やんまの目安箱

やんまの目安箱

ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

魔進戦隊キラメイジャー エピソード7,8「トレーニングを君に/エクスプレス電光石火」 感想

キャラクター

 熱田充瑠
・やせ我慢?
ゼロワン感想での文脈を汲むと、一応は充瑠にも責任はあると言うことができる。きちんと正面から「やめてくれ」と言わず、自分のためを思ってのことだと納得して受け入れてしまうのが悪い。それに3話で、彼は「我慢することがいいことだとは限らない。仲間の前でくらい弱みを見せてもいいのではないか」とも言っていた。それを踏まえると、必ずしも4人が一方的に悪いとは言えない……と思ってたんだけど、前編を見返してみるとマブシーナが言うほど我慢せず、結構主張してるのよね。難色を示したり逃げ出したり、「少しは休ませて」と言ったり。4人はそれを完全に無視している。
3話は「敵からの攻撃を我慢した時雨とそれをカバーする4人」という構図なのに対して、今回は「味方からのイジメを我慢する充瑠と気にも止めず続ける4人」となっていて、ドン引きするほど酷い。ここまで来るとキャラを通り越して、そう描いた作者に対して腹が立ってくるレベル。キラメイメンバー全員が不憫。
・キラメキの生まれ出づるところ
人は何故、ありもしないものを想像するのか。その答えは、うまくいかない現実からの逃避だ。それが現実ではなく想像だと見做されるのは、何かしら「現実と違う」ところがあるからだろう。今とは違う現実への夢想は、今ある現実への不満の感情と背中合わせだ。
小夜が前回言っていた「無理じゃない、絶体絶命なんかじゃない!」というセリフに、かなり分かりやすく現れている。彼女を動かしているものは、紛うことなき"否定"だ。
すべてがうまくいってしまったら、「こうしたいああしたい」なんて気持ちは生まれない。何か否定したい現実があってこそ人は欲求を抱き、現状を変えようと自己実現を目指す。
「人が輝く」という概念は、やはり根本的にマッチポンプ性を孕んでいる。逆境に立たされてこそ、人はかっこよく見える。ヒーロー(英雄)が活躍するためには、それが例え災害や不運などという非人格的なものであれ、"敵"が必要不可欠なのだ。
充瑠は時々漏らすようにかなりコンプレックスが強いフシがある。"冴えないただの(むしろ変な)高校生"としての不満を発散させるための彼なりの手段が、"理想"の絵を描くという行為なのだろう。彼が持つ現実的な劣等感はガルザへ、そして「本当はこうなりたい」という願望はオラディンへと受け継がれている。
現状はまだメタファーの域を出ていないが、やはり僕は(ひょっとするとキラメイジャーの他のメンバーまで含めて)全て彼の妄想の産物なんだろうと思っている。
でも仮にそうだとすると、今回の「他の4人が見ている世界を学ぶことで想像の幅が広がる(充瑠の様子を気にせず突っ走る4人≒ガルザを無視して引っ張るエクスプレス)」という展開の面白さが減るので、どっちも捨てがたいところ。


 充瑠以外の4人
・無神経
今回の彼ら、ヤバすぎでしょ。1時間で交代ってシステムまでつくってるんだから総トレーニング量も把握してるはずなのに、充瑠が疲れているという発想に粉微塵も至らないの、正直マジで頭おかしい。
特に瀬奈と時雨な。お前ら2,3話で充瑠に自分のやりたいことをかなり丁寧に尊重して貰っておきながら、なんで充瑠のキラメキを蔑ろにできる訳? 信じられない。
この辺りは塚田Pの作風なのかな。弦太朗がユウキとの約束を忘れたり流星が弦太朗を殺したりと振り切るときはとことん振り切り、展開の"落差"を大きくしていく感じ。結果オールライト!ってのも、「殺された本人が許しちゃうんだから〜」を思い出す。今回のテーマはそれこそ"寒暖差"なので当然自覚的なんだろうけど、それならなおさら丁寧にフォローしてあげて欲しい。
そもそも確かに充瑠はただの高校生だけど、戦闘において遅れを取ってるような描写なんてあっただろうか? むしろ唯一剣と銃を同時に使いこなしていて、戦隊の顔役であるレッドに相応しい活躍を見せていた。幹部たるガルザとも一人でいい勝負してたしね。にも関わらず、彼を特訓する意味というのが分からない。1話でもファイア(当時はまだレッドストーン)が明確に「俺はお前のキラメンタルを戦う力に変えられる」と言っているし、そのキラメンタルは5人の中でもずば抜けてるのが充瑠のはず。ぶっちゃけ彼、変身後ならあのメンツの中で一番強いでしょ。リーダーとしての器に関しても同様。少なくとも自分のやりたいことを主張するだけの他の連中よりはよっぽど人の話聞くし、だからと言って聞くだけに留まらずきちんと指示もできる。充瑠とは意見が合わないものの一応は認めて身を引いた為朝はともかく、他の3人は度量でも劣ってるとしか言えない。
何か実際に戦闘で困ったことがあったとかならともかく、テレビ番組に影響されたなんてしょーもない理由であそこまでのハードトレーニングを課されるのは、彼が可哀想で仕方ない。


 ガルザ
・彼の目的
クランチュラが再三繰り返すほどには大して怖かないが、仲間を使い捨てるというのは敵の描き方として分かりやすいことこの上ない。分かりやすいのはいいんだけど、そのせいでガルザ本人の魅力というのが見えにくくなってる気もしなくはない。「よくいる敵」以上になれていない感じというか。
でも今回の心情は理解できないでもないかな。彼にとって最もナイーブな問題であるが故に、大した力もない癖に「弟だからというだけで見下されてる」と話をすりかえるやつのことは許せないんだろう。僕はあんまり劣等感というものを感じたことがないお気楽極楽人間なので、共感はできないけど。
それはいいとして、わざわざ殺しまでするほどのことか? ただ自分の力を誇示したいというだけで、彼には多少我慢してでも成し遂げたい長期目標というものがないのだろうか。キラメイジャーのメンバーも基本的には「自分がかっこよく活躍したい」以上の動機ってそれほどないので、そういう意味ではやはり似てるけど。本作におけるキラメキって究極的には"自己実現"……すなわち「自分のため」でしかないので、充瑠のことを気にかけられないのはそういった高いキラメンタルの悪い側面の発露という風に理解すればいいのかな。それにしたって露悪的過ぎやしないかと思うが。

 

設定

・仮面
クリスタリア人が笑うと鳴る音、正直「あの回だけの設定じゃない」というアピールでしかないと思うと正直うるさく感じるんだけれど、なんとかここに意味を見出したい。涙が宝石になって残ってしまうのもそうだが、彼らはもしかすると感情が表に出やすいのかもしれない。もちろん、"仮面を被る"の反対としてね。
そう考えると、エピソードZEROでのマブシーナの散々な悪口やガルザの衝動性は頷けるものがある。
様々なしがらみから自分を表に出せないことは、キラメキ(自己実現)の反対、つまり"澱み"と言えるだろう。時雨の痩せ我慢はこれに含まれるかというと、おそらく「我慢する」こと自体が彼の欲望なので、むしろ忠実な方だと思われる。それだけのために映画のストーリー勝手に変えちゃったりするくらいだし。

 


ジョーキーについてはもう少し寝かせてから書きたいことがあるけれど、前後両方に進める電車を葛藤の象徴として捉えるのはすごく説得力があって、毎度のこととは言えデザインなどを考えてる人の発想力には脱帽させられる。作品ができるまでの会議の様子とか、都合よく編集しててもいいから見てみたいよなぁ。

 

前話

魔進戦隊キラメイジャー エピソード6「ツレが5才になりまちて」 感想