型に近いロボットなんて、わざわざ戦隊がやらなくたってアニメ界隈にいくらでも転がってんじゃんよ。なんでわざわざ被せるんだ。
キシリュウオーとかも、やたら褒められてたけど好きじゃないんですよね。足が細くなったりすると"プロポーションが良い"ことになるんだろうけど、僕はむしろ貧弱に見えてしまう。実際あいつちょこまか動くし。
足はキラメイジンぐらいシンプルな線の方がどっしりとしてて強そうに見えない?
褒めてる人に言われせれば細い方が"王道"のスタイルということになるんだろうけど、別にこれまでの戦隊ロボは技術が足りないから仕方なく邪道を行ってたとか況して子供だましだった訳じゃないじゃん。玩具の遊びやすさとかデフォルメされた親しみやすい体型とか、そういうものを長所として選択していたのであって。
っていうか待ってそうか、フルCGやモーションキャプチャで描かれるロボが当たり前になってくるということは、これから先はキグルミの都合を考えないエヴァみたいな極端なアニメ的スタイルの戦隊ロボも、玩具デザインの選択肢として全然有り得るということなのか。えーいやだ。
スマホが1台あれば何でもできちゃうから、時計もカメラも財布も、書籍や音楽プレーヤーも必要なくなってしまうみたいに、技術の進歩によって多様性が失われないといいけど……どうなるんだろうね。


可動のところで簡単に遊べるロボが好きだとは言ったけども、「4人のメカがほぼそのままの姿でただ手足にくっつくだけ」の形式は流石に見飽きたし遊んでてもつまらないと思うのよね。そういう身体の"構成"に限って言えば、ドンオニタイジンはかなり保守的で面白くない。
それに個々のメカをあそこまで犠牲にするんだったら、別にもう無理に合体ロボじゃなくてよくない? 可動するロボットがいいならドンモモタロウアルターとかいうよく分かんないのもDXで出せばよかったじゃん。
下半身貧弱モモタロウ(何故か意図されたものらしい)に、ロボの足に犬の足くっつけただけのやっつけイヌブラザー、左腕を動かすと首がもげるサルブラザー……直立人間オニシスターは普段なら「こんなもんか」ってなりそうなものだけどなまじ大きいから情報量とギミックの少なさで物足りないし、キジブラザーもこれが比較的まともに見えるのは下手に動いたりしないのと子供向けの"見立て"に慣れてるからだし、劇中のCGなんかを見てるとやっぱなんか色々おかしいなって思わざるを得ないデザイン。実際触ってみると頭部は軸の渋みだけで止まってるので、しっぽ持って振ったりするとこれもまた首がもげる。なんならこいつ、キジブラザーの首を持って剣のなりきり武器として遊ぶのが一番楽しいかも。

個別メカを去年のスーパーゼンカイザーと同じく「等身大キャラのパワーアップ形態」という扱い方をしていくのは面白いと思うし戦隊の強化はもっと増えていいと思ってる人間なのでウェルカムなんだけど、その個別メカがこの割り切り玩具なのは惜しいよなぁ。
それこそ今のドンブラはロボ戦を必ずしもやらないことで話の幅を広げてる訳で、ゼンカイジャーを踏襲した形式なら「等身大でロボ玩具の販促もしたので巨大戦はスルー」が理論上は可能なはずなのに、合体後の見た目だけを優先させてるせいでそれが成立するとは思えない。
ゼンカイジャーのキカイノイド4人でさえあんま似てないのに……。


プロポーションって言い方ひとつだけど要はただ"細い"だけであって、手足がカラフルでデザインとしての統一性がなくて、剰え各部に顔までこれみよがしについてる所謂戦隊ロボ的なバカバカしいデザインなのは変わってないのに、口を揃えてこれを「ストレートにかっこいい」って言えちゃう度胸はすごいよ。"戦隊ロボの割には"って枕詞が足りない。

折衷といえば折衷だけど、全てが中途半端。
「合体後優先で個別メカは割り切ります!」「キャラの配置や合体プロセスには戦隊ロボらしさを残したい!」「何を置いても優先したかった合体後の可動もスーパー合体の前には諦めざるを得ませんでした!」……その結果できたのは「史上最大級」が一番のウリな素立ちがかっこいいドンオニタイジンってさ。

 

スーパー合体もありますって言うけどさ、あれだけシンプルな人型に違い構造なんだから想像を超えてくるような合体方式には絶対ならなくて、所詮下駄履いて胸と頭と手に強化パーツついて終わりくらいのやつだって見え見えじゃん? そこもやなんだよなぁ……。
単体でのプロポーションを優先したら、どう考えてもスーパー合体の面白さや自由度はめちゃくちゃ下がる。だって理想の人型に近づければ近付けるほどそのパーツを他の何かに見立てることって自然と難しくなっていくんだから。サルブラザーの腕がそのままロボの腕になってることや、ロボの足がイヌのしっぽにしては太すぎたりオニシスターに至ってはもはや何に見立てることも諦めた邪魔な突起として存在してるのが良い例。
例えばジュウオウキングなんかは分かりやすいと思うんだけど、シリーズ通して全てを四角くデフォルメしてるから、動物モードの多様さはもちろんロボのときに上半身だったキューブイーグルが腕になったり、腕だったキューブクロコダイルが積み上げ合体では足になったりみたいな互換性がゆるくて自由なのよね。良い意味で解像度(再現度)が低いから。
ドンオニタイジンにはその抽象性の妙がない。というか、ロボのときには人型に近いスタイルを目指してる癖に、個別メカのときにだけ「これは○○なんです、納得してください」を押し付けてくるから二枚舌というか都合がいい。

僕はベースの1号ロボに強化パーツくっつけるのは、並列換装メカとかせいぜい1回目のスーパー合体まででいいと思ってて、途中でダイナミックな変換があって欲しいと思うタイプなんだけど、その意味では「キューブライノス、キューブじゃねぇじゃん問題」は基本は嫌いなんだけど、それまでの積み上げ合体から一旦大きくパラダイムシフトして、ドデカでまた戻るっていう振り幅は好き。バクレツキョウリュウジン(持ってないけど)もだけど、今までと違ってこのパーツをこう使うんだ! っていう展開を、ドンオニタイジンは多分できない。
だから僕はこれから先の展開にもほぼ期待していない。

 

棲み分け

僕がドンオニタイジンに対して一番キレてるのは、これを「ニュースタンダード」とか「戦隊ロボのターニングポイント」みたいなことを言う人がとても多いことだったりする。
「こういう路線もあっていいよね」なら全然、今回はスルーしようで済むんだけど、可動アンチ過ぎてフィギュアよりなんだかんだソフビが一番いいなって結論に落ち着いた身としては、戦隊ロボが可動に舵を切るのは本当に嫌だ。
だって枠として棲み分けがさぁ……ハイエイジ向けはトランスフォーマー、キッズ向けのそこそこ可動するロボはドライブヘッド,シンカリオン辺りで、もう少し小さい子向けのが戦隊ロボでいいんじゃないの?
少なくとも僕はタカトミ玩具をいくつか触ってみて"Not for me"と思ったから、僕が楽しめるロボ玩具はもう戦隊しか残ってないのに。

僕はおもちゃで遊ぶときに頭を使いたくなくて、戦隊ロボは何も考えずにぼーっと遊べるのが一番魅力だと感じている。「壊れないように」とか「パーツが外れないように」とか、況して「ポーズがかっこよくなるように」なんて考えたくない。
特撮玩具の根幹って「テレビで見たものを真似てみる」っていう"枠にハマる気持ちよさ"がベースにあって、レゴみたいなオリジナリティを出して創造性を育むものとは方向性が違うと思うから、「自由自在にアクションが決まる!」よりも「手順に従ってロボを完成させよう!」の方がコンセプトとして合ってるし、完成したら素立ちでバシッとクリックが決まって欲しい。
劇中でやってるポーズを再現しようってんならともかく、座れやしないし。そこまでの可動はない。

 

一応開発者インタビューの中で「これからずっとこの路線になるとは限らない」って言われてるのは安心したんだけど、それ以上に「可動を重視することに対して否定的意見がほぼなかった」という証言が不安すぎる。

t.co

来年は揺り戻しでまたこれまで通りのが出ることを願ってるけど、これで本当に売れちゃったら「シンプルなロボは売れないのでどこもつくりません」ってことになりかねない。世の中から"選択肢"を減らすのは許せん。
戦隊以外のブランドでシンプルロボの枠つくってくれるならまぁいいよ。戦隊ロボの中でも簡単めなやつぐらいのプレイバリューを持ったロボシリーズがあったら本当に知りたい。肩身が狭い。
今はユニトロボーンにちょっと期待してる。

ガンダムみたいに変形しないでただ人型のロボットとしてあるやつもいれば、トランスフォーマー……特に実写映画のやつみたいなビークルはほぼ実在の車両だしロボットも人体と同じような可動するってやつもあって、どっちの形態も曖昧だけど面白いギミックがあって合体みたいな本来ありえないロマンをたくさん叶えてくれるようなのがあってもいい。
そういう需要の棲み分けがあるのに、あたかも「本来あるべきかっこいいロボットの要件」がひとつあって、これまでの戦隊ロボはまるでそれを満たしていなかったかのような語り方する人が多いから腹立つんだよなー、ホント。
"従来の戦隊ロボらしさ"にみんな魅力感じてなかったの? 僕もそんな大口叩けるほど色んなの触ってる訳じゃないけど、戦隊ロボに愛着ない人に上から目線で「戦隊シリーズに革命が起きた」とか言わないで欲しい。

でも結局売れるものをつくるしかないっていう大前提が分かってるからこそ悔しいし、自分にはどうすることもできん。「ドンオニタイジンが爆発的ヒットにはならず、来年出るかもしれない好みのロボが売れてくれ」と願うしかない。

 

実際に触ってみて

あんまり主張の一貫性とか気にしない方なので、百聞は一見に如かずと言うし遊んでみて手のひらを盛大に返す準備はしていたつもりだったんだけど、最終的に評価は覆らなかったね。ここまでは「そうは言っても触ってみないとなんとも言えない」っていうのがあったからこれでも言葉を選んできたけど、もう触っちゃったのでハッキリ言うと「うわー、思った以上にゴミ」が第一印象。

まずイヌの足取れすぎな、何これ。サイズがでかいから強度的にわざとすぐ取れるようにしてあるのかなって気はするけどそんなの関係ない。取れる必要がないとこが勝手に取れることほど遊んででイライラすることはない。なんかもう、逆にこうやって足をふっ飛ばすのが遊びとして気持ちいいね!って皮肉を言いたくなるくらい取れやすい。どうせ割り切るならもう前半分は一体成型で良かったんじゃないの。顔も口も体に埋まってて動かないんだからさ。
あとその足の付け根のジョイントが多分金型の都合でキジのクリアパーツと同じ素材が使われてて、まぁ見てるぶんにはかすかにピンクがあるのは綺麗だなと思うけどジョイント部分に使って強度とか経年劣化とか大丈夫なのかな。よく知らないけど。

オニシスターは肩がたまに外れるのと、頭の変形がキモい。ピンを微妙に指すだけだからカチッとも言わなくて全然気持ちよくないしちゃんと変形できてるのかもよく分からない。トゲ棍棒が付いてないのは、無駄にパーツがごちゃごちゃするの嫌な身としてはむしろありがたいけど。
足の二人は一応入れ替えても合体もできるのはいいんだか悪いんだか。僕は結構こういうの気分転換で変えたい人なので嬉しい。


サルブラザーはさっきも言ったけど文字通り頭がおかしくて、せっかく腕はたくさん動くのにほぼ活かせない。かろうじてドラミングっぽいポーズはできないこともないが……。頭の処理がとにかくめんどくさいので、もう彼はドンオニタイジンと同様に左肩に頭が生えてる謎モンスターってことでいいと思う。そこまで割り切っちゃった方が逆に面白い。
手と頭もボールジョイントだからこれも割と取れる。ボールじゃなくて普通に外れないロール回転で良かったんじゃないかな。
ごちゃごちゃパーツ嫌い民として腹筋は嫌いです。何この無駄ギミック。こんなのが許されるなら頭も付け替えにしろよ。

キジブラザーは胴体と尻尾が2分割で合計4パーツとあまりにもバラバラになる癖に頭だけは頑なに分けないのが気持ち悪い。
「ヒンジでの移動によって「顔がそこにある必然性」を持たせたかったんです」というのはインタビューで寺野彰氏が言っていたことなんだけど、この一言が本当に、全く理解できない。
ないよ必然性。サルもだけど、キジの体を構成する上で何の意味も持たないアームが突然生えてくることの方が僕にはよっぽど不自然に思えて、これの設計者とは美意識をひとつも共有できない。

今は"美意識"という表現をしてみたけど、この「変形合体においてどこまでをアリとしてどこからをナシとするのか」の感覚ってかなり重要だよね。デカベースロボの手の移動とか「そんなことやりだしたらなんでもアリじゃん」って思う派なので。
変形玩具全般に言えることだけど、際限なく複雑にガチャガチャ動かしたり外したりしてたらそりゃもう何が何になったっておかしくない訳で(その極地がレゴブロックみたいなやつね。あれは色々と組み変えれば理論上どんな形にもなれるけど、それはもはや"変形"とは呼べない)、その点ジュウオウキングは少ないステップで見え方をガラッと変えるバランス感覚が本当に美しい。
このサルとキジの頭を繋ぐヒンジは「ただ頭を肩に持ってきたいがためだけの構造」なのが美しくない。それは全く必然でもなんでもなくて、作為が見え見えなので。無理だけど、動物モードのときにも何か可動などで役に立つ構造であの位置に持ってきたならすごいと思うけどさ。


そんなこんなで完成するドンオニタイジン、僕にポーズ付けのセンスがないせいなのかもしれないけど下半身はもう"動かない"と言ってもいい気がする。
膝なんか90度まで曲がるけど腿を前に上げられない以上はなんの価値もなくて、ただ非公式な遊びで足を外して座ってる風に飾るときくらいにしか役に立たない。「ここがこれだけ動いたからってどうすりゃいいんだよ」っていう可動ばっかりで、僕としてはやっぱり最初に言った通り"ない方がマシ"だなと思った。
腕の方は肩と干渉するとはいえまだポーズとして活かしようもあるけど、下半身は本当に動かした結果カッコよくなることはほぼないからとにかくじっとしてて欲しいのに、無駄に動くからイライラする。
いや腕も大概だけどな。肩を逃したら"必然"的にキジの頭も変なとこで止まらざるを得ないので、ポーズが取れる取れない以前の問題として人体の構造が破綻する。まぁ子供ならそんな細かいこと気にしないで「パーンチ!」って遊んでくれるかもしんないけど、動けば何でもいいってもんじゃない。
想像力のある子供と、想像力を技術なりなんなりで補える訓練された大人は楽しめるけど……僕みたいな「カッコいいポーズ決めるの無理だわこんなん、わざわざポーズ付けのコツとか改造の方法とか調べるのもめんどくせー」ってなるような中途半端な大人は楽しめない。


「触ってみて初めて分かったいいところ」は、うーん……ないんだよな……目新しいギミックがある訳でもないし、ただデカい(聞けば分かる)、スタイルが良い(見れば分かる)、可動する(僕は求めてない)ってだけが取り柄の玩具だから。

これ別に褒めることにはならないと思うんだけど、ゼンカイジャーのロボの遊びづらさと比べたらマシではあった。最初にでっかく「嫌いです!」と言ったけど、どっちかっていったらやっぱりあっちの方が嫌いです。

僕が持ってるのはZじゃない方のH5とドクターイエローだけだけど、シンカリオンとだいたい同じくらいの可動って言っちゃっていい気はする。棒立ちして武器を正面に向けるだけじゃなくて、ちょっと斜に構えることができるくらい。足も動くけど申し訳程度。
劇中での活躍を見たことでキャラクターの魅力で多少付加価値はついていくだろうけど、大きさとか見た目のかっこよさみたいなのは買わなくても分かるし、買わないと分からない可動は多分公式がプッシュしてる割には言うほどでもねぇなって感じ(まぁこれも宣材画像見れば察せるけど)なので、もし買うかどうか迷ってるならもう少し迷った方がいいと思う。
来年の1号ロボはどうか自分の好みにあったものでありますように……。

 

玩具についての雑談(1/2):ジュウオウキングが好き

SS-02 ディセプティコンスティンガーを買った感想

『シン・ウルトラマン』 感想メモ

本記事は2022/5/13に公開された企画・脚本 庵野秀明,監督 樋口真嗣による『シン・ウルトラマン』について、僕は大きなテーマで語れるほどウルトラマンを知らない(↓)ので、細々と思ったことを箇条書き形式でまとめたものです。長かったり一言だったりマチマチ。
一応シンウル自体は2回見て、パンフとデザインワークスは読みました。当然ネタバレを含みます。
※全話見た→G,オーブ,ジード,Z
多少知ってる→パワード,ティガ,コスモス,ネクサス,マックス,メビウス,R/B,タイガ

 

 

視聴前

ゴジラは倒されて、エヴァはさようならされて、ウルトラマンは多分帰って……となると、仮面ライダーはどうなるんだろう? 本編的にはいなくならないし、すぐ次の週からV3に出てきて改造手術したりしてたけど。
・言ったら身も蓋もないけど、ぶっちゃけシンウルトラマン仮面ライダーが世間的な評価でシンゴジを超えることはないんだろうし、自分の中でも超えてこないんだろうなというやや諦めに近いものはある。

 

観賞後の所感まとめ

・割と面白かった。
「自分がウルトラマン知らない割には」と「シンゴジのハードルがあった割には」の"割と"。
・見る前は「下手にリアル路線にしたらバカバカしさが浮くぞ……」と思ってたけど、実際はかなりそこんとこ開き直ってエンタメしてた。
「巨大人型生物 ウルトラマン(仮称)」の時点からだいぶ、パッと見でバカっぽいのを大真面目にやってるから大丈夫かなと思ってたんだけど、結構ギャグも多めだったし、ウルトラマンの挙動も面白おかしく見えたりそれがふっと不気味に見えたりっていう具合になってて、「シンゴジとは違って今回はこういう路線、現実 対 虚構じゃなくてあくまで"空想"側の話」と理解してからは普通に楽しめた。
・スタッフたちは違うと言い張ってるけど、シン・ウルトラマンは結構子供向けに見えたなぁ。子供というか、「ウルトラマンを全く知らないし興味もない一般層向け」というよりは「ウルトラマンに興味はないでもないけど子供っぽさで敬遠してる人向け」のリアリティライン。庵野さんは"緩め"って言ってた。
バクマンの「俺たち読者アンケート3位票が多いから、少し面白くするだけで4位からくり上がって票数爆伸びするのでは?」と似てて、あくまで事前からウルトラマン見てみようかなって思ってた人の背中を押すかたちで客は増えるかもしれないけど、興味なかったけどシリーズにハマった! は少なそう。

まぁだから、元々「でかい怪獣がどこからともなく何度も現れて、味方してくれる謎の巨人まで現れる」っていう大前提が突飛な時点で一般ウケは難しい上で、僕はシンゴジからゴールラインを下げたのは大正解だと思ってるし、少なくとも僕の「ウルトラマン見てみたい」って気持ちは満たされた。
『シン・仮面ライダー』のコート着ながらのアクションも、パッと見がバカっぽ過ぎて……僕はバカなので凄くかっこいいと思ったけど。ウルトラマンもそうで、僕は作品に対して「楽しもう」っていう協力的姿勢だから第一印象を超えて「いや、でもこれかっこいいぞ?」って思うけど、そうじゃない人は「なにこれ」で終わっちゃうんだろうな。

 

第1の事件(ネロンガ)

禍威獣の出現

・後から思ったことだけど、この時点から「空想特撮映画」と銘打たれてるし、一瞬だから読み切れないけど「東京氷河期!大パニック!」とか書いてあって、今回は『シン・ゴジラ』と比べたら緩めの世界観ですよ〜ってのは提示されてたのね。
マンモスフラワーとかいう怪"獣"なのかもよく分からない色んなのがバラエティ豊かにポンポン出てきては2コマで落ちる漫画みたいに解決していくところも含めて、張り詰めた雰囲気みたいなのはある程度緩和されたかも。カイゲルちょっとかわいい。

・序盤は完全に仮面ライダークウガの文脈で見ていた。超人に頼らずともなんとか人類がバケモノに抵抗できていて、それもあってウルトラマンは人類を好きになったのかなとか、単純に榎田さんみたいな人がいるとか。
仮にウルトラマンが宇宙警備隊? やマックスみたいに平和のための監視といった上位存在として諍いの仲裁を目的に来ているとした場合、自分たちにはなんの利益もないのにただ暴れている怪獣をやっつけて、その星の民に神として崇められたり、或いは更なる驚異として恐れられたりと距離を取った扱いを受けていて孤独だったところに、自分たちの力で6体もの禍威獣を倒すことのできる人間という生命体は、ウルトラマンの強さ故の孤独を分かち合えると希望を抱くには十分だったんじゃないかなぁ、と。
尤も後半でどうやら光の星の目的は若干違うっぽいと思ったのであくまで「初見時の感想」ということに留めておくけど、「物語の始まりは微かな寂しさ」とは辻褄が合うので一応この解釈も捨てがたい。

エヴァにしろシンゴジにしろ、庵野さんイズムのひとつには個人的感情の交わりを廃した"事務的なコミュニケーション"ってのがあると思うんだけど、ウルトラマンはそういう禍特隊の面々と最初に触れ合ったから人間を好きになったって側面もあるのかなとぼんやり思ってる。
学者として意見を言う滝と船縁、班長として一歩引いたところからものを言う田村というベースにはシンゴジ的な、災害への対処という大目的と法律や用語などある程度の知識を共有しているが故のスムーズで淀みのない事務的やりとりの空気がありつつも、そこばっかりに偏らないで浅見が神永を好きになりつつあるとかチーム同士の信頼とか、そういう人間的な要素はきちんと匂ってくるバランスが、元々感情少なめなウルトラマンには心地良かったんじゃないかなと思う。
巨大浅見とかウルトラマンの正体とかで盛り上がってメフィラスでさえも苦言を呈すような下世話な、でも割合で言ったらかなり大半を占めてるゴシップ的で感情的な会話ばっかりする人たちが相手だったら、また感じ方も違ったのかなと。

・神永のパーソナリティは殆ど描かれなかったので、2回目はなるべく素の彼による発言に注目してたんだけど、ネロンガが透明だけど赤外線ではモニターできるよみたいな話の流れで「もし生物兵器なら現人類より高度な文明向け」みたいなことを言ってたんだけど、どういう意味だったんだろう。ネロンガの位置を観測できないから今の技術じゃ対抗できないって意味なら分かるのに、滝なんかは「透明の意味ねーじゃん」と軽口叩いてるくらいだし。
それに対して「理に適ってるよ」と返答したのはてっきり田村かと思ってたんだけど、これも神永だったっぽい。
エネルギーが貯まって有利になると見えるようになって威嚇するのは分かるって理屈だったはず。なんだけど、生物に詳しくないからなのか僕はあんまり納得できなかったのよね。透明というアドバンテージを捨てるメリットないし、そもそも粉塵でおおよその位置が見えてるなら透明である意味も大してないじゃんってことだったんだから、まぁ生物の進化において厳密な必然性を求める方がおかしいというのは一旦置いとくとして、強いてここから神永の性格を読み取るとしたら「相手には相手の正しさがあるという前提で、多少自分の主観を投影してでも筋を通そうとする」みたいな感じになるだろうか。
最初に否定から入るのではなく、まず「こう考えれば筋が通るかも」みたいな姿勢で物事を見ることは、特に作品を楽しむ上であるに越したことはないマナー的な作法だと思う。「こことここが矛盾してる」と言って思考停止するのではなく、一見相反する二項が成立する条件を考えてみる……まぁ考えてみたところで無理あるなって思うことはままあるんだけど、そういう"歩み寄り"を試みることはコミュニケーションにおいて大切よね。

※追記 透過率ほぼ100%だから熱光学兵器には有効……つまり「ネロンガの肌はレーザー光線が効かない最強の防御なんだけど、人類はまだレーザー武器を実用化してないから生物兵器だとしたらもっと進んだ文明向け」という話の流れらしい……なるほど! でもだとしたらやっぱり透明解除する意味ねーじゃん!

・「面白いわ〜、どうやって電気の溜まり場を感知してるのかしら」
「空間中の電場範囲を量的に観測できる量子デバイスでも付いてるんじゃないですか?(笑)」
この船縁と滝の会話、生物学者と物理学者のものの見方の違いが詰まってて面白い。終盤の展開もそういうことかも。養老孟司みたいなイメージで現実的に考える船縁と、理論を先行させて考えちゃうから一度「無理だ」と思ったら諦めちゃう滝。

・そういえば、1回目は時間ギリギリになっちゃったのでいい感じの席が空いてなくて、まぁウルトラマンだし見上げるのもアリかということで前から2列目で見た。
その結果として一番印象に残ったのは宗像室長の初登場シーンで、手前に机と広い部屋が配置されて画面上のかなり上部に配置されてるせいで、さぞかしこの人はめちゃくちゃ偉いんだろうなと。正直若干見にくいだけだったのであまりおすすめはしないです。

・神永が子供を助けに行く流れ、改めて見返すとデタラメ過ぎて笑いそうになった。滝と船縁がネロンガに対して「お手上げ、どうしようもない」と言ったほぼ直後に「子供が逃げ遅れてるから」って飛び出してて、あの辺の集落(山梨県身延町?)は当然として、日本全土が危ないかもって状況にも関わらず、禍特隊専従班という5人しかいない重要な役割を放り出して助けに行くという……。
斎藤工 曰く「自分より弱い子どもを命がけで助けて死んだという、およそ生産性のない決断」
ものの捉え方がすごく外星人だよね……役作りってすごいな。ひょっとすると、自分たちにはどうしようもないという無力感から現実逃避したくて、意味がなかろうが目の前の子供を助ける、或いは巻き込まれて名誉の殉死を遂げたいという人間的な弱い心の働きがあったのかも、しれない?
……でも光の星の民に本当に「弱きを守る」って概念がないのなら、リピアは最初何をしに来たのかよく分かんないんだよな。まぁゾーフィ曰く人間を滅ぼす決断をした訳だし、単純な偵察や様子見?

 

銀色の巨人、飛来

・最初に出てきた"銀色の巨人"状態のウルトラマンの顔(いわゆるAタイプ? わかんない)のちょっと怖くて不気味な感じがすげぇかっこいいなと思った反動で、赤くなってからの顔にずっと若干の不満を覚え続けることになった。

・にわかなのも手伝ってか分からないんだけど、元々のウルトラマンのデザインが「真実と正義と美の化身」だとするなら、微妙に違うあの銀色の状態は化身を名乗るには不完全だと考えるのが自然だよね。
銀色の体色は鏡のように現実をそのまま映すだけという意味で真実だけ、或いは真実と正義だけの化身だったりするのかな。
少なくとも美に関しては赤くなってから初めて浅見に言及されてた(きれい……)のであとから追加されて初めてその真善美が揃うのかなって思ったんだけど。
ただ赤いのを完成形とするなら、逆に緑のは何が欠けてるのかよく分からなくもある。同じく美なのか、もしくはこちらにこそ美が欠けていて、銀色状態は正義がない命令の実行者……という見方もできるかも?

ネロンガの電撃を受けても、一切のリアクションを取らずにひたひたと近付いてくるウルトラマンは、手でガードして尚も劣勢に陥ってたガボラ戦と見比べてみてもすごく不気味で怖い。でもそこがいい。
最初にイラスト見たときの第一印象は素直に「かっこよくはない」だったけど、今ではかなり好き。銀色のソフビ出ないかなぁ……!
・作品における"最初の敵"って、その作品のテーマとかを暗に表してることが多いというのが定説? ……というか持論なんだけど、今回のネロンガの名前の由来はZのときにも調べたけど皇帝ネロということで「外星人にしろウルトラマンにしろ、何かしらの絶対的な上位者というものを否定し、それに阿ることなく自らの手で何かを成し遂げよう」みたいなニュアンスを読み取れる。

・明らかに仏様チックなスペシウム光線の右腕の構え方も鳥肌立ったので、劇中でもう1回くらい別アングルから見せて欲しかった。予告見ても左手のカットからしか見せてくんないんだもん、赤いし。
余談だけど、僕はバトル作品においてビームでトドメを刺すという文化はあまり認めてなくて、かめはめ波くらい気合を入れてるならまた見え方も違うとしても、ヒーローがただ突っ立ってるだけで遠距離から爆殺するんというのは絵的に面白くない。
拳なり剣なりきちんと自分の手でかっこよくズバッと倒してこそ、カタルシスってあると思うんだけどな。
……まぁ子供が真似するときに、殴る蹴るをしないで空想のビームで済むんだったら無害で安全だよねって言われたらそれはそう。

あとデザインワークスの絵コンテでウルトラマンのことUMって書かれてるのいいな。UltraManでありながらUMA的なニュアンスもあり。未確認……Animalとは確かに言い難いし。

・何回聞いても……つっても2回だけど、巨大人型生物ウルトラマン(仮称)についての報告書は浅見の仕事のはずなのに、肝心の「詳細不明」という思い切りのいい中身については神永に対する評価として語られてるのがちょっと分かりにくい。バディだから二人の名義で提出したってことなのかもしれないけど、作中に映ってる限りのあの中身のなさを考えるとわざわざ二人であれつくったというのはちょっと可笑しいものがある。
そもそも浅見が配属された直後に、浅見ではなく神永の様子を聞くという宗像の話の流れが全く読めない。
ウルトラマンと融合した神永自身がウルトラマンの正体は全くの謎だと報告したというのも、何か意味がありそうで分からない。自分たちで分からせるためなのか、明かすつもりがないから誤魔化したのか、それとも。

「"ウルトラ"とは最重要機密を指す符丁」というのが気になったので調べてみたところ、MKウルトラ計画というCIAで現実にあった事例(?)が出てきて、Wiki情報だが「ウルトラ」とは第二次世界大戦中に用いられていた符丁で「最重要機密」……というそのまんますぎる解説も載っていた。
どうやらあの有名なエニグマにも関連して、暗号解読された重要な情報のことをウルトラと呼んでいたらしい。
これを調べて初めて「あぁそういうきちんとした理屈があるのね」って一応納得できたけど、僕らにとってはもう"ウルトラマン"という文字列は子供向けヒーローの名前としてあまりにも定着しすぎてるから、先にも言った通りパッと見のバカバカしさは拭いきれない。
リアル路線にするなら政府としては別のもっと真面目な名前を用意してたんだけど、目撃者の間で俗称として広まってしまったから正式に認めざるを得なくなったみたいな描き方の方がノイズは少なかったと思う。
"ゴジラ"は漢字表記も相まって由緒正しい神っぽさみたいなものが損なわれてなかったけど、ウルトラマンって名前は流石に俗っぽすぎる。

関係ないけど、子供の頃からパワードの「いや、ウルトラマンだ」「……確かに女性には見えないわ」っていう洋画的なやり取りがすごく好き。なんかもうツッコミどころ色々違うだろって思うんだけど、気の利いたテンポのいいやりとりだからなんでその名前になったのかという理屈からうまく目を逸らす感じの。

・滝くんのオタク部屋設定ってなんの面白みもないから最初はスルーしてたんだけど、デザインワークスであの小道具選びは基本的に庵野さんの趣味をそのまま反映させているという話を読んで、終盤で無力感に苛まれるもウルトラマン/神永に希望を託されて突破口を見つけるという重要な役割を担う彼の中に庵野さんはいるのかなと思ったら、なんとなく腑に落ちた。あんまりこうやって安易に、作り手が作中キャラに自分を投影してるみたいな解釈するのはよくないけど。

 

第2の事件(ガボラ)

赤いウルトラマン

ガボラの事件において船縁が「ウルトラマンは来ないのかな」ってボヤくシーンだけど、あれをウルトラマンに解決を頼ろうとする人間の描写だとするのには賛成できなくて、僕は単純に学者としての好奇心から「もう一回現れて分析させて欲しい」っていう、ポジティブな意味合いだと思う。終盤で滝と対照的なスタンスを取っていたことも踏まえて考えると。

・多分このタイミングだったと思うんだけど、ウルトラマンがぴーんと伸びた状態でぐるぐるぐるー! って縦に回転して敵をふっとばすアレ、めっちゃ好き。「UFO飛んでます」みたいなピロピロ音も相まってめちゃくちゃ地球外生命体っぽさ、シュールさの中にある不気味さみたいなものが出ていてかなりお気に入りの演出。
空飛ぶときにずっと同じ格好なのもそうだけど、かっこいい/かっこわるいっていう基準でウルトラマンは動いてなくて、ただ単純に"そういう存在"ってだけなんだろうね。あのポーズを取れば重力を無視して自由自在に動けるけど、裏を返すとふわふわ動きたいならあのポーズのまま固定してないといけなくて、謂わばあれは「ウルトラマンUFOモード」なんだろうなと。あの瞬間だけは生き物じゃなくて空飛ぶ鉄の円盤として振る舞ってる。

・本作のウルトラマンは"背中で語る"ようなカットが多いよね。猫背でこそあんまりないけど、なで肩で強そうには見えなくて、むしろ寂しそうな感じすら受けるのに、やっぱりどこか頼もしい。そんな背中。
カラータイマーにしろ背びれにしろ、デザインとして削ぎ落とされることで全体的に"どこか寂しい"印象が強まってるのがとてもいい味出してるよね……シンウルトラマンは。
カラータイマーなんてモロだけど、胸にあったはずのものがぽっかりなくなってしまうなんてさ。あれは番組の都合でピンチに陥らせたりするための枷みたいなもので、それをなくすことでウルトラマンは本当の神になるのだ! 激アツ! って解説してる人もいたけど、どちらかと言うとこれは「やっぱり今あるウルトラマンのデザインが一番馴染みあるしいいよね、シン・ウルトラマンはなんか不気味」って思って欲しいように思える。
「不自由をやろう」。

・ノーダメージだったネロンガの電撃と違って、ウルトラマンにとってもリスクのあるガボラの激ヤバ光線をその身で受け止めたことで体色が緑に変化。
この辺の意味合いはちょっと検討も付かないので誰か詳しく解説できる人いたら求む。

 

第3の事件(ザラブ星人/にせウルトラマン)

外星人とのコンタクト

・「パソコンのデータが消える」という現象のつらさやバックアップを取らせてくれない規則への恨み言を子供が理解できるとは思えないけど、船縁さんがまたオーバーでいいリアクションするから、分かんないなりに笑いどころなんだと察して笑ってる子供がいたのが印象的。
子供って特に、言語的な意味じゃなくてテンポ感とか言い方とかのほうに敏感に反応して笑うイメージがある。あと単純にガックリしてる様子とか。

ウルトラマンは神永の体で禍特隊に入ってからも単独行動ばかりしていて、にも関わらずいつの間にか人間を信頼してることになっているという描き方が不思議でならなかったんだけど、彼はその場にいなくてもある程度は禍特隊の状況を把握できる(≒神の視点を持っている)のかもしれない。
ガボラ戦でも「私たち人間の事情をどうしてか知っていたから、光線も打たずに死体を持ち帰ったのかも」という疑問はあたかも「神永として潜入していたから」で説明が付きそうだけど、ウルトラマンの光波熱線がガボラに当たったら未知の反応が起きるのではみたいな話って順序としては神永が変身したあとに出てきた話のはずで、説明しきれるものではない。これに関してはウルトラマンが普通に自分の頭で考えて気を利かせただけとも取れるけど、メフィラスとの戦いに向けて浅見を呼び出すシーンで「合流したい。場所は君に任せる」とだけ言って電話切っちゃったのよね、神永。普通にそのあともう一回連絡取ったという可能性もあるけど、とりあえずの第一印象として僕は「合流場所聞かないでなんで分かるの?」と思ったんだけど、これも仮にウルトラマンがある程度は禍特隊の動向を離れたところから知覚できる千里眼のような能力を持っているのだと考えれば、不思議はなくなる。
あと具体的には描かれてないけど、ザラブ編でも似たようなことはあった。ザラブが禍特隊に現れて首相との密談を要求したときに神永はやはり居合わせてなくて、にも関わらず僕の記憶が確かならいきなり全てを了解した上で車内で元同僚と話すシーンに飛んで、しかもこの時点から既に自分がザラブに狙われることまで予見して浅見にベータカプセルを託している。この状況把握能力の高さは実際に見ていて少し不自然だった。
さっきも言った通り、この解釈を採用することには「言うほど禍特隊メンバーとも関わってないよね」っていう根本的な謎が氷解するので、ひとつの可能性として持っている。

・ザラブも結構好きなのよねー、淡々とした喋り方がミギーみたいでめっちゃカワイイ。データ復元したりしてくれて、マッチポンプかもしれないけど律儀だし。
見た目はキモいけど。"裏がない"はずなのにそのせいで逆に怪しくなってるのが面白い。

・"スペシウム133"という単語、スペシウムというウルトラマン用語を知らない人にとっても、-ウムという語感に加えて、ヘリウム3とか炭素14みたいな同位体の場合は後ろに数字をくっつけるって表現方法があるのも手伝って「そういう元素なんです」ってことが伝わりやすくなってるのが手際よくて好き。本当に原子番号133の同位体として表現するんだったらスペシウム266?とかになると思うけど、あくまで"語感のイメージ"としてね。
エヴァについても一号機じゃなくて初号機って、同じことだけど言い方を少し工夫することで独自性を出しててすごいって話をしたけど、そんな感じ。
例え、-ウムといえば元素だなとかその辺すら理解できない知識レベルの人でも、単語が長くなればそれだけ「なんかそういう専門用語なんだろうな」感も増す気がする。

不平等条約の容認っていう要素もまた、自力でなんとかするのではなく他人の力にあやかろうとする姿勢に対するアンチテーゼのひとつとして機能しているのかな。歴史は詳しくないので分からん。

・「両方だ。敢えて狭間にいるからこそ、見えることもある」
こうは言うけども、基本的には神永はずっと"ウルトラマン"として振る舞ってるよね。従来的な二項対立としてのウルトラマンと人間の狭間じゃなくて、リピアと神永の狭間にいるのがウルトラマン……という意味なら、分かる。
さっきの千里眼だけど、本来なら神のごとく地球上すべて……或いは宇宙全域から異常を検知して駆けつけることができるための能力なんだけど、人間と融合したことで制限がかかって禍特隊を含む知り合い数10〜100人程度にしか効力がなくなってるとかだとより面白い。どこかに"注目"したり偏って見ることというのは、人間らしさを構成するひとつの重要な要素なので。

・これは半分受け売りだけど、シンウルトラマンの世界に神がいるとしたらそれは神永のことだよね。自分を犠牲をしてでも子供を助けた神永の方こそ、リピアにとってのヒーロー性の原点な訳だから。
演出的にも変身時にウルトラマンが神永をその手で掴むと指の隙間から光が漏れ出すってコンテに書いてあって、あぁやっぱウルトラマンにとっての力の源、"光"って神永なんだって思った。アルカイックスマイルを浮かべる仏様だって、基本は解脱を果たした元人間な訳だし。
もうちょっと飛躍させるなら神永に限らず、浅見含めて禍特隊メンバーのキャラ的な掘り下げがあんまり十分じゃないのも、人間の複雑な精神が持つよく分からなさ,神秘性をこそ賛美したいから、敢えて深くは描かないことでウルトラマンの「何も分からないのが人間だ。だからこそ、私は彼らを知りたい願う(企画メモ)」って言葉に説得力を持たせるという意図があったのかな……なんてことも思った。
少なくとも本作の中では「実は人類こそが一番素晴らしい存在」なんだろうなと。ウルトラマンシリーズはなんで変身アイテムが懐中電灯? ライト? なのか疑問だったんだけど、ウルトラマンは道を照らすだけで、あくまで進むのは人間ってことなのね。

 

第4の事件(メフィラス)

私の好きな言葉です。

・すげー雑に話すけど、人類は元々光の星が地球に撒いた生命の種であって、リピアたち光の巨人と根っこは同族だから同化できて……という裏設定なのかボツ案なのか分からない話がデザインワークスの企画書にあって、何となく僕の頭の中では生命の実を得たら光の巨人、知恵の実を得たら人類にみたいな分岐進化があって、エヴァと同じようなもんでその両方を手に入れてしまったらどうなるかっていうのの答えが今の神永と一体化した"ウルトラマン"なんだろうなというざっくりとした構図に整理されている。使徒と違ってウルトラマンにも知恵あんじゃんって思うけどそれはだってカヲルくんも喋ってたし……。

・目的はだいぶ違うけど、ベータボックスという超文明的な代物を人類に与えてくれる上位存在ってことで『正解するカド』を思い出した。似てるかは分からないけどあれはあれで面白いので(最後のほう覚えてないけど)おすすめしたい。

・メフィラスは本当に最高でしたね。決してそれだけじゃないけど僕は『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』における山本耕史演じる飛電其雄が結構好きで、その相乗効果もあってとても楽しませてもらった。いや眼福眼福。
無闇やたらに「私の好きな言葉です」って連呼する胡散くさい存在として、そうだとは一言も言わないけど言動とゾーフィという他人から指摘される形で"好き"を表現するウルトラマンとの対比も分かりやすくていいし、本当の意味で地球を好きになれるほどの人間らしさは元々持ち合わせてなくて、ただ表面的になぞっているだけに過ぎないのが面白い。
ブランコのシーンとか、普通大の大人同士が話すときに漕いだりはしないと思うんだけど、でも彼は知識が先行して「ブランコとは漕いで楽しむ地球の文化」としか認識してないから額面通りに漕ぐし、本人はそれで"分かった気になってる"から臆面もなく「好き」と公言できる。その不気味さと滑稽さと、途中で飽きて立ち漕ぎに変えてみたりするのも含めて、全部おもろい。
「割り勘でいいか? ウルトラマン」に関しても、コスト節約のために禍威獣やザラブは現地調達したって話と絡めて"本当に金がなかった"って解釈もマジ笑えるんだけど、まぁ普通に「言ってみたかった」とか「そういうもんだと思ってた」んだろうなと。一旦財布を覗いて見るとこまで含めて、ね。かわいい。
「地球好き。」という端的な表現があまりにもそのまんますぎて笑える。

・僕が初見で"いわゆるセクハラ"かもって思ったシーンはむしろ女性の浅見が男性の神永の尻を叩くとこだった。それ以外だと長澤まさみさんのお尻がアップになったりとかスカートを覗き込むカットとか作中というよりは撮影のレベルの話なので、する人,される人という構図が見えないから、「セクハラされてる」という第一印象は抱かなかった。スカートのシーンも何も見えないことが大前提にあるからこういう映像撮ってるんだろうなと思ったんだけど、まぁでも考えてみたらそうだと分かっててもあんな風に撮影されるのは快くはないわな。
神永が浅見をくんくん嗅ぐとこは、どちらかというと浅見の方が神永を好きだから変に意識してドキドキするってシーンだったのであんまり"そう"なのかなって納得いかない。
でもこれも、浅見は神永を好きかもしれないけど長澤まさみさんが斎藤工さんを好きかどうかとは関係ないからそんな展開を書くこと自体がセクハラなのかもしれん。
においだけはデータに変換されない(?)って理屈もよく分かんなかったしな。

あとメフィラスの「ウルトラマンという紳士がそのような変態行為も厭わないとは……」を以てセクハラじゃないと言い張るのは流石に無理があると思ふ。あくまであれは敵役の発したトンチキなギャグ発言であって、真面目にうんうんと頷くもんじゃない。
「人間ならきっとこのシチュエーションでセクハラを指摘するだろうから俺もしたろ」ってだけ。いや、多分人間なら流石にあのシリアスな状況では言わないと思うよって言いたくなるんだけど。
そういうキャラの発言なので、残念ながら作品全体のレベルで見たらあの発言は「いるよね、こういう空気読めないでセクハラとか言って騒ぐやつ(笑)」みたいな意味合いだと僕は思う……。

・VSメフィラス戦のBGMバリかっこよかったよなぁ。エンドロールに出典たくさん書かれてたしなんならかっこよすぎて浮いてたからあれも元ネタがあるのかと思って帰ってウキウキで調べても出てこなかったのが悲しい。また聞きたい。

 

第5の事件(ゼットン)

ウルトラマンの選択

・元ネタのゾフィーさんを知らないから分からないけど、シンウルのゾーフィって最後のシーンで帰った場合のリピア的な立ち位置の人なのかね。緑か青か分かんなかったけど色ついてたし。僕は勝手に最初のリピアを見て、光の星の人たちってのは元々みんな銀一色の鏡みたいな存在で、交わった相手によって色んな姿に変わるまね妖怪ボガートみたいな奴らなんだろうなと思ったので、どっかの星の生命体と融合した結果あんな黄ばんだ色になっちゃったんだろう。

自分も掟を破った経験があるからこそその償いとして人一倍に光の星からの命令を遵守してゼットンなんてものを送り込まなくてはならないし、ラストで「そんなに人間が好きになったのか」とウルトラマンの気持ちを理解することもできたのかなって。

・ゾーフィがゼットンを差し向けてきたのは確かにウルトラマンよく知らないなりにぞっとしたけど、あれは多分シンゴジでも描かれてたように人間にとって核が根絶やしにはなかなかできないから共存していかざるを得ないのと同じで、多分あれもゼットン星人?か誰かが破壊兵器としてつくったのを押収したものの、光の星にとっても本当はなくしたいけど装甲が硬すぎて歯が立たないのかなんなのか、ともかく根絶するのが難しくて持て余してたからいっそのことひとつの手段として正義のために転用しようってかたちに落ち着いた結果として、ゾーフィが怪獣をよこしてくるっていう不気味な絵面になったんじゃないかなぁ……。
ウルトラマンは万能の神ではない」からこそゼットンにも対処しかねるし、人類を他マルチバースから守り切るというのも難しいから処分するしかないなんて判断が下されるっていう描写に見えた。
でも勝手に生み出しておいて勝手に滅ぼすっていうのはなかなか神様っぽいムーブだよね。ウルトラマンはもう神ではないけど、仮に光の星のやつらは神だとするなら。
……ところで絵面が面白すぎて笑いそうになったんだけど、ゼットンて原作でも乳首からビーム出すの?

・「我々に従わなければ禍特隊は殺す」と脅されて神永が「なら自分はゼットンより早く人類を滅ぼしてやる」と宣言した(しかも脅しじゃないよと変な言い訳までして)のが理解できてなかったんだけど、あれは「せっかく人間を好きになったのに失望させるな」みたいな意味だったのかね。
他者のためなら自分を犠牲にできるはずの人間が、同じ人間を殺そうとするのが許せなかったと。本当にそこまで愚かな生き物なら、滅ぼされてしまってもいい……むしろ自分の手できちんと責任を持って処分しようという気持ちがあったのかもしれない。

・さっきはセクハラだって言ったけど、浅見が神永のケツ叩くシーンは僕は結構好き。仮にも1回巨大化して、人類の中では多少でも神永の気持ちが分かるようになった浅見が対等な同僚として気合を入れてやるというのはなかなか熱い展開。
神永は神永で、人間には何もできっこないと言い張る滝を目の前にして、彼にしっかりしろと言うのであれば自分がまず絶望的な状況に対して立ち向かう姿勢を見せなければいけないっていう筋の通し方もかっこいいし。

・あー! あのVR会議についての「本当にすごいものとは滑稽なものなのかもしれない」って話、結局どういう意味なのか計りかねてたけどようやく分かった。予算の都合で描けなかったのを正当化したって話も見たけど多分そうじゃなくて、ぐるぐる回ったりしてこれまで散々シュールに描かれてきたウルトラマンの戦闘は「我々には理解できないすごさ」の裏付けなんだよっていう解説として機能してるのか。僕の見方はあながち間違いじゃなかった訳だ。


ゼットン戦の絶望感、やばかったなぁ……。ブラックホールみたいなのが発生して、光ですら逃れられないっていう大前提が我々の中にはあって、BGMも思わず泣きそうになるくらい悲壮的で劇的なものが流れて、でも奇跡が起こって脱出できるんだよね? とどこかで希望を抱いてたら為す術なく吸い込まれてしまって……あの一連の流れは本当にちびりそうになった。
間髪入れずにふわふわ浮いててゾーフィとの対話シーンに入るから頭バグったけど。あれもあれでシュールすぎる。ほぼ同じ映像が初代ウルトラマンにあるって知ったときはようやく納得できたけど、いきなりあの謎空間を見せられたらびっくりする。

・僕はウルトラマンが最後のシーンで死んだとはあまり思ってない。神永の意識はない(?)ままウルトラマンが人間との中間的存在としてあったように、ウルトラマンの意識は消えたけど神永の中には間違いなくいる。イメージとして割と近いのは寄生獣ラストのミギーかも。
『M八七』はウルトラマンから神永へ向けた歌だと思ってるので、もしかすると今後は神永自身の意志で「君が望むならそれは応えてくれる」のかもしれない。続編が作られるとしたら、今度は神永人格のウルトラマンが人類の進歩を見守るかたちになるのかなと。
「痛みを知るただ一人であれ」ってのも、これから"ウルトラマンだった人間"として生きていかなきゃいけない神永に対する応援な気がする。普通に考えたらかなりヘビーだよね、また各国から狙われるかもしれないし、仮に変身できないとしたら尚更、抵抗できないまま体中を弄くり回される羽目になる。
マルチバースからの侵略者だっているかもしれないんだから、リピアとしては死ぬけど、さっきの話の比喩で言うなら生命の実……S2機関だけは神永に託すような感じだとは思う。

・僕も一応、一般論として「人類はウルトラマンに頼らず自立しなければいけない」みたいなをテーマを物語を知らないままにそこだけ知ってたから、仮にもひとつきちんとした例を知れて良かったなとは思ったけど、原作ちゃんと見ようとはあまり。
シンでなぞられた話の元ネタくらいはいつかチェックしたいけど、全話は他の要因で見たいと思わない限り見ないと思う。デッカーを見るモチベは少し高まった。

 

M八七

・『M八七』ってかなりウルトラマン色が強いネーミングだから一般ウケしなかったら悲しいなと思ってたけど、一般層はそもそもM78がウルトラマンの用語ってことすら知らないからなのか知っててなのか、ちゃんと急上昇1位になっててよかった。めっちゃいい曲なので。

・ヒロアカOPの米津玄師『ピースサイン』、今聞くとよりヒーローソングとしての良さが滲み出てくる。特に2番の以下にあげた部分なんてまんまシンウルトラマン
「僕らの上をすれすれに通り過ぎていったあの飛行機」って明らかにウルトラマンだし、2番の
「守りたいだなんて言えるほど
君が弱くはないの分かってた
それ以上に僕は弱くてさ
君が大事だったんだ
一人で生きていくんだなんてさ
口をついて叫んだあの日から
変わっていく僕を笑えばいい
一人が怖い僕を」
マジでリピアじゃん。物語の始まりはかすかな寂しさ。

・なるほど、万有引力を寂しさの象徴として捉えるなら、種族としてのウルトラマンが重力を無視して飛べるのは個として完結していて引き合う必要が無いからなのかもしれない。それは確かに、寂しいわ。
米津玄師という人選も、元は一介のボカロPだったのが今では日本を代表するトップアーティストとして神格化されてしまっているあたりにウルトラマンへシンパシーを感じたところもあるのかな。持ち上げ過ぎ、よくない。
『M八七』は米津玄師がウルトラマンというコンテンツに対して理解度が高かったというよりは単純に知らなかったとしてもウルトラマンっぽい曲を書ける彼を選んだスタッフがすごい説を推している。

 

終わり。また何かあれば追記するかも。

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仮面ライダーオーズ 10th 二次創作小説『Eternity Time judged all』

この記事は前回の脚本を書いてみる企画に続いて、『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』について映司が死なずに生存するルートを書くとしたら自分はどんな話にするか……という妄想IF小説です。
映司が生きる代償としてアンクが死んだり、そもそも復活できなかったりということもありません。きちんと2人ともが生きた状態でラストを迎えることだけは約束します。

章ごとに書き上がり次第追記していく予定です、未完になったら申し訳ない。著作権的に問題があると判断された場合は削除します。

 

 

"遠い岐路"

・数年前 夜の川沿い
 ある日、私のもとに一本の電話が届いた。彼とは年に数回くらいクスクシエのみんなとお互いに近況報告をしていたけれど、こんな風に個人的に連絡を取るのは後にも先にもそれきりで、驚きと嬉しさと、少しの不安がごちゃまぜになりながら口を開いた。
比奈「もしもし、比奈です。久しぶりだね、映司くん」
映司「久しぶり、元気そうで良かった。いきなりかけてごめんね、びっくりしたでしょ」
比奈「ちょっとね。今は、砂漠の町にいるんだっけ」
映司「しばらくいたけど、そろそろここを発とうと思ってるんだ。次に行く場所は、まだ」
比奈「そっか……やっぱりまだ、アンクのメダルを治す方法は見つからない?」
映司「うん……でも、いつかは必ず」
 そうやって当たり障りのない会話をしながら、今思えば少しずつ前置きを挟んだ後に、彼は本題を切り出した。
映司「…………比奈ちゃんは、誰かを本当に許せないと思ったことって、ある?」
比奈「えっ? それは……」
 アンクのことが頭をよぎって口ごもった。私の気持ちを察したのか、答えを待たずに話は続いた。
映司「……グリードでもヤミーでもない、人間が起こした戦争のせいで、たくさんの命が奪われたんだ。そしてその分だけ、人の命を奪った人もいる……自分の手は汚さずに、利益を得た人も。俺は、平気でそんなことをする人たちが許せない」
比奈「それって……」
映司「比奈ちゃんだったら、どう思う?」
比奈「私は……」
 慎重に、言葉を選ぶ。それが、今の私が映司くんにできる、唯一のことだと思った。

・許せない

・分からない

・許したい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せない
比奈「私は……どうしても許せないってことは、あると思う。映司くんの気持ちは、よく分かる」
「翌朝、私はとある紛争地帯に異形の戦士が現れ、一国の戦いをひとりで止めたことを知った」
→本家『復活のコアメダル』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分からない

比奈「私には……分からない、何が正しいのか。でも、映司くんがした選択は、きっと間違ってないと思う。私はそう信じてる」
比奈M「翌朝、私はとある紛争地帯に異形の戦士が現れ、一国の戦いをひとりで止めたことを知った」
『復活のコアメダル(二次創作ver)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許したい

比奈「私は……無責任かもしれないけど、どんな相手だって、いつかは分かりあえる日がくると思う。綺麗事だって、自分でも思うけど……そう信じたい」
 翌朝、私はとある紛争地帯に異形の戦士が現れ、一国の戦いをひとりで止めたことを知った。
→『Eternity Time judged all(本記事↓)』

 

 

 

 

 

仮面ライダーオーズ ET

 目次

 

 

 

プロローグ Age of Goda

 海の中に、俺はいた。右も左も、上も下もない。ただひたすらに昏く、不思議と安心できる暖かさだけがあった。音もなくただうねり続ける潮の流れに身を任せ、目的もなく漂うだけの日々。
 だが気が付くと足が地に付き、自分がずっとゆるやかに落ちていたのだと気付く。微かにだが目が見えるようになり、海底を歩いて回ると周囲では様々な生物が捕食し捕食される生存競争を繰り返していたが、俺には触れることができず、ただ見つめるだけでその環の中へ入ることは叶わなかった。

 やがて海から暖かさが失われ始め、俺が陽の光を求めて陸へ上がったころ、世界は完全に凍りついた。その後も地上を歩き続けたが、"それ"が起こったのは突然だった。
 あらゆる生き物が、次々に目の前で死んでいく……その光景はとても受け入れられるものではなかった。
 それからのことはよく覚えていない。生き残ったものたちは様々な発展を遂げたようだが、視界はザラつき全てのことが現実でない気がした。それでもただ歩き続けることだけが自分の存在を確かめる唯一の方法であり、宛てもなく前進し続けることしかできなかった。

 いつからかだろうか。自分が砂漠から抜け出せなくなっていることを悟り、自分以外の存在が視界の中に入ることはなくなった。四方には無限とも思える地平線が広がり、ギラギラと輝く太陽だけが俺を照らしていた。
「身体が、欲しいか?」
 太陽は言った。
 これまで、俺の存在を認知できるものはいなかった。俺は世界を一方的に見るだけで、世界から見られることはなかったはずだ。だが身体があれば、俺は世界と関わることができる。消えゆく命を、この手で助けることだって……俺は頷いた。
「いいだろう。その代わり……」
 太陽はそう言って、自らを象った3つのリングを落とした。
 その瞬間世界は息を吹き返し、リングと一体化した俺はこれまで見てきたあらゆる動物の姿形を模倣できるようになった。あるときは鳥として大空を羽ばたき、あるときは四足となって大地を駆け回り、あるときは虫となり跳躍しながら、俺は目の前にいる命を助けるために力を使った。それが大きな食物連鎖の流れの中ではどれだけ無意味なことかは分かっていたが、目の前で命が消えることが耐えられなかった。

 

 いくつもの身体を使い分ける中で自分自身を見失いかけていた俺は、いつしかもうひとりの自分をつくりだしていた。もはやどちらが本来の俺だったのかも分からない。俺はこの世のあらゆる生物種の力を手に入れ、望みを全て叶えられるだけの能力を欲し旅を続け、もうひとりの俺はその道中で短絡的に目の前の命を救うことを望んだ。俺たちはひとつしかない身体を共有し、互いを利用してうまくやっていた。しかし、そんな日々も長くは続かなかった。

 太陽を殺して世界を終わらせようと画策した月と戦うために、それまでにないより強い力が必要だった俺たちは、これまで獲得した様々な生物の長所を組み合わせたキメラとなって戦い、やがて覆い尽くされたかに見えた太陽からの黄金のリングによって授けられた、この世に存在するはずのない火の鳥の力を使ってこれを阻止した。
 それからというもの、世界は再び乾ききった砂漠に包まれた。空はどす黒い雲で覆われ、太陽はその姿を見せない。そしてもう一人の俺は、もう必要はなくなったとでも言うかのように、俺を置いてどこかへ旅立ってしまった。気が付くと俺は、醜い毒蟲と成り果てていた。
 いつまでも潤うことのない砂漠に、降り続ける雨。その中を俺は、やはり彷徨うことしかできない……そう悟るのに時間は要らなかった。
 俺は歩き続ける、失われた海を求めて。

 

1.檸檬 - Still in the nest.

 川の横を付かず離れず、うねりながら伸びる道。沿道の桜もそろそろ青い葉の間からその顔をのぞかせ、今日みたいな休日はスポーツウェアでランニングやサイクリングを楽しむ人、子供やペットと一緒に散歩をする人などで溢れている。
 私もその中の一人だった。時々こうしてぼんやりと歩くのが、最近の暇つぶしになっている。その先の公園にある自動販売機で、飲み物を買って一休みするまでが1セット。

 この10年で鴻上さんのグループはビジネスの裾野を広げたみたいで、ほとんどのライドベンダーはセルメダルがなくても、お金を入れればカンドロイドを模した飲み物が出てくる新型と入れ替えられていた。タカはコーラ、タコはスポーツドリンク、バッタは緑茶……なんて風に。私はいつも、トラのレモンティーを買う。このお金が、アンクを復活させるための研究に少しでも貢献していたら、なんてことを思いながら。なかなか売り上げはいいみたいで、年々見かける数は増えている。バイクモードにすれば簡単に移動ができるからなのか、特にお祭りなどの場に一時的に設置されていることが多い。昔は私たち一般人にとっては謎のオブジェだったけど、今となってはすっかり日常の一部だ。

 ショルダーバッグから財布を出して、硬貨を入れる。ボタンを押したところふとゴリラ缶が目に入って、伊達さんはいつもこれを携帯していたけど、ブラックコーヒーは意外と飲まなそうな気がした。そのギャップがなんだかおかしくて、自然と口元が緩んだ。出てきたレモンティーを手に取り、ベンチに腰掛ける。

 

 聞いた話によると、伊達さんが日本に帰ってくるらしい。戦いが終わったあとはそれまで通り医師として、立場にとらわれず色んな人を救っているんだとか。
 お兄ちゃんと同じく警察官に戻った後藤さんは、今では結婚している。お相手は茉里奈さんと言って、里中さんも入れて3人で仲良くさせてもらっている。伊達さん帰国のニュースも、他ならぬ彼女から仕入れたものだった。現在は妊娠中で、そろそろ臨月が近いらしく出産に向け張り切っている。

 結婚かぁ……。お兄ちゃんがまだだから考えたこともなかったけど、私もそろそろ選択肢として考え始める年なのかな。レモンの苦みを口の中で感じながら、やっぱり自分にはまだ早いなと思い直した。
 忙しいお兄ちゃんと違って、私はこうして休日をのんびりと過ごす余裕がある。今の仕事に不満がある訳じゃない。でもファッションデザイナーになるという夢を叶えてしまった今、その先の目標を見つけられないまま、なんとなく満たされない毎日を送っている。

 私は、どこへ行くんだろう。
 流れる川の音を聞いていると、あの頃を思い出す。アンクがお兄ちゃんの体に取り憑いて、毎日のようにグリードやヤミーが事件を起こして……良くも悪くも、人生の中で最も刺激的な1年間だった。お兄ちゃんも、私だって、ひとつでも噛み合う歯車が変わっていたら死んじゃってたかもしれない。あの頃に比べたら、今の私の悩みなんてちっぽけなものだ。
 映司くんは、今ごろ何をしてるんだろう。
 あの頃は一緒にいるのが当たり前だったのに、映司くんも、アンクも、今ではそばにいないのが当り前になってる。積み重なってしまった時間の大きさを、改めて感じた。
 そろそろ帰ろう、そう思い顔を上げたそのとき。視線の先に、彼がいた。
「映司くん……?」

 

 以前と変わらない、涼やかで掴みどころのないエスニックファッションに身を包み、佇む姿には確かに見覚えがある……ただ、こちら向けられたその目はきゅっと瞳孔が絞られ、私を鋭く捉えて離さない。
 比奈ちゃん――と懐かしい声が響く。たったそれだけのことで、私の心は10年前に引き戻される。アンクは、ここにいないにも関わらず。
「……見つけたんだ。アンクを蘇らせる方法」
 思わず息を飲んだ。映司くんはあれから、そのために旅を続けていたと言っても過言ではない。
「命だった」
「それって……」
「コアメダルは元々、生物の持つ命を欲望に変えた"血の結晶"……それが、遺跡を研究して分かった成果だよ」
「そんな……それじゃアンクは?」
 彼はどこか遠くを見つめて、冷たく言い放った。
「アンクを復活させるには、生贄が必要だ」
 そう言った映司くんの目は、昔の彼とはまるで別人のように見えた。生贄って……まさか人間の? それとも、アンクの属性と同じ鳥の命だろうか? どちらにしてもあの映司くんが、他の何かの命を奪ってまでアンクを復活させようなんて、言うはずがない。長年求め続けた答えがそんなおぞましいものだったと知った彼の心中は分からないけど、それだけは間違いない。
「あなた……誰?」
 再びこちらをキッと見つめたが、やがて顔を綻ばせ、口を開く。
「大丈夫だよ、比奈ちゃん。俺がなんとかするから」
「待って!」
 気づいたときにはもう彼の姿はなく、そのかわり、視線の先のはるか向こうには、巨大な氷の城がそびえ立っていた。
 風が、私の髪をめちゃくちゃにしていく。

 

2.グリード復活(仮)

 爆発音が聞こえたのは、市街地の方からだった。少し迷った末に家ではなくクスクシエに向かった私は、逃げ惑う人々の先にいる彼らに気付いて目を疑った。
「相変わらずうじゃうじゃいるな。汚い、欲望のにおいだ」
「なぁんだ、今度は変わり映えしないね」
「せいぜい10数年ってとこかしら?」
「俺、まだ眠い……」
 ウヴァ、カザリ、メズール、ガメル……10年前、欲望のままに世界を脅かしたグリードたちだ。
「どうして……コアメダルは映司くんたちが壊したはず……」
 グリードは意識の宿った1枚のコアを砕かれると、セルメダルを集めてもそれまでのようには復活できない。これは他の4人と違い、ひび割れた2片のカケラが残っているアンクでさえも変わらない事実だった。
「メダルが足りない……オーズはどこだ!」

続く

真木とヒカミとゴーダ(未)

プロジェクト・エタニティ(未)

古代オーズ戦(未)

ゴーダ戦(未)

旅立ち(未)

倍速視聴の否定派は感情論でしかない

僕は実際に倍速視聴をするタイプの肯定派だけど、単に自分がそうしたいからというのを超えた意味で「倍速視聴は悪くない」という明確な倫理観を持っている。
しかし、正直未だにまともな否定派の方を見たことがなく、誰も彼も「なんかイヤだから駄目」の域を出ていない。今回は何故そう思うのかを説明していこうと思う。

否定派の方は、大して長くもない記事なのでぜひ筆者の意図を尊重して飛ばさずにじっくり、最後まで読んでくださいね!

 


"10秒スキップ"との区別

ことの発端は以下の記事だが、10秒スキップと倍速視聴を並べて、特に大した峻別もしないまま「よくないよねー」なんて風に否定しているこの記事には聞く耳を持つ必要がないと感じる。

「倍速視聴」は進化か退化か。「プリキュア」「銭天堂」脚本家が抱く危機感(稲田 豊史) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

小林さんはこの問題について「金を払ったんだから、食べ残そうが、早食いしようが、どう食べようが自由」「お腹に入れば一緒」という比喩を否定的な意味で展開しているが、そもそも早食いってそんなに悪いイメージがあるか……? 少なくとも僕はないですね。
高級料理店≒映画館でならば確かにそのようなことはご法度、というかできないが、お茶の間で普通に食べる食事≒テレビ放送されたものや円盤,配信等について早食いをとやかく言う人など見たことがない。
第一、テレビ番組なんてかじりついて見るのが当たり前としてつくられてはないでしょ最初から。見てる途中にご飯食べたり携帯いじるのはスキップしてるのとほぼ同じだよ。そんなつまらないことで人に怒ってもいいのは一緒に暮らしている家族くらいのものだろう。

食べ残しの方がよっぽど広くマナー違反であって"いけないこと"のはずなのに、この記事は最初からここを敢えて一緒くたにすることで「倍速視聴も悪いこと」というイメージを刷り込んでいる。
タイトルに"倍速視聴"と掲げながら、否定する根拠に乏しいからより悪いと思われる10秒スキップと抱き合せにして批判してやろう、というのは呆れたレトリックだと言うほかない。

僕は早食いはしてもスキップ……つまり食べ残しはしない。少し目を逸らすとか、集中力が切れるとか、理解力が足りないとか、そういう事情で結果的に頭に入ってこないことはあっても、意図的に残すつもりはあまりないので、この批判には当てはまらない。

 

あと否定派の常套句として「"間"が味わえなくなる」というのがあるけど、そんなことは本当に全くもってありません。
それはふだん等速でしかものを見ない人間から見て間が詰まる(そしてその結果チャカチャカ動いてなんか変だと感じたりする)ということに過ぎなくて、倍速で見ることに慣れてる人がきちんと意味を受け取れないことにはならない。
前提として、等速でも作品によってテンポは違う。間を切り詰めてトントン話が進むものもあれば、じっくり無言の時間をつくるものもある。
だから"間を取る"というのは倍速云々を抜きにしても相対的なものであって、具体的にある秒数以上だなければ人間は間だと認識できないなんてことはなく、あくまで「それまでの描写と比べたら長い=間を取っている」ということに過ぎない。
だから「倍速にしたことが理由で"間"が分からなくなる」ということは有り得ないと思う。見逃したんだとしたら単にその人が集中して見てないだけで、それは等速だろうが同じこと。
1回や2回、しかもおそらく数秒や数分試してみたくらいで倍速視聴のなんたるかを判断するのは極めてナンセンスです。向き不向きはもちろんあるだろうけど、他のあらゆることと同じで慣れるまでやれば慣れるし、慣れる前にやめれば慣れません。当たり前のことです。

 

倍速視聴と理解度の深さ

そもそも作品を100%を理解できる,しようと思っている、また理解させることができると思っているのが傲慢ではないのか。

等速だろうが倍速だろうが理解力の低い人間はいるし、それはまた別の問題。作品に対して的外れな批判をしているならそれに対して直接反論すればいいだけであって「倍速してるから語る権利がない」というのは飛躍している。「倍速にしなければ理解できたはずだ」という根拠を示さなければこの話は成立しないし、少なくとも僕は等速で見てようが「よく分からん」と感じることは多々あるのでそこまで決定的な差はないように思う。
当然だけど、倍速にできるってことは10秒戻しとかも機能としてできる環境な訳で、今のどういうこと? って思ったら戻して何度か見たり等速にしてみたりもする。もちろん何度見たって分からないものもあれば、スローにしてみて初めて分かるときもある。
好きなドラマの小道具なんかで細々とした書類が出てくると一時停止して読みたくなるタチなんだけど、これらの情報は本来作者の意図としては「読めなくて当たり前」なものであって、本気で作者を尊重するなら「読んではいけない」ことになる。
当然素早いアクションシーンなんかも、スローにして「こうやって動いてたのか」と観察してはいけない……そんなバカな話があるか? ねぇよ。

逆に、倍速だからこそ分かることというのもおそらくある。僕は特に忘れっぽいので、シーンとシーンとの繋がりを把握するにあたって、等倍ではなく倍速にして詰めて見ているからこそ理解できていることもなくはないと思う。これは比較のしようがないが。


記事の話に戻るけど、"時間の芸術"があるなら空間の芸術の方がもっと顕著にあるはずだろう。テレビのサイズは家庭によってバラバラだし、映画館のスクリーンなんかとはハナから比べ物にならない。況してスマホタブレット,PCの画面なんかで好き勝手に拡大縮小して見られるのは黙認してる癖に、時間だけ圧縮されるのは嫌というのは理解に苦しむ。音質だって見るものによってバラバラで、本当にあなたが今見ている環境は作品の全てをありのままで受け取れる状態にあるんですか、と。
またテレビ番組については放送時間というのも重要なファクターのひとつだったりする。例えば僕の好きな仮面ライダーなどは、制作陣のインタビューから「"日曜日の朝に見たい内容"とは何かを考えてつくっている」という話が散見される。つまり、ゆっくり過ごしたい休日、或いは子供にとってはどこかへ遊びに行くワクワクした1日の始まりなどと言った精神状態で見ることを想定されていて、だからこそあまりにもヘビーな内容は取り扱わないと判断されることもある。

これは逆も然りで、大人しか見ない深夜帯だからこそエログロのようなキツい作風が成立するとか、冬に公開だから少し寂しげな雰囲気にしようとか、中高生に向けて恋愛ものにしようとか、この「本来想定されている視聴者の精神状態」と合致しない状態で見ることは、すなわち作品への無理解へと通じてしまう。

女の子向けのプリキュアを男の僕が見ても、お化粧の楽しさなどが理解できなくて面白くないと感じるのと同じように、例え等速だろうが映画館で見ようが、「つまらない」と感じたのならそれは等しく「制作陣の想定した客層ではなかった」というだけの話。
倍速視聴というのもそういう数多ある変数のひとつに過ぎなくて、本当の意味で制作陣の想定する客層にガッチリ100%一致する状態でなければ「つまらない」と言う資格はないことになってしまうのは、おかしい。
……裏を返すと倍速視聴以外の変数だけは「つまらない」と言ってもいいというのは、不合理極まりない。


「自分が倍速じゃ理解できないから全員そうに決まってる」とか「なんかイヤ」というだけのことを正当化するために"作者の意図"なんていう一見綺麗そうなおためごかしを利用しているのでないのなら、そういった他のズレもまた同様に批判するべき、少なくともこれはどうかと問われたら認めるべきでない。にも関わらずそうしないのは、自分のことを棚に上げた感情論でしかないからではないか。

まぁ"倍速"って表現があんまよくないのかもな、僕も流石に2倍速じゃよく理解できなくて基本は1.5倍なので試すならそれで試して欲しい。YouTuberの動画くらいなら2倍で何も問題ない。

 

作者の意図と敬意

以上にも見てきた通り「作者の意図した間やテンポとズレてしまい本来の意味を受け取れなくなる」というのが否定派の大まかな主張だけれど、僕としてはこれそのものにはある程度の正当性は感じつつも、自分としては「そんなこと言い始めたらキリがない」という立場を取っている。
先の記事でも言われている通り書籍なんかは特にそういうことの多い媒体だし、そもそも人が全て同じ時間の流れで生きている、そして自分がそれを操作できると思うこと自体が作り手の傲慢だと思う。

普段から早口に慣れている人もいれば、のんびりした会話をしている人もいる訳で、その2者間では明らかに「きちんと情報を受け取れる速度」や「心地よいと感じる速度」が違う。
例えば英語のリスニング問題について「もう少しゆっくり喋って欲しいのに」と思ったことがあるなら、それがこの実例となる。僕はリスニングを兼ねて洋画を見たいときは0.9倍速にして見る、という使い方もする。
また倍速にすることであまり興味がなかった作品でも見るのにあたって"気が抜けなくなる"から、結果的に等速でダラダラ見るより集中して作品と向き合っている気もする。少なくとも倍速で映画見ながら飯食おうとは思わない。
"作者の意図とズレる"という点から言えば高倍速も低倍速も等しく批判するべきだが、「より理解するためにいじる」というケースに関しては議論の余地がある。


……なんていうのは多少頭の回る人ならとっくに分かっていることだろうけど、それら全てを踏まえた上で、それでも"作者のペース"を尊重すべきだという意見は、まぁ分からんでもない。
要するに制作者サイドの言い分は「なんだか自分の作品を蔑ろにされている気がする」というものであって、この人たちは「相手を楽しませたい」のではなくてあくまで「自分たちの作品を見てもらいたい」のだろうと思う。
相手を笑わせるために話をするなら、相手が退屈そうにしていたら早めにオチを切り出すとかすると思うけれども、不快感を示す人たちはあくまで「ただ自分の話を聞いて欲しくて悩みや愚痴を喋っている人」に近いのかもしれない。
遮らず、結論を急がず、きちんと話を聞いて欲しい。
会話の目的が「聞き手が楽しむこと」ではなく「話し手が気持ちよく喋ること」にあるのなら、確かに倍速で話せと言う……況して「オチは?」と聞くのはナンセンスな話だろう。
倍速視聴をする人とそれに嫌悪感を抱く人、双方ともに「相手のペースを無視して自分のペースで進めようとしたがる」からこそ起きているのがこれらの齟齬なのだろう。

相手への"敬意"の表し方として「話の内容をきちんと理解すること」がポイントなときもあれば「ゆっくり相手の語りに耳を傾けること」が重要なときもある。
前者ならばその手段として早送りや10秒戻し,スキップ、要約して論点整理などをしてもよいが、後者なら例えよく分からないところがあったとしても相手の話を遮らずとにかく聞き役に徹するべきかもしれない。
作品鑑賞を作り手と受け手のコミュニケーションだと捉えた場合に、単に受け手の娯楽として自分の都合で消費するのか、音楽を聞くように"他人のペース"に身を委ねる体験こそが映像作品の醍醐味だとするのか、それはあくまで受け手の自由である。
「人の話をちゃんと聞いてくれない人」「愚痴聞いて欲しいのに勝手に要約してアドバイスしたがる人」みたいな風に周りから嫌われてもいいのなら、スピードにしろ画面の大きさにしろ時間帯にしろ、自分の好きなようにアレンジして楽しめばよいのだと思う。

僕が抱く倍速視聴に対する罪悪感っていうのは、例えば個人経営の八百屋さんとかでお店の人が奥に引っ込んでて、すみませーんって呼んでも出てこなくて、でも店は空いてるから中に入って商品を見ながら待つか……ってときに感じるようなもの。罪悪感こそあっても"本当に悪いこと"ではないと思っているので、やる。

 

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