やんまの目安箱

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ドラマ(特撮)、アニメ等の話を中心に色んなことをだらだらと、独り言程度の気持ちで書きます。自分のための備忘録的なものなのですが、読みたい方はどうぞ、というスタンス。執筆時に世に出ている様々な情報(つまり僕が知り得るもの)は特に断りなしに書くので、すべてのものに対してネタバレ注意。記事にある情報、主張等はすべて執筆時(投稿時とは限らない)のものであり、変わっている可能性があります。

九条貴利矢に関する23話時点での違和感と考察(仮面ライダーエグゼイド)

86ma.hatenablog.com

タイトルの通りである。長くなりそうだったので単発で記事を作った。
22話にてリプログラミングのデータが、23話にて宝生永夢の体内にある"オリジナル"のバグスターウイルスについてのデータが、どちらも飛彩によって発見され、その2つを関連付けてマキシマムマイティXガシャットを生み出したことは、エグゼイドを見た人ならば知っているだろう。

 

で、僕が違和感を感じているのは、世界で初めてのバグスターウイルスの謎=リプログラミングという図式と、貴利矢が望んでいた結末についてである。
ひとつずつゆっくり説明するので、ゆっくり読んで欲しい。

 

 

 

まず貴利矢の行動などを軽く振り返ってみる。覚えている方はとくに読まなくても問題はない。

・本編から5年前、後にゼロデイと呼ばれる事故によって、友人の藍原淳吾が何らかの症状を発症。貴利矢は衛生省の機密情報を入手し、命に関わるバグスターウイルス感染症という病気だと確信・告知する。動揺した藍原は交通事故に遭い死亡。貴利矢は藍原の無念を晴らすため、バグスターウイルスの根絶を決意。バグスターウイルスを体内に宿したまま死亡した藍原の遺体を検体に研究する。
・その2年後、本編から3年前、衛生省が幻夢コーポレーションと組んで何かをしていることに気付き、檀黎斗に接触。ゼロデイの秘密を材料に脅し、ゲーマドライバーとライダーガシャットを手に入れる。おそらく適合手術もこのタイミングで受けたと思われる。
・ここから本編。4話。バグスターのサンプルを求めて宝生永夢を利用するも、ゲンム レベル3によってモータスを倒され失敗。
・5話。ゲンムの正体をたまたま知り、永夢にはグラファイト(ゲーム病患者)が変身者だと嘘をつく。自分はゲンムに「聞きたいことがある」と攻撃を仕掛けるも、やられる。
・7話。永夢にゲンムの正体を告げるが、パラドの入れ替わりによって信頼が落ちる。
・8話。黎斗にその目的を問うが「バグスターウイルスの生まれた原因を突き止めるため」と答えられ、同時に宝生永夢が適合手術を受けていないことを告げられる。
・9話。宝生永夢の手術記録を探り、16年前の日向恭太郎による手術が怪しいのではないかと勘繰る。
・11話。16年前の手術について、黎斗に報告。一応目的は同じだという彼の言葉を信用しているらしい。「次はあんただ、覚悟しとけよ」とも言っているが。その後 女医の「日向恭太郎は信頼されていた」という言葉に反応して、永夢を信じると宣言。
・12話。永夢の信じる恭太郎のことを疑惑の対象から外したからか、檀正宗に話を聞きに行く(初対面)。貴利矢からすればゼロデイのときに淳吾を殺した張本人のはずだが、「あなたが服役している"本当の"理由が知りたい」というセリフから、既に真犯人は知っていることになるはず。尚、そこでバグスターの誕生経緯、永夢と黎斗の16年前の接点、ゼロデイの真相を聞いたと思われる。
その後 宝生永夢、鏡飛彩、花家大我を呼び出し、何らかの情報を告げようとするも、檀黎斗によってゲームオーバーを迎え、「永夢……世界の……人類の運命は任せたぜ。忘れんなよ。お前か笑顔でいる限り、お前はお前だ。お前の運命は……永夢……お前が変えろ!」と言い残し消滅。

 

 

 

さて、本題である。以下のセリフを見て欲しい。 
黎斗「彼がバグスターウイルスを根絶する手段を解明しようとしていたからな。そんな愚かな考えを持つ者は、誰であろうと追放する」
何か違和感を覚えないだろうか? すくなくとも自分は気持ち悪かった。
黎斗が貴利矢を殺したのは、
黎斗「私の父に会ったと言うのは本当か」
貴利矢「あぁ、聞いちゃったぜ。中略 あんたと永夢、16年前に接点があったんだって?」
という一連の会話から分かる通り、"永夢の謎"について知られたからのはずである。
しかし上のセリフでは、"根絶する手段"が決め手だということになっている。
そう、この2つのセリフに矛盾がないとすると、前述した"世界で初めてのバグスターウイルスの謎=根絶する手段(リプログラミング)"という図式が出来上がっているのだ。

 

明らかにおかしい。
貴利矢がバグスターウイルス根絶のための手段を探っていたのは、実に5年前からである。藍原淳吾の遺体を利用し研究を続け、その結果としてリプログラミングに辿り着いたという流れのはずである(公式サイトより)。
にも関わらず、殺害はおそらくリプログラミングの発案とはほぼ関係のないタイミングで行われた。
仮に永夢の謎がリプログラミングの発案に関係していたとしても、残るはガシャットにインストールするのみの状態にまで仕上げるほどの余裕があったのにそれまで誰にも話さないというのは、愚行としか言えない。

 

"ガシャットにするためには永夢の力が必要なので、永夢の謎が最後のピースとなったのだ"とも思えるが、そもそも自分はガシャットにする必要性を感じない。リプログラミングとはバグスターウイルスなど存在しない現実世界でも実際にある技術である。
劇中でガシャットをつくることになったのは、大我がゾンビを倒すために「目には目を、ゲームにはゲームを」と言い出したからであり、リプログラミングが採用されたのはタイミングが良かったからでしかない。
むしろ、バグスターウイルスを利用したシステムである"ガシャット"としてリプログラミングを再現することは、貴利矢の悲願であった"バグスターウイルスの根絶"と相反することなのではないだろうか?
元々の目的であった「不死身のゾンビを倒す」については、ボーズ・オブ・テラのような"そういうゲーム"で十分であろう。
自分としては、この結果が本当に彼の望んでいたものだったのかどうか、疑問だ。

 

 

 

もうひとつ気になるのが、貴利矢によるリプログラミングの説明である。
「ヒトのDNA配列に組み込まれたバグスターウイルス因子を消去し、ヒトの正常なDNA配列に再構成すること」と、明らかに"M"を意識しているものである。
何を言っているか分からない方もいるかもしれないが、後夜祭にて"M人格はパラドが感染していたことで遺伝子に変化が起きたもの"というような説明がされたらしく、自分はその遺伝子的な変化というのはエピジェネティック変異のことだと捉えている。つまりこの解釈が正しければ、上の説明文は「Mを消去し、元の永夢に戻す」と書いてあると言っても過言ではないだろう。逆に、他にヒトのDNAにバグスターウイルスの因子が組み込まれた例を知らない。
しかし、生前貴利矢がMについて言及したことは一度もない。精々"呼び名が「名人」だったこと"くらいだろうか。謎は深まる。

 

 

 

さて、彼の意思について推察するならば、遺言を避けては通れないだろう。ここからはそれについて考えていく。

 

「永夢……世界の……人類の運命は任せたぜ。忘れんなよ。お前か笑顔でいる限り、お前はお前だ。お前の運命は……永夢……お前が変えろ!」

笑顔云々はゲーム病に気をつけろよ、ということだとして、ここで言われている「運命」とは、果たして何を指しているのだろうか?

 

「人類の運命」は、バグスターが生まれたことについて、(否定的な意味を持たせて)正宗が同じ表現を使っている。
おそらくそれと同じようなニュアンスだと思われるので、"バグスターを根絶できるかどうか"というようなことを言っているのだろう。
とすると、やはり永夢がマキシマムマイティXガシャットを生み出すことを期待していたと見るべきだろうか?
或いは、単純に自分の遺物を調べるのは永夢だと踏んでのセリフだろうか?(この頃の飛彩と大我は、他人と迎合することは有り得ないようなキャラクター造形であった。事実貴利矢とも、まともに接していた試しがない)
自分的には後述の考察と筋が通るので、今のところ後者派だ。

 

次は「お前(永夢)の運命」について。
永夢の運命という文脈で使われたセリフは、パラドにもらったガシャットからブラザーズを生み出せるか否かというところで「お前の運命が決まるときだ」とのセリフがある。"運命"というのはガシャットの創造と関係しているのか?
他には、黎斗への手紙の話にも出てきた。「そのたった一通の手紙が、私と君の運命を大きく変えた」
永夢はそこから"世界初のゲーム病患者"となり、後に言われるところの"全てのバグスターを、全てのガシャットを生み出した根源"となった。大きく変わった運命とは、このことを指しているのではないだろうか?

 

そして最も肝要なのが、13話のサブタイトル「定められたDestiny」である。運命については変えろ変えろと言われているので、定められたものはマイナスの意味を持つはず。
永夢自身も運命を変えるつもりでことに挑んだが、この回で実際に起きたのは永夢によるマイティブラザーズXXガシャットの創造である。
もしこれこそがマイナスの意味を持つ"定められた運命"だと言うのなら、自分には貴利矢の遺言は"これ以上バグスターやガシャットを生み出すな"という意味を持つように思える。

極めつけはいつもの決め台詞「患者の運命は俺が変える!」だ。これは有り体に言えば"病気を治す"ということである。これを何度も聞いていた貴利矢が、発言者である永夢に対してほぼ同じ文面で伝えていることを思えば、どういう意味になるかは自ずと分かるだろう。"ゲーム病を治せ"だ。
そういった前提の元にバイアスをかけて考えると、リプログラミング技術によるM人格の消去を目的としたような文章も、"ただバグスターを倒すだけでは済まさない。徹底的に根絶するのだ"という強い意思を感じる。ような気がする。

 

 

 

最後に、九条貴利矢は後にバグスターとして復活し、新たな証言等が増えることとなるのだが、今回はそれらを一切考慮せず、23話までの情報だけで考察した。
それには理由があり、1番はバグスターとして復活した人間と生前の人間の同一性について劇中で一切触れられていないことが挙げられる。人間の貴利矢とバグスターの貴利矢が同一人物である保証は、黎斗と正宗の話以外に何もないのだ。自分はそこに対して懐疑的なので、敢えて取り上げなかった。
もうひとつは、貴利矢の復活は予定外のことだったという点だ。後付けをすればそれだけ矛盾は生まれ得る。ただでさえ自分はエグゼイドに一貫性があるとは感じられていないので、ここまで焦点を絞らせてもらった。

 

 

 

以上である。特に後半は言葉選びという点にフォーカスを当て、少々込み入った……というか抽象的な話になってしまったので、自分の表現でうまく伝えきれるか心配であるのだが、まぁ、理解できるまで読み返すなり馬鹿らしいと一蹴するなり、好きにしてくれればいい。